〜虚弱田中に転生〜『原作知識チートがチートじゃない世界で【恐ろしすぎる大魔王・蝉原勇吾】と相対する話』   作:楓舞星

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53話:きっと楽しい、『理想郷』が待っているよ?

「ぐっ!」

 

「さあ、来ないと勝てないよ」

 

 蝉原は接近戦を選んできた。壁際に押し込まれた私はなんとか立ち上がり、蝉原の接近に備える。

 

 だが、蝉原は私の動体視力を振り切って、私の腹を殴る。まるで、光の如く速さだった。

 

 まさか...

 

「がはっ!ま、まさか、しゅ、瞬間移動?」

 

 知識としては知っていた。だが、ここまで実戦でやられた事はなかった。当然だ。ここまで戦ってきた相手は悪党や武闘家ゴンズなのであって、化け物ではない。

 

「おっ、またまた正解っ!」

 

 そう言いながら、私の首根っこを掴み上げ、空へと放り投げた。空に投げ飛ばされる私。

 

 私はその一瞬で、なんとか『ボク』と通信をとる。

 

 (どうする!『ボク』!!!)

 

 【どうするもなにも、アイツの数値は膨大すぎる!何をしても勝てない!】

 

 (勝てないんじゃない!勝つんだよ!)

 

 【ボクの『タイジするシガナイ運命』も『運命のアリア・ギアス』ではない今では無意味!『未来視』も力の差がありすぎて通用しない!ボクのスペシャル達は大器晩成型だし、『私』の他のスペシャルの全貌は不明!どうやってもボク達は死ぬ!】

 

 そう連絡をとっていると、下から腑抜けた声で聞こえた。

 

「か〜め〜は〜め〜波ぁ!」

 

 私は迫り来る強力な砲撃から自分を守る術を考える。そして、

 

「お、オメガバスティオン!」

 

 奇跡的に波長よ合ってくれと頼みながらも原作の記述通りに腕を回す。だが、当然...

 

「がああああぁぁぁ!!!!」

 

 波の奔流に飲み込まれた。とてつもない痛みが、皮膚を、肉を焼く。

 

「ふう、こう言うのやってみたかったんだよね。ほら、男のロマンって奴さ」

 

「ぐっ!」

 

 そうして、地面に落下し、這いつくばった私を蝉原は蹴り付ける。

 

 違う...明らかにレベルが違いすぎる...

 

 ……だが、諦めてたまるものかっ!

 

 私は体の中でなんとか慣れないオーラを練りあげ、そして、至近距離で格闘戦をしていく。だが、蝉原は不敵な笑みを浮かべままだ。

 

 それからも、私は『未来視』や、ゴンズから学んだ格闘術を使うが、敵わない。

 

 至近距離での格闘戦は私の方が少しは分があったが、遠距離戦、魔法合戦は余裕で私のボロ負けだ。

 

『未来視』をフル稼働して、なんとか抵抗していくが…………

 

「ぐあっ!ぐっ!」

 

「ほらほら、抵抗しないと、抵抗しないと!」

 

 蝉原に髪を掴まれ限定空間の床に顔面から何度もドゴン、ドゴンと怪力を持ってして押し当てられる。無駄に髪を切っていなかったのが悔やまれる……

 

「い、異次元砲!」

 

 私は振り向き様に、片手からなんとか習得していた異次元砲をかますことに成功した。これで、なんとか……

 

「うーん、やっぱり、君の魔法は込められている魔力に反して効果がかなり大きいね!だから……今のは痛かった……痛かったぞぉ!!」

 

「ぐっ!」

 

 蝉原は私を投げ飛ばし、そこから更に超スピードで猛追してから私のみぞうちに全力の蹴りをぶち込む。

 

「うげっ!」

 

「まだまだこれからだよ!」

 

 限定空間の天井付近で私は強制的に止まらされた。慣性が私の身体をぐちゃぐちゃにする。

 

 この挙動……まさかっ!

 

「呪縛レベル18」

 

「ぐうっっっ!!!」

 

 やばい!やばい!!!死ぬっ!!!!

 

「なににしようかなぁ、やっぱり、これにしちゃう?」

 

 蝉原から放たれたのは、複数の、小さな黒いボールの様なモノ。

 

 やばいぃぃぃ!!!死ぬぅぅぅ!!!!

 

「カンファレンスコール」

 

「うぎゃああああ!!!!」

 

 小さな黒いボールは、私の身体を捌いていく。なんとか思考はできる程度のダメージだが、動けはしない。私の四肢は最早、断裂寸前である。

 

「わ、私は軽い部位欠損ぐらいだったら治せる程度の魔法が行使可能!蝉原、お前の攻撃なんて痛くも痒くもないんだよ!」

 

 私は軽く暴露を積んでから、治癒をする。

 

「治癒ランク6!」

 

 一応、見かけ上は全部治った様に見えるが、MPが普通にダウンしている。というか、バラモウイルスが入れられて無い時点で舐めプ確定……

 

「ははっ、これでも、まあまあな威力にしたんだけど……君、かなり頑丈だねぇ」

 

 蝉原は拍手しながら、私の前に降り立った。

 

「でも、これならどうかな?」

 

 まだなんかあんのかよ!

 

「えーっと、フルパレード・ゼタキャノン?これでいいかい?」

 

 蝉原がそう言うと、現れたのは巨大な近未来的な銃。ヤバい、それは私を殺しうる……

 

「せ、蝉原さん?そ、それを一体どうするつもりすか?」

 

「ん?ああ、君に一発、どかーんとデカいのを浴びせようかなと」

 

 蝉原はニヤニヤしながらそう言って、

 

「ブラストオフ」

 

 銃から放たれた圧倒的なエネルギーが私の身体を消滅させようと意気込みながら突っ込んでくる。

 

 しぬぅぅぅぅ!!!!!!

 

 私は全力でどうにかする方法を考える。どうする、どうする!どうする!!!この状況をどうにかする何かを!!!!!

 

 その須臾すら感じる時の瞬きで、私が選んだ事、

 

「ド、ドリームオーラぁぁ!!!!」

 

 私は慣れないオーラ操作を、練習していたそれを、ここで初めて完遂させた。プラスして、なんとかドリームオーラ・オメガバスティオンに昇華させれないかと波長を合わせようとしたが……

 

 (む、無理だ!不可能!!このまま受け止める!!!)

 

 私は己のオーラを信じた。そうする他、なかった。

 

 __________

 

「はぁ...はぁ...」

 

「さて、やりたいことはだいたいやったかな?俺も相手がいなかったから、こう言うことができなかったんだよね。一般人を限定空間で閉じ込めても、小指で殺せてしまうからさ。君みたいな頑丈なおもちゃは素晴らしいよ!君って凄いオーラをしてるから、俺でもそう簡単には殺せない...それにしても、この短時間で俺にかなりのデバフが入っているね。あははは、この数値差でも入るなんて、面白い能力だ」

 

 オーラ、デバフ...?何らかのスペシャルだろうか。少し考えるが、それより、私はあまりのレベルの違いに戦々恐々とする。

 

 現闘力ではレベルが正義...わかっていたことだが、ここまで差がでるとは。

 

 私も、まだ習って一年とはいえ、仕事を解決しながらの地獄の修行と言う、理想のアウトプットとインプットを繰り返していた。

 

 その技術のお陰か、なんとかこのレベル差でもなんとかくらいつけている...いや、オーラやデバフが入ってるとかどうとか言っているが、きっと蝉原がレベルを落として楽しんでいるだけだ。

 

 どうする?

 

 どうするもクソもない。私は抗うだけだ。私は片目で、抵抗の目線を蝉原に向ける。

 

「...ふーん、それでもまだ、諦めないんだ。そっかぁ、そうなんだね。それじゃあさ今から殺すけど、いい?」

 

「...はぁ...はぁ...良いわけないだろ」

 

「そっかそっか。でも、俺の方がパワーは上な訳でさ、君程度が俺に敵うわけがないんだよね。それでさ、提案なんだけど、俺の部下にならないかい?」

 

「......何を言っている?」

 

「だから、言葉通りだよ。俺の部下になってさ、君にはこれから俺が支配する世界を間近で見て欲しいんだよね。きっと楽しい、『理想郷』が待っているよ?さっき、俺の存在値を当てれたら景品をあげると言ったじゃないか。それがコレさ...っと」

 

 ...私は残っている力を全て集めて、全力で蝉原の顔面を殴る。それは予想外にもクリーンヒットし、蝉原は仰け反り、半歩後ろに下がった。

 

「交渉決裂...かな?」

 

 それを受けて蝉原は...

 

「...そっかぁ、これは俺なりの、世界の半分を分けてあげるって意味だったけど、ダメかぁ。ははは」

 

 蝉原は笑みを崩さなかった。それが、何よりも恐ろしいと私は感じた。

 

 蝉原はケラケラと笑い出しながら、指をパチンと鳴らすと、限定空間が解除される。私たちは蝉原の自室へと戻った。

 

「っ、どう言うことだ?」

 

「ん?どうするとこうするもないよ。ほら、さっさと逃げちゃって。ここは俺が食い止めておくからさ。ほら、行きなよ、ムラハネちゃん」

 

 意味がわからない...違う、本当はわかっている。

 

 蝉原はこれから遊ぶつもりなんだ。私を利用して。誰も敵のいない世界など、蝉原からしたらゴミだろう。だから、私を逃した。そう言う事だ。

 

 私の名前も知られている。プロパティアイで見られたのだろう。

 

 完全に舐められている。それも当然か、相手にもならなかったのだから。

 

「く、クソっ!」

 

 私は部屋の窓から飛び出した。それから各家の屋根を転々と移動する。

 

 私は今回、負けた。ボロボロになって、負けた。

 

 イスの財産は全て使った。トウシの賢さも、両親からの『形見』も、セラから貰った力も、ゴンズから教わった格闘術も、そして己の力も...全て用いて、それで負けた。

 

「くそっ、くそっっ!!」

 

 私の『原作知識』を用いて揃えた最強の武器達は蝉原を前に呆気なくやられたのだった。

 




蝉原の残虐ファイトの加筆をしました
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