〜虚弱田中に転生〜『原作知識チートがチートじゃない世界で【恐ろしすぎる大魔王・蝉原勇吾】と相対する話』 作:楓舞星
小さな頃から、人とは違う事は理解しておった。俺の親だって人とは違う人種なんやろうなって頭で感じてもいた。
赤ん坊の頃から意識があって、一人でいる度に、孤独は嫌やなぁと感じたのを覚えておる。
そうして、3歳になったらテストを受け、兄、シュウメイがおるISプログラムに投入された。
そこで、賢くなる為の学習を行なった。しばらく経つと、兄シュウメイより、自分の方が賢いやなって気づいて、少し手を抜いてプログラムを受けていた。
それがバレた時に、『知性レベルなんてただの身長と変わらん』って言われたのを、よく覚えとる。その通りだと思った。心の中でも気にしている事を言い当てられたこともあって、スッキリした。
このプログラム参加者には、狂ったやつも多くいる。シュウメイだってそうや。あいつも、ウチの田中家の血を引いとるからか、孤高主義やった。かくいう俺もそうや。孤独は嫌やったけど、決して全員でおてて繋いで楽しいな、は出来ないと思っとる。
そんな中、ある女の子も狂っている方に分類されてたと思う。
その子はよう心を開かん子やったけど、もう俺が孤高である事を、皆が知れ渡っている時に、『飴ちゃん、いる?』って声をかけたことから全部が始まった。
おかしな事をいう子やったけど、心が通じ合ったみたいに、トントン拍子に仲良くなっていった。
そうして、大人になったら結婚しよう...というより、今から結婚しよう!という流れにもなった。まだ10歳にもなってなかったと思う。
それは流石にやめとけと否定し、俺は大人になったら結婚しようと約束した。
そうして、大人になった俺は、普通に結婚した。ほとんど全てが、上手くいっていた。
そうして、第一子が生まれた。名前は、俺たちから一つずつとって、名前は時雨にした。
でも、その時から妻であるシウは、シグレよりも俺のことを気にしていたと思う。それだけが不満であり、そういう所が好きになった部分でもあったから、俺も、厳しくは、言うにいえんかった。
そうしているうちに、第二子である村羽が生まれた。その時も、シグレの時と同様に、名前から1文字づつとって名付けた。
初めてシグレやムラハネを抱いた時、これが幸せなんやなって心から思った。満たされないモノが満たされた、そんな気持ちになった。
そうして、俺たち4人での生活が始まった。
シグレはよく泣く子だった。逆に、ムラハネは意味のない泣き声は出さなかった。
だから、俺は思った。コイツ、もう意識あるんとちゃう?と。だが、結局その場ではわからずに、3歳を迎えることとなった。
テストは散々な結果やった。イスの血を引いているのは間違いないのに、シグレもムラハネも、どちらとも知性レベルが3や1やった。
その時からやろうか、不気味な『運命』を感じていたのは。
初めて、『運命』を感じたのは株で破産した時やった。信用買いまでしていた勝率100%といって良いほどの好株を逃したんや。
意味がわからんかった。あの時、家族になんて言ったらいいかわからんかった。なにより、不甲斐なかった。結局、兄、シュウメイの力を借りてまた株をし、その時は全て成功させた。やから、別に何か大きな問題があったわけじゃない。
でも、問題が、一つあるとしたらそれは『運命』や。もしも、『運命』が俺たち家族を陥れようとしているのではないか...そんな、ようわからない可能性を頭は考え、そして離れんかった。
ある日、ムラハネが大怪我をして帰ってきた。明らかに、人為的にやられたものだった。
俺はイジメの、加害の首謀者を絶対に許すつもりはなかった。だが、ムラハネ本人から言われたのだ。
『ごめん、それは言えない』
俺はその時に、再び不甲斐なさを感じた。娘に力を信用されていない事実に、俺は大きく悔やんだ。
そうやって、毎日を少し、無気力に過ごしながら、田中家について調べている時だった。田中家について調べる為のセキュリティはなんとか突破した。家族の為に、もしものことがあったらと思うと、やらずにはおれんかった。そうして、田中家の様々な末路をしった。
...そんなある日、ムラハネから呼び出された。
『なんや、ムラハネ。大事な話って...』
『もしもさ、私に未来を識る力があるって言ったら、信じる?』
そうして、言われた。
端的に言うと、俺は、今年中に死ぬらしい。『運命』によって。たぶん、本当なのだろうと思った。そして、なんとなく、ムラハネの大怪我もある『運命』を否定しようとした結果なのだろうと思った。
その時から、つながった。自分が最後にすべきことと、それまでにすべきことを考えた。
ムラハネに力を...簡易的とはいえ、携帯ドラゴンを遺すことを。
ムラハネの、これからも止められぬだろう善性、献身...そして、この【世界の真実】に辿り着いた父がそれらを考えた結論だった。
だから...
「......【ウェスタ】...あとは、任せ...たで......」
『紅のオーラを纏っている』、田中・イス・村雨はゆっくりと瞳に影を残す。
あわよくば、自身が遺した『最後の仕掛け』が発動しない事を信じて。
そうして最後に、異界の最も強い『運命』頼ることになるとはなと、彼自身、皮肉だと笑った。