エム×ゼロの使い魔   作:第7サーバー

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さすがにアルビオン関連は1話で終わらないので、今回は導入回です。
なので大賀も見せ場とかはないですね。
まぁアルビオンでは間違いなく戦うだろうから、そっちで頑張ってもらう感じで。


BM4:無茶振りプリンセス

フーケの事件からしばらく経ったある日。

ある意味では大事件と言える状況をトリステイン魔法学院は再び迎えていた。

それと言うのもトリステイン王国の王女さまが、キュルケの祖国でもある隣国“帝政ゲルマニア”に訪問した帰りに立ち寄るという話になったからである。

その歓迎のために授業も休みとなり生徒たちは正門に並ばされた。

当然教師も緊張した面持ちで、コルベールなどは頭にカツラを被って準備したことから、その姿を見た大賀たちを爆笑の渦に叩き込んだ。

 

「へえ、あれがこの国のお姫さまか……」

 

大賀はそして現れた王女さま御一行の姿を、そして早業で敷かれたレッドカーペットに馬車から降り立った姿を見て感心したように呟いた。

ドレスにティアラにと、それは紛れもなく王女さま、お姫さまとしか言えない容姿の女の子だったからだ。

 

「何よぉ、ダーリンもあんなお姫さまってだけの女がいいの?」

「い、いや俺は(柊が……)――って、そのダーリンってのやめろってんだよ!」

「いいじゃないの。ギーシュとの決闘に続き、フーケを捕まえたあの手際の良さ! あたし、ほんとにあなたに夢中なのよ」

「か、勘弁してくれ……」

 

大賀としてもキュルケのような美人に気に入られることを悪く思っているわけではないが、やはり元の世界の柊愛花一筋の男であるうえに、ここまで積極的に迫ってくる女子の相手をしたことがないために困っていた。

実際、気軽に腕を組まれて胸やらを押し付けられると、正常な男子としては意識してしまうので、そういう煩悩を振り払うのに毎回必死だった。

しかし当のキュルケはというと――。

 

「あら、何あの美形。魔法衛士隊かしら」

 

などとあっさり他の男に意識を向けてたりするのだから、どこまで本気なのかがわからない。

 

「三日天下」

「そもそも天下を取った覚えはねーっての……」

 

タバサの呟きのようなツッコミに、この世界にもそういう感じの話が存在してるのかな、なんてどうでもいいことを考えながら大賀はそのトリステインのお姫さまの歓迎式典を見学していた。

そのお姫さまこそが、これから自分に無茶振りをふっかけてくる相手だなんて微塵も思わずに。

 

 

歓迎式典はつつがなく終了し、夜。

大賀はいつものように自室でルーシーと駄弁っていた。

そして今日もまた訪問者。

大賀の部屋を訪ねてくるのは、ルイズかキュルケか、こっちの世界に来てから自分でやらなければならなくなった洗濯などを手伝ってくれる学院付きのメイドの“シエスタ”くらいのものだ。

その誰だろうと思えば、ルイズだった。

しかしルイズは一人ではなく、その後ろにフードを目深に被った怪しげな人物を連れている。

 

「ルイズ。誰だよそいつ……って、お、おい」

 

ルイズは大賀の話を聞いているのかいないのか押し退けるようにしてズカズカと室内に上がり込んで来る。

フードの人物もその後に続いた。

 

「おい、何なんだよ一体!」

 

大賀がそんな二人の態度に少し声を荒げるが、フードの人物はその答えとしてにゅっと杖を握った腕を突き出した。

同時に短くルーンを呟く。

大賀には何の魔法を使ったのかわからなかったが、フードの人物はその魔法を使うと何やらルーシーの寝床でもある植木鉢を調べ出したので、さすがに大賀は慌ててその肩を掴んで止めに入る。

 

「お、おい! だから一体何だって聞いてんだよ!」

 

大賀に肩をグイッと引かれ無理矢理振り向かされたことでフードの人物のフードがハラリとはだけ、その素顔が露わになった。

 

「――って、お、おお、お姫さまじゃねえか!!?」

「はい。わたくしはトリステイン王国の王女“アンリエッタ・ド・トリステイン”ですわ。はじめまして、よろしくおねがいします、使い魔さん」

 

大賀は無礼にも指を突き指して驚きの声を上げた。

そんな大賀に対して、この国のお姫さまであるアンリエッタはふわりと微笑んで、そこにいるのが然も当たり前のように普通に目の前に立っていた。

 

 

「突然の訪問なのに失礼な態度を取ってしまってゴメンなさい。ただどこに目と耳があるかわからなかったから……でも、“ディティクト・マジック”も意外とアテにならないのかしら? その植木鉢辺りから何か反応がしたのだけれど……」

「いっ!!? いや、それはまぁ……虫かなんかにでも反応したんじゃねえっスか」

 

「(むー、大賀ってばヒドイよ! 私のことを虫扱いだなんて!)」

 

大賀の言葉に抗議の姿勢を見せるルーシーに、大賀は他の二人にはわからないように謝罪のポーズを取る。

一方でアンリエッタは「そうなのかしら? なら逆に精度がよすぎるのも考えものね」などと納得していた。

 

「それでルイズ。これっていったいどーいう状況なんだよ。お姫さまなんて連れてきてよ。そもそもお姫さまと知り合いだったのか?」

「姫さまがご幼少のみぎりに畏れ多くも遊び相手を務めていたのよ」

「……ああ、幼馴染ってことか」

 

大賀はルイズがかしこまった言葉遣いをしているので一瞬何言ってんだと思ったが、言ってることはとても単純なことだったとすぐに気づいた。

 

「そうです。ルイズとはいろんな遊びをしたわ。あの頃はほんとに楽しかった」

「えっと……俺がルイズの使い魔だから思い出話を聞かせに来たんスか?」

 

大賀がそう尋ねると、昔の思い出に心を馳せて緩んでいたアンリエッタの顔が一気に曇った。

 

「いいえ、違うわ。今回はルイズにあることをお願いしに来たのだけど、その話をルイズにしたら、ならわたしの使い魔も同行させますって言うから。ルイズの使い魔が人間だというのはとても驚いたわ。しかも同年代の男の子だなんて」

「はぁ……」

「ねえねえ、あなたがルイズの使い魔ってことは、ルイズとは“コントラクト・サーヴァント”をしたのよね?」

「ひ、姫さま! そういう話は!」

「何よ、幼馴染の、わたくしの大事なおともだちの初めての相手でしょう。こういう時とはいえ気になってしまうのは仕方ないわ」

「だ、だからそれは――あぅう……」

 

曇り顔をすぐにまた一変させたアンリエッタの質問に、大賀はルイズが困っている理由がイマイチわからずに頭に?マークを浮かべていた。

アンリエッタに嘘を言うのを心苦しく思っているのだろうか。

 

「あーもー! わかりました、姫さまにはほんとのことをお話しします!」

「えっ、おいルイズ!」

 

何を勝手なことを――と反射的に止めに入った大賀だったが、次に続くルイズの言葉でどうぞ話してくださいと意見を翻した。

 

「だって、このままじゃわたしがあんたとキスをしたって、姫さまに勘違いされたままの状態が続くのよ!」

 

そういうことである。

その瞬間になって、初めて大賀は“コントラクト・サーヴァント”の正体がキスであると知ったのだった。

 

「……ちょっ、ちょっと待て。ってことは、事情を知ってる学院長やハゲセンセー以外は、俺とルイズがキスをしたと思ってるのかよ!」

「そうなるわね……まぁわざわざそんなことを考えるメイジもそうはいないだろうけど」

「うあー、勘弁してくれ……(まかり間違って世界を越えて柊の耳に入るようなことがあったら死ねる)」

 

大賀の反応にさすがにそこまで嫌がられるのは心外だとルイズは若干不機嫌な様子になった。

 

「もう、ルイズってばそんなことになってたならもっと早くに教えてくれてもよかったじゃないの。まさかほんとは使い魔のフリをしてるだけのメイジだなんて! わたくし、てっきり先を越されたのだとばっかり」

「姫さま、だからそういう話はもういいでしょう。いい加減本題に入りましょう」

「……そうね。もう先も何もないものね。結婚するのよ、わたくし」

「はぁ。それはどうもおめでとうございます? 俺らと年齢変わらない感じなのに早いっスね。幼馴染のルイズを結婚式に招待するって話っスか?」

 

大賀は至極まっとうな思考回路でそういう結論を導き出したが、アンリエッタはそうではないと首を振った。

 

「そのわたくしの結婚相手というのはゲルマニアの皇帝で、これは同盟を結ぶための婚姻なのです」

「……政略結婚ってことっスか(おいおい、マジでそんなのがあるのかよ)」

「それに関する覚悟はすでにできています。わたくしが王女としてこの国に生を授かった以上それはわたくしの義務なのですから。ですが、このままではその同盟が危ないのです」

 

何だか急にキナ臭い話になってきたなと思いながら、大賀はアンリエッタの話を聞く。

 

「その同盟をよく思っていない者たちがいるのがそもそもの問題なのですが……使い魔さん、あ、フリをしてるだけだから使い魔さんって呼ぶのは失礼かしら」

「別に気にしなくていいっスよ」

「じゃあ使い魔さん、最近の政治情勢はご存じですか?」

「い、いや、さっぱりっスけど……」

「そう、なら簡単に説明するわね。ハルケギニアで主要な国と言えば我がトリステインにいま話に出たゲルマニア。それに大国“ガリア”に宗教国家“ロマリア”などあるのだけれど、今回関わってくるのは白の国と言われる“アルビオン王国”です」

「アルビオン」

 

近隣国家の名前くらいは最初にルイズに聞いていたが、それがどんな国なのかまでは知らない大賀は、ただその国名を確かめるように繰り返した。

 

「はい。アルビオンではいま貴族たちが反乱を起こしており、王党派と貴族派に分かれて日夜激しい戦いを行っております。そしてその戦いはどうやら貴族派が勝利しそうなのです」

「それって革命?」

「……革命だなんて! ただの恥知らずな反乱ですわ。とにかくその結果、現在のアルビオン王国は倒れ、新たな国が興されることになるでしょう。そんな彼らとしてみれば、周囲の国家の絆が強まるのはよくないことなのです」

「トリステインとゲルマニアに協力して潰されるかもしれないからか?」

「まぁその可能性もあります。それ以前に彼らは“聖地奪還”などを謳っておりますから、そもそも周辺国家はみんな邪魔に思っているのですよ」

「“聖地”?」

「あの凶悪なエルフたちの国の先にある大地のことですわ」

「はぁ……」

 

今度はエルフかと大賀は、この話の着地点がわからずに曖昧な頷きを返した。

 

「ですから、彼らはトリステインとゲルマニアの同盟を――わたくしの婚姻を邪魔する材料を血眼になって探しているのです。そして、その可能性となり得る物がアルビオンには存在しております」

「ヤバイじゃないっスか」

「ええ……。ですからルイズとその使い魔さんには、極秘裏にそれを回収してきてもらいたいのです」

「なるほど回収ね。それがルイズへのお願いってやつか――って、回収!!? それって戦争してる国にか!!? 冗談じゃねーよ!!! 何で戦争してる国になんて行かなきゃなんねーんだ!!? 危ねーじゃねーか! 死んじまったらどーすんだよ!!?」

 

大賀はようやく目の前のお姫さまが自分たちに何をさせようとしているのかを気づき声を荒げた。

多少普通じゃない環境にあっても自分たちは学生であって軍人じゃない。

無理を通して道理を蹴っ飛ばすような性格の大賀でも、いくらなんでも無茶振りすぎる。

無茶振りプリンセスだ。

 

「だからそんな重大な任務をわざわざわたしたちに託そうとしてる姫さまの気持ちを考えなさいよ! これは名誉なことなのよ!」

「お前にとっては名誉でも、俺にとってはお姫さまとか言われたところで、今日会ったばっかの他人だっての!」

「ちょっと! 姫さまの前で無礼なこと言わないで!」

「いいのですルイズ。わたくし自身、このお願いがぶしつけで大変な危険を伴うものであることは重々承知しています。ただ他に頼れる者がいないというのもまた事実なのです。どうかわたくしの頼みを聞いてもらえませんか? お願いします」

 

「「…………」」

 

お姫さまであるアンリエッタにそうやって素直に頭を下げられると強くは出られない大賀であった。

ルイズからも姫さまに頭を下げさせんじゃないわよと無言の圧力が飛んでくる。

 

「ま、まぁ……その、何だ……その回収してきて欲しい物ってのは何なんだ。まずはそれを聞かないことにはよ」

「……手紙です」

「手紙?」

「わたくしがアルビオンのウェールズ皇太子に認めた一通の手紙」

「それに何かヤバイことでも書いたのか?」

「はい……そうなりますね」

 

アンリエッタは顔を俯かせる。

かと思えば、がばっと顔を上げて取り乱したように叫び出した。

 

「ああ! 破滅です! ウェールズ皇太子は、遅かれ早かれ、反乱勢に囚われてしまうわ! そうしたら、あの手紙も明るみに出てしまう! そうなったら破滅です! 破滅なのです!」

「は、破滅ってそんな大げさな……」

「大袈裟ではありませんわ! このままでは同盟ならずして、トリステインは一国でアルビオンと対峙せねばならなくなります!」

「落ち着けって!」

「……このままではこの国にも戦火が。何千何万の人間がわたくしのせいで犠牲になるのだわ。それを止められるのはあなたたちだけ」

「(おいおいおい……マジか。マジでそんな重大事を俺たちに任せようとしてんのか。このお姫さまは。何でいきなりこんなことになってんだよ……!)」

 

ちらりと愁いを帯びた視線を向けてくるアンリエッタに、大賀はこれまでの誰よりも厄介な人間が目の前にいると、もはやこの場を切り抜ける以前に思考停止に陥りかけていた。

何せ大賀的には本来関係ないのかも知れないが、この国の未来を人質に取られたようなものだ。

自分の国を人質にして行かざるを得ない状況を作り上げて交渉してくるお姫さまなんていうのが存在してもいいのだろうか。

大賀の中の童話的なお姫さまのイメージ映像が音を立てて崩れていく。

現実なんてこんなものだ。

やはり自分には想い人である柊愛花しかいないと、お姫さま姿の愛花の妄想に逃げた。

 

「お願い、できませんか?」

「ぐっ……て、手紙を取ってくりゃいいだけなんだよな。手紙を取ってくるだけ。べ、別に戦争に参加しろとかってわけじゃなくてさ」

「そうよ! 慎重に行けば大丈夫よ、きっと!」

「だ、だよな! あ、あはは、ま、任せとけよお姫さま! そんな手紙ぱぱっと取って来てやるからよ!」

 

実際には冷や汗ダラダラで「(行きたくねー!!!)」と内心ではこんな風に叫んでいるわけだが、男として――そして性格的にも、女の子の頼みを断りきれないのが久澄大賀という人間だった。

 

「ちょーっと待ったァ!!! その任務、ぼくも同行させてもらおうか!!!」

 

「「「…………」」」

 

いきなりの乱入者――いや、闖入者に場の空気が止まった。

 

「ギーシュ、お前、何してんだよ」

 

その正体は大賀がこの世界に来てすぐに決闘することになった金髪の少年、ギーシュであった。

 

「話は聞かせてもらったよ。と言っても全部が聞こえたわけではないが、姫殿下! その困難な任務、どうかこのギーシュ・ド・グラモンにも仰せつけますよう」

「グラモン? もしやなたはあのグラモン元帥の」

「息子であります」

 

ギーシュはアンリエッタの前に恭しく立膝になって礼をした。

 

「ギーシュ! あんた! 立ち聞きしてたの? いまの話を!」

「そうだとも! 偶然見かけた薔薇のように見目麗しい姫さまの後を尾けてきてみればこんなところへ……そして微かに漏れ聞こえる声を頼りに推測すると、どうにも国の一大事という話ではないか! これはぼくの姫さまへの忠誠を示す絶好の機会!」

「何を堂々と言ってるのよ! はっきり言って縛り首ものよ、あんたのその行動は!」

「ははは、何をバカな。ぼくが姫殿下の不利になるようなことをするわけがない。姫殿下! ぼくは姫殿下のお役に立ちたいのです」

「(……つーか、あの“ディティクト・マジック”とかいうの全然無意味じゃねえかよ。ルーシーには反応したくせに。ギーシュの聞き耳するタイミングがよかったのか?)」

 

アンリエッタは少しの間、逡巡の素振りを見せていたが、結局最終的にはギーシュに頷いて見せた。

まぁアンリエッタはギーシュ本人を知っているわけではないから、グラモン元帥の息子という部分が決め手になったのだろう。

 

「わかりました。あなたはどうやらあの立派な元帥の勇敢な血を受け継いでいるようですね。よろしくお願いします、ギーシュさん。どうかこの不幸な姫をお助けください」

「姫殿下がぼくの名前を呼んでくださった! 姫殿下が! トリステインの可憐な薔薇がぼくに微笑んで……!」

 

ギーシュは嘘くさいくらい大袈裟に喜んでいる。

しかし、あれは本心からなる行動なのだろう。

さすがにあんなではないと思いたいが、大賀も愛花と接する時は結構そういう感じになったりするので気持ちはわからなくもないのが困るところだった。

 

「はぁ……本気ですか、姫さま。役に立たないですよ、こんなの」

「……こんなのとは失礼だなルイズ。きみに比べればぼくはよほど魔法が使えるぞ」

「ふん。でもタイガには魔法なしで負けたじゃないの」

「あ、あれは、油断してただけだ!」

「へー、とてもそうは見えなかったけど」

「(ど、どっちも頼りにならねえ……。こんなんで大丈夫なのかよ……)」

 

低レベルな言い争いをしている二人の姿に、正直大賀には不安しかなかった。

魔法学校に入学したり、異世界に飛ばされたりと色々あったが、自分の意思で戦争してる国に向かうなんてのは、いままでの人生の中でも間違いなく最大級の事件だ。

何せ冗談ではなく命の危険がある。

まぁ魔法世界なので、爆弾やらミサイルやらが飛び交っているわけではないのだろうが、それでも戦争という言葉だけでかなりの重圧を感じてしまう。

そんな状況において仲間がルーシーを除けばこの二人だけとは……。

 

「……では、明日の朝、アルビオンに出発すると致します」

「ええ、お願いね。ルイズ。ウェールズ皇太子はアルビオンの“ニューカッスル”付近に陣を敷いていると聞き及んでおります」

「了解しました。以前、アルビオンには姉たちと旅行をしたことがございますゆえ、地理には明るいかと存じます」

「頼もしいわ。けれどその目的を知られないように気をつけてください。もしもアルビオンの貴族に今回の旅の目的が知られてしまうようなことになれば、あなたたちは様々な妨害工作を受けることになるでしょう。それこそ命に関わるようなことも……」

「重々承知していますわ、姫さま」

 

大賀の内心を知ってか知らずか、ルイズは結構あっさりと重々承知してしまった。

表情は神妙にしているが、一体どれくらいの危険度を想定しているのだろうか。

今回の旅で、意外と頼りになるところがあるな、なんて嬉しい誤算があるといいのだが。

 

「じゃあルイズ。これをあなたに。先程あなたの部屋で書かせてもらった今回の件をお願いした親書よ。ウェールズ皇太子に渡せば手紙を返してくれることでしょう」

「はい」

「それとこれも持っていって」

 

そう言ってアンリエッタは自らの指に嵌めていた大きな宝石のついた指輪をルイズに手渡した。

 

「母君から頂いた“水のルビー”です。せめてものお守りです。お金が心配なら、売り払って旅の資金に充ててください。今回の報酬と言ってもいいかも知れないわね」

 

ルイズは深々と頭を下げた。

 

「この任務にはトリステインの未来が懸かっています。母君の指輪が、アルビオンに吹く猛き風から、どうか、あなたがたを守りますように」

 

不安は尽きない。

けれど指を組んで真摯に祈りを捧げているアンリエッタの姿に、もう逃れらないこの状況に、やらなければならないんだろうなという覚悟も湧いてきた。

元々前向きな性格の大賀だ。

だからこそできることがある。

 

アルビオンに吹く猛き風とやらはまだ知らない……それ以上の風速を持った台風のような男がその国に行くことがいま決定したというその事実を。




はたして作者は何に突き動かされているのか。
睡眠時間を削ってまで直し作業をしてる自分がいる。
何だかほんとに今月中に原作2巻までのアルビオンの話が終わりそうだ……珍しい。
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