〜虚弱田中に転生〜『原作知識チートがチートじゃない世界で【恐ろしすぎる大魔王・蝉原勇吾】と相対する話』 作:楓舞星
お風呂から出た私は、夜ごはんを食べる為に両親を探す。だが、家中のどこにもいなかった。
そうして、シグレだけは見つかった。だから、シグレに聞いてみた。
「ムラサメ父さんとシウ母さん、どこ?」
「...外や」
シグレは端的に返した。外か。私は行こうとし、そして、
「いくなや。ムラハネ...」
シグレに止められた。ん?どうして?
「なんでー?」
多分あの二人...と言うかシウ母さんの事だから、今日は私たちの面倒を差し置いてイチャラブしているのだろう。そう思っていると、
「いま、母さんは父さんに叱られとる」
は?あのシウ母さんが?
私はあんぐりと口を開けた。え?まじ?
あのシウ母さんが父さんに叱られる?
あんだけ、ここまで甘々だった父さんが?
「あっ、ちょっ、まてぇ!」
私はシグレのいうことを聞かずに駆け出した。なにか、嫌な予感がする。こうやって、盛大に物語が変わっていくときというのは、大体悪い事が起きる前兆なのだ。
シグレも後を追ってきた。
外から罵声が聞こえた。ウチの広いバルコニーからだ。そして、外にひよっこりと顔をだす。
「お前は!何故!俺ばかりに執着するんや!シグレ達の事も見てやってやれぇ!」
そう言うのは、いつもは見せない、怒っているムラサメ父さんの姿だった。
それに対して、崩れ落ちているのはシウ母さんであった。でも、シウ母さんはヌルりと立ち上がり、ムラサメ父さんに抱きついた。
「わかっているでしょう?私にはそれしかないの...ねぇ、ア・ナ・タ♡」
「くっ!うぅ...」
...私はその姿をみて、何を思えば良かったのだろう。でも、やるべき事はわかる。
「...シグレ姉さん、帰ろっか」
「...せやな」
私はシグレを家中に入れた。そして、
「ちょっと、私は用事があるから、ほんの少しだけ待ってて。勿論、着いてこないでね」
私はそう釘を刺してから、先の場所へ戻った。
二人は抱き合ったまま膠着状態に陥っているようだった。頭がおかしいシウ母さんと、シウ母さんのしていることを否定したいが、そんな所を好きになってしまった自分への葛藤をしているムラサメ父さん...
...私は無垢な妹を演じる。演技力だけは大したものがあると思う。元は酷かったと思うけど、伊達にこの12年間、必死にムラサメ父さんやその他の親戚に転生者と言うことを隠して生きてきたわけじゃない。
「...なにやってるの?ムラサメ父さん、シウ母さん」
「っ!ムラハネ...家に帰ろうや...なあシウ...」
ムラサメ父さんはこの状況が私の情操教育的に不味いと判断したのだろう。正しい判断だと思う。私、思春期だからね。