〜虚弱田中に転生〜『原作知識チートがチートじゃない世界で【恐ろしすぎる大魔王・蝉原勇吾】と相対する話』 作:楓舞星
皆が寝静まった時間、私はムラサメ父さんの部屋に来ている。誕生日プレゼントとは一体なんなんだろうか。
ムラサメ父さんがおもむろに引き出しから出したものは...スマホだった。
え?スマホ?
「これが、お前に送れる、最後のモノや」
いやいや、最後に送るモノがスマホとか冗談きついですって父上。というか、私は最後にする気はないって何度も言ってるよね?
「...最後にする気はないし、これからも一緒だよ。ムラサメ父さんも、シウ母さんも、シグレ姉さんも一緒に...」
私がそう言った時だった。
「このスマホには、世界の法則を見れる機能がある」
え?
「......」
「俺は世界の真実を知ってまった」
ま、まさか...
「......」
まさかそのスマホって...
「け、携帯ドラゴン...?」
「お、ようわかったな。まあそれのランクで言えば、下の方なんやけどな。俺にはこれが、限界やった」
んでな、そうムラサメ父さんは話を続ける。
「この世界には、やっぱり『運命』...『運命のアリア・ギアス』っちゅう厄介なもんが存在しとる」
「そ、そんなの、私が壊してやる...」
「...無理や」
「無理じゃない!私一度、そうやって『運命』をーーー」
「だから!だからや!!!」
「っ!」
ムラサメ父さんが普段見せない様に、私はつい仰け反る。そして、落ち着いた様子で淡々と言った。
「お前には、『運命』を壊す力があるのかも知れん...例の事件、あれはきっと、お前の未来を識る力で事前に知って、その上でああいう行動をとったんやろう。多分それが『運命』やったから、それを崩そうとしたんやろうな...」
私は言ってもいないのに、全てを当てられた。ムラサメ父さんは、やっぱり賢い。でも、だからって、私が諦めてたまるか!
「『運命』を壊すことは出来たって事じゃないか...ならーーー」
「っ、だからっ、それがあかんのや...」
ムラサメ父さんは苦しそうにそう言った。何がダメなんだ?私が解決してやる。『命』に賭けて。
「お前は、あの事件でどれほどの痛手を、どれほどの屈辱を味わった?どれだけの尊厳を踏み躙られた?考えるだけではらわたが煮えくりかえりそうになることを、お前はされたんやぞ!」
「......それは...」
私は押し黙ってしまった。そうだ。私は最低の親不孝モノだ。でも、だからって、だからってムラサメ父さんやシウ母さんを助けない訳には...いかない...
「それでも、叫び続ける勇気を」
「っ、お前はぁ!」
「私だって!父さんに死んでほしくないんだ!!!」
私は駆け出した。そうして、家から私服のまま飛び出した。
なにも、訳もわからず、家から飛び出した。
月はそんな様子を、雲隠れしながらも覗いていた。
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...その場の様子を見ていた者が一人いた。
「シウ......ごめん、説得、出来んかった」
「いえいえ、大丈夫ですよ。ア・ナ・タ♡」
「...準備は出来とるか?」
「はい、勿論♡」
そうして、二人は会話をする。練炭を車に詰めながら。
「シュウメイに未成年者後見人を頼んどる...不意の事故やったらどうしようもなかったが、これなら対処可能や」
「さすがア・ナ・タです♡」
二人は車に乗り込んだ。
「...こんな情けない夫で悪かった。娘の説得すら出来ない男で...」
「いえいえ、私はア・ナ・タと一緒ならどこでもいいんです♡」
「そっか...ありがとな」
後部座席で、ムラサメとシウは抱き合った。幾度の会話経て、一酸化炭素が徐々に車内に浸透していく。少しづつ、頭の回転が遅くなっていくのを感じる。
「愛しとるで、シウ」
「私もよ。ア・ナ...タ...」
だんだんだんだん、ゆっくりと...思考が溶けて...溶けて...
シウは、もう意識がない様だった。それでも、ムラサメが意識を失っていないのは、田中家の血を引いているからだろうか。
ムラサメは回転の遅くなった頭で考える。
「あいつも...困ったもんやった...もしも俺らが生きとったら、『運命』を壊すためになにをするもんか、わかったもんじゃない...俺らのために、アイツが傷つく必要なんて...ない...ん...や...」
ムラサメは走馬灯だろうか、思い出す。