こちはらpixivに投稿済みの同名作品に一部手を加えたものになります。
今回はこれでした。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=28129135
朝、歯ブラシを咥えてわき腹を搔きながらぼんやりとニュースを眺める。最近あっちーな、そろそろエアコンつけるか? でも電気代高いからぎりぎりまで粘りたいんだよなぁ。今年もエアコンチキンレースの季節がやってきましたよっと。
『速報です』
若干緊張感のある声に顔を上げた。お、なんだなんだー?
『先ほど、A社の工場で大規模火災が発生したとのことです』
あら大変だ。でもけがした人はいないっぽいな、よかった。おいまてこの工場って
「あーーーOMG」
こりゃ頭が痛くなるぞ。
§
「てことで部材不足が確定しました」
「あら大変だ。でも人的被害がなくて本当に良かった」
「そうですね。それで、先方から所長と話がしたいって連絡が来てます」
「オッケー。この工場で作ってたのってどのパーツに使われてた?」
「……聞きます?」
「そりゃ把握しとかないとでしょ」
言わないとだめか。いや言わないとだめだよなぁそうだよなはいはい言いますよ言えばいいんでしょ。やだなぁ。
「下腹部パーツの、内側です」
「……あ、あぁ」
おい赤面すんなや恥ずかしいのはこっちもなんだぞクソボケ。あー上司の性事情に口出しするの嫌だなー、超嫌。
「要するに一番消耗するとこですよ。で、その供給がストップします。今手元にあるもので今まで通りのペースで交換を続けてたら大体一か月で在庫がなくなります」
「えっそんなに」
「所長、夕べもおたのしみでしたね」
「いやあのそのそのその」
「と・に・か・く! ペースを落とすか、前にも言いましたが大人しく抱かれてといてください。手首のパーツは特に問題なく調達できますし、私でも調整できますから」
「う……」
「前向きに検討してください。はい時間ですよ、先方と話してきてください」
「はーい」
所長をメンテナンスルームからぐいぐい追い出して戸を閉める。
「あのさー」
ついさっきまでパーツの交換をしていたかぐやちゃんとヤチヨが目を覚ましたようだ。振り返って返事をする。
「はいはい」
「どうしても控えないとだめ?」
「だめって……うーん」
「かぐや、そういうの聞くのはどうかと思うよ?」
ヤチヨが窘めるけどかぐやちゃんは不満げ。まあかぐやちゃんから意見があるってんならヤチヨからもあるんだろうけど。同一人物なんだし。今二人の中で、聞きたい、聞いちゃダメ、が葛藤してるんだろう。だったらこっちから話してあげよう。
「正直なところ、別にダメではない。下腹部パーツに関しては耐久性の問題や今回みたいなトラブルを想定して、別のベンダーもしくは複数の製造元から調達するようにしてもいい。ただ、問題は用途で」
実際、下腹部パーツの内側に関してはなかなか難しいものがある。感触に振り切ってしまうと耐久性が落ちるし、耐久性に振り切れば感触に劣る。トレードオフだ。今使っているものはそのバランスを取っているつもりだがやはり耐久面で劣る。所長にはちゃんと爪切ってもらってるんだけど、多分、その、頻度と、あの、こいつら結構激しい。所長体力ありすぎんだろ。
「消耗品だからね、大事に使えったってどうしようもない。所長には言わないけど、大事に使った結果消耗してるんだから仕方ない側面ではある。パーツがなくなってもソケットには穴埋めのパーツ入れとくから歩行には問題ないよ」
「むむむー……」
「まぁね、歩行の問題じゃないのはわかってる。君たちのコミュニケーションの問題なんだから私が首突っ込むことじゃない」
メンテは私がやってるんだけどね! だから気になっちゃうけど、でも物理的なものじゃなくて精神的なものだから、とやかく言うものじゃ、言うものじゃ……でもやっぱこいつら頻度高いよ。
「あのさ……これ聞いていいのかわかんないんだけど、君ら週に何回シてんの?」
「あ、それ聞く?」
「聞いちゃいますかぁ」
「一応ね! いちおう!」
「えーっと、いちにいさん……ご?」
「そうだねー、それで、に、かな? もしくは、さん」
ご? に? さん? 数字の羅列じゃわからん、単位を言え単位を。
「それぞれの単位は?」
「一週間に5日」
「平日は2時間、お休みの日は3時間だにゃー」
「えぇ……所長ヤバすぎ」
まぁそりゃこのペースで交換することになるわ。とはいえ、ちょっとまずいな。このペースでなかよしのやつーしてる人たちに禁欲させるのは諸々に支障が出そうだ。有体に言うと、視線がねっとりじっとりべっとりになって研究所の空気が死ぬ。パーツが再び手に入るまで強制ポリネシアンめでたしなんてさせたらおしまいだ、主に私が。
「やっぱりさぁ、攻守逆転しない? このままパーツ切れ起こしたらまずいって。禁欲できないでしょ」
「むりー」
「きびしいですねぇ」
ほらね。とはいえ攻守逆転、どうやるんだ?
「かぐやさー、やり方わかんないんだよね」
「ヤッチョもわからなくて」
「いやわかるだろ8000歳」
「情報として持っててもこの体になってまだ数か月だよっ」
「あぁそっか」
「試してみてもいいけど、力の入れ加減を間違えて彩葉を傷つけたらって思うと、ちょーっとヤチヨは怖いのです」
「一理ある」
「てことで」
かぐやちゃんの目が輝く。おいやめろバカ! 嫌な予感がする!
「おしえて~」
「ごめんできない、知らない。雄しべ雌しべも雌しべ雌しべも経験がないから」
「お、処女」
「うるせえぶっとばすぞ非処女宇宙人共!」
「なんでヤッチョも!?」
「同一人物だろ連帯責任!」
三人で不毛な喧嘩をしているとドアがノックされた。所長、戻ってきたのかな。
「はいどうぞー」
「こんにちはー、あれ、お話し中だった?」
「お、やっほー芦花」
あれ、今日来る予定だったっけ。実験予定表をちらっと確認する。特に用事は入ってないんだけど。撮影で近かったのかな。
「差し入れ、たくさんもらいすぎちゃったからお裾分け」
「うわーい! やったぁ」
「プリンだ。芦花の持ってきてくれるのはいつも美味しいのだから嬉しいな」
「ありがとうございます、冷蔵庫入れておきます」
プリンをありがたく頂戴して冷蔵庫に入れる準備をする。おいおい、ちょっとごちゃごちゃだぞ。整理整頓だ。
後ろの方でかぐやちゃんとヤチヨが芦花さんと何か話している。
「なんかねー、パーツの部品がなくなっちゃうかもなんだって」
「大変だ。どこの?」
「下腹部パーツ」
おいバカ! バカ!! スポンサー様に何の話してんだ!!!!
「下腹部……あ、あぁ、なる、ほど」
「かぐや、およしなさいよ」
「だってさぁ困るじゃん、ストレスとかたまるし、彩葉の」
「あ、彩葉、それでストレス発散してるんだ」
「んー、いやされるーってよく言ってる」
聞きたくねえ! この話聞かなくていい? 耳栓していい??
「でね、パーツなくなると困るから攻守逆転しろって。でもやり方がわかんなくて」
「えっと、その、彩葉に、してもらってるんじゃないかな、と、思うんだけど、違う?」
「それが、かぐやもヤチヨもふわふわしちゃって上手にできるかわからないのです、ヨヨヨ」
「わ、彩葉すごいね」
ヨヨヨじゃねーんじゃ。芦花さん引いてんじゃねーか。もうこの賞味期限切れのヨーグルト持って外出していいか?
このクソカスの会話を聞いて芦花さんは何かを考えこんだ。お、考えてる美人、絵面がいい。教科書に載せよう。
「二人ともさ、ここに指入れてくれる?」
彼女は右手と左手をそれぞれ何かを緩く握るような形にした。なんていうか、ずいずいずっころばしするような感じのやつ。なんのつもりだろう。賞味期限切れのヨーグルトは流しに捨てて、冷蔵庫にプリンを安置する。
「こう?」
「そうそう。そのまま私の手のひらの方に指曲げて」
「芦花、これで合ってる?」
「合ってるよヤチヨ。もうちょっと強くてもいいね。あ、うん上手」
……私これ見てていいのか?
「そのまま動かしてみて、あまり強くしなくていいよ。うん、それでオッケー」
「ここからどうしたらいい?」
「んー、反応が良いところを探ってみて、そこを押し上げる感じに」
「痛くない?」
「大丈夫だよ。そんな感じで合ってる」
なにも大丈夫じゃないが。いいのこれ、本当に、いいの? 怖くなってきた。
「そしたら、一回指抜いて。そう。本数増やそうか。指は重ねた状態で入れて、中で広げてみて。ヤチヨ、上手だよ」
「かぐやは? かぐやの方は?」
「うまくできてる。えらいね」
ごめんやっぱこれだめだ、めっちゃエッチだ。目の前でエッチなことが起きてる。助けて所長、早く来て、やっぱ来ないでややこしいことになる、絶対来るな今来るな。やばいエッチすぎて耳鳴りしてきた。
「指先使うと痛いから、指のおなか使って。うんうん上手だね二人とも、何も心配しなくてよさそう」
「芦花の中すごい狭い」
「あったかいね」
やめてそれ、想像が捗ってしまう。目を覆いたいけど緊張で動けねぇ。ふいに芦花さんがこちらを見た。目が合ってしまう。あ、やべぇこれ、見てるのバレた。
彼女ははにかむと、片目を閉じた。それから人差し指を立てて、唇の前に立てる。秘密を共有する相手にするように。
「彩葉には内緒ね」
「う゛」
頭の中で強制シャットダウンが入った。後頭部を床に強かに叩きつける音がし……
§
「はじめさん、はじめさん大丈夫?」
「う、いてぇ」
見慣れた仮眠室の天井だ。芦花さんが私を覗き込んでいる。景観が良い。絶対たんこぶできたこれ、くそいてぇもん。多分ぶっ倒れてかぐヤチに運ばれたんだろう。あー最悪、エッチなもん見て気絶するとかいい大人が思春期のクソガキみたい。
「すみません、お見苦しいものを」
「全然そんなの、私の方があんな」
「いえいえ……私にはできないことだったので。ご協力ありがとうございます。所長には内緒にしとくんで」
「あぁ、うん、ありがとう」
あんな、とは言うけど、この人あれどういう感情でやってたんだ。多分所長のための行動なんだろうけど、にしても精神が聖人すぎるでしょ。自己犠牲しすぎて恐ろしいわ。
「協力してくださるのは嬉しいんですけど、あんま無理しないでくださいね」
「無理はしてないよ」
「どうだか」
ふと、気になったことを口にしてしまった。
「なんであんなん知ってるんです?」
「え」
芦花さんの顔がみるみる赤くなる。あ、これやっちまったな。所長のこと散々クソボケって言ってたけど私も人のこと言えねえかも。
「すみません失言で」
「じぶ、んで」
理解した。完全に全て理解した。その上で誓った。責任を取ろう。
「墓場まで持っていきます」
「……オネガイシマス」
スポンサー様の声は小さかった。
§
パーツは結局、別のメーカーの部品を調達することでなんとか間に合わせることができた。こんなことのために奔走してへとへとになったけど、まぁよしとする。
かぐやちゃんとヤチヨの手首のメンテナンスも増えたことはまた別のお話。
許してくれ、カッとなって書いたんだ。
それではまた明日。