〜虚弱田中に転生〜『原作知識チートがチートじゃない世界で【恐ろしすぎる大魔王・蝉原勇吾】と相対する話』   作:楓舞星

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70話:諦める言い訳

 

テーブルに舞い降りたモノ、それはセンもよく見たことのある人物だった。

 

「っ、ムラハネ!?し、死んだバスじゃ...し、しかも若い?」

 

 センは驚く。蝉原は嗤う。

 

「蝉原、ちょっとコイツ引っ叩くけど、いい?」

 

「えー、俺のセンくんなのに...まあいいよ」

 

 蝉原はやれやれと仕草をしながら、ムラハネの行為を許す。

 

 ムラハネはセンの胸ぐらを掴み、顔を近づける。

 

「センさぁ...私言ったよねぇ...負けないでって」

 

「......なんでお前が生きてる?」

 

「死んでる奴が生きてるなんてオセアニアじゃあ常識なんだよ!」

 

「...答えになってねえな」

 

「その心!笑ってるね!私が治してやるよその腐った根性!」

 

「ぐっ!」

 

 そうして、ムラハネはセンにアッパーをお見舞いした。

 

「......なんなんだよ、もう、なんなんだよ...」

 

 吹っ飛ばされたセン、それでも、センは縮こまっただけだった。その様子に、ムラハネは更に怒声を浴びせる。

 

「この38歳がよぉ!約束も守れねえのかよ!このハゲっ!」

 

「っ!ハゲじゃねえ!」

 

 蝉原対策チームのリーダーとして仲間の死や義侠を前にしていたセンにとって、ハゲというのは気にしたいが気にする事のできない、看過できない事だった。

 

「やーい!このハーゲ!」

 

「ハゲじゃない!撤回を要求する!」

 

 こうして、実年齢38歳二人組と、38歳のジジイが混ざった混沌が完成した。

 

 そんな調子になったが......

 

「......もう俺じゃあダメなんだよ...ほっといてくれよ」

 

 センはもう折れてしまっているようだ。

 

「は?それで勝手に洗脳されるつもり?」

 

「蝉原の洗脳は誰でも、無制限にかけれて、それは俺も例外じゃーーー」

 

 センは諦める言い訳を探し続ける。

 

「誰でもじゃないだろ?」

 

「っ...知ってるのか」

 

「...セン、諦めてるお前なんて似合ってないよ」

 

「はっ!お前に俺の何がわかる!」

 

「そんな調子で、諦観して老成したと思って、悟ってる気になってるくだんないジジイ」

 

「......言うねえ、言っちゃいけない一線超えたねぇ」

 

「だって、もしも今のセンが異世界に行ったら、年甲斐もなくウキウキするだろうからね。根本はなんにも、高校生の頃から変わってない、いや、子供の頃から変わっていない」

 

「...誰が年中、中学生じゃ」

 

 センは不貞腐れるだけだった。

 

 だけど、ムラハネは追求する。そして、語りかける。

 

「初めて会った時のこと、覚えてる?」

 

「...まあな。あれは年長の時だったか。俺がぶっ叩かれてるやつのこと庇って...」

 

「そう、そうして、私が時間稼ぎをした」

 

「そん時にも、ああ、そうか、お前は言っていたな。『ヒーロー見参』って。既視感の謎が解けたぜ」

 

「そして、私はセンを助けた。そして、次に会ったのは公園だった」

 

「...この話いつまですんの?お前がボロボロに泣いてる所しか俺は覚えてないんだが」

 

「そう、そして君は私を助けてくれた」

 

「...何もやってねえけど」

 

「会うだけでも助けてくれたんだよ」

 

「...意味わからねえ」

 

「そして、中学生、ハンカチ渡したの覚えてる?」

 

「...ああ」

 

「それの恩、今返せ」

 

「は?」

 

「恩を返せっていってんの。それともできないの?」

 

「...できないね。あれはそもそもお前が勝手にーーー」

 

「うっせえ!とにかく、私を助けろって言ってんの!それとも、言われないとわからない!?」

 

「......」

 

 ムラハネは大きく息を吸って言う。

 

「助けて!ヒーロー!!!」

 

「ヒーローは、お前なんだろうが...俺がノートに纏めたセリフを勝手に使いやがって...」

 

「それでも、叫び続ける勇気を!」

 

「……とにかく、俺はもう『諦めた』」

 

 そう、センが言った時だった。

 

「......あっ、そ」

 

 それまで、ムラハネが向けていた視線を蝉原へと向けた。それに対してセンは、情けなく声をつい漏らしてしまう。

 

「......え」

 

 ムラハネはセンに期待するのをやめた。所詮はD型であると悟ったのだ。

 

 だから...

 

「蝉原、タイマンはろうや」

 

「いいけど、センくんはどうするの?」

 

「限定空間ランク13」

 

 ムラハネは魔法を使う。

 

 そうして、蝉原、セン、ムラハネは白い空間へと飛ばされる。

 

「ちょっ、なんだこれ!まさか、魔法っ!?」   

 

 センは魔法に驚いているようだが、それを無視し、ムラハネは恐ろしすぎる大魔王、蝉原勇吾と相対する。

 

「存在値800か。いい数値なんじゃない?どうやってそこまで強くなったの?」

 

「全世界各地の龍脈から力を無理のない範囲で吸い取った。蝉原の妨害もしながらだったから時間がかかったけど、それでも私の力になってくれた」

 

「へー」

 

 蝉原は聞いたわりに興味の無さそうな声でそういうと、殺し合いが始まった。

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