〜虚弱田中に転生〜『原作知識チートがチートじゃない世界で【恐ろしすぎる大魔王・蝉原勇吾】と相対する話』   作:楓舞星

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69話:『諦めた』

 

「というか、警察が向いていない。わかっていたさ、最初から。オマワリなんて、趣味じゃない。なんだったら、絶対にやりたくない職業だ。根源的に、公務員は性に合っていない。分かっていた。全部、ちゃんと。……だが、それでも、俺は、国の犬になることを選んだ」

 

「ははは、そこまで俺は君を怒らせたのか。さすが、俺。ちなみに、実は、あの時のことを、俺は今でも奇妙なくらい覚えているんだよ。俺がふみつけた君の大事なものって、確か、母親のカタミだよね? ハンカチだったかサイフだったか忘れたけど」

 

「……サイフだ」

 

「そうだっけ? まあ、そんな細かいところは、流石に覚えていない訳だけど。まあ、そんなことは、どうでもいい。大事なのは、この世で唯一操れない相手が、かつて唯一俺に逆らった幼馴染ってことさ。なんだか、ドラマティックで素敵じゃないか」

 

「蝉原」

 

「ん?なにかな?」

 

「最後の質問をしていいか?」

 

「いいよ、どうぞ」

 

 センは呼吸を小さくしてから、言った。

 

「あいつらが、お前に操られていたのかどうかだけ教えてくれ」

 

「あいつら?ああ、俺対策チームのメンバー? 操っていないよ。これだけはマジ。だって、そんな事したら、いろいろと台なしじゃん」

 

「そうか……」

 

 センの中で駆け巡るのは様々な同僚の姿だった。時には、一緒に出かけたりもした。同じ釜の飯を食った。この地獄のような世界で、唯一、味方だと思えた。

 

「そうかで終わらないでよ。感想をちょうだいよ。どう?どんな気持ち? 普通に裏切られた気分はどう?」

 

 途絶えた。迸っていた感情が。勇気も底意地も。

 

「...もし、あいつらが操られていただけなら、もう少しあがいてみようと思ったが……」

 

「ん?思ったけど、なに?」

 

「もう、やめだ」

 

「……え?」

 

「お前の能力はチートすぎる。何をしても無駄だ」

 

「……おやおや」

 

「お前が相手じゃ、俺一人ではどうにも出来ない。せめて、何人か味方がいれば、闘おうと言う気にもなったかもしれない……もし、あいつらが操られているだけなら、どうにか解除方法を探そうとしたかもしれない、が……」

 

「……けれど?なに?最後まで、ちゃんと言葉にしてほしいね」

 

 蝉原は期待する。センは初めて見せる表情をする。

 

 その言葉、ずっと欲しかったその言葉が、ようやく得られるのだ。

 

「『諦めた』。もう無理だ。この世界は終わった。お前は完全なサイコパスだから、説得も無意味。抵抗も無意味。この世界は、お前に穢されて、狂って、終わる」

 

「ふふふっ、あーはははははははっっ!!!!!!」

 

「心の強さは腹筋みたいなもんだってお前の意見には同意する。人の核は弱い。だからこそ、それでも強くあろうとする想いは尊い。だが、ゆえにこそ、長くは維持できない。バグの力に抗えるほど、人は強くない……」

 

「......」

 

「……洗脳していいぞ、今ならたぶんできーーー」

 

 できるーーーセンが、そう言おうとした瞬間だった。

 

 

 

「ヒーロー見参っ!!!」

 

 

 

 テーブルに舞い降りたモノがいた。

 

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