〜虚弱田中に転生〜『原作知識チートがチートじゃない世界で【恐ろしすぎる大魔王・蝉原勇吾】と相対する話』 作:楓舞星
「というか、警察が向いていない。わかっていたさ、最初から。オマワリなんて、趣味じゃない。なんだったら、絶対にやりたくない職業だ。根源的に、公務員は性に合っていない。分かっていた。全部、ちゃんと。……だが、それでも、俺は、国の犬になることを選んだ」
「ははは、そこまで俺は君を怒らせたのか。さすが、俺。ちなみに、実は、あの時のことを、俺は今でも奇妙なくらい覚えているんだよ。俺がふみつけた君の大事なものって、確か、母親のカタミだよね? ハンカチだったかサイフだったか忘れたけど」
「……サイフだ」
「そうだっけ? まあ、そんな細かいところは、流石に覚えていない訳だけど。まあ、そんなことは、どうでもいい。大事なのは、この世で唯一操れない相手が、かつて唯一俺に逆らった幼馴染ってことさ。なんだか、ドラマティックで素敵じゃないか」
「蝉原」
「ん?なにかな?」
「最後の質問をしていいか?」
「いいよ、どうぞ」
センは呼吸を小さくしてから、言った。
「あいつらが、お前に操られていたのかどうかだけ教えてくれ」
「あいつら?ああ、俺対策チームのメンバー? 操っていないよ。これだけはマジ。だって、そんな事したら、いろいろと台なしじゃん」
「そうか……」
センの中で駆け巡るのは様々な同僚の姿だった。時には、一緒に出かけたりもした。同じ釜の飯を食った。この地獄のような世界で、唯一、味方だと思えた。
「そうかで終わらないでよ。感想をちょうだいよ。どう?どんな気持ち? 普通に裏切られた気分はどう?」
途絶えた。迸っていた感情が。勇気も底意地も。
「...もし、あいつらが操られていただけなら、もう少しあがいてみようと思ったが……」
「ん?思ったけど、なに?」
「もう、やめだ」
「……え?」
「お前の能力はチートすぎる。何をしても無駄だ」
「……おやおや」
「お前が相手じゃ、俺一人ではどうにも出来ない。せめて、何人か味方がいれば、闘おうと言う気にもなったかもしれない……もし、あいつらが操られているだけなら、どうにか解除方法を探そうとしたかもしれない、が……」
「……けれど?なに?最後まで、ちゃんと言葉にしてほしいね」
蝉原は期待する。センは初めて見せる表情をする。
その言葉、ずっと欲しかったその言葉が、ようやく得られるのだ。
「『諦めた』。もう無理だ。この世界は終わった。お前は完全なサイコパスだから、説得も無意味。抵抗も無意味。この世界は、お前に穢されて、狂って、終わる」
「ふふふっ、あーはははははははっっ!!!!!!」
「心の強さは腹筋みたいなもんだってお前の意見には同意する。人の核は弱い。だからこそ、それでも強くあろうとする想いは尊い。だが、ゆえにこそ、長くは維持できない。バグの力に抗えるほど、人は強くない……」
「......」
「……洗脳していいぞ、今ならたぶんできーーー」
できるーーーセンが、そう言おうとした瞬間だった。
「ヒーロー見参っ!!!」
テーブルに舞い降りたモノがいた。