スキル(笑)ってとんでもないね……~うちを笑った相手が死ぬんですが、これはうちのせい?~   作:tuna&mayo

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第009話 値段がおかしい

 

 

「では! ダンジョンポイント講座を始めます!」

 

 ココが胸を張った。

 

「後でって言ったよね」

 

「今が後です!」

 

「便利だね、その解釈」

 

「ありがとうございます!」

 

「褒めてない」

 

 凪沙は毛布の上に座ったまま、ココの前に浮かぶ表示を見る。

 

《DP残量:■■■■■□□□□□》

 

「減ってる」

 

「お部屋を作りましたので!」

 

「布団より部屋の方が安いんだ」

 

「素材と構造によります!」

 

「ふうん」

 

 ココが勢いよく両手を広げる。

 

「DPは、生物がダンジョン内で活動すると少しずつ蓄積します! 長く滞在すればその分増えます! 侵入者でも、住人でも、動物でも!」

 

「死ぬと?」

 

「増えます!」

 

「やっぱり」

 

「しかも効率がいいです!」

 

「それは使わない方向で」

 

「はい!」

 

 返事は早い。

 

「ほかにも増える条件はあります!」

 

「例えば?」

 

「……全部は分かりません!」

 

 エミが淡々と補足する。

 

『現在確認できる範囲では、滞在時間と生命活動に伴う情報量が蓄積量へ影響しています』

 

「情報量?」

 

『詳細は未解析です』

 

「じゃ、まだ分からないんだ」

 

『はい』

 

 凪沙は残量表示へ目を戻す。

 

「これ、増えたら何に使える?」

 

「いろいろです!」

 

「それ昨日聞いた」

 

「では実演しましょう!」

 

 ココが表示を切り替える。食料、衣類、家具、道具と、細かな項目がずらりと並ぶ。

 

「欲しいものを選んでください!」

 

「じゃあ食べ物」

 

「何がいいですか?」

 

「パン」

 

「もっと夢のあるものを!」

 

「食べられればいい」

 

「ではパン!」

 

 ココが指を振る。

 小さな光。

 凪沙の前に、丸いパンが一つ落ちた。

 

「出た」

 

「出ました!」

 

 残量表示は、ほとんど動いていない。

 

「安いね」

 

「基本食料ですから!」

 

 パンをちぎる。

 昨日の固いものより柔らかい。

 

「おいしい」

 

「やりました!」

 

「次」

 

「もう一つですか!?」

 

「比較したい」

 

「なるほど!」

 

 凪沙は表示を見る。水、布、木の器、金属の器、装飾品。

 

「このコップ」

 

「はい!」

 

 木のコップが出る。

 ゲージはほとんど変わらない。

 

「じゃ、これ」

 

 小さな宝石。

 

「おおっ! 高級品ですね!」

 

 生成すると、やはり残量表示はほとんど動かない。

 

「……安」

 

「えぇ!? 宝石ですよ!?」

 

「石でしょ」

 

「宝石です!」

 

「光ってる石」

 

「言い方ぁ!」

 

 ココが宝石を両手で持ち上げる。

 

「普通はもっとありがたがるものです!」

 

「うちはいらない」

 

「だからってこの減り方はおかしいです!」

 

 エミが淡々と告げる。

 

『ゲージ減少量に異常は確認できません』

 

「正常なんですか!?」

 

『現時点では』

 

「じゃあ次」

 

「もう気にしないんですか!?」

 

 食料、菓子と表示を流していくうち、凪沙の目が一つの項目で止まった。

 

「これ」

 

「甘い焼き菓子ですね!」

 

「作れる?」

 

「もちろんです!」

 

 生成すると、小さな焼き菓子が一つ現れた。

 ゲージが、宝石より分かりやすく減った。

 

「……こっちの方が高い」

 

「宝石より!?」

 

「好きだから?」

 

「そこなんですか!?」

 

 凪沙は一口食べる。

 

「おいしい」

 

「マスターだけ納得しないでください!」

 

 ここまで来ると、値段の基準がおかしい。

 凪沙はさらに、食器、衣服、小物と表示を流す。知らないものが多い。

 その中に、一つだけ見覚えのある形があった。

 

「これ」

 

「はい?」

 

 小さな髪留め。

 地球にあったものと、よく似ている。

 特別な素材には見えない。

 

「作れる?」

 

「できます!」

 

「いくら?」

 

 ココが首を傾げる。

 

「いくら?」

 

「ゲージ」

 

「では表示します!」

 

 項目を選ぶ。

 

《生成予測》

 

 ゲージのほとんどが消費予定として埋まった。

 

「……高くない?」

 

「高すぎます!」

 

「宝石より?」

 

「比較になりません!」

 

「なんで」

 

「分かりません!」

 

「元気に言うことじゃない」

 

 エミが解析する。

 

『価格算定に異常は確認できません』

 

「じゃ、バグじゃない?」

 

『現時点では正常処理です』

 

 ココが表示を何度も見直す。

 

「正常でこれなんですか!?」

 

「見た目は普通なのにね」

 

 凪沙は髪留めの表示を見る。

 似ている。

 ただ、それだけだった。

 ココは髪留めと凪沙の顔を見比べた。

 

「何に似ているのか、聞いてもいいですか?」

 

「今は言わない」

 

「分かりました。では、聞きません」

 

『指定記憶への解析は開始していません』

 

「エミも?」

 

『凪沙が開示しない情報を、価格検証だけを理由に参照する必要はありません』

 

「そ」

 

 ココはそれ以上聞かず、エミも解析を始めなかった。

 知らない部分を残したまま、三人は表示の前にいた。

 

「作る?」

 

「いらない」

 

「即答!」

 

「ココが欲しいなら作るけど」

 

「わたくしのものではありません。マスターが要らないなら、要りません」

 

「高いし」

 

「そこですか!?」

 

「うん」

 

 ココがまだ何か調べている。

 

「では、別のものなら!」

 

「もういい。寝たい」

 

「また寝るんですか!?」

 

「朝からずっと喋ってるし」

 

「楽しい生活です!」

 

「うるさいけどね」

 

 使った分の減りを、もう一度確かめる。

 パン、コップ、宝石、焼き菓子、髪留め。

 値段の並びが、どうにもおかしい。

 

「……まあ、いっか」

 

「よくないです!」

 

「困ってないし」

 

「わたくしが気になります!」

 

「じゃ調べといて」

 

「任されました!」

 

 ココは嬉しそうに表示へ向き直った。

 エミも解析を始める。

 凪沙は毛布へ横になる。

 

「マスター!」

 

「何」

 

「寝る前に一つだけ!」

 

「何」

 

「お風呂!」

 

「まだ言ってる」

 

「生活には必要です!」

 

「DP貯めてから」

 

「貯めます!」

 

「どうやって?」

 

「人を呼びます!」

 

 凪沙は目を開けた。

 

「誰を?」

 

 ココが笑う。

 

「侵入者です!」

 

「……嫌な予感する」

 

「大丈夫です!」

 

「その言葉、信用ないんだよなぁ」

 

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