スキル(笑)ってとんでもないね……~うちを笑った相手が死ぬんですが、これはうちのせい?~ 作:tuna&mayo
『スキル(笑)ってとんでもないね……』
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!
せっかく完結したので、ここでは本編中では特に説明しなかった、作品の元ネタというか構造の話を少しだけ。
この作品、実はほんのりと日本神話のスサノオ追放譚を下敷きにしています。
とはいっても、神話を忠実になぞった話ではありません。
「構造だけちょっと借りて、好き勝手ひっくり返した」
くらいです(笑)
ざっくり対応させると、凪沙がスサノオ的な位置。
王城や人間社会が、高天原的な「追い出される側の世界」。
そして追放されたあとに辿り着くダンジョンが、新しい土地や居場所に当たります。
スサノオは高天原を追放されたあと、出雲へ降り、八岐大蛇を倒し、やがて須賀に宮を建てます。
一方で凪沙は、追放される。
↓
新しい土地へ行く。
↓
そこに危険なものがいる。
↓
倒さない。
↓
名前をつける。
↓
家族にする。
ということをやりました。
……だいぶ違うな?(笑)
エミは、物語上の位置だけを見ると、八岐大蛇みたいな「新しい土地に存在する危険なもの」の役割を持っています。
でも、凪沙はエミを討伐しません。
そもそも彼女、スキル《笑》に対してかなり早い段階から普通に話しかけてるんですよね。
現象として扱うでもなく、武器として扱うでもなく、呪いとして切り捨てるでもなく、最初から妙に**「話が通じるかもしれない何か」**として接している。
今思うと、エミの懐柔って名前をつけた瞬間から始まったんじゃなくて、
凪沙が最初に《笑》へ話しかけた時点でもう始まってたんじゃないかと思います。
あと《笑》そのものには、ちょっとメドゥーサ的な「本人に殺意がなくても、存在や条件そのものが危険になる」イメージも入っています。
凪沙は別に誰かを殺したいわけじゃない。
でも、条件を満たした相手が勝手に死ぬ。
本人の善悪と能力の危険性が一致しない。
そこから、
「危険だから排除するのか」
「危険だけど共存方法を探すのか」
という方向へ話が転がっていきました。
そしてエミについては、もう一つ。
日本の昔話や信仰には、恐ろしいもの、祟るもの、扱いきれないものを、ただ消すのではなく、名前を与えたり祀ったりして秩序の中へ取り込むという考え方が結構あります。
祟り神とか御霊信仰とか、そういう方向ですね。
《笑》も最初は、正体不明。危険。制御不能。どう見ても呪い。
だったのに、
エミという名前を得て、
人格を認められて、
最終的には家族になった。
なのでこの話、
ものすごく雑にまとめると、
追放されたスサノオが、ヤマタノオロチを倒さず、名前をつけて土地神と一緒に家族にしてしまった話みたいなものです。
……神話関係者に怒られそう(笑)
そして最後。
凪沙はもう一度、世界から追放されます。
一回目の追放では、凪沙が居場所を探しに行きました。
でも二回目では、もう居場所も家族も一緒でした。
ここは最初の追放との対比として、かなり気に入っているところです。
ちなみに、この先もし第二部を書くことになった場合。
ダンジョンへ「居場所のない人」が少しずつ集まって、
気づけば集落になって、自治領みたいになって、そのうち、
「これもう国じゃね?」
みたいな話になっていく可能性があります。
そこでふと思ったんですが。
国造りって、それ大国主の担当では?
作者も途中で気づきました(笑)
まあ、そんな感じで。
表向きは、
「笑った相手が死ぬスキルを押しつけられた女の子が引きこもる話」
でしたが、その裏では、追放された人が新しい土地へ行き、危険な存在と出会い、それを倒すのではなく、名前をつけ、居場所を作り、最後には家族ごと次の世界へ行く。
そんな話でもありました。
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
凪沙とココとエミの物語は、ひとまずここで一区切りです。
またどこかで三人が暴れ始めたら、そのときはよろしくお願いします(笑)