〜虚弱田中に転生〜『原作知識チートがチートじゃない世界で【恐ろしすぎる大魔王・蝉原勇吾】と相対する話』 作:楓舞星
ワイの所にムラハネが来たのは、一年前のことやった。
田中家でも、恐らく類を見ない程の天才であるトウシに言われて参上してみれば、そこには怯えた目をした娘がおった。
娘..ムラハネは臆病な面をしながらも、
『けっ、稽古を、修業をつけてください!』
ワイは突然のことに顔には出さずとも内心では驚きつつ、なによりも、ムラハネの目のおかしさに気づいた。
恐怖と勇気が一緒くたになっている、そんな目だった。
「お前さん、人も殴ったこともないやろ。そんな調子でワイんとこ来んなや」
ワイは率直に、自分の思いをぶつけた。そうすると、彼女の混沌とした目が更に特徴を増した。恐怖も大きかったが、一転して勇気も同じぐらい感じた。
そこに、強くなる素養はあると感じ取った。
ワイは、話を聞いてみることにし、そして、携帯ドラゴンというものを知った。
それを装着している者は、人外の膂力を誇るとされている。ソレを聞いて年甲斐もなくワクワクしてもうた。
「ソレをつけ取ったら、言ったらお前さんは怪物になれるんやろ?ほな、ワイに一発でも入れれたら合格にしてやろう」
だが、いくら携帯ドラゴンというものであっても、あのひょろひょろの身体をどうにかできるものやないやろうと思った。
だが...
「はぁっ!」
「やるなぁ!」
ワイはその身体にも注目した。確かにひょろひょろやし、なにより病弱なのが一目でわかる体躯やったが、それでも、携帯ドラゴンで補助すればワイ相手でも十二分以上に驚異的と言えた。
「せいやっ!」
「おっ!」
心・技・体、それらが全て合わさったら、この子はどんなバケモンになるんやろうと思った。ただの、実験みたいもんや。
やから、弟子に引き取ることにした。まだまだワイも現役やったからな。
そうして、毎日毎日、向こうからしたら地獄やろう修行を開始させた。逃げ出したら逃げ出したでええと思っていた。
でも、ムラハネはついてきた。くらいついてきて離さんかった。
ある日、ワイはその目にある要らん恐怖を取り除こうとした。
「お前さん、なんかトラウマみたいなもんあるやろ」
「...わかるんですか?」
「目を見とったらだいたいわかるわ」
戦闘には恐怖も必要や。やけど、要らない恐怖はただの贅肉でしかない。
「...どうやったら解消できるかどうか...わからないんです」
「...明鏡止水の技術をお前に伝授してやろう」
そうやって、ワイはそのトラウマを和らげることに成功した。痛みにも、我慢強い子になったと思う。最初とはエライ違いやった。
そして、今...
「はっ!」
「中々やるようになったなぁ!」
携帯ドラゴンの力を借りずとも勝負の土俵には立てるぐらいの力になっとった。お世辞にも、才能があるとは言えへんかったけど、それでも努力の成果が伺えた。
ムラハネの殴りがワイの頬を掠める。
ほんまに...ようやるようになったわ。
「試合終了や」
「っ!はい!今日もありがとうございました!」
言ってもないのに、いつも礼は欠かさへんかった。
そんな姿に、孫がおったらこんな気持ちになんのかなのかなぁと思った。