エム×ゼロの使い魔   作:第7サーバー

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          天に異変あれば、地にもまた異変あり

            心に異変あれば、世にもまた異変あり

        時の流れが動くとき、世が落ちるとき

           眠りし勇者の血、この地にて目覚め

         逆巻く汚れを解きはらい、新しき御代を築かん

               《アークザラッド・トウヴィルに伝わる伝承より》

作者の中の勇者とか伝説のイメージはこれ。
アーク、バハラグ、聖剣伝説、なんかが作者の好きなちょいレトロゲーなので。
あとはクロノクロスのOPとかもスゴイ好きです。
ほんとならこれを始祖の伝説に流用したいくらいなんですが、自重。


BM12:心を探す旅

神聖アルビオン帝国を撃退することに成功したトリステイン王国。

その結果としてついて来たのが、王女アンリエッタの女王への即位の道であった。

これまでトリステイン王国の王座は、アンリエッタの父である前国王が崩御してから空位だった。

家臣や国民からは女王陛下と呼ばれてはいるが、アンリエッタの母の“マリアンヌ”が、自ら玉座に座ることを頑なに拒否していたからである。

そのためその間の政治問題はロマリア皇国から出向している枢機卿にして、事実上のトリステイン宰相である“マザリーニ”を筆頭とした家臣任せであったのだが、今回の勝利で彼らはアンリエッタに王としての適性を見た。

いや、正確には――この情勢で玉座が空位のままというのは体裁が悪すぎるので、今回の功績を理由にアンリエッタを無理矢理その座に座らせたという方が正しいだろう。

 

それにより、アンリエッタの婚姻も取り止めとなった。

 

目まぐるしく変化する自身の状況の中で、アンリエッタにとってはそれが唯一の救いだろうか。

トリステインの危機に援軍を出すことを躊躇ったゲルマニアの判断に、トリステインはそれに頼る戦略を捨て、玉座の空位を埋める方を選んだのだ。

とはいえ、完全に同盟が解消されたわけではなく、敵の敵は味方理論でいままでとそう変わらない付き合いを続けていくことになった。

両国ともに思うところはあっても、この状況でわかりやすく争えばアルビオンを筆頭に周辺国家を喜ばせるだけだからだ。

 

何よりいまのトリステインにはアルビオンを撃退した“奇跡の光”の存在がある。

 

その正体が明らかにされることはなく、人々の間では様々な憶測が飛び交っていたが、その中心に存在するのは自ら軍を指揮していたアンリエッタの存在であった。

王女が赴いていた戦場で起きたその現象に、王女が関わっているのではと考えるのは何もおかしなことではない。

王女自身がその光を起こしたと言う者もいれば、王女が極秘に魔法を研究する“アカデミー”に新兵器を開発させていたなんてことを言う者もあった。

とにかく、それまでは容姿を除けば――いや、容姿が良いからこそお飾りの存在と見られがちだったアンリエッタの評価が、アルビオンの撃退戦において“奇跡の光”よろしく爆発的に上がり、いまや“聖女”などと崇められる始末だ。

 

そんな民衆の声という後押しもあっての女王への即位。

 

しかし、アンリエッタ当人からしてみれば、青天の霹靂もいいところである。

なのでその事情を知っていそうな者たちを城へと呼び出した。

それが誰かなんてのは言わなくてもわかるだろうが、アンリエッタの大切なおともだちであるルイズ・フランソワーズと、その使い魔(フリ)である久澄大賀の二人だ。

 

 

「ルイズ、それに使い魔さんも本日はよく来てくれました」

 

アンリエッタは最初、それまで相手にしていた――戴冠式を終えてから無駄にやってくる客たちにやっていたように女王としての態度を取ってみせたが、すぐにもう限界と相好を崩しルイズに抱きついた。

 

「ルイズ、ああ、ルイズ」

「ひ、姫さま……いえ、もう陛下とお呼びせねばなりませんね」

「やめてちょうだい。あなたは退屈と窮屈と気苦労だらけのこの生活におけるわたくしの癒しなのよ」

 

ルイズは静かに頷いた。

アンリエッタがその地位に苦労しているであろうことは顔を見ればすぐにわかった。

 

「あの、姫さま……婚姻が取り止めになったこと聞きました。これは、その、喜んでいいことですよね?」

「……そうねルイズ。さすがに公の場で口にすることはできないけれど、国にとってはともかく、わたくしにとっては喜ばしいことと言えるわね」

 

もっとも……とアンリエッタは言葉を続ける。

 

「よかったことなんてほんとにそれだけ。責任ばかりが重くなっていく。わたくしの一言で国の行く末が決まってしまう。その重みに潰されてしまいそうなのよ」

 

ルイズは微かに伝わるアンリエッタの身体の震えを抑えるように優しく抱きしめ返した。

 

「わたしに何か力になれることがあればいいのに……」

「ありがとうルイズ。なら――そうね、単刀直入に聞くわ。“奇跡の光”、あれをやったのはあなた?」

 

身体をそっと離し、肩に手を置いて、じっとルイズの目を見つめるアンリエッタ。

ルイズは一瞬言葉に詰まったが、アンリエッタに隠し事をしたくはないと思ったのかこくりと素直に頷いた。

 

「そう……。やっぱりあなただったのね」

 

アンリエッタの眼差しはルイズの肯定に愁いを帯びる。

 

「……もしかしたらあなたの方が女王になるべきなのかも知れないわね。ルイズ」

「なっ、何を言っているのですか!!?」

 

突然の言葉にルイズは動揺した。

そんな不敬、これまで一度だって考えたことはないことだった。

 

「王家の間ではこう言い伝えられてきたのよ。始祖の力を受け継ぐ者は始祖の血を引く者の中、つまり王家の中から現れると」

「わたしは王族では……」

「何を言ってるのルイズ。ラ・ヴァリエール公爵家の祖は、王の庶子。なればこそ公爵家なのではありませんか」

 

ルイズはハッとした顔になった。

アンリエッタとルイズのそんな会話に大賀もまた考える。

 

「(伝説の魔法……ルイズがマジでその使い手なら……もしかして前に考えたみてーに元の世界に還れるのか? でも、俺はこの世界で成し遂げることとやらをやらないとならねー。そうしないと何かヤバイらしいし、試してもらうことはできねーか……)」

 

ちらりと見たその横顔にルイズの真意は映らない。

ただ、アンリエッタの言葉に驚いているばっかりで、たぶんその可能性には気づいてないんだろうなと思った。

突然明らかになった自分の巨大すぎる才能をルイズは持て余しているのだろう。

けどもしその可能性に気づいたらルイズはどうするだろう。

前校長に聞かされた大賀の事情は大賀とルーシーしか知らない。

つまりある意味では大賀の勝手だ。

ルイズの立場で言えば大賀を元の世界に還せば、送還に成功すれば、新しい使い魔を召喚できるようになるはずなのだから。

 

「(俺はルイズの邪魔をしてるのか? ……まさかこんな風に考える日が来るなんてよ。いままでは散々迷惑かけられてばっかだったっつーのに。ルイズは俺とは違ってほんとの魔法使いに――メイジになったんだよな)」

 

実際にルイズは伝説の“虚無”の魔法だけではなく、四系統には分類されない、この世界の魔法の初歩、簡単な“コモン・マジック”などは成功させることができるようになっていた。

プレートがなければ魔法を使えない大賀からすれば充分に魔法使いだ。

 

「でもわたしに女王なんて無理です……」

「それはそうよ。ここでなると言われても困ってしまうわ。内戦が起こるし、こんな面倒なばかりのこと、大切なおともだちであるあなたに背負わせるわけにはいかないもの。ルイズ、わたくしはね。あなたには自由であって欲しいのよ」

「姫さま……」

 

アンリエッタは言葉を続ける。

 

「ルイズ。本来ならあなたには勲章や恩賞を与えるべきなのでしょう。けれどそれはできないわ。あなたが目覚めた力は秘匿されなければならないのよ。わかるわね? このことはわたくしたちだけの秘密とします」

「……畏れながら、わたしは姫さまに、わたしの“虚無”を捧げたいと思います」

 

ルイズは決心したようにそう言った。

しかし、アンリエッタは首を振る。

 

「過ぎたる力は人を狂わせると言います。国のトップに立ち、“虚無”の協力を得たわたくしがそうならないとどうして言えるのかしら」

「そんなこと……姫さまは姫さまです。それに……狂ったのが姫さまなら、わたしとタイガがそれを止めてみせます」

「いっ、俺もかよ?」

 

アンリエッタとの会話ではよく思うことだが、何か演劇の中の話のような、自分とはまるで縁がなさそうな会話に、急に巻き込まれて大賀は頭を掻いた。

 

「……何よ、まさかイヤなの?」

「そんなこたねーけどよ……」

 

加えてそれまでに考えていたこともあって、ルイズが伝説の力に目覚めたのなら、もう別に自分の力を必要とすることもそうないのではと思っていたので尚更だ。

 

「ルイズ。その気持ちはとても嬉しく思うわ。けれど先ほど言ったようにあなたの力は秘匿されなければならない。あなたが力を使えば使うほど、世界はあなたに注目する。そうすれば、よからぬ企みを持つ者たちを呼び寄せることにもなります」

「よからぬ企みって何スか?」

「……たとえば暗殺者」

 

「「なっ」」

 

「で済めばまだマシかもしれないわね。魔法の力、あるいは魔法薬の力なんかであなたの心を壊そうとする者が現れることだって考えられるわ。自分の好きなように伝説を使うためにね」

 

そのアンリエッタの言葉に大賀とルイズ(+ルーシー)はゾッとするものを感じた。

そして思い出すのはアルビオンでワルドが変貌した時の言葉だ。

 

『こうなっては仕方ない……。ルイズ、君の心は魔法薬の力でも使って手に入れるとしよう』

 

確かにアンリエッタが言うようなことを考える者は、少なくともすでに一人この世界に存在している。

アンリエッタの妄想からなるものではないということだ。

 

「そんなんダメだ。ふざけてる!」

 

大賀は憤り声を荒げた。

アンリエッタも同意するように頷く。

 

「ええ。そのとおりですね。だから気持ちだけでいいのです。……その、だから使い魔さんにも目立った恩賞はあげられないのですが」

「いいっスよ、俺は。今回はあんま何もしてないし、前回だって困ってるっつーから助けただけで、別にお礼を貰うようなことじゃないっスから」

 

アンリエッタは無欲な大賀に好感を持った。

その返答で逆に何かお礼をしなければと思ったようで、鏡台やらチェストやらの引き出しから、宝石やら金貨やらを取り出して手渡した。

 

「えっ、ちょっ……」

「せめてこれだけでもお持ちください」

「いや、いらねえって! こんな宝石とか……大金受け取れないっての!」

 

大賀は受け取った物を全て傍の机に置いて、アセアセと手を振る。

正確な額は判断できなかったが、元の世界で普通の家に生まれた庶民派の大賀からすれば、たぶんとんでもない大金であろう。

 

「ほんと大丈夫っスから! とりあえずルイズのことは内緒にするってことでいいんスよね! じゃあ、あとは幼馴染の二人で積もる話でも何でもしてくれよ! 俺は外で待ってるからさ!」

 

もう一度アンリエッタに手渡されたら断り切れず貰ってしまいそうで、それは大賀的に男としてダサイ行動だったので、それだけ言ってアンリエッタの部屋から逃げるように退出した。

ルーシーもそんな大賀の後を追いかける。

 

そしてドタバタと大賀がいなくなり、幼馴染の二人が残った部屋で、アンリエッタはたったいま感じた素直な気持ちを告げた。

 

「ねえ、ルイズ。わたくしルイズが羨ましいわ。失敗でも何でも構わない。わたくしも自分のためにあんな風に感情を露わにしてくれる使い魔が欲しかった」

「そ、そうですか? わたしは姫さまの“ユニコーン”の方が全然羨ましいですけど……」

「嘘ばっかり。口元がちょっとにやけてるわよ。あなた、自分が褒められるより、使い魔さんが褒められた方が嬉しくなってきてるんじゃない?」

「だ、だから違います!」

「ふふっ、あーあ、この世界に汚れなんてなければ、わたくしも何も気にせずウェールズさまと一緒にいられるのにね」

 

世界はカラフルに色づいている。

それは人の感情の色。

世界に存在する色の数だけ、人はその上に感情をのせることができる。

モノクロな世界を望んでいるわけではないけれど、アンリエッタは選ぶなら白がよかった。

汚れを一切解きはらった白い世界、白い国、それはいまも変わらず恋い焦がれる相手がかつて治めていた国の色。

 

 

――ところ変わって、魔法学院。

夜。

お城から戻ってきてブラついていた大賀が気づいた突然の乱痴気騒ぎ。

 

「好きだ~~~っ!!! モンモランシー!!! もうぼくはきみのことしか見えない!!!」

「ちょっ、ま、待ってギーシュやめて!!! やだ、もう……まさか、こんなに効果があるなんて……!!! だっ、ちょっと!!! あなた、どこ触ってるのよ!!!」

 

その騒ぎを起こしているのは、ギーシュと金髪で巻き毛の女子だった。

騒ぎに気づいて駆けつけ開けた部屋の中では、ギーシュがその女子に無理矢理に抱きついて、愛の言葉を叫んでいた。

 

「好き好き好き~~~!!!」

「イヤよ、やめて!!! い、いい加減にしてよ!!!」

 

嫌がる女子に無理矢理に……なんて、字面にすると危ない感じだが、それを行っているのがギーシュで、そのギーシュは傍目にも様子がおかしく、どこかコミカルにも見えることから大賀はどう対処するべきか困った。

 

「な、何だぁ……? おい、お前ら大丈夫か?」

 

大賀の言葉に金髪の女子こと“モンモランシー”が気づいて助けを求める。

 

「あっ、あなたルイズの使い魔! ちょうどいいところに! ギーシュを引き離すのを手伝って!」

「手伝ってってよ……なんかギーシュが輪をかけておかしくなってるっぽいけど、一体何があったんだよ?」

「そ、それはその~……そう、魔法薬の生成に失敗して……」

 

そんな当然の疑問にモンモランシーは、ばつの悪そうな顔をしてもにょもにょと言葉を濁した。

 

「(あれ? 大賀、ねえこれって、“ホーレンゲ草”の症状なんじゃないの?)」

「(“ホーレンゲ草”って……あの時のか!!?)」

 

モンモランシーから得られなかった答えに気づいたのはルーシーだった。

大賀とルーシーが出会うキッカケにもなったその草。

幻惑の成分を発しており、袋の中に密閉して1日置いて溜まったガスを不用意に吸うと、目の前の対象のことしか考えられなくなるというものだ。

その植物の姿は部屋の中を見る限り見当たらないが、何かしら別の使い方をしたのかも知れない。

 

「まぁとにかくだ。おい、ギーシュ、離れろって! 意識がイっちまってんのかもだけど、嫌がられてんだろ!」

 

グイッと大賀がギーシュを引っ張るが、ギーシュはモンモランシーから離れまいとより強く力を込めた。

 

「いいや、離れない!!! 離れる必要などない!!! ぼくとモンモランシーは愛し合っているんだ!!!」

 

それに対してモンモランシーが否定しても、「テレなくてもいいよ、モンモランシー!」とギーシュは聞く耳を持たない。

その後は「離れろ!」「離れない!」の繰り返しで、大賀もいい加減メンドクサくなって、完全に実力行使に出ようとしたところでその不幸は起こった。

 

「ちょっと!!! あんたたちうるさいわよ――ってがぼっ!!?」

 

「「「あ」」」

 

騒ぎを聞きつけてモンモランシーの部屋に文句を言いに来たルイズ。

だがその文句を言うために開けた口に、大賀とギーシュがもみ合った影響で飛んだワインの瓶がホールインワン。

ごっごっごっ……っとルイズの喉が動き、その口で見事にキャッチしたワインの瓶の中身が瞬く間に飲み干されていく。

 

「お、おい……ルイズ、大丈夫か?」

「あっ、マズイ! ルイズの目を塞いで! ギーシュと同じ症状になるわよ!」

 

「え」

 

モンモランシーの忠告は遅かった。

すぽんと口からワインの瓶を抜いたルイズは、プハッと息を吐き、ふらりと身体を揺らした後に、声をかけて来た大賀のことを当然のように見た。

そして――。

 

 

「……でよ。これ、どーすりゃいいんだよ」

 

ギーシュほど喧しくはないが、腕に縋りついて離れないルイズの頭を、もう片方の手で引き離そうとしながら大賀がモンモランシーに尋ねる。

 

「んふふ、タ~イガ」

 

“ホーレンゲ草”から生成されたらしい魔法薬の効果で、ルイズはすっかり大賀にメロメロだった。

ワインで酔っ払ってるだけならどんなに良いことか。

しかもかつてウッカリ大賀がその成分にやられた時とは違って、一応は魔法薬として生成されたせいなのか、効果も一過性のものではないらしく元に戻らない。

 

「もー!!! 大賀にそんなに引っつかないでよ!!! いくらルイズだってダメなんだから!!!」

 

ルーシーがそうして怒っているが、いつものように大賀以外には見えていない。

とりあえず傍目にはルーシーに引っ張られたルイズの髪が、うねうねと不思議な動きをしたりしているが、それを気にかけていられる精神状態の者はこの場にいなかった。

 

「(くそっ……“M0”が効きさえすりゃ一発で解決だったのによ……)」

 

大賀の切り札とも言える力である“M0”はこの魔法薬の解除には効果を発揮しなかった。

そもそも魔法薬の効果を“M0”で消せるかと言えば微妙だ。

魔法の力で作った薬ならば消せもするだろうが、魔法っぽい効果を持った材料とかを使った薬というのであれば、それは薬側に分類され、魔法ではない。

そして実際問題として、ルイズと、そしてついでにギーシュの状態異常は解除されなかったのだ。

 

「どうって言われても……」

「お前が魔法薬だかなんかの生成に失敗したからこんなことになってんだろーが!!!」

「うっ……それはそうだけど、そ、そんなに怒らなくたっていいじゃないの……」

 

モンモランシーは大賀に正面から怒られてすっかり萎縮してしまっているようだ。

その横で簀巻きにされ猿轡を噛ませられたギーシュが、何とかモンモランシーを守ろうとヘコヘコ動いているが、その動きはどうにも滑稽だった。

 

「あ、いや、反省してんならいいんだけどよ……。解除薬的なもんは作れんだろーな?」

 

大賀は男子には容赦なく鉄拳制裁を行う性格をしているが、女子にはよほどの状況でもなければ手を上げない。

そのために勢いで文句を言える状況ならいいが、しおらしくされるとその対応に困ってしまう。

仕方ないので語感を弱め、状況を解決させる方法を尋ねた。

 

「……作れるは作れるけど」

「けど?」

「材料がなくて……」

 

モンモランシーの言葉に大賀はガクッと肩を落として溜息を吐いた。

その隙にルイズが大賀の片手の拘束から逃れたので、軽くチョップしてからもう一度押さえつける。

 

「は~……マジかよ。この学院では手に入らねーのか? 事情話して、教師連中からとかでもいいしよ」

「そ、そんなのダメよ!」

「何でだよ」

「それは、その~……ど、どっちみち、誰も持ってないと思うわ! とても貴重な物だから!」

 

モンモランシーの慌てように大賀は元の世界で魔法執行部で働いていた時の勘が働いた。

 

「……お前、もしかして、何か校則とかで禁止されてる代物にでも手を出したんじゃねーだろうな?」

「そ、そそそ、そんな、そんなバカなことあるわけないじゃないの」

 

「(こりゃ完全にクロだな……つーか、そこまでわかりやすく動揺すんなよ。まぁ“ホーレンゲ草”の成分考えるに、ホレ薬的なもんでも作ろうとしたってことなのか? それなら生成自体は成功って感じだが、効果が強すぎたんだな……)」

 

実はホレ薬は校則どころか国の法律で禁止されてるような代物なのだが、大賀はそこまで大袈裟には考えていなかった。

確かに悪用しようと思えばどこまででも悪用できそうな代物だが、状況の見た目の間抜けさからなるものもあるし、そもそも悪用するという思考にならないのだから、元の世界でもあったトラブルだなと脳内完結している。

なので下手すれば牢屋行きのモンモランシーからすれば、バレた相手が大賀だったのは救いだと言えるだろう。

しかし大賀的に直結していないとはいえ、まさかワルドだとかどこぞの国の刺客だとかに、その心を壊されるのではなくて、学院の――大した野心もない同級生にそうされることになろうとは。

そういう企みを持つ者たちにとっては困難なことだというのに、何も考えていないような人物は、簡単にそれを達成してしまうのだから世界とは実に不思議なものである。

 

「ったく、薬の力なんかに頼ってんじゃねーよ」

「だ、だって……」

 

モンモランシーは他人に指摘されることで、恥ずかしくなったのか俯いた。

大賀はそんなモンモランシーから視線を外し、床に転がっているギーシュを見る。

 

「――にしてもギーシュにねえ。前の二股騒動の時の一人だよな? モンモランシーだっけ?」

 

大賀はギーシュと決闘した時のことを振り返りながら尋ねた。

これまでモンモランシーとは特に関わりがなかったために、顔は何となく教室とかで見覚えがあっても、名前すら怪しい。

 

「……そうよ」

「ギーシュとは別れたんじゃなかったのか?」

「一度はね。けどギーシュがあまりにしつこいから。でもまた浮気されるなんて嫌だし、だったら他の女子のことは考えられないようにしてやろうって。他の女子どころか、わたしのことしか考えられなくなるとは思ってなかったけど」

「はぁ……んな痴話喧嘩に巻き込まれるハメになるとはな。とんだ災難だぜ」

 

戦争とかいきなり重い話に放り込まれるよりはよっぽどマシだが、日常の中ですらこの程度のトラブルはついて回るらしい。

 

「とにかくよ。この学院に材料がないってんなら、買いに行くか採りに行くかしねーとよ」

「そうね……ギーシュをこのままにはしとけないし……でも、わたし、魔法薬を作る際に秘薬を買ったから、もうお金がなくて……」

「また金かよ。貴族の学校だっつーのに、そんなんばっかだな」

 

大賀にお金の当てはない。

そもそもいまは小銭しか持たない大賀だったが、基本的に学院にいる限りはお金を使う状況にならない。

購買やらコンビニやらが近くにあったりもしないからだ。

それでも必要になった場合は何かしら短期のバイトでもしようと思っていたが、こんな急に必要になってしまうとはといった感じである。

 

「(カッコつけないで、お姫さまから素直に報酬を貰っとけばよかったのに……)」

「(うっせー。男が人助けで金なんか貰えるか!)」

 

ルーシーの言葉はちょっと耳に痛かったが、言った言葉は本心だ。

そしてない物は仕方ない。

 

「俺も金はない。仕方ねーから自分たちでその材料を採りに行くしかねーな」

 

モンモランシーはしぶしぶ頷いた。

とはいえ、時刻は夜だ。

いますぐに出発というわけには行かない。

なので、協力者の確保だけはしておこうと彼女たちの部屋を訪ねたのだが――。

 

「何だよ……タバサもキュルケもいねーのか。シルフィードに乗っけてもらえればすぐだったのによ……」

 

それは空振りに終わった。

二人ともいないということは二人で出かけているのか、それとも別々の用事が今回に限って偶然重なったのか、どちらにしても今回は彼女たちの協力は得られないらしい。

 

「あなた、空を飛ぶマジックアイテムを持ってるんじゃなかった?」

「ああ、ありゃいまは修理中だ。ハゲセンセーが覚えてる限りで直してくれるって言ってたけど、それで直るかどうかも不明」

「ハゲセンセーって……ふ、ふふっ」

「地味にツボってんなよ」

 

コルベールの、教師の容姿を直接的にイジるような生徒は貴族の学院にはそういないのか、モンモランシーは口元に手を当てて笑いを堪えている。

 

「まぁ二人がいねーんじゃ仕方ねーな。最近は協力してもらえるのが当たり前みてーになってたけど、俺らの問題なわけだし、こりゃ馬で行くしかねーか(ゼロ戦みてーのを使うならともかく、他の“プレート魔法”じゃ長距離移動に向かねーしな)」

 

スケボーに飛行魔法にと大賀は色々考えたが、今回は無難に行くのが良さそうだった。

ゼロ戦のログが残ってるならそれも具現化できるのかなんて考えもしたが、大賀のプレートしかないこっちの世界でのログがちゃんと残ってるかは微妙で、できたとしても“魔法ポイント”の使用量がとんでもないことになりそうなので却下した。

 

「そうね。手続きはわたしがやっておくわ。この二人じゃ無理だし、あなたは使い魔だものね」

「そうだな、頼んだ」

 

――出発は翌朝。

とりあえず、ギーシュは変わらずに簀巻き状態のままで自分の部屋へと放り込み、一方のルイズは何を言っても、どうあっても、大賀から離れようとしないので、やむなく大賀は“KOハンマー”でぽこんとその頭を叩き気絶させた。

 

「心を探す旅か……」

 

ルイズがルイズでなくなった日。

心ころころ行方不明。

 

呟いてみて、そういう哲学っぽいのは自分には似合わないなと大賀は明日に備えて眠りに就いた。




この作品のアンリエッタはウェールズが生きてるのでマシなはず。
少なくとも復讐心とかないですから。
寂しさを埋めるためとかでルイズと張り合うようなこともしないと思う。
そもそもルイズも大賀にそういう相手として見られてないので。
というわけでルイズとアンリエッタの関係は今後も良好なはずです。
やっぱり主人公は一途な方がメンドクサくなくていいですね。
作者の中で許されるハーレム主人公は番長とか高スペックな人間だけですよ。
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