何かゼロ魔の原作後半の記憶が微妙にない。
未完なのは残念だけど仕方ないとして、書くならちゃんと読み直さないとダメかも。
まぁそこまで行くのにあと何話必要なのかって話なんですが。
他の人たちはどれくらいまで書くつもりで書き始めるんだろうなとか思う今日この頃。
久澄大賀が異世界ハルケギニアに召喚されてから早数ヵ月。
トリステイン魔法学院は夏季休暇の時期に入っていた。
学院が休みということになれば、いつものようにルイズについて授業に出る必要もなく、久しぶりに自由な時間を満喫できるかと思った大賀だったが、そんなこともなかった。
初めは学院付きのメイドであるシエスタに、復興が終わったタルブにまた遊びに来ないかと誘われて、村に行った時に知り合った人たちの様子も気になるし、せっかくの異世界だ。
休みの間にいろんな場所を観光して回るのもアリかなーなんて思っていたのだが、ルイズの下にアンリエッタから協力要請の手紙が届いたことで状況が変わった。
アルビオンはルイズの“虚無”に大艦隊をダメにされたとはいえ、人的被害はそれほどでもなく、まだトリステインへの侵攻も諦めていないようで。
それ故に民衆を扇動するなどする不正規な戦闘を仕掛けてくる可能性があり、実際に失敗には終わったものの直接アンリエッタを拐かすような手段も取ってきたらしい。
その状況を顧みての治安強化に協力して欲しいとのことだった。
「つまり俺たちは何をすればいいんだ?」
「身分を隠しての――平民の立場からの情報収集よ。お城の人間は使えないみたいね」
そんな説明に尋ねた大賀は、情報収集と聞いて少し安心した。
犯罪現場に行けとか、誰か特定のヤバイ人物やらの情報を指定されているわけでもないし、そういう任務ならばいきなり危険な目に合うようなことも少ないだろう。
「姫さまからのお願いとはいえ……地味な任務になりそうね」
「戦場に行けとか言われるよりずっといいじゃねーか。学院からも出られるし、休暇を満喫するついでに噂話とかを気にしとけばいいってことだろ」
「そんな感じみたいね……。城下町、王都トリスタニアで宿を取って任務に当たれって。経費はこの手形で得られるみたい」
任務という言葉には身構えてしまうものがあるが、金も出して貰えるなんて逆にラッキーなんじゃねーか、なんてこの時はまだ大賀も思っていた。
それを台無しにする火種――いや、災厄はいつだって自分の傍にいるのだということも忘れて。
「馬は使わねーのか?」
正門前。
学院を出るのに馬の手続きをしないルイズに大賀は尋ねた。
「バカね。今回はすぐに帰ってくるわけじゃないんだから学院の馬を持っていくわけには行かないわよ」
「ああ、なるほどな。……だったら今回は俺の魔法で行くか」
「空を飛ぶには距離があるわよ。当然だけど、あの飛行用のマジックアイテムもダメ」
「わかってるって」
大賀は見せる用の携帯用の杖を手に、“プレート魔法”を使用して、津川のスケボーを具現化した。
日常で魔法を使うことはかなり自重しているから、こういうときくらいは良いだろうという判断からの使用だ。
「何よ、この板」
「スケボー。乗ると速いんだぜ。城下町までだってすぐだ」
「へえ……変わった魔法ね。土系統で作った物を風系統で動かすって感じかしら」
「あ、ああ。何かそんな感じだな。たぶん」
細かい説明を求められると面倒なので、大賀は適当に頷くと、とっととスケボーに乗った。
「……二人で乗るには小さくない?」
「まぁよ。でも、徒歩で行くのに比べたらずっと早いし、我慢しろよ」
「し、仕方ないわね……」
ルイズは若干不満そうな様子を見せながらも、内心ではそんなこともないようで――それでも、ホレ薬の時のようなことにならないように、周囲を見回してから大賀の腰に手を回してスケボーに乗った。
もっとも夏季休暇の時期なのだからそんなに警戒しなくても、噂になるようなこともないと思うのだが、ルイズにとってあれはトラウマレベルの黒歴史となっているようだ。
「じゃー、行くぜ!」
大賀はルイズと、それにルーシーもちゃんと自分に捕まってることを確認してから、意識を集中してスケボーを走らせた。
「ルイズ、着いたぞ」
トリステイン王国、王都トリスタニア。
もう何度目かの城下町の入り口。
石畳に喧騒。
目的地に着いたというのに、自分の腰に手を回したままの状態で、どうにも放心した様子のルイズの肩を大賀が揺さぶる。
「ほへ……」
揺さぶられたことで再起動のスイッチが入ったのか、ルイズはキョロキョロと周囲を見回し、パッと大賀の腰から手を放すと、深呼吸をしてからなるほどと頷いた。
「……た、確かに徒歩で来るよりも、ううん、それこそ馬で来るよりもずっと早く着いたみたいね。でもね、タイガ。早過ぎよ! こんな立ったままの不安定な状態であんなスピードで! あ、危ないじゃないの!」
「お? おお……いや、悪い。俺的には身体が痛くなる馬よりずっとマシだったんだけどよ。慣れてない奴にはそーだったかもな」
考えてみれば車もバイクも遊園地の絶叫マシンもない世界だ。
特にルイズはまともに魔法が使えなかったために、馬以外では飛行など速さに慣れることができそうな経験も他のメイジに比べて極端に少ない。
ゼロ戦の時もかなり参っていたみたいだし、もう少しスピードを落とすべきだったかもなと大賀は反省した。
「まぁいいわ。とにかくまずは手形をお金に換えましょう。それがないことには何もできないもの」
その意見には賛成だったので、大賀はルイズの後について財務庁を訪ねた。
手続きをしたルイズは手形の代わりに金貨が入った袋を受け取る。
「いくらあんだ?」
「400エキューよ……うーん、戦争に備えてるからかもしれないけど少ないわね」
「少ない?」
ルイズの不満そうな顔に大賀は通貨の価値に考えを巡らせた。
「(あー、確か1エキューが1万円だとかって、前に俺は思ったんじゃなかったっけか? ……ってことはよ)」
400エキュー=400万円。
その答えにたどり着いて大賀の思考回路は一瞬止まった。
「は、はぁあああああああ!!? お前、それで少ないって何言ってんだよ! スゲェくれてんだろーが!」
「そっちこそ何言ってんのよ。400エキューなんて馬を買ったらなくなっちゃうわよ」
「馬ぁ!!? なんで街中で活動するのに馬がいるんだよ!」
「すぐに伝えなくちゃいけないような重要な情報を手に入れたときとか、怪しい人物を追跡するときとかに必要になるかもしれないじゃないの」
「いらねえっての。そんな状況になったら、俺がまたスケボーでも出してやるよ」
大賀の言葉にルイズは頬を膨らませてぷいっと横を向いた。
「アレ嫌い。それに今回の任務は夏季休暇を丸ごと全部使うことになるかもしれないんだから、それこそ宿代だけでなくなっちゃうわ」
「だー! だから、お前はどんな宿に泊るつもりなんだよ。考えてもみろっての。1日1万円――1エキュー使うことになっても400日は活動できんだぜ。何の不足もないだろーが。諭吉舐めんなよ、お前」
「ユキチ?」
「おお、大体俺らくらいの学生の財布に諭吉が入ってるってのは結構なことだぜ。バイト頑張ってる奴くらいのもんだ。それで奢るとか言い出したらヒーローだな」
「よくわかんないけど、安っぽいヒーローね」
元の世界では結構普通な学生の日常をバッサリと切って捨てるルイズに、大賀はこの任務における完全なる人選ミスを悟った。
自分の常識を否定されたことで、態度もちょっと刺々しくなる。
「……お前、帰ったらどーだ? 情報収集は俺がやっておいてやるから」
「なっ、何ですって!!?」
ポロリと本音を口にしてしまった大賀に、ルイズは裏切られたかのようなショックな顔をして、続いて激昂した。
「あ、ああ、あんた、いくらフリだからって、わたしの使い魔やってるくせにそういう言葉はどうなの? な、なんかわたしにはこの任務が無理だって言ってるように聞こえたんだけど」
「いやまぁよ……無理っつーか、向いてないとは思うぜ」
「へー、ほー、ふーん……まさかあんたにそんなこと言われるなんてね。あんただけはいつだってわたしの味方だと思ってたのに。これがあれかしら。飼い犬に手を噛まれるってやつなのかしら」
「さすがに飼われた記憶はないんだが……」
大賀のツッコミも聞く耳持たず、ルイズは子供のように全身で怒りを表現している。
「うるさいうるさい! あんたがそういう態度に出るならわかったわ。ここらで決着をつけましょう」
「決着?」
「そうよ。タイガ! いままではあんたがメイジってこともあって、だいぶ譲歩してあげてたけど、いまのわたしは伝説なのよ伝説! 普通のメイジのあんたより格上なの。わかる? あんたに対してほんとの使い魔みたいに命令をしても問題ないってわけ」
「……つーか、譲歩してたつもりだったのか、お前」
「し、してたわよ! スゴイしてたわ! いろいろ我慢したもん、わたし! そうよ。寛大な心を持つわたしだからこそ、そういうのを許してあげてたのよ」
それは初耳だなーと大賀はこれまでのことを振り返った。
振り返ったが、日常でも任務とかでも、ルイズの我が儘に一方的に振り回されていたような記憶しかない。
「まぁ仮にそうだったとして、結局何が言いたいんだよお前」
「だから勝負よ! どっちが今回の任務を上手くやれるかっていうね」
「勝負って、お姫さまからのお願いだろ。そんなことに使うのはマズイんじゃねーか?」
「別に手を抜くわけじゃないんだから問題ないわ。むしろ一層のやる気が出て、姫さまのためにもなるってものよ」
らしい。
ルイズ的にはこの勝負が地味な任務のスパイスになるとのことだが、大賀に見えるヴィジョンは例によってというやつだった。
「俺はお前のそのやる気が空回りする未来しか思い浮かばねーんだけど」
「またバカにした! ダメね、これはもう戦争だわ。これまで戦争をやる人間の気持ちなんてこれっぽっちもわからなかったけど、なんかわかっちゃったわ。つまり全部あんたが悪いのよ!」
「そうかよ……(なんかメンドくせー、スイッチ入ったな、これ)」
「間違いないわ。これはわたしの正義を証明する戦い。もう聖戦と言ってしまっても過言ではないわ! ――勝負よ! クズミタイガ!」
ビシイッ――と指を突きつけるルイズに、大賀は言葉を返す気力もない。
面倒だから今回はそれでいいやと、諦めの境地に入っていた。
「ふっ、どうやら覚悟を決めたようね。ただ、これで任務に支障が出るようなことがあったらそれはほんとに問題だわ。だから、毎日夜にでも会ってその日の成果を報告しあいましょう」
「それは構わねーけどよ。お前、ほんとに一人で大丈夫なのか?」
「あんたどこまでわたしをバカにすれば気が済むのよ……。あんたが来るまではむしろ一人でいることの方が多かったわよ!」
「あ、そう……」
意味を深く考えると何だか憐みの目で見てしまいそうなので、大賀はルイズの言葉を流した。
「じゃあ、さっそく行動開始ね!」
「あ、ちょっ、お前その金を全部持っていく気か!」
背中を向けてそのままどこかに行ってしまいそうになるルイズを大賀は慌てて引き留めた。
ルイズはむしろいない方が今回の任務は上手くいきそうな気がしたが、当然だがその手にある活動資金は別である。
そもそも、その使い道でこんな状況になってしまったのだから。
「当たり前じゃないの。これは姫さまがわたしのために用意してくれたんだから。あんたは自分で何とかしなさいよ」
「おまっ、それはちょっとヒキョーじゃねーか?」
「ヒキョーですって。ふん、卑しい犬ね。わかったわよ。……そうね。確かあんたさっき1日1エキューで充分みたいなこと言ってたわね。なら、1エキュー恵んであげるわ。それで1日過ごしてみなさいよ。もうそれだけでわたしの方が正しいってわかるから」
唖然とする大賀の手に袋から取り出した金貨を1枚載せると、ルイズはほんとに去って行ってしまった。
大賀は手の中の金貨を見つめた。
どこからどう見ようとも1枚きりで増えることはない。
「マジかよあいつ……」
勝負とか言っておいて400万円中399万円持っていくとか、対等という言葉はルイズの辞書には存在していないらしい。
「どうするの大賀?」
「どうするって言われてもなぁ……。これで何とかするしかねーだろ。400万円があったって考えると微妙だけど、単純に1万円持ってるって考えれば、まぁ何とかなりそーな気もするしよ」
大賀はルーシーの言葉に頭を掻きながら答える。
「それより、ルーシー。お前、ルイズについて行ってくれねーか」
「え、ルイズに?」
「ああ。あいつが一人で行動してるってだけで不安なのに、大金持ってるってなると余計によ。なんかヤバイことになりそーだったら、知らせてくれよ。マンドラゴラは一応持って来てるから、それを中継に使えば街中くらいの範囲なら大丈夫だろ」
「それは大丈夫だと思うけど……でも、大賀こそ一人で大丈夫なの?」
「心配すんなって。テキトーにどっかバイトできそーなとこでも見つけるよ。住み込みとかできれば宿代もかからねーで完璧なんだけどな」
「わかった。じゃあ頑張ってね、大賀」
「おお。そっちも頼んだぜ!」
ルイズの後を追って飛んでいくルーシーとも手を振って別れ、大賀は異世界の街で一人きりになった。
だが不安はルイズの方にしかない。
手の中の金貨をピンと指で弾き、大賀もまた街の喧騒の中へと紛れ込んだ。
大賀職探し中……。
大賀職探し中……。
大賀職探し中……。
「だはー。意外と見つかんねーな。やっぱ住み込みって条件は無しにしたほーがいいか。履歴書とか書いてるわけでもねーし、いきなり現れた奴がそんなこと言ってもって感じだよな……」
情報収集するなら接客業かなと、飲食店関係を回ってバイト探しをしていた大賀だったが、なかなか良い返事は貰えず、中央広場の片隅に座り込んでいた。
休憩するなら何か軽食でもと行きたいところだが、手持ちの金が少ないために躊躇してしまっている。
少しでも増やす方法が見つかれば、そんな気分もなくなるのだが。
「……よし! いつまでも座り込んでても仕方ねー! とにかく多少条件が悪くてもまずはバイトを決めちまおう! どうせ金稼ぐことがメインじゃねーし、最低限稼げりゃ問題ねーからな!」
大賀は持ち前の前向きさで顔を上げ、条件を減らした上で再チャレンジした。
すると今度はすぐに雇ってもいいという声を貰えた。
仕事は客引きということで、大賀が最初に考えたRPG的な酒場での情報収集――ただし未成年なので、普通の飲食店に変更――で接客しながら客の噂話を聞いたりするというものから、微妙にずれたが、やっと良い返事が貰えたのだからとそこに決めた。
「(何とかこれで第一段階はクリアーだ。客引きってのも悪いばっかじゃない。たくさん客を連れてくりゃ、人手が足りなくなって俺も接客とかに回れるようになるだろ)」
そう考えた大賀は一計を案じた。
ありあわせの材料で手早く看板を作ると、そこに店の名前を書いてもらって客引きに出かける。
そしてすぐに近くの路地に入ると、“プレート魔法”を使った。
「アクセス――“HENGE”!!!」
のっしのっしと大通りを歩くその珍妙な生物に街の人々の視線が集まる。
それは兎に見えなくもないナニカ。
大賀が暮らしていた元の世界に存在する教育番組“おにーさんといっしょ”のマスコットキャラクターである“ミミっ子うさぴょん”であった。
本来は当然着ぐるみだが、今回は魔法で変身しているために、完全に中の人はいない状態になっている。
持っている看板を軽く振ってアピールをするその生物に、危険はないと感じとった子供たちがその周囲に集まってきて、ついでにメインターゲットであるその親たちもついてくる。
「(くっくっく……さすがはうさぴょんだぜ。異世界においても子供たちのハートをがっちりキャッチしたな。このままこの子供たちを連れて街を闊歩し、店に戻れば、それがそのまま金を払う親も含めた行列になるという寸法だ。完璧な作戦だぜ)」
実際大賀の作戦はそのまま成功した。
ただ一つだけの計算外は、その行列にルイズも加わっていたことだった。
街の子供たちに混じっても身長的にはあまり違和感がないルイズは、そのまま店に入り、いまの大賀には手を出し辛い一番高いメニューを食べて去って行った。
魔法まで使って頑張った大賀のバイト代がそのメニュー以下だったのも泣ける。
異世界において一人になってからわずか数時間で世の中の理不尽さを知った大賀であった。
そうこうしてる間に時刻は夕方から夜に変わる時間になって、大賀は客引きの成功で店長に気に入られたこともあり、今後もその店で雇って貰えることになったので、それで得られる金も踏まえた上での手頃な宿を探していた。
そんな時である。
頭の中にルーシーの声が響いたのは。
『大賀、ルイズが大変だよ! 早く来て!』
ルーシーの焦ったような声に、ついにルイズがやらかしたかと大賀は走った。
ルーシーのナビで辿り着いたその場所は酒場だった。
未成年ではあったが、ダチのピンチとあれば躊躇はなく、大賀は勢いそのままに店の中に駆け込んだ。
その先で見つけたルイズは――燃え尽きて真っ白な灰のようになっていた。
「……お前さ。さすがにこれはねーだろ。初日だぞ。初日にギャンブルで有り金を全部するって何やってんだよ」
活動資金が400万円じゃ少ないと言っていたルイズは、半日かけて城下町を回った結果、ギャンブルと出会ってしまったらしい。
ルーレットの赤か黒を当てるだけでも2倍になると知ったルイズは、最初はお試しと慎重に賭けてハズし、次は負け分を取り戻すと賭けてハズし、それを繰り返してひたすらハズし続けた。
そして有り金を半分使い切ったところで「ああ、なんだ、これを一回当てれば全部取り戻せるじゃない」とか血走った目で残りの半分を賭けてそれも結局ハズした。
結果として、二択のギャンブルで全ハズしという驚愕の記録を残して、ついに有り金を失ってしまったということであった。
「……インチキよ。間違いないわ。これを姫さまに報告しましょう」
「お前自分の究極的なまでの運の悪さを認めろよ」
「そんなはずない! わたしは伝説なのよ!」
ルイズはあくまで自分の非を認めず、髪を振り乱してヒステリックに叫んだ。
「ああ、そうか究極的じゃなくて伝説的なまでの運の悪さだな。お前はそんな天文学的な数字を引き寄せられるんだ。それで、初日で有り金を全部失ってどうすんだよ」
「…………どうしよう」
「知らねーよ。とりあえずやっぱりお前帰ったらどーだ? あとは俺がやっといてやるからよ」
「ヒドイ。優しくない」
「この状況で優しくできる奴の方がおかしいっての。俺はそこまで聖人じゃねー」
大賀の言葉にルイズは沈黙した。
一応意地があるのか、涙だけは零さないように耐えているようだ。
「(はぁ……まさかここまでのポンコツぶりを発揮するとは思わなかったぜ。ギャンブルで400万円ってほんと何考えてんだ。しかし、ギャンブルねえ……魔法でイカサマすれば……って落ち着け俺! 何考えてんだ! それは完全に犯罪行為だ……!)」
400万円を取り戻す方法として、“プレート魔法”を悪用することを考えてしまった大賀はぶるぶると頭を振った。
仕方がないこととはいえ、思考が荒んでいると溜息を吐く。
「まぁよ……実際こうなっちまったら選択肢は限られてるぜ。お姫さまかお前の両親か、そこら辺に事情を話して金を出してもらうか、お前も俺みたいに働き先を見つけて働くかだ。どっちも嫌だってんなら、やっぱり学院に帰るしかねーな」
「……働くわ」
「俺はそれは反対したい」
「何でよ!」
「たりめーだろ! こんなアホなことやらかす奴が職場にいたら、周囲の人間は迷惑しか感じねーよ! お前はまず常識を学ぶべきだ。そうじゃなければお前の我が儘を許してくれる場所で一生を過ごした方がいい」
ちょっとキツイ言い方かもと思ったが、ルイズのためというよりマジメに働いている人たちのためだと、大賀はあえてそう言った。
ルイズが伝説的な魔法の才能を持っていようが、その才能は生活に根付くタイプの、日常を豊かにするようなものだとは現時点ではとても思えない。
いま必要なのはそういう特定の条件でしか発揮されない伝説ではなくて、人として普段から当たり前に備えていて欲しい社交性なのである。
だがそういった物言いはルイズの生来の負けん気に火を点けてしまったらしい。
「いいわ……わかったわよ! やっぱりあんたに頼ろうなんてちょっとでも考えてしまったわたしがバカだったわ! これは勝負だものね! 常識が必要? はっ、笑わせてくれるわね。この世界はすでにわたしを中心に動き出しているのよ!」
先程まで途方に暮れた様子でしょぼんとしていたのに、まるで傲岸不遜な態度とはこのことだと大賀に教えようとでもしているのか、ルイズは無い胸を張ってそんなことをのたまった。
「大体あんたに常識だとか言われたくないのよ。あんた自分が常識人だとでも思ってるわけ? そんなわけないでしょ。はっきり言って周囲から見たあんたは変人よ!」
「うぐっ……」
これまではっきりそうだと言われることはなかったが、確かに未だにギーシュたち以外の人間とは微妙な溝を感じていた大賀であるから、意外とその言葉は胸に突き刺さった。
「ふふん。あんたにできることがわたしにできないなんて道理はないわ! 見てなさいよ! すぐにお城の一つも買えるだけのお金を集めてみせるわよ!」
ルイズはそんな宣言をすると、大賀にあっかんベーをして、どこかに駆けて行った。
「大賀……」
ルーシーの「どうするの?」といった表情に大賀はぐったりしながらルイズの背中を指差した。
追いかけてくれという意思表示である。
「あ、ちょっと待った。これ、持っていけ」
大賀の指示に頷いてルイズの後を追おうとしたルーシーを引き止めて、初めルイズに貰った金貨を渡す。
「あいつがやっぱりどうしようもない感じだったら、目の前にでも落としてやれ。それでまぁ宿には泊まれるだろ」
「うん、わかった。大賀は大丈夫?」
「俺は少しだけど稼いだからよ。安宿なら何とかなるだろ」
「そういえば、何かやってたよね。あの時はほとんど喋ってる暇なかったけど」
「まぁそういうこった。しかし、今回の任務は意外といままでの中で最難関のやつなんじゃねーかと思い始めてきたぜ」
「あはは……」
世はまさに大後悔時代――世間の荒波に翻弄されるルイズの姿が目に浮かぶ。
大賀は俺がしっかりしねーとなんて気合を入れ直したのだが……。
その再びわずか数時間後には、ルイズがオカマに誘われてキャバクラ入りしたというルーシーの言葉に奔走するハメになるのであった。
ミミっ子うさぴょんは正義の兎です。
叶作品のプリティフェイスに登場しております。
十数人の不良を楽勝で凹り倒すことができるらしいです。