暫定解   作:sososo

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第二章 棄却
メイ・ジュン・ライ・スト


 金属板を持ち上げると、その下から細い管が三本転がり出た。

 

「あ、これいい」

 

 メイがしゃがみ込み、管を拾う。

 離れたところに、四輪の台車が置いてある。

 その横にいたジュンが、メイの手元を見た。

 

「メイ、それ売れないよー」

「違うよ、良い管なんだよ」

「ああ、家で使うのね」

 

 メイは管を持ったまま、何か考えるように眺めている。

 ライが両手に抱えていた部品を、そのまま台車へ落とす。

 

「がっしゃーん」

 

 ジュンが台車を覗き込む。

 

「おお、沢山持ってきた」

「ジュン。使えないのだらけなのに褒めると、私は調子に乗るよ」

「そうだね、こら!」

「ひい、逃げろ~」

「ほんとにつかえないの多いな……」

 

 ライは笑いながら廃材の間へ逃げ込む。

 先でしゃがんでいたストが顔を上げた。

 

「お、ライ良いところに。手伝って」

「えー」

 

 ストが足元の部品を指す。

 ライは片側を持ち上げた。

 

「なにこれ、おも!」

「多分ね、術式入ってる」

「そっか。じゃ、持ってかないとね」

 

 ライが軽くしようと魔法をかけた時、何かが二人の横を通った。

 

「ん?」

 

 膝より低いくらいの高さで、丸いものが地面すれすれを滑るように進んでいる。

 下から伸びた四本の短い脚が、時々地面へ触れていた。

 二人の前を、そのまま通り過ぎる。

 

「……ねえスト、あれ魔物?」

「ぽいね」

 

 魔物の脚が伸び、脚先が地面へ張りつくように広がる。

 丸い身体が板材の上へ滑るように寄った。

 柔らかい表面が沈み、板材の端が、その中へゆっくり埋まっていった。

 

「入ってった」

 

 板材がすっかり見えなくなると、魔物の身体は少し膨らんでいた。

 魔物は脚を縮めると、そのまま台車の方へ滑っていった。

 

 台車のそばでは、ジュンが集めた部品を分けていた。

 近づいてくる気配に顔を上げる。

 

「あ、持ってき――」

「わあ!」

 

 ジュンは尻もちをついた。

 魔物はそのまま台車へ寄っていく。

 部品を抱えたメイも戻ってきた。

 

「なにそいつ」

 

 ジュンは何度も首を振った。

 魔物が脚を伸ばし、身体を固定する。

 その下から、さっき飲み込んだ板材がゆっくり押し出されてきた。

 板材はそのまま台車の上へ載せられる。

 メイが魔物を覗き込む。

 

「……えっと、ありがとうございます」

 

 魔物は何も返さない。

 ジュンが台車の板材を見た。

 

「あ、手伝ってくれたってこと?」

「わかんない。魔物?」

 

 魔物はまた廃材の方へ向かっていった。

 ストがライと一緒に追いついてくる。

 

「なんか魔物いなかった?」

「うん。手伝ってくれた」

 

 ジュンはそう答えながら、メイの方を見た。

 メイは少し離れた廃材の陰から、魔物の動きを追っていた。

 ストが声をかける。

 

「あんまり近づくと危ないかもー」

 

 メイは答えず、そのまま魔物を目で追っていた。

 

「なんか吸い込んだー」

 

 魔物が廃材の間から戻ってきた。

 三人が離れて見ていると、魔物は台車のそばで脚を伸ばし身体を固定する。

 下から小さな金属片が押し出され、台車の横へ置かれた。

 魔物はまた廃材の方へ向かっていった。

 ジュンが魔物を指す。

 

「ほら、手伝ってくれてる」

「へー、ありがたいね」

 

 ライが金属片を手に取った。

 ストは台車の中へ目を移す。

 

「作業員さんのとこのかな」

 

 ジュンはまだ、魔物を見ていた。

 

「かな」

「まあ、今度聞いてみよっか」

 

「そろそろ帰るよー」

「あ、待って。これだけ」

 

 メイが最後の部品を拾い、台車へ載せる。

 四人が台車を押して歩き出す。

 ストが後ろを見た。

 

「来てる」

 

 さっきの魔物が、少し後ろをついてきていた。

 メイは魔物の方を見ず、積んだ部品を見ながら言った。

 

「ご主人様じゃないよー」

 

 坂道に差しかかる。

 ライが台車の前へ回り、取っ手を掴んだ。後ろからジュン、メイ、ストが押す。

 

「よいしょー」

 

 台車がゆっくり坂を上っていく。

 後ろから、魔物が近づいてきた。

 

「え、なに?」

 

 ジュンが押しながら横を見る。

 魔物は台車の横へ並ぶと、脚を地面へ固定した。

 柔らかい身体が荷台へ寄り、大きな部品がその中へ沈んで消えた。

 急に台車が軽くなる。

 

「うわっ」

 

 前を引いていたライがつんのめり、地面に顔をぶつける。

 

「いててて、なーにー? もう」

 

 体勢を戻しながら、後ろを振り返る。

 魔物は脚を縮め、台車の横を滑るように進み始めた。

 ジュンがライに言う。

 

「なんか持ってくれた」

「あらあら、やっさしい!」

 

 メイは魔物を観察している。

 

「持っていくなってわけじゃないのかな」

「わかんないよ。そのまま取られるのかも」

 

 ストの言葉にメイが顔をしかめる。

 

「え、最悪」

 

 ストは笑った。

 ライが取っ手を握ろうとしてやめた。

 

「なんか三人で押せそうだね」

 

 ライはそのまま先へ歩いていく。

 ジュンの声が後ろから飛ぶ。

 

「まだ重い!」

「その子にもっと持ってもらいな!」

 

 魔物は台車の横に並んだまま進んでいた。

 

 魔物も家までついてきた。

 四人が荷物を下ろし始めると、魔物も台車のそばへ寄ってきた。

 部品を一つ身体の中へ入れる。

 

「あ、それこっち」

 

 ジュンが何となく指を差す。

 魔物は進み、指された場所とは違うところへ部品を置いた。

 

「わかんないか」

「馬鹿だ」

 

 メイが言った。

 ライが持っていた荷物を置き、家の中へ入っていく。

 

「じゃ、ご飯作ってくるねー」

「あ、逃げた」

 

 ストが魔物の置いた部品を持ち上げ、別の場所へ置き直す。

 魔物はその場で止まっていた。

 身体の中から別の部品が押し出される。

 今度は細長い部品だった。さっきのものとは形も材質も違う。

 魔物はそれを、ストがさっき部品を置き直した場所へ運んだ。

 

「あ、そこじゃない」

 

 ジュンが部品を置き直した。

 

「やっぱり馬鹿だね」

 

 ストがメイに金属片を渡す。

 

「賢いほうじゃない? 一回見ただけで覚えたんでしょ」

「場所だけだよ」

 

 最後の部品を下ろし終える。

 魔物はまだ台車の横にいた。

 ジュンが魔物へ手を伸ばす。

 

「今日は助かった」

「駄目。報酬とか要求されちゃう」

 

 メイが遮った。

 ストも続ける。

 

「そうそう。こいつが勝手に手伝ったんだから」

「ストまで何言ってんの」

 

 ジュンが二人を見る。

 ストは笑って、家の方へ向かった。

 

「じゃあね」

 

 メイもその後についていく。

 ジュンは一度魔物を見てから、家へ入った。

 中からライの声がした。

 

「終わったー?」

「終わったよー」

 

 料理をしながら、ライが入口の方を見る。

 外には、丸い魔物がいた。

 

「あら、まだいる」

 

 魔物はしばらく、その場にいた。

 

     ◇

 

 翌朝。

 ジュンが扉を開けた。

 

「……ん?」

 

 閉める。

 もう一度開ける。

 丸い魔物が、昨日とほとんど同じ場所にいた。

 隣から覗いたメイが、首を傾げる。

 

「暇なのかな?」

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