〜虚弱田中に転生〜『原作知識チートがチートじゃない世界で【恐ろしすぎる大魔王・蝉原勇吾】と相対する話』 作:楓舞星
高校2年生では、月光寺、龍牙峰、音文、輝木、反町そしてセンが同じクラスに入った。ネームドばっかである。
かといって、私のやる事は特に変わらない。
ぱぱっと世界を救って、体鍛えて修行して、勉強しての繰り返しだ。
だが、今日は恐らく、私の人生の佳境となる日だ。
そう、蝉原を『殺し』にいくのだ。
先に言っておこう。私は人殺しは無理なタイプだ。どうしても、相手の痛みを想像してしまう。だが、これから数十億人もの人々を恐怖のどん底に叩きのめす蝉原には、ここでお灸を据えなくてはならない。
センだって思うだろう。将来、億人を殺す大量殺人鬼を殺せる権利があります。あなたはどうしますか?そう言われたら大体の人が迷いながらも権利を行使するだろう。それと同じだ。盛大なトロッコ問題。1人の極悪人か、世界の全員か。当然の結論を私は下すだけだ。
私は、これから半分は恐怖で、もう半分は義務感で蝉原を殺しにいく。
ゴンズから教わった、精神を安定させる技術、明鏡止水を使いながら、私はトウシが特定した蝉原の家へ向かった。
服装は、黒色の外套を着ている。顔には黒のマスクと眼帯をして。雰囲気だけはセラに寄せている。
やることは、認識されなくなる魔法を自分にかけて、すこし、蝉原の首に刃を当てるだけだ。
...私は、今まで人を殺した事がない。初めての人殺しが蝉原とはどんな運命なのだろうか。
認識阻害魔法をかけて、ドアから素通りする。
警備の明らかにカタギでは無い人間...『悪』に怯えながらも、この一年で精神的にも肉体的にも強くなった自分と、『形見』を握り締めて耐える。そうしてたどり着いた、蝉原の自室。
私は覚悟を決めてドアを開けた。これは、自分にしか出来ないことなのだ。これで、世界は救われるのだ。
そう思っていた時だった。
そんな自らへの慰めは不要だった。
ーーー飛んできたナイフの様に尖っているオーラが私を突き刺すーーー
私は『未来視』で見たそれをなんとか避け、回避する。
私の隠密は決して音まで消せるほど優秀なものではない。だから、なるべく音は立てたくなかった。
そんな心配が杞憂に終わるのは数秒後。
自室にいた蝉原は明らかにこちらを認識していた。私は動揺しながらも、それを隠し会話する。
「君が俺を殺しにきた暗殺者かい?思ったより可愛らしい見た目だね」
「...何故知っている!?」
そう。この案を考えたのはトウシだ。そして、トウシと私、二人だけの秘密であった。なぜ、なぜ事前に知られている?というか、最初に飛ばしてきたナイフのようなオーラはなんだ?
私は戦慄した。まさか、もう使えると言うのか...?そんな焦った表情を、マスクや眼帯越しからも彼は察したようで、
「ああ、この力をことかい?これはねぇ、どうしようかなぁ。言おうか迷うなぁ...」
「っ!さっさと言え!」
「ま、とりあえず、ここじゃあ別の人が来るかも知れないし、『限定空間ランク15』」
ランク15の魔法だと!?じょ、常識外れすぎる...私が使えるのは得意属性の火属性でランク6だ。
私は真っ白な空間に閉じ込められた。
蝉原は、笑っている。