エム×ゼロの使い魔   作:第7サーバー

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今回は前のうさぴょんに続いて、とある叶作品の設定を改変して流用しております。
しかし前話に続いてこういう話を書いてると、まるでテコ入れでもしているかのようだ。
まぁ戦争してるより、こっちの方がM×0っぽい気もするけども。
にしても意外とあっさり書けてしまいました。
ちょうど良いネタがあって良かったって感じですね。


BM16:ぼくらの目指した新世界

「タイガ! 宝探しに行かないか?」

 

アンリエッタの任務を終えて学院へと戻ってきた大賀を迎えたのは、ギーシュの既視感を感じる言葉であった。

 

「……デジャブだな。それでギーシュ、今度は何の宝を探しに行くって?」

 

尋ねた大賀にギーシュは、妙なオーバーアクションで返した。

 

「わからないのか、タイガ! いまは夏だぞ! 夏のお宝と言えば、魅惑的な女の子たちの水着姿に決まってるじゃないか!」

「いや、そんな力説されてもよ……」

 

その勢いに若干引いた様子を見せる大賀だが、ギーシュは金髪をかきあげて、大賀に説明を続ける。

 

「ふっ……まぁきみが知らないのも仕方がないが、先日、我々貴族の間ではある革命が起きたんだ」

「革命だって?」

 

その言葉に大賀はアルビオンのそれを思い浮かべたが、どうやら全然違うらしいことは続くギーシュの言葉でわかった。

 

「そうだ! とある天才貴族が踊り子の衣装を見て“これ、下着じゃないし、海で着ても良いんじゃね? 海で女の子たちが着たら最高なんじゃね?”とか発言したことが事の発端だ! その言葉を聞いた者たちの身体には激震が奔り、ついに革命が行われた!」

「はぁ……」

「これによりそれまでの水着は囚人服と言っても過言ではない過去の遺物となって消え去った! そして新時代の幕開けだ! だからぼくたちも行こうじゃないか! そのめくるめく新世界へと!」

 

要はそれまで海で遊ぶ用の服程度だった水着が、どこぞの貴族の思いつきでビキニだとかそういうタイプに一新されたということらしい。

ここはファンタジーな魔法世界だ。

時代考証とかそういうものは吹っ飛ばしてそうなることもあるだろう。

 

「えっと、そっちの連中は……」

 

今回ギーシュは取り巻きというか、男子を三人ほど連れていたので、そちらに視線を向ける。

 

「右から“マリコルヌ”に“レイナール”に“ギムリ”だ。みんな同学年だし、これまでにも教室や学院内で見かけたことくらいはあるだろう。彼らもまた夏のお宝を追い求めるトレジャーハンターだ」

「ああ、そう……」

 

要はギーシュのエロ仲間かと大賀は納得する。

まぁ小太りのマリコルヌと、それとは逆に逞しい身体つきのギムリはともかく、眼鏡をかけたレイナールはそれほど乗り気には見えないから、ギーシュたちの暴走を止めるために参加しているのかも知れない。

とりあえずそれぞれに向けて「よろしく」と挨拶を交わした。

 

「それで女子連中にもう話は通ってんのか?」

「モンモランシーはぼくが誘おう。きみはルイズとキュルケとタバサと……そうだな、あのメイドのシエスタとかいう彼女も誘ってくれればいい。それで全部だ」

「ほとんど俺任せじゃねーか……」

「男五人、女五人でちょうどいいじゃないか」

「まぁいいけどよ……」

 

どうせいつものメンバーだしと、大賀はそれを了承すると、早速ルイズたちに声をかけていく。

水着うんぬんはともかく、実際夏季休暇が始まっていきなり任務であったから、みんなと普通に遊べるというのは大賀も楽しみであった。

波乱の人生を送っていても大賀もまだ高校生、青春真っ只中の少年である。

そこに自分の想い人の愛花が参加できないのは残念であるが、それでも久しぶりに面倒事は全部忘れて、思いっきり遊びたい衝動に駆られていた。

 

全員の了解を無事もらうことに成功したが、人数が少し多いので現地集合ということで、シルフィードに馬にとそれぞれの方法で海に向かった。

 

 

そして――輝く海に水着姿の男子、女子。

男子はどうでもいいとして、胸の格差はあるものの、誰の水着姿も魅力的である。

しかも、きちんと場所を選んだので、プライベートビーチのように他の者たちの邪魔は入らない。

 

「お、おお……これがぼくらの目指した新世界か」

「これはいいものだ……発端の貴族はまさしく歴史に名を残す天才だな!」

「違いない」

「ぼくは学院長がその発端だと聞いたぞ」

 

「何と! さすがは我らの学院長だ! オールド・オスマン、バンザーイ! トリステイン魔法学院バンザーイ!」

 

バンザーイ! と繰り返しているギーシュたちを大賀は一人引いた目で見ていた。

レイナールもこちら側かと思えば、ノリに巻き込まれたのか、一緒になってバンザイをしてしまっている。

まぁ気持ちがわからないとは言わないが、いちいち大袈裟なことだとは思う。

もっとも彼らにしてみれば、こういうビキニタイプの水着が解禁されたのがつい最近のことだというのだから仕方ないのかも知れないが。

 

「はーい、ダーリン! あたしの水着姿はどうかしら? 興奮する?」

「い、いやまぁ……似合ってんじゃねーか?」

 

キュルケの水着は黒のビキニ。

いつもとは違い髪をポニーテールにしたキュルケは、スタイルの良さもあって、直視しづらい魅力を放っている。

 

「タイガさん! わたしはどうですか?」

 

シエスタは黄色をメインとしたスポーティータイプのもので、下もホットパンツのような水着だった。

しかし普段は丈の長いメイド服で誰よりも露出を控えてるような姿であるから、それが解放されたというだけでもこれまたヤバイ。

しかもその解放されたモノも、キュルケには及ばないが中々のモノで、女の子としてのアピールには充分過ぎる。

 

「あ、ああ。シエスタも似合ってる」

「ほんとですか! よかったぁ……こういう水着って初めて着るので……恥ずかしいのを我慢した甲斐がありました」

「そ、そうか……」

 

そんな二人に挟まれた大賀は、ドギマギしながら、その水着姿を褒めた。

 

 

「ぐぬぬ……タイガめ。ルイズの使い魔のくせに大きいどころを持っていきやがって」

 

その光景を目に焼きつけている間に、いきなり大賀に大物を持っていかれたので、マリコルヌが恨みがましく歯ぎしりをした。

そんなマリコルヌの肩にギーシュがぽんと手を置いて宥める。

 

「まぁまぁ。まだこの素晴らしい夏は、はじまったばかりじゃないか!」

「そ、そうだな!」

 

ギーシュの言葉に気分を持ち直したマリコルヌだったが――。

 

「それにきみたちには悪いがぼくにはモンモランシーがいるからね! おお! モンモランシー! 今日のきみは最高に素敵だ! きみのその可憐な姿を見たら白い薔薇ですら真っ赤に染まってしまうに違いないよ!」

 

くるくるーっと回転しながらモンモランシーに近づくと、ずざっとその場に膝まづき、腕を広げてモンモランシーを誉め立てるギーシュ。

モンモランシーも満更でもなさそうな顔をしている。

ちなみにそんなモンモランシーの水着は赤のビキニであった。

あるいは薔薇好きのギーシュに合わせたのかも知れない。

あっさりと抜け駆けをするギーシュの姿に、マリコルヌは再びぎりぎりと歯ぎしりを始めた。

 

「ぐぬぬ……ギーシュめ。二股騒動で破局したかと思えばしぶとく残りやがって。裏切り者め」

 

残るはルイズとタバサの小物組だけになってしまった。

そんなルイズはストライプ、タバサは白のビキニで、胸が薄い分、すぐに捲れてしまいそうで、ある意味キュルケなんかよりも危険な、あぶない水着を装備した二人と言えるかも知れない。

 

「う、ううむ……こうしてみるとあの二人も意外とアリかも知れないぞ……」

「――いや、ここはやはりルイズをタイガにぶつけるのが一番だ。せっかく海にまで来たのに小さいので妥協してどうする!」

「それは確かに……」

 

妥協というか新しい魅力に目覚めそうになったマリコルヌをギムリが引き止めた。

その言葉にもマリコルヌは大いに納得する。

 

「ギムリはキュルケに未練アリアリなだけだろ。タイガが来てからほとんど相手にされなくなったからね」

 

しかしレイナールはそんなギムリの真意を見抜いていた。

 

「うるさい! お前にわかるか! もう少しであのたわわに実った果実をこの手にすることができたかもしれないというのに、直前で消えてしまったその悲しさが!」

「いや、わかんないけど……」

「そうだそうだ! もしそんなことになってたら、きみとは絶交していた!」

 

そうして無駄に口論してる間にルイズとタバサも大賀の傍にいた。

嫉妬に燃えるマリコルヌの目には、大賀が女の子たちを侍らせているようにしか見えない。

 

「くそう……なんでタイガの周りばっかり……」

 

不満が口をつくが、そもそも大賀経由で誘った女子が大賀の周りに集まるのは当然と言えた。

 

「……まぁとにかくだ。ここは団結して事に当たろう。マリコルヌ、きみはあのメイドでも構わないだろう」

「ぼくはぼくのことを好きになってくれる女の子なら誰でもいい」

「それはさすがに自分を卑下しすぎじゃないか?」

「ぼくじゃない者にぼくの気持ちなんてわからないさ」

 

それまで非常に俗物的だったマリコルヌは、ここに来て、すでに悟りを開いてるかのように遠い目をして呟いた。

 

「なんかすまん……」

「いいんだ。ここは新世界。見ているだけでも、満足できる場所さ」

 

とは言うもののだ。

やはりできれば女の子と“きゃっきゃっうふふ”したいのである。

 

「――それでギムリ。結局きみは何をするつもりなんだ?」

「何ってそりゃルイズを嗾けて……」

 

ギムリの言葉にレイナールはあからさまに溜息を吐いた。

 

「はぁ……甘いよ。それじゃ彼らのいつもの日常が繰り広げられるだけさ」

「じゃあどうしろって言うんだよ」

「何もしなければいい」

「何も?」

「そうさ。タイガはあれで責任感の強い男だ。何せルイズの使い魔をいまもやってるくらいだからね。何もしないでいれば勝手にいなくなるはずさ」

「何か考えがあるのかレイナール?」

「ああ。我に策ありだ」

 

レイナールは眼鏡を光らせて、にやりと笑った。

 

 

「おーい、そろそろ、いったん海から上がって昼飯にでもしよーぜ」

 

ビーチボールやら水のかけ合いっこやら、競争やら、海を満喫していた大賀だったが、そろそろお腹も空いてきたと他の者たちに声をかけながら海を上がる。

そしてタオルとか飲み物とか、着替えとか、そういった物がまとめてある場所を――キョロキョロと探した。

それらが本来置いてあったはずの場所からなくなっていたからだ。

 

「あれ、俺らの荷物は――って、サル!!?」

 

大賀の視線の先には一匹のサルがいた。

サルは少し離れた場所に大賀たちの荷物を持ちだし、その中を漁っている。

 

「あれは“しーもんきー”だ!」

「何? 知っているのかレイナール!」

「ああ。そういえばこの辺りに出没すると聞いたことがある。あいつらはイタズラで人の荷物を奪うことがあるとの話だ」

 

「(くそっ、“しーもんきー”ってそういうんじゃねーだろーがよ! これが異世界との差異か! つーか、ヤベエ! あの荷物の中にはプレートが! 水着になったからって手放すんじゃなかった!)」

 

状況に気づいた他の者たちのそんな解説を聞いて大賀は内心で愚痴る。

いや、それ以前に焦っていた。

そしてそのサルは、大賀の焦りに呼応するかのように、他の者の荷物もある中で、ピンポイントに大賀の荷物だけを手にすると走って逃げた。

 

「――う、うおぉおおおおおおお!!! 待てや、このくそザルうぅうううううううっっっ!!!」

 

「あ、タイガ!」

「……行っちゃったわね。何か大切な物でも入ってたのかしら」

 

走り出した大賀はルイズが止める間もなくサルと共にその姿を消した。

 

 

「なるほど。こういうことだったのか、レイナール」

「ああ。あのイタズラ好きなサルたちならば、きっとこういうことをやらかすと思って、あえて荷物に見張りをつけなかったんだ」

「策士だな。策士、レイナール!」

「ははは、やめてくれよ。まぁあの様子だと当分タイガは帰ってこないだろう。その間にきみたちは意中の相手にアピールでも何でもすればいい」

「おお! やってやるぜ!」

「ぼくも頑張るぞ!」

 

大賀の必死さの理由も知らずに、その状況をわざと見逃した男子たちは盛り上がっていた。

 

 

「うおっ! サルのくせに海を泳いでやがる! “しーもんきー”だからか、ふざけやがって! 人間さまを舐めんじゃねーぞ!」

 

砂浜を逃げ回っていたサルが海の中に入っていくのを見て、もちろん大賀もその後を追いかける。

しかしそのサルは海の方がホームなのかと考えてしまうくらいに泳ぎが速かった。

大賀もクロールで追いかけるが、その差は思うように縮まらない。

どれだけの距離、どれだけの時間を泳ぎ続けていたのか、気がつけば周囲は深い霧に包まれており、前方には島影が見えた。

どうやらサルはその島に向かっているようだ。

大賀もその後に続いて島に上陸した。

 

 

「ちっ……どこ行きやがった。くそっ、霧みたいのが出てて視界が悪いな……つーか、この島はなんだ? 無人島か? サルどもが暮らしてやがんのかな……」

 

サルの足跡が砂浜に残っている。

それは島の内部、森の中へと向かっているようなので、大賀もその森へと足を踏み入れた。

島の内部に進むにつれ霧は薄れ、逆に視界は良くなっていったが、肝心のサルの姿は見当たらない。

かと思えば、前方に開けた場所があるようで、さらにはそこから何やら動く者の気配がする。

大賀はサルの巣に着いたかと駆け出した。

 

「そこか!!! ――って、え……?」

 

森を抜けた大賀の視界に広がるのはサルの集団――ではなくて、温泉に浸かるたくさんの女の子たちであった。

しかも、温泉に浸かってるのだからその全員が裸である。

 

アンリエッタの時のように一人でも一瞬でもない。

 

はっきり言って意味がわからない。

大賀の脳は、その突然のピンク色な情報にクラッシュし、鼻から限界突破した感情が血液となって噴出して、気絶した。

 

「(ああ……ここがギーシュたちが言ってた新世界か……悪い、柊、俺はここまでかも知れない……)」

 

 

……。

 

…………。

 

………………間。

 

 

「んあ……?」

「あ、よかった! 気がついたんですね!」

 

大賀が目を覚ますと、黒髪のツーテールっぽい髪型の少女の顔がアップで目に入った。

どうやら、のぞき込むようにして、大賀が目覚めるのを待っていたようだ。

 

「……いっ、誰だ? それにここは」

 

その近過ぎる距離に、ビクッと驚いた大賀は、さささっと滑るように半身になって起き上がり壁に背をつけた。

 

「ここは“サルガクーレ”島にある、私たちの暮らしてる村です。そして私は“モンジュ”と言います」

 

大賀はモンジュと名乗った少女の言葉を聞きながら、目に入ってくる状況を処理していく。

木製の小屋、ここはたぶんこのモンジュという彼女の家なのだろう。

大賀は無人島だと思って、この島に上陸していたが、原住民的な人たちがいたということだろうか。

 

「俺は大賀だ。にしても村って、俺は何でそんなところに……」

「覚えてませんか? タイガさんは温泉で倒れたんですよ」

「温泉……ってそうだ! サルを探してたら、なぜか大量の女の子が……うっ、やべ、思い出すとまた鼻血が……」

 

大賀は思い出だけでぶり返しそうになるその感情を、鼻を押さえて無理矢理止める。

 

「だ、大丈夫ですか!!?」

 

モンジュは心配そうに大賀にすり寄った。

 

「ああ。だ、大丈夫だ。あ、それよりも俺の荷物! 探しに行かねえと!」

「えっと、それなら、ここに……」

「え? お、おお~~~!!! 俺の荷物!!! ――プレートもある!!! サルから取り返してくれたのか!!? ありがとな! 助かったぜ!」

 

大賀は自分の荷物を手にすると、とにもかくにもプレートの無事を確認して、それがわかるとダーッと幅広の涙を流した。

 

「い、いえ、そのー、そうではなくて、ですね。そもそも私が原因といいますか……」

「はぁ? お前があのサルに指示を出してたのか?」

 

「……あの! 見ててください」

 

大賀の疑問にモンジュは覚悟を決めたような顔をすると、立ち上がり、来ていたワンピースのような服のスカートをするすると自らたくし上げた。

 

「お、おい何を――って、尻尾……!!? ま、まさか、お前……さっきのサルか!!?」

 

反射的に視線を逸らそうとした大賀の視界の端に、ぴょこんとモンジュの尾てい骨に生えた尻尾が映り、下着も丸見えの状況も忘れて、その尻尾をガン見する。

 

「そうです……。あの、もういいですか……? 恥ずかしい……」

「え、あ、もちろん! ゴメン……ってか、ほんとにさっきのサルなのか?」

 

頷かれはしたものの、やはり簡単には信じられないと大賀はもう一度確認を取る。

 

「は、はい。さっきはゴメンなさい。私、人間に憧れてて、でも、この島の外じゃ人間の姿になったり、喋ったりするのは禁じられてるから。もしもこの島まで来てくれる人間がいればって……いつもはみんな途中で諦めちゃうので荷物を返しに行くんですけど」

「ああ、なるほど……俺がここまで来たから正体を見せたってことか……」

 

確かに夢中で追いかけててあまり覚えていなかったが、かなりの距離をかなりの速さで泳いできた気がする。

メイジなら飛行魔法とかで追えないこともない気がしなくもないが、島の内部はそんなことはないものの、そういえば、島の周囲は霧か何かに覆われていたのだった。

直接追いかけないと見失ってしまうのもわからなくない。

 

「そうです……私ずっとタイガさんみたいな人を待ってたんです。どこまでも私を追いかけてきてくれるような人を……」

「あ、そ、そうなのか……」

 

何やらモジモジしながらそんなことを言うモンジュに大賀は微妙に動揺する。

モンジュの正体はサルだとしても、いま目の前にいるのは、普通に可愛い女の子だった。

 

「あの……タイガさん! 会ったばかりの人にいきなりこんなこと言っていいのかわからないんですけど……わ、私をこの島から連れ出してくれませんか!」

「連れ出すって……普通に出てただろ。俺の荷物を奪って行ったくらいだしよ」

「そうじゃなくて、その……私たちの村の掟なんです。この島をほんとの意味で離れていいのは、だ、旦那さんが外にいる場合だけなんです!」

 

「はぁ……って、ん!!? それってまさか……」

 

勢いに押されて頷く大賀だったが、何か聞き捨てのならないことを言われた気がして聞き返す。

すると――。

 

「は、はい……タイガさん、私をお嫁さんにしてください!」

 

頬どころか耳まで真っ赤に染めてそんなことを言い出すモンジュに、大賀も赤くなりながら両手を振った。

 

「いや、いやいやいや!!? そんなこといきなり言われてもよ! つーか、ダメだ! 俺には他に好きな奴がいるんだ!」

「大丈夫です! 私、正妻じゃなくても我慢します!」

「はあ!!? 何言ってんだ、お前! もっと自分を大事にしろ!!! いくら島の外に出たいからってよ……」

 

一夫多妻制でも構わない宣言をするモンジュに大賀は説得を試みようとしたのだが。

 

「あ、それなら私も連れてって!」

「私も私もー!」

 

「うおっ、な、何だぁ~!!?」

 

突然乱入してきた女の子たちの声によってそれは中断された。

そちらを向けば、窓からたくさんの女の子たちが大賀たちを注目しており、「私もおねがーい」と競うように挙手をしている。

 

「え、みんな……覗いてたの!!? でも……そうね、みんな一緒の方が寂しくないよね。うん、みんなでタイガさんのお嫁さんになりましょう!」

 

「はあ~~~!!? (こんなとこばっか、サルーーー!!? 俺は別にボスザルでも何でもねーぞ!)」

 

こんなの付き合ってられないと、大賀は自分の荷物を握り、声を上げながら立ち上がった。

 

「じ、冗談じゃねー! いくら可愛い女の子に変身できるからって、サルを彼女に――ってか、それすら飛び越えて嫁になんてできるか! しかもこんなにたくさん! 俺は他に好きな奴がいるって言ってんだろーが!」

「待って! 行かないで!」

 

その場から逃げ出そうとする大賀を、モンジュは抱きしめるようにして止める。

 

「んがぎぎ……(こ、このモンジュとかいう女。こんな細身のくせにスゲー力だ。さすがサル……!)」

 

大賀でも苦戦する力を発揮するモンジュだったが、男の意地で何とかその拘束から逃れることに成功した大賀は、もう一度はキツイと仕方なしにその手に戻ったばかりのプレートを使う。

 

「アクセス――“クイックマグネット”!」

 

大賀が投げたプレートはモンジュの身体と小屋の壁を通過し、その二つを磁石化してくっつけた。

 

「きゃっ……」

 

この魔法は、プレートが対象の中に止まらずに、その手に戻ってくるタイプなので効果時間は短いが、逃げるには充分過ぎる。

しかし、小屋の外に出ても女の子の姿をしたサルサルサル……どうやらこの島に大賀以外の男はいないらしく、貴重な出会いの場を逃さんとしているらしい。

 

「か、勘弁してくれ~~~!!!」

 

大賀はすぐに“プレート魔法”でスケボーを出すと、それに飛び乗った。

 

「“GO! エスケープ”!!!」

 

大賀の掛け声にいつも以上の速さで走るスケボーは島を駆け抜け、そのまま海に飛び出した。

そしてなんとそのまま海の上を走り出す。

大賀のどうしても逃げたいという意志が伝わっているのか、本体が沈むより早く駆け抜ける的なノリで、大賀の体重を支えながらも、ジェットスキーか何かのように、ひたすら走り続けていく。

それは陸地に辿り着くまで続き、砂浜に乗り上げた衝撃でバランスを崩した大賀が投げだされたことによって、ようやく終わりを迎えた。

 

「だは~~~!!!」

 

投げ出された大賀はひゅーっと魔法なしで空を飛び、ぽよんとした柔らかいものにぶつかって止まった。

 

「んぷ!!?」

「いたた……もう、なんなのね! って、あ、タイガ」

 

大賀を受け止めたのは青髪の知らない女の子の胸であった。

自分がその女の子を押し倒すような状況になってることに気づき、大賀は慌てて立ち上がる。

 

「す、スマン! ――って、誰だ?」

 

女の子が自分の名前を呼んでいたので、もしかして知り合いだったかと首を傾げる。

 

「あっ……きゅい、べ、別に誰でもないのね。ただの通りすがりなのね」

 

その青髪の、白ビキニの女の子は、何だか焦ったようにパタパタと手を振った。

 

「そ、そうか。まぁサルじゃなければ何でもいいんだけどよ……」

「サル?」

「あ、いや、こっちの話だ。ほんと悪かったな」

 

ちらりと尻尾がないことを確認してから、大賀はもう一度謝ってその女の子と別れた。

 

 

「大賀ー!」

 

大変な目に遭ったが、とにかくどうにかなったなと砂浜を歩いていると、前方からルーシーが手を振りながらふよふよと近づいてきた。

 

「おお、ルーシー」

「心配してたんだよー。プレートはちゃんと取り戻せたの?」

「ああ、何とかな……それよりも、ルーシー、その恰好どうしたんだ?」

 

大賀の前に浮かぶルーシーはこれまた緑色のビキニのような姿になっていた。

 

「えへへー。葉っぱを使って自分で作ったの。どう、可愛い?」

「ああ、まぁ似合ってんじゃねーか?」

「ほんと! 愛花たちがいないから服は手に入れ辛いんだけど、今回は頑張ってよかったー!」

「はは……そーか。お前と話してると、日常に戻った気がして安心するぜ」

 

大賀は目の前ではしゃいでいるルーシーの姿に安堵の笑みを浮かべた。

 

「え、サルを追いかけてる時に何かあったの?」

「いや、それがサルが彼女でよ」

「どういうこと?」

「だから、“しーもんきー”のことだよ」

「んー……ダジャレ?」

「ちげーって! ほんとにサルが女の子に変身してだな……」

 

そうやってルーシーに事情を説明しながら、みんなの下に戻った大賀が目にしたものは――何がどうなったのか砂浜に埋められた男子四人の姿だった。

こちらはこちらで何かをやらかして、制裁を喰らったらしい。

事情ははっきりしないが、結局その場にいなかった大賀の一人勝ち状態に落ち着いてしまったのだから、日頃の行いというか、彼らも日常を見つめ直した方がいいのかも知れない。

 

 

それはともかく……。

 

「うぅ、フラれちゃったぁ。何がダメだったのかなぁ」

 

大賀に逃げられたモンジュはしょんぼりしながら、大賀のことを思い返していた。

あらゆる障害を乗り越えて、自分を追いかけて来てくれた唯一の人間。

モンジュの中ではそれこそ物語の中の王子さまのように大賀が美化されて存在している。

 

「うん……やっぱり諦められない……。もしも……もしも、次また出会えることがあればその時は……きっと」

 

恋する彼女(サル)の想いが実るなんてことは果たしてあり得るのか。

また夏が訪れた時のために変なフラグを残して、今回はコメディチックにそんなメタ発言で終わりを迎えようと思う。

 

烈風? ……たぶん次だよ。




というわけで、短編集Ⅲに載ってる“しーもんきー”のネタ回でした。
まぁ知ってる人はそんなにいないかも知れませんが。
登場するサルはまんま“紋樹”を“モンジュ”としてますが、“アイカ”にすることも考えました。
いや、それこそサル全員が元の世界の女の子たちの容姿と性格みたいなね。
ただそれはちょっと狙いすぎかなと。
それにそれだと話も無駄に長くなりそうだったので、スパッと終わらせられる方を選びました。
実際いきなり現れたサルに愛花だとかを重ねるのも微妙な気がしたので。
大賀の原動力ですから、そっくりさんも無しで、唯一無二の存在のままでいいかなって感じです。
しかし結果的にゼロ魔の女性陣は放り投げっぱなしで終わってますね。
本末転倒な気もしますが、次があればティファニアとかもいるはずなので、その時にでも。
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