〜虚弱田中に転生〜『原作知識チートがチートじゃない世界で【恐ろしすぎる大魔王・蝉原勇吾】と相対する話』 作:楓舞星
私はセンに会いにきた。毎日顔を合わせてはいるのだが、話すことはない。そんな立ち位置。だから、向こうからしたら驚きだったと思う。
「ねえ、セン...」
「...なんだ?ムラハネ。俺はずっと忙しいんだ。ちょっかいとかは...っ」
「...助けて」
私は、センに会いに来た。今日は満月で、もう暗いオフィスの窓からは月光が差している。
「...お前がそう言うのは初めてのことだな。いつもはひた隠しにするくせによ。今日は一体、どう言う気分の変わり目だ?」
小学生から中学生、高校生で私は全てのタイミングでセンに助けてもらいかけて、それを全て私は断っている。だからか、センはそんなセリフを吐く。
「負けないでほしい」
「...何に?」
「蝉原に」
「はっ、俺が二度もやられるわけねえだろ。ナメんじゃねぇぞ、アイツごときに......伊達にてめえに何千発も殴られてねえんだよ」
「諦めないで欲しい...」
「はいはい」
「蝉原なんかにやられたら、私がボコボコにしてやるんだから」
センはその場から離れた。私は、オフィスから差している満月の光をじっと見つめた。そして、作戦を決行する。
_______
「それにしても、ムラハネが泣きついてくるとはねえ」
俺はそう言いながらも、今日も社内で寝る。もう1ヶ月は家に帰れていない。これも、蝉原のせいである。蝉原...中坊の時から周囲をその圧倒的カリスマで魅了していた。
「明日も5時起きか...今が10時だから...今から寝れば7時間寝れる。素晴らしい。こんなの久しぶりだ」
そう言いながら、センは仮眠室で今日も寝付く。世間の罵詈雑言を、何も気にしていない様に。
______
翌日、ムラハネの死体が発見された。死因は窒息死で、自殺らしい。
ムラハネの葬儀には、なんだかんだ行った。割と虚無感の様なモノがでた。
よくわからない奴だった。突然現れて、突然泣いたりしていた。
正直、タイプとかそういう話で言ったら、全然そういうのじゃなかったが、単純に、何度も会っていたからなのか、一緒にいた年数だけは長かったからか、葬儀では、何とも言えない気持ちになった。
そうして、オフィスのデスクからは、俺に向けた手紙があったと同僚から連絡が入った。
その手紙の封を切ると、それには...
『蝉原に負けないで、助けて、ヒーロー』
端的に読むと、そう書かれてあった。
そこから読み取れるのは、おそらく、蝉原が理由で自殺したんだろうなと感じ取った...恐らくこれから地獄となる、既に片鱗が現れているこの世界で生きるのがしんどくなったのだろう。
俺は、本当に、何とも言えない気持ちになった。