〜虚弱田中に転生〜『原作知識チートがチートじゃない世界で【恐ろしすぎる大魔王・蝉原勇吾】と相対する話』 作:楓舞星
テーブルに舞い降りたモノ、それはセンもよく見たことのある人物だった。
「っ、ムラハネ!?し、死んだバスじゃ...し、しかも若い?」
センは驚く。蝉原は嗤う。
「蝉原、ちょっとコイツ引っ叩くけど、いい?」
「えー、俺のセンくんなのに...まあいいよ」
蝉原はやれやれと仕草をしながら、ムラハネの行為を許す。
ムラハネはセンの胸ぐらを掴み、顔を近づける。
「センさぁ...私言ったよねぇ...負けないでって」
「......なんでお前が生きてる?」
「死んでる奴が生きてるなんてオセアニアじゃあ常識なんだよ!」
「...答えになってねえな」
「その心!笑ってるね!私が治してやるよその腐った根性!」
「ぐっ!」
そうして、ムラハネはセンにアッパーをお見舞いした。
「......なんなんだよ、もう、なんなんだよ...」
吹っ飛ばされたセン、それでも、センは縮こまっただけだった。その様子に、ムラハネは更に怒声を浴びせる。
「この38歳がよぉ!約束も守れねえのかよ!このハゲっ!」
「っ!ハゲじゃねえ!」
蝉原対策チームのリーダーとして仲間の死や義侠を前にしていたセンにとって、ハゲというのは気にしたいが気にする事のできない、看過できない事だった。
「やーい!このハーゲ!」
「ハゲじゃない!撤回を要求する!」
こうして、実年齢38歳二人組と、38歳のジジイが混ざった混沌が完成した。
そんな調子になったが......
「......もう俺じゃあダメなんだよ...ほっといてくれよ」
センはもう折れてしまっているようだ。
「は?それで勝手に洗脳されるつもり?」
「蝉原の洗脳は誰でも、無制限にかけれて、それは俺も例外じゃーーー」
センは諦める言い訳を探し続ける。
「誰でもじゃないだろ?」
「っ...知ってるのか」
「...セン、諦めてるお前なんて似合ってないよ」
「はっ!お前に俺の何がわかる!」
「そんな調子で、諦観して老成したと思って、悟ってる気になってるくだんないジジイ」
「......言うねえ、言っちゃいけない一線超えたねぇ」
「だって、もしも今のセンが異世界に行ったら、年甲斐もなくウキウキするだろうからね。根本はなんにも、高校生の頃から変わってない、いや、子供の頃から変わっていない」
「...誰が年中、中学生じゃ」
センは不貞腐れるだけだった。
だけど、ムラハネは追求する。そして、語りかける。
「初めて会った時のこと、覚えてる?」
「...まあな。あれは年長の時だったか。俺がぶっ叩かれてるやつのこと庇って...」
「そう、そうして、私が時間稼ぎをした」
「そん時にも、ああ、そうか、お前は言っていたな。『ヒーロー見参』って。既視感の謎が解けたぜ」
「そして、私はセンを助けた。そして、次に会ったのは公園だった」
「...この話いつまですんの?お前がボロボロに泣いてる所しか俺は覚えてないんだが」
「そう、そして君は私を助けてくれた」
「...何もやってねえけど」
「会うだけでも助けてくれたんだよ」
「...意味わからねえ」
「そして、中学生、ハンカチ渡したの覚えてる?」
「...ああ」
「それの恩、今返せ」
「は?」
「恩を返せっていってんの。それともできないの?」
「...できないね。あれはそもそもお前が勝手にーーー」
「うっせえ!とにかく、私を助けろって言ってんの!それとも、言われないとわからない!?」
「......」
ムラハネは大きく息を吸って言う。
「助けて!ヒーロー!!!」
「ヒーローは、お前なんだろうが...俺がノートに纏めたセリフを勝手に使いやがって...」
「それでも、叫び続ける勇気を!」
「……とにかく、俺はもう『諦めた』」
そう、センが言った時だった。
「......あっ、そ」
それまで、ムラハネが向けていた視線を蝉原へと向けた。それに対してセンは、情けなく声をつい漏らしてしまう。
「......え」
ムラハネはセンに期待するのをやめた。所詮はD型であると悟ったのだ。
だから...
「蝉原、タイマンはろうや」
「いいけど、センくんはどうするの?」
「限定空間ランク13」
ムラハネは魔法を使う。
そうして、蝉原、セン、ムラハネは白い空間へと飛ばされる。
「ちょっ、なんだこれ!まさか、魔法っ!?」
センは魔法に驚いているようだが、それを無視し、ムラハネは恐ろしすぎる大魔王、蝉原勇吾と相対する。
「存在値800か。いい数値なんじゃない?どうやってそこまで強くなったの?」
「全世界各地の龍脈から力を無理のない範囲で吸い取った。蝉原の妨害もしながらだったから時間がかかったけど、それでも私の力になってくれた」
「へー」
蝉原は聞いたわりに興味の無さそうな声でそういうと、殺し合いが始まった。