〜虚弱田中に転生〜『原作知識チートがチートじゃない世界で【恐ろしすぎる大魔王・蝉原勇吾】と相対する話』 作:楓舞星
「あ、やっと帰ってきーーー
っ!大丈夫かっ!」
ボロボロという言葉以外で形容出来ないほどボロボロの姿で帰宅した私を出迎えたのはシグレだった。
その様子は正に、心慌意乱と言った所か...なんて、調子にのった四字熟語を頭に浮かばせた。
私はおかしなテンションでシグレに笑う。
「私...守り切ったよ...はは、ははは。メガネ、わられちゃ、った...」
そうして、私の視界は暗転した。片目...左目の喪失感に脳が耐えきれなかったようだ。
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その間、家であったことは想像に難しくない。すぐに、救急車を呼び、家族では何があったのかを検討、会議された。
シグレは一人、拳を握る。
(ムラハネには...おかしなところがある...今日で確信した...恐ろしいほどの善性がある)
善性。それが田中・イス・ムラハネには備わっている。しかし、本人すら制御が効いていないようだった。それに、こんなに人に頼らない子だというのには、今更気づいた。シグレは臍を噛む。
(今回のこと...おそらくは多分、イジメかなんかが原因や...だ、誰か知らんが...ウチの子にふ、ふざけた真似を...)
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私が目を開いた時、視界は黒く染まっていた。いや、黒というか、なんというか...色と言えるのか?あえて色をつけるとしたら虚無色だろう。隻眼ってこんな気持ちなんだなーとぼーっと思った。
そして、私はあったことをフラッシュバックさせ...
「はぁ...はぁ...はぁ...」
動悸が止まらなくなった。どうやら、あの事は私の中でトラウマの一角を担った様だった。
...どんどんトラウマが増えていくな。私の人生...
私は、せめて涙は堪える為に、そんなことを考えて思考を鎮ませる。
そうして、しばらくした後、医者がやってきて説明をしてくれた。
眼はどうやっても治らないこと、まあ当然だろう。そんな再生技術があるわけがない。
そして、これからは眼帯を付けることになった。眼帯少女の完成である。片目はコンタクトにでもしようか。
その後ムラサメ父さんとシグレと、そしてシウ母さんがやってきた。
「大丈夫か?ムラハネ...じっくりと聞かせてもらうで...」
ムラサメ父さんは怨嗟の顔を浮かべながらそう言った。
......私はムラサメ父さんが怖いと思った。そして、つい、泣き出してしまった。
自分が怒られてる様に感じた...怒られるのが嫌だった。だって、私なんかのために怒ってほしくなかったから。私は、最低の親不孝ものである。アイスピックで眼を抉られることも、実のところ考慮に入れていた。その上で、私は現場に向かったのだから。
だけど、それは大いなる『実験』のため。
それは、『運命』は崩せるのかという実験だ。
ユズにカワチを死に追いやり、そしてカワチはミカンとして転生する...そんな、『運命』を、己は崩せるのかの実験だ。
その為に、私は身体と精神を捧げ、最終的にカワチを救い上げた。
実験は、きっと成功だろう。私の噂はそこら辺に漂い、これ以上の暴挙はユズも行えない...はず。
私は、カワチを助けられたのだ...
良かった。本当に良かった...
ただそれだけ、充分だ。
「ごめん、それは言えない」
私はそう言って、家族達を引き返した。私は最悪な、親不孝モノである。
【...なんか、使ってもらった分際だけど申し訳ないなぁ...】