仮面ライダーボルテクス   作:辰ノ命

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皆さんご無沙汰してます。
それではどうぞご覧ください。


第2話「カミナリ注意報」下

 〈仮面ライダーボルテクス サンダーマーク〉

 それがこの姿の名前らしい。

 仮面ライダーだかなんだかよくわからないが、雷のような衝撃が全身に伝わってくる。力が漲る。今ならなんでもできそうだ。

 

「そ、その姿は……カナタッ!!貴様、アブゾウルを裏切ってタダで済むと思うんじゃないぞ!!」

 

 吠える未来人にカナタは鼻で笑って見せる。

 

「ふっ、彼の言う通り未来人はクズで間抜けで腰抜けのヌケヌケ人だね。そんなヌケヌケ人の方々に向け、天才カナタ博士はここに宣言しよう─────必ず君たちを倒す、と」

「貴様ァァァァァァッ!!」

 

 頭をバカみたいに振り回しながらカナタへと突っ込んでいくアブゾウル。

 だが、周りが見えていない。頭がいいのか悪いのかよくわからないな。

 

「はっ──────」

 

 地面を蹴るとまるで自分が雷でもなったかの様に、一瞬にしてアブゾウルの目の前に立ち塞がる。

 驚いているのも束の間、奴は蜘蛛の顔面から伸びた鋭い牙を俺に突き立ててきた。

 

「ふんっ!!」

 

 俺にできることはただ一つ。この全身に溢れんばかりの力を信じて全力で殴るだけだ。

 拳を固めて奴の顔面を捉える。

 

「プギィ……!?」

 

 鈍い音を立て、拳がメリメリと顔面に埋まる。

 そのまま力任せに振り抜くと、奴は後ろにあった建物に衝突した。

 

「マジかよ」

 

 想像以上の力。これが────────。

 

「仮面ライダーボルテクス、だね」

 

 俺の考えていることがわかったのか、カナタが急に脳内に割って入ってきた。

 

「………な、なんでわかるんだ?」

「ん?いやまぁこのパソコンに君のデータが全て入っているからね。((かっこ)先程ドライバーで君を認証した時から)(かっことじ)思考や感情の変化なんかもリアルタイムで調べられる優れものさ」

「気持ち悪いからやめてくれ」

「何が気持ち悪いだ。君を生かしてやって、イカした格好にしてやったんだから感謝したまえ」

「さっきまで若干の感傷に浸ってた奴が何言ってんだ……」

「それよりも。ほら、来るよ。迎撃したまえ」

 

 砂埃が立つ中、そこから白い何かが飛び出してきた。

 それを理解する間もなく、両腕がいとも簡単に拘束されてしまう。

 

「なんだこれは……くそっ、粘ついて取れないッ!」

「くくくっ、蜘蛛の糸は鋼鉄の数倍。そう簡単に剥がせはせんよ」

 

 アブゾウルの両手から白く粘ついたもの……そういうことか。

 人間のサイズになるとここまで厄介になるのか。

 

「そうらっ!」

「うおっ!?」

 

 糸を絡み付けたまま奴はその場で高速回転を始めた。

 それにより俺の身体も宙へと浮かび、無様に振り回される。

 強い遠心力が掛かり抵抗もままならない。伸縮性もある為か周りにある建物に掠り始める。このままどこかへ叩きつけるつもりだろうか。

 その時、カナタが声を掛けてきた。

 

「君は今、"雷"だ!蜘蛛如きに負けるはずがない!」

「カナタ……ッ!」

「イメージするんだ、今の君をッ!得意だろう?"今"を想う君なら」

「………ふっ。ああ、そうだな」

 

 壁に激突する直前、思いっきり蹴り飛ばしてやった。

 力のベクトルが変わる。それは糸に伝わる。

 

「ぬっ……!?」

「───よう、来たぜ」

 

 もう目の前にいた。両手を強く握ると、雷のエネルギーが拳から溢れ出す。

 

「オラァッ!!」

 

 空手やらボクシングやら格闘技はやったことはない。

 ただ自分が思うままに奴を殴りまくるだけだ。それだけはわかる。そうやればそうなるってな。

 殴る度に奴の身体は硬直する。少しでも触れれば雷の様な衝撃、いや、雷がそこから全身に伝わる。

 

「過去の、ぶへっ!?ゴミの分ザッ……ごぼおっ!?」

「舌噛むぞ、蜘蛛野郎ッ!」

 

 拳のラッシュの最後、奴の顎目掛けて雷のアッパーを喰らわせると、何かが砕ける音と共に奴は地面へと転がった。

 だが、奴はすぐに体勢を立て直し、鋭い目つきで俺を睨んできた。

 

「しぶとい奴だな」

「はぁ……はぁ……過去人に遅れを取るなどという事は絶対にないッ……!!」

「それにしてはだいぶダメージを喰らってるみたいだが?」

「黙れッ!!」

「人の技術を盗んでおいて……いや、そもそも過去の偉人たちが生み出した技術を自分たちのものだと主張するその傲慢さ。未来人ってのは全員こんな頭おかしい連中なのか?」

「黙れ黙れ黙れェェェェェェェッ!!」

 

 飛び掛かってきた奴をすかさず前蹴りを腹にめり込ませた。奴はくの字に曲がって吹き飛んだ。

 そして間を置かず、雷の様にバチバチと音を立て奴を追撃する。

 

「今が攻め時だな」

 

 迫る〜アブゾウル〜〜〜♪

 

「はぁっ!」

 

 未来からやってきた〜〜〜♪

 

「ふんっ!」

 

 倒すのは誰だ〜〜誰だ〜〜♪

 

「はっ」

 

 我らが〜仮面ライダーーーーー♪

 

「は」

 

 ボルテクス〜〜〜♪

「うるせーよッ!!!!!!!」

 

 さっきから横で空気を読めない誰かが歌っていた。

 その空気の読めない奴こそが俺を生かしてイカした男にしてくれた張本人。

 

「う、うるさいだと君ィッ!?私が作詞作曲したこの歌を、私の美声と共に聞きたくないのか!?」

「聞きたくないわ!!それを戦いの最中に聞かされる俺の身にもなってみやがれ!!」

 

 ご丁寧にスピーカーまで置かれている。どこから出しやがった。

 

「待ってくれ……まだ1番も歌い終わっていないんだ!」

「知らねーよ!そもそもなんだこれは!」

「仮面ライダーボルテクスのオープニング曲に決まってるだろう!!?」

「知らねーよッ!!」

 

 見ろ。あんなにキレ散らかしてたアブゾウルが困惑してやがる。

 

「私はね、冴月。仮面ライダー……ヒーローとはどういうものかと昔の文献を漁りながらひたすらに考えた。そして導き出した答えがコレだったという訳だ」

「……だからなんだ」

「かっこいいだろう?」

「ダサいな」

「君ィ!今!全ての!ヒーローファンたちに喧嘩を売ってしまった様だねぇッ!!!!!!!??」

「だから知らねーって!!」

 

 カナタと言い争っていた時、背後から怒声が聞こえた。

 

「貴様らいい加減にしろ!!私を舐めているのかッ!!」

「舐めてない。ふざけているのはこいつだけだろ」

 

 カナタの方を指差すと、彼女は不服そうに腕を組み滅茶苦茶に睨んできた。

 

「未来人を愚弄し、ましてや戦闘中にこんな……ッッッッ!!!許さんぞッ!!」

「あーあ、これはもう止まらないな」

 

 それからアブゾウルは爪を立て、牙をカタカタと揺らし、目を真っ赤にさせて前傾姿勢を取る。

 確実に俺の首を取ろうとしている。

 その殺気がヒシヒシと伝わってきた。

 

「カナタさん、どうする?」

「仕方がない。ここは一気に必殺技で決めてしまおう」

「あるのか?」

「当然」

 

 俺は前に出る。

 それと同時にカナタも例の"必殺技"のやり方について話し出す。

 

「まずボルテクスドライバーの画面を2回タップしてからスワイプ」

「こうか」

《サンダー!チャージ!》

「それからどうすれば──────」

 

 ここで聞いてしまったのが、いや、聞かなくてもそうなっていた。

 

「叫べ」

「叫べ……?」

「音声認識でね。必殺名を叫ばないと反応しない仕組みなんだよ」

「なんて言えば?」

「ケットバースト」

「は?」

 

 今、この女は、なんと、言った?

 

「ケットバースト」

「聞こえてた。マジですか?」

 

 つい敬語になってしまった。

 

「蹴飛ばすとバーストを掛けた非常に秀逸な必殺名……くぅっ!!我ながら天才だッ!!」

「この人マジか」

「さぁ、言ってみたまえ!」

「…………………ケットバースト」

《音声認識・エラー》

「クソッッッッ!!!!!!!」

 

 この状況で止まってくれる奴などいないだろう。ここは戦場だ。

 アブゾウルが隙をついて飛び掛かってきていた。挙句マウントポジションを取られてしまう。

 鋭い爪を両手で掴みつつ、尖った牙をなんとか近づかせまいと腕を狭めてガードする。

 

「殺してやるッ!!」

「ィッ……!!」

 

 肩が熱い。見ると奴の口から緑色の液体が流れている。それが肩にポタッと落ちると、そこが焼ける様に痛い。

 これは間違いなく毒だ。

 

「我々未来こそ正義!!貴様の様な要らぬ過去とこれより起こり得る未来など不要!不要ッ!!我々のいる未来こそが絶対なのだッ!!」

「………お前らも変わらないな」

「なにぃッ!!」

「お前らにとっての"今"を見てる。それは未来も過去も関係ない。結局変わることを恐れているんだ。変わることを恐れた連中が行き着く先は何もない。そんなに"過去"(今)が怖いか!!」

「貴様ァッ!!」

「こう言えばいいんだろうッ─────────!!」

 

 もう一度ボルテクスドライバーを2回タップし、スワイプする。

 

「ケットバーストォォォォォォッ!!!」

《サンダー!ケットバースト!!》

 

 胸の稲妻を模した部位に緑色の光が明るく輝いた。

 全身から溢れ出てしまいそうなほどのエネルギーが循環し、左側から突き出た稲妻の先端から緑色のエネルギーが噴き出した。

 

「うおおおおおおおおおおっ!!」

 

 力任せにアブゾウルを引っ剥がし、両足で上空へと打ち上げる。

 

「ぬおっ、おおおっ!?」

 

 両足で天高くジャンプし、身体を捻りながら片足を前に出す。

 

「はあぁァァァァァァァァァァァァァァァッ─────」

 

 エネルギーを纏った足が奴を捉える。

 そして稲妻の様にジグザグに地面へと落下する。

 

「はぁぁッ!!!」

 

 雷の様な衝撃が奴を襲う。

 腰に巻いていたドライバーもその力によって粉砕され、アブゾウルは怪人の姿から本来の人間としての姿を取り戻す。

 地面がバチバチと音を立てる。まるでマフラーの様に靡いていたエネルギーがやがて尽きる。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 なるほど。俺の今はここから始まるのか。

 余韻に浸っていると、カナタが近くまで駆け寄ってきた。

 

「よくやってれた」

「一時はどうなるかと思ったが……まぁやってみる事にするよ。仮面ライダーボルテクスとして今を守る為に」

「………ありがとう」

 

 そう言っていると未来人の身体が消え掛かっている事に気づいた。

 

「お、おい!」

「ああ、問題ない。彼は……そのまま未来へ帰還するだけさ」

「そうか……?」

「…………」

 

 カナタは明らかに言葉を濁した。

 だから問い詰める。嫌な予感がしたからだ。

 

「はっきり言ってくれ、カナタさん。あの人は未来に帰った後どうなるんだ?」

「…………」

「アブゾウルは平気で過去を見下し、そして滅ぼそうとする人間たちだ。そんな奴らの元に帰って、任務が失敗したと言ったら無事でいられるのか?」

「…………」

「そりゃはっきりと言えないよな………ただ俺はそれを知る権利がある。あんたが託してくれたこのボルテクスドライバーがある限り」

「…………」

 

 カナタは終始無言であった。

 表情は崩す事はなかったが、言葉に詰まっている様子だった。

 

「…………冴月、はっきりと言う」

「ああ」

「任務を失敗した未来人。つまりアブゾウルは未来に帰った後───────」

 

 俺は、この業を背負って戦わなければならない。

 

「アブゾウルの恥とし処刑される」




本当に遅くなって申し訳ございません。2話目なのに……。
実質1話ですけど。

次回、第3話「カクゴを持つ事」上

次回もよろしくお願いします!!
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