〜虚弱田中に転生〜『原作知識チートがチートじゃない世界で【恐ろしすぎる大魔王・蝉原勇吾】と相対する話』 作:楓舞星
夏休みが終わり、帰宅部が久しぶりに学校に来る中、私は現在、センの尾行をしている...原作シーンを見るためだ。
きっと、もうそろそろ、時期的にくるだろう。噂に流れてくるのである。同年代の子に、狂気じみた雰囲気を漂わせている女がいる...と。そう、そいつは『輝木』である。私はその噂を聞きつけ、野次馬の如くここに参上したということだ。
輝木とセンの邂逅と言ったら堪らんぜ...いや、龍牙峰とセンの邂逅...なのか?
私は構図に疑問を抱きながらも、そうして、毎日尾行に尾行を重ねていたときだった。
教室にいたセンが、おもむろに彫刻刀をポケットに入れた。
お、これはきたんじゃないかぁ!?
そう思ったときだった。背後からの、とてつもない気迫。
「っ!あぁ...ああ、ひ、ひっ...」
まるで、一度殺されてしまった様に、私は地面に転がる。
私の背中から、まるで幽鬼でも背後にいるのではないかと思わせるほどの、圧倒的殺気を感じた。
私は振り向きたくなかったが、勇気を振り絞って、頑張って首を横に振った。そうして、気づく。
そいつは、『輝木』は私の事を見向きもしなかった。それが正しい反応だとでも言わんばかりに、スタスタと、軽い足取りで歩いて行く。
...いやいや、ネームドキャラ、ネームドキャラ、頭おかしいんじゃないの?
明らかに現実離れした気迫だったんだけど...?
殺気なんて、キムロとの戦いでも感じた事がなかった。前世で死ぬときすら、不慮の事故だったために殺気というのはなかった。
なのに、今の私はもうすでに、人生3週目に到達しそうなほどに、殺気により、『あ、私って死んだのね』と納得させられる勢いだった。
...私だって今世では嫌われモノである自覚をしている。それにしたって、私なんかよりも輝木の方が比べ物にならないほどエグい...こりゃあ裏サイトで罵詈雑言書かれますわ。
「そ、それでも...せめて原作は見るんだ!」
私はセンエース神話を思い出しながら、輝木にもバレない様に尾行を再開した。
そして、いた。そこには、龍牙峰と属性としては『悪』に傾いているだろう二人のギャルだ。
つまり...フラグはもう立っている!
声が聞こえる位置までなんとか辿り着く。ギャルA...確か名前は...アコ!
アコが言う。
「輝木、あいつ、マジでキモくない? 死んで欲しいんだけど」
ギャルBがそれにノるように発言する。
「殺す? だいぶ頑張ったら、なんとかいけない?」
「杏奈さん、蝉原勇吾の女なんですよね? 頼めば、殺してくれるんじゃないですか?」
そして、アコが龍牙峰に頼み込む...勝った!原作の瞬間だ!
「2回ヤっただけだっつってんだろ。……蝉原は、誰かを愛したりしない。だから、誰も、あいつの女にはなれない。あと、蝉原は、『利用しようとしてくる女』が大嫌いだから、殺人なんか頼んだら、こっちが殺される」
おー、さすが、龍牙峰。蝉原のことをよくご存知で...と、言っても、私は蝉原のことはよくわかんないんだけどね。いや、知ってはいるけど、直接会ったことはないんだ。
そうして龍牙峰が応答していると、ギャルA、B達が更に輝木暗殺計画にノってくるが、龍牙峰は全く乗り気じゃないようだ。まあ、当然だろう。龍牙峰自体、『悪』に染まっている女じゃないからだ。ギャルも確か原作で記述があったけど、イキがっているだけ。調子に乗っているだけなのだ。
それにしても、最初話した頃から思っていたけど、龍牙峰って面倒見いいよな...正直、アコやギャルBやモブ女Aである私と、普通は会話しないよね...
私がそんな風に思っていた時だった。
「お前らすげぇな。キショすぎてゲロ吐きそう」
彼がきた。