今回、調教する小説は「仮面ライダーボルテクス」
過去を抹消しようとする未来人との戦いに巻き込まれてしまった五々冴月。
彼の命運は果たして……。
皆さんは私の小説に耐えきる事ができるでしょうか?
新たなライダーが歴史にその名を刻む瞬間を、それではどうぞご覧ください。
─────過去も未来もどうでもいい。
この
未来を見据えて田舎から来た奴らも多くいるが、必ず成功するわけじゃない。
失敗した奴らも数え切れない程いる。
成功者と失敗者。未来を勝ち取った奴と過去に取り憑かれた奴。
「また外れやがった畜生!!」
そんな街から少し外れた場所に俺の住む格安アパートがある。
真昼間から下の住人が騒いでいる。いつもの事だ。また競馬か何かで失敗したんだろう。
噂で聞いた程度だが、過去に社長をやっていたが業績が伸び悩み、最終的には会社を畳んだって話だ。
バイトでもなんでもしろって話だがな。どうにもやらずにギャンブルばかりに手をつけている。
これも聞いた話だが社長という椅子に座ってた奴は"教えられる"という行為が何よりも嫌になるらしい。それでバイト先でも上手く行かずに何度もやめてるってことだ。
そんなもんなのか。この人もきっと過去に囚われた1人だろう。
「………さて、俺も出掛けるとするか」
洒落た服なんてないが、まぁ無難なものでいいだろう。全身真っ黒コーデ。うん、これでいい。
俺は金もないし、彼女もいない、ただのフリーター。何か夢がある訳でも欲しいものがある訳でもない。ただ普通に"今"を生きていければいい。
それ以上でも、それ以下でもなく、あくまで普通。
「───────あっ」
ドアを開けると目の前に白衣を着た長い黒髪の女が立っていた。
「何か御用で?」
そう聞く以外にないだろう。
「ここは天報市のやっすいアパートでいいのかね?」
「そう、ですけど……」
「この男を知っているかい?」
女は手に持っていたノートパソコンを弄り、誰かが映った画面を見せてきた。
画面映るそいつは全く知らないし見た事もない。
「……知らないです」
「ふむ、そうか……ここに居ると聞いたんだが、やはり時間が過去過ぎるが故に住所自体が変わっているか。ダメ元で来てみたはいいものの、はてどうしたものか」
この女は何を言っているんだ?
「邪魔をしたね。また未来があれば会おうじゃないか」
絶対に面倒な事になるのはわかっていた。
ただ俺は何故か聞いてしまった。
「お嬢さん、あんた一体何者だ?」
自分でも馬鹿げた質問なのはわかっている。どう見てもただの女だ。
「んー……」
女は自分の唇に人差し指を当て、何もない空に瞳を向ける。
少し間が空いてから、女がニヤリと笑ってこっちを見た。
「未来人、と言ったら君は信じるかな?」
俺は過去も未来もどうでもいい。今を生きられれば充分だった。
ただこの出会いが俺の人生を大きく変化させるきっかけになるとは、この時はまだ想像もしなかった────────。
*****
カナタ─────それが女の名前らしい。
自分の研究所を持っていて、そこの所長をしているとか。
「それで君の名前は?」
カナタは人差し指を向けてきた。
「……言わなきゃダメか?」
「こんな見ず知らずの可愛くてミステリアスで天ッッッッ才の女を家に上げ、先に名前と正体を聞いてきた癖に君は名乗らないというのかね?」
「確かにそうだな。俺は『
こんな狭い部屋に男女がたった2人。そんな事今までの人生で一度もなかったな。
最後に友人を呼んだのはいつか。まぁ俺からしたらどうだって良い話さ。
「お嬢さん、あんた────」
「カナタだ。名乗った意味がないだろう。それに私はお嬢さんという歳ではない」
「そ、そうなのか?」
「実際は25歳。独身。彼氏は募集していた時期もあった」
「俺の1個上か……」
「ほう、ならお姉さんor様と呼ばせてあげよう。喜ぶといい」
「そんな事よりあんたさっき"未来人"言ってたな。アレはどういう事だ?」
「んん?未来人は未来人だよ。未来からやってきた」
そんなにわかには信じ難い話があるのか。いや、信じられるはずもない。
テレビのドッキリ企画か?何処かにカメラでもあるんじゃないだろうな?
そう思って辺りを見回してみると特にそれといった場所はない。当然だ。俺は殆ど家にいるし、こんな狭い部屋に仕掛けられる場所なんてある筈ない。
「さっきから何をチョロチョロと目をオタマジャクシにしているつもりかね?」
「その表現は初めて聞いたな」
「本当は君の様な過去人に話す事は御法度ではあるが、そうも言ってられないのが現状なんだ」
「……疑いは晴れてないが一応聞いておこう」
「ふむ」
そうしてカナタはノートパソコンを操作し始めた。
慣れた手つきで、無駄のない動き。
最後にエンターを軽快に押すと、何処からともなくアタッシュケースが現れた。
「なっ、どっから出てきた!?」
「これを見たまえ」
カナタがアタッシュケースを開くと、中にはスマホにしては分厚過ぎる液晶画面のついた物。
その隣に稲妻のマークがある指サック?なんだこれは……。
「なんだこれは……という顔だね」
「なんでわかんだよ」
「これは腰に装着するベルトだ」
「ベルト?にしてもデカ過ぎはしないか?」
「私たちが製作した『ボルテクスドライバー』と『サンダーツキサック』という。装着者に常人を超越した力を与えてくれる特別品さ」
「はぁん……」
「まだ信じられないかい?」
「見ない事には」
「ならばっ!」
急にカナタは立ち上がり、腹部にそのボルテクスドライバーを当てると、左端から帯が伸びて腰に巻かれる。
それからさっきのサンダーツキサックを右の人差し指にはめて、ベルト上部のボタンを押してから、サンダーツキサックで液晶画面上をスライドする。
のだが、何も起こらない。
「というプロセスだ」
「いや、全くわからんが」
「仕方がないだろう。これは選ばれし者にしか使えないありがたーい代物だからね」
「選ばれし者って……」
ますます疑いが強くなるが、カナタの目を見ると真剣に言っているのは伝わってきた。
「私はその選ばれし者を探しに未来からやってきたんだよ」
「………で、その未来から来た方がどうしてここに?本当に未来の技術があるってんなら場所くらいわかりそうなもんだが」
「おいおい未来人だからとなんでもできると思わないでくれたまえ────私は逃げてきたんだよ」
「えっ」
何を言い出すかと思えば逃げてきたと。
ただカナタの表情は険しくなっていた。こればっかりは俺でもわかる。
「遥か遠い未来。君が想像するよりももっと先の未来だと思ってくれ。今、未来では過去の消去『前滅計画』が行われ様としている。未来人たちは自分達の技術こそ最高点。それ以前の失敗談。つまり過去は不要だと訴え始めた。そこで過去を抹消して自分達こそが原点であるとする為、この計画が立案された。成功すれば未来より前の過去、今まで起きたことが全て無かった事となる……」
「は……?」
「私は天才だからね。研究所の所長をしていたという事で計画に強制的に参加させられてしまったよ。ただ私はそれを良しとは思わなかった。私の技術を身勝手な理由で使って欲しくないというのと、何より過去の人々を消すことなど私には到底できない……だから命からがらドライバーを持ってここに逃げてきたんだ」
あまりにも規模の大きい話だ。こんな事があり得るのか?
ただ本当なら気になる事がある。
「過去を消したら未来も消えるはず。そこら辺はどうする気なんだ?」
「それが未来の技術だよ。干渉しない様に捻じ曲げる気だ」
「そしてあんたはどうしてこの時代に?」
「この時代にドライバーの適合者……つまり選ばれし者がいるんだよ。ただ今と未来では大きく違っていて設定した場所もご覧の通り大外れ。急いでいたから改めて調べる事もできないし、探そうにもこのノートパソコンはドライバー関連のデータがある以外の機能はない。まぁ途方に暮れてしまっているわけだ」
「………」
カナタの事はやはり信用できない。
でも過去も未来も興味がないからこそ、今を大切にしなきゃいけないだろう。
「わかった。信じよう」
「お?私を信用くれるのかい?」
「あんたが嘘を言ってるならこんな大事なもん見せてこないだろ。それに信用はしてない。あくまでその話を信じただけだ」
「………なぁ、君」
「ん?」
「変わっているな」
「こッ………」
とにかく、俺はこのアパートには長くいる。
直近で引っ越した奴くらいは大家さんから聞ける筈だ。
カナタの話が本当かどうか。そいつを見つけて確定させてやる。
*****
あれから何時間が経ったのか。最後に時計を見たのはいつか。
結局なんの情報も得られないまま朝となった。
自宅で女と朝まで一緒にいるなんてこれも初めての経験だな。
「俺は何をやってるんだか……」
布団はカナタに使わせていた為、俺は畳の上で寝た。
そのせいで身体が痛い。起きあがろうと思って首を横に向けるとカナタが寝そべっていた。
「………」
「おはよう。昨日はよく眠れたかな?」
「お陰様で」
1日中探したんだ。疲労がとんでもなく蓄積して速攻で寝た。ウィンクすんな。
誰かさんのせいと言いたいが、了承してしまったものは仕方がない。
「カナタさん。今日は街に行こう」
「何か当てがあるのかい?」
「いや、気分転換だ。延々と探すよりも直感を信じてみる事にする」
「計画性がないなぁ君は」
「居候になり掛けてる人間が何言ってんだ……それに俺は今を大事にしたいんでね。未来を考えてどう動くかより、今考えて決める方が性に合ってる───────」
────天報市の人が賑わう街。
そこにある人気の少ないカフェのテラスでコーヒーを啜る。
「はぁ……やっぱり朝はコーヒーだな」
「砂糖が足りないぞ。私は最低10杯入れる」
「"最低"……?」
「何故ここにしたのかね?別に悪いとは言わないが、さっきすれ違った若い子らが向こうのカフェが有名で美味いと話していたぞ?」
「ああ、そうだな。その通りだが、俺はあまり明るい場所は好みじゃなくてね。こう暗いというか静かにできる場所の方がいい」
「………ふっ、実は私もそうだ」
昨日よりも柔らかい笑顔。
誰かが笑ってるのを見るのは嫌いじゃない。
「そういえばカナタさんの言っていた、未来人の前滅計画ってのはいつ始まるんだ?」
「ふむ、流石に直近では行われない筈だ。まだ"計画段階"、だからね」
「それなら急ピッチで探さなくても良さそうだな」
「私が人探しのツールを作ればいい話さ」
「そんな簡単に作れるのかよ……」
「材料さえあればだけどね」
流石自称天才なだけはあると言ったところか。
何はともあれ直近で来ないなら良しとするか。
「……ん?」
やけにカフェが騒がしくなってきたな。
カナタの方を見ると、
「────ッッ!!」
明らかに何かに怯え、顔が青ざめていた。
「カナタさ──────────!!」
声を掛けようとしたその時、激しい爆発音が響いた。
音がした方にへ咄嗟に振り向いた。するとビルの壁が見るも無惨に破壊され、そこから火の手が上がっていた。
先ほどまで笑い声で溢れていた街は、一瞬にして悲鳴と恐怖で溢れかえっていた。
「来てしまった……こんなに早くッ……!!」
「カナタさん、これは一体!?」
「昨日も言っただろう。未来人だ。まさか……まさかこんなッ」
カナタもこれは予期していなかった様子だ。激しく動揺している。
その視線の先に僅かだが、何かの影が揺らめいている。
「人……?」
そう思いたかったが実際はそうじゃない。
人の様に二足歩行ではあるが、その見た目は化け物というべき醜い姿をしていた。
アレは蜘蛛か?目玉がギョロリといくつも並び、背中から4本の鋭い爪が生え、何よりも異様なのはサイバーパンクなスーツを着用しているという事。
「な、なんだあれは……」
「未来人……『アブゾウル』だ」
「ア、アブゾウル……?じゃなくて未来人ってのは全部あんな化け物なのかよ!」
「いや違うさ。考え方は化け物と言っても差し支えないがね。あの腰に装着しているものを見てくれ」
「あれはッ!」
昨日見せてもらったドライバーの様だ。ただ随分と小型になっており、指を滑らせるくらいの液晶サイズはない。指で触れるくらいが限界だろう。
「あのドライバーはボルテクスドライバーのプロトタイプだよ。デメリットの方が多過ぎて破棄した筈だが……奴らはどうやら私の技術を勝手に盗んで勝手に使用している様だ。明らかな侵害行為だな」
「なぁこっちに来る」
「逃げるぞ、冴月ッ!」
カナタが俺の手を取った。でも、俺はその手を振り解いてしまった。
彼女が目を丸くして叫んでいるのがわかった。
だが、こうしなきゃいけない。身体が勝手に動いてしまったんだ──────。
「うおおおおおおおおおおおっ!!!」
──────目の前の子供が殺され掛けてるんだからよ。
「─────コッ……!!」
間に合いはしたし、背中を化け物に向けていた。
しかしまぁ、そんな事で守り切れる筈ないよな。こんな化け物相手に。
俺は背中を殴られて吹き飛ばされた。その衝撃は心臓を停止させるまでに至ったんだ。
「………………」
意識が遠のいていくのがわかる。
ああ、そうか。ここで死ぬのか。子供は無事なんだろうか。
だめだ。もう、眠い……───────────。
「君を、死なせない」
認証中────────────────登録完了。
全身に雷の様な衝撃が走る。その瞬間、俺の身体は飛び上がった。
一気に息を吹き返すと、目の前にはカナタがおり、そして俺の腰には───────ボルテクスドライバーが装着されていた。
「カナタさん……これ」
「すまない……君には嘘をついていた。確かに適合者は存在するが、"選ばれし者"に関しては嘘なんだ」
「ど、どういう事だ……?」
「私たちが探していた適合者は実際に存在する。しかし、適合せずともこのドライバーを使用する唯一の方法があるんだよ」
「……まさかッ!?」
「そう、今の様に死に近づけた状態で電気ショックを与えなければならないというもの。ボルテクスドライバーに内蔵された電気エネルギーは生存している状態だとより大きな力を生み出し、逆に装着者を感電死させる恐れがあるんだ。適合者は生存した状態でそれを可能とする1番安全な方法が取れる」
「でも……良かったのか。俺で。こいつは大切なもんだろ?」
「良かったも何も適合者が見つからず行く宛のない私を信じてくれたんだ。これくらい礼のひとつやふたつ……それに」
「それに?」
「未来だろうと過去だろうと"今"を生きる人が目の前で死ぬのは嫌なのだよ」
これで信用するなってのがおかしな話か。
膝をつき、手をつき、全身に力を入れて立ち上がる。
「来たな、未来人」
俺は蜘蛛の化け物に視線を向ける。
すると奴は笑う。ニタリと微笑む姿は悍ましさが増す。
「ほう、過去人という異物の分際で中々しぶといな。異物は異物らしく除去してやらないとなぁ?」
「異物はお前らの方だ。勝手に過去に来て消すだのなんだのと。そんなお前らのいる未来なんてクソみたいな所なんだろうな」
「か、過去人の分際で我々を愚弄するか!!許さんッ!許さぁああああああああんッ!!」
咆哮を上げて怒り狂うあいつを尻目に、カナタは俺の右の人差し指にサンダーツキサックを嵌め込んだ。
「"仮面ライダー"になってくれ」
「仮面ライダー……?」
「君に過去を……未来を託す事になる。急にこんな重荷を背負わせてしまい申し訳ない。ただ────────」
「俺は、過去も未来もどうでもいい」
次に何があるとか、その前の事とかなんだっていい。
「ただ俺は"今"を生きる為に、戦うッ!」
左手でボルテクスドライバー上部のボタンを押し、起動。
《ライディング!》
ドッ、ドッ、ドッ───────と、心臓の鼓動音が鳴る。
サンダーツキサックを嵌めた人差し指でドライバーの画面を1回叩く。
《サンダー!》
ドドッ、ドドッ、ドドッ、ドドッ、ドドッ──────。
先程よりも早く鼓動音が鳴り響く。
そして自然とこの掛け声が出てきた────────。
「変身ッ!!」
人差し指を画面に当てがい、右から左へとスライドさせる。
画面中央に現れた線が激しく波打ち、心電図の様に規則的に並び、最後に中央部が稲妻のマークを形成。
赤い2つの角と肩の装甲、青い仮面とボディに装甲を纏い、目は黄色で稲妻を模し、胸の中央には稲妻を思わせる黄色のパーツがあり、その先端が首の左側から突き出す。
《仮面ライダー!サンダー!ゴー!ゴー!ボルテクス!》
「さぁ、今が攻め時だな」
前半後半に分けさせて頂きました……。執筆が遅過ぎて申し訳ない。
次回、第2話「カミナリ注意報」後半
これから仮面ライダーボルテクスをよろしくお願いします!!