〜虚弱田中に転生〜『原作知識チートがチートじゃない世界で【恐ろしすぎる大魔王・蝉原勇吾】と相対する話』 作:楓舞星
最近、昔ほど母さんが構ってくれなくなった。食事も、父さんが外出してていない時は作らないようになった。
構ってくれない理由...それは父さんの事が好きだから...らしい。
よくわからなかったが、これが親のする事なのだろうか。
だが、あたしのやる事は変わらない。この状況でも姉としての義務を全うする事だ。それぐらいしか、できる事はない。
最近、妹...ムラハネの様子がおかしいことに、私は気づいておった。
いや、あたしだけではない。父さんは察している様だった。
あたしが最初に気づいた時は、ムラハネと一緒にお風呂に入った時や。
「...なんか、変な痣できとらんか?」
「えっ!あ、ああ、それはただ転んだだけ...」
「それにしては頭の後ろにあるけど...」
「だから、転んで後ろから倒れたの!」
ムラハネは強引に話を終わらせた。
あたしも、それ以上は首を突っ込まんとこ思て、その場は終わった。だけど、日に日にお風呂に入る時に、擦り傷や痣は増えていった。
「...なぁ、あたしらだけしかここにはおらへんのやからさ、話してくれへんか?」
「え?で、でも...」
「父さんにも母さんにも言わへん。やから、な」
あたしはムラハネが心配だった。純粋に姉としての義務感があった。やから聞いた。
やけど、帰ってくるのは否定の言葉だけやった。
「...ごめん。やっぱり出来ないや」
「......そか。まあええわ」
ムラハネは特殊な子らしい。ウチらの家系、田中家は、普通は関西弁のような口調になるのが一般的や。たまに親戚同士で集まったりする時はそれがよく理解できた。そして、そこで聞いた限りでは、あたしらの家系はこの口調にならないと精神疾患のような症状が強く出るらしい。だが、家族贔屓とか無しに、ムラハネにそんな精神疾患のようなものはないと、あたしは感じている。
そして第二に、これはあたしも含めてやけど、知性レベルが著しく悪いらしい。だから、簡単に言えば馬鹿っちゅうこと。今まではあたしが歴史上、1番の馬鹿やったんやけど、ムラハネはそれよりもあかんらしかった。
父さんが資料を眺めていたところを、偶然目にしたことがある。それは、とあるテストの結果を示した資料やった。
そこに書いてあった知性レベルという数字が、私は3で、ムラサメは1やった。これは、あたしらの家系からしたらありえんほど低い数字らしい。
これには、父さんは、血が悪かったと親戚中から揶揄われてしまった。それで父さんは、少し悲しそうな面をしとった。
あたしは親戚に怒ろうとした事があるが、寸前でムラハネに止められた。気持ちはわかるけど...ってな。
やっぱ、この子がアホの子やとはあたしには信じられへんかった。そこらの大人よりも、よっぽど賢いと思う。それは、父さんも、きっと母さんも気づいとる。
だから、父さんはムラハネに何かあっても、基本的には無干渉を貫いとる。ムラハネが賢い事を知っとるから。いざとなればあたしたちを頼るだろうと思っとるから。
母さんはまだしも、父さんはムラハネが頼めば一瞬で動いてくれるやろう。あたしも思う。あたしたちの両親が組めばだいたいの物事は解決すると。
「シグレ姉さん...大好きだよ」
ふと、耳に入った言葉に、あたしは
「ああ、あたしもや」
そう返した。