〜虚弱田中に転生〜『原作知識チートがチートじゃない世界で【恐ろしすぎる大魔王・蝉原勇吾】と相対する話』 作:楓舞星
近所の公園まで、結局来てしまった。
私は何をしているんだろうと、一人思う。ムラサメ父さんを説得できなかった。
私は、本当に、究極の親不孝モノだ。帰ったら、どう説明しよう。
そんな事を、言い訳ばかりをずっと考えていた。
しばらく経ったあと、私は結局、家に帰ることにした。
「ムラサメ父さん?シウ母さん?」
もう深夜だったからか、二人の返事はなかった。二人はどこへいってしまったんだろう。そう思いながら、床についた。多分、こんな私のことを放っておいて、先に寝てるんだと思っていたんだけど、そんな事はなかった。二人の部屋にも、人気はなかった。
シウ母さんの部屋を訪れ、ムラサメ父さんの部屋を訪れたときだった。
薄いカーテンから、透き通る月明かりが部屋を照らす。
そんな薄暗い部屋で、いつもは作業に使われている机に、ぽつんとスマホが置いてあった。
私は、ムラサメ父さんがくれたスマホを、ふと触った。その時だった。
目の前に、二頭身のドラゴンが発生した。
「っ!」
そして、そのドラゴンが私に鳴いた。
「キュイ!」
「...これからよろしくね。名前は......もう決まってるの?」
きっと、ムラサメ父さんが決めてくれていたのだろう。名前はウェスタというらしかった。
私はウェスタを抱きしめ、しばらくするとウェスタが意味ありげに、そこから離れ、暗闇を用いて目からプロジェクターのような映像を出力した。
...なにが始まるというんだ?
『あー、ごほん。見とるか?ムラハネ』
始まったのは、挨拶をするムラサメ父さんの映像だった。
『ムラハネ。お前はこれからも、きっと様々な事に首を突っ込み、そして傷つく選択をするやろう。やから、この携帯ドラゴンをのこさせてもらった』
「......」
『ほんでな、本題なんやが、もしも事故から俺たちを救うって選択を外さなかった場合、説得出来なかった時、俺たちは死ぬ事にした』
は?
『お前はきっと、俺たちを助ける為に、身を挺するはずや。やけどな、誰もそんなの、望んじゃいない』
何を言っているんだ?
『やからな、先に俺たちは死んどこうと思う。お前が言う運命では、俺たち事故で死ぬんやろ?なら、自殺で、運命から離脱しようと思う』
自殺って、そんなことしたら...っ!
『俺も大いなる田中家の一族や。事故なんかで死んでやらん。自分で、死んでやる。やから、あとは頼んだで。情けない親ですまんかった。お前に遺すことが出来るのは、精々このくらいや。シグレにも、よろしく言っといてやってくれ。シグレは...本当の理由を話さん限り、俺らが死んでも、特に問題はないと思うが』
問題がない......?
「ふ、ふざけるな......このっ......クソっ」
『...この携帯ドラゴンの作成にはシウも手伝ってくれた。決して、俺だけの力やない。その力には、俺たち両親の力が込められてる事を知っといてくれ。じゃあな、ムラハネ、シグレ.........愛しとるで』
そうして、映像は終わった。
「ど、どうしよう...」
私がそう思っているときだった。やけに近くに、救急車の音が聞こえた。
「え、ちょ、どう言う...」
私は外に出て、様子を伺ってみる。
そうすると、ウチの車から、運び出されている人間が二人いた。
「父さん!母さん!」
私は外に出て、運び出した人間に声をかけた。
「おっと、君は...田中・イス・ムラハネか...」
救急隊員かと思って声をかけた人間は、どうやら私の事を知っているようだった。機関の人間...と言う事だろうか。
「と、父さんと母さんはどうなったんですか?」
私は必死の思いで確認した。
「...田中・イス・ムラサメと田中シウは残念ながら、もうすでに死亡が確認されている。すまない。私たちが無能だったせいだ」
私は膝から崩れおちた。