〜虚弱田中に転生〜『原作知識チートがチートじゃない世界で【恐ろしすぎる大魔王・蝉原勇吾】と相対する話』 作:楓舞星
「さんきゅー。恐いって言ってもらえるのが一番ささる。おれはそのために生きているから。さて……それじゃあ、そろそろ財布、出してくれる?」
センは、
「……イヤだ。拒否する」
「念を押すねぇ。まあ、いいけどさ。疲れるけど……これも仕事だから、ね、っと!」
「うぐ!」
そう、センは断固たる意志をみせた。そうして、戦闘が始まった。いや、それは戦闘ではない。蹂躙であった。
蝉原は二度ほどセンに平手を入れると、センのみぞうちをぶん殴った。
「おえ!」
センは吐瀉物を披露し、ユズが、
「きっしょ……くっさ」
視線はスマホに固定したまま、鼻で笑った。
...蹂躙は長いこと続いたが、結局、センは蝉原に殴られ、蹴られ、一発も有効打を与えることが出来ずに、そして終わった。
倒れ込んだセンに、蝉原が、
「お金、とるけど、いい?」
「イヤだ……けど……もう、抵抗はできない」
「だよねー」
そう言いながら、蝉原は、センのスラックスから財布を抜き取って、
「センくんは、気室に負けたって事にして欲しいんだけど、いいかな?了承してくれるなら、とるのを三千円から二千円に減らすけど?」
「……財布だけ……おいていってくれるなら、いくらとってもいい」
「ん? この財布、なんかあるの?」
「親の形見……二年前に死んだ母親がくれたもん……」
「へーそうなんだ」
そう言うと、蝉原は、
「そりゃ」
センの財布を地面に落として踏みつけた。
「踏まれちゃったね、形見」
「……そうだな」
「怒る?」
「……ああ、怒ってる……かなり……自分でも驚くくらい」
「そっか。良かった。それでも立ち向かえない恐怖……それが、おれ、蝉原勇吾。よろしく、どうぞ」
「……」
「いい目するね。なんだか嬉しいなぁ……」
......ここは原作でも屈指の負けイベント。いずれ舞い散る閃光となる男が駆け上がる為の、重要な柱。私が出る幕ではない...
...蝉原は、センのその『目』に欲情したといい、ユズを揉みしだく。
「センくん。どう、興奮した?」
「……しない」
「えー、ウソだー」
言いながら、蝉原は、財布から足を外した。
「まあ、いいや。じゃあ、帰るね。何か言いたい事とかある?」
「次、誰か来ても……俺は同じ対応をする」
「大丈夫だよ、分かっているから。君は面倒くさい。オッケー。了承したよ。これからも、蝉原勇吾に、ちゃんと怯えて生きてくれるなら、それでオールオッケー。……オーライ?」
「……ああ」
「ユズも、最後に何か言ってあげてよ」
声をかけられると、ユズは、センに視線を向けた。
ゲロを吐いて倒れているセンを、頭から足まで見下ろして、
「だっさ……あんたみたいなのって、生きている価値、あんの?」
「……さあ」
「ウザいんだけど、その受け答え」
言いながら、ユズは、センの財布を踏みつけた。
グリグリと、カカトで地面に押しつけてから、その足で、
「ぐぅっ」
センの頭を踏んだ。
「抑えろ...せめて神センが登場するまで...この状況が終わるまで...」
私は耐え凌ぐ。