〜虚弱田中に転生〜『原作知識チートがチートじゃない世界で【恐ろしすぎる大魔王・蝉原勇吾】と相対する話』   作:寺生まれのTさん

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今日の夜分です


51話:初めての人殺し

 

 高校2年生では、月光寺、龍牙峰、音文、輝木、反町そしてセンが同じクラスに入った。ネームドばっかである。

 

 かといって、私のやる事は特に変わらない。

 

 ぱぱっと世界を救って、体鍛えて修行して、勉強しての繰り返しだ。

 

 だが、今日は恐らく、私の人生の佳境となる日だ。

 

 そう、蝉原を『殺し』にいくのだ。

 

 先に言っておこう。私は人殺しは無理なタイプだ。どうしても、相手の痛みを想像してしまう。だが、これから数十億人もの人々を恐怖のどん底に叩きのめす蝉原には、ここでお灸を据えなくてはならない。

 

 センだって思うだろう。将来、億人を殺す大量殺人鬼を殺せる権利があります。あなたはどうしますか?そう言われたら大体の人が迷いながらも権利を行使するだろう。それと同じだ。盛大なトロッコ問題。1人の極悪人か、世界の全員か。当然の結論を私は下すだけだ。

 

 私は、これから半分は恐怖で、もう半分は義務感で蝉原を殺しにいく。

 

 ゴンズから教わった、精神を安定させる技術、明鏡止水を使いながら、私はトウシが特定した蝉原の家へ向かった。

 

 服装は、黒色の外套を着ている。顔には黒のマスクと眼帯をして。雰囲気だけはセラに寄せている。

 

 やることは、認識されなくなる魔法を自分にかけて、すこし、蝉原の首に刃を当てるだけだ。

 

 ...私は、今まで人を殺した事がない。初めての人殺しが蝉原とはどんな運命なのだろうか。

 

 認識阻害魔法をかけて、ドアから素通りする。

 

 警備の明らかにカタギでは無い人間...『悪』に怯えながらも、この一年で精神的にも肉体的にも強くなった自分と、『形見』を握り締めて耐える。そうしてたどり着いた、蝉原の自室。

 

 私は覚悟を決めてドアを開けた。これは、自分にしか出来ないことなのだ。これで、世界は救われるのだ。

 

 そう思っていた時だった。

 

 そんな自らへの慰めは不要だった。

 

 ーーー飛んできたナイフの様に尖っているオーラが私を突き刺すーーー

 

 私は『未来視』で見たそれをなんとか避け、回避する。

 

 私の隠密は決して音まで消せるほど優秀なものではない。だから、なるべく音は立てたくなかった。

 

 そんな心配が杞憂に終わるのは数秒後。

 

 自室にいた蝉原は明らかにこちらを認識していた。私は動揺しながらも、それを隠し会話する。

 

「君が俺を殺しにきた暗殺者かい?思ったより可愛らしい見た目だね」

 

「...何故知っている!?」

 

 そう。この案を考えたのはトウシだ。そして、トウシと私、二人だけの秘密であった。なぜ、なぜ事前に知られている?というか、最初に飛ばしてきたナイフのようなオーラはなんだ?

 

 私は戦慄した。まさか、もう使えると言うのか...?そんな焦った表情を、マスクや眼帯越しからも彼は察したようで、

 

「ああ、この力をことかい?これはねぇ、どうしようかなぁ。言おうか迷うなぁ...」

 

「っ!さっさと言え!」

 

「ま、とりあえず、ここじゃあ別の人が来るかも知れないし、『限定空間ランク15』」

 

 ランク15の魔法だと!?じょ、常識外れすぎる...私が使えるのは得意属性の火属性でランク6だ。

 

 私は真っ白な空間に閉じ込められた。

 

 蝉原は、笑っている。

 

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