スキル(笑)ってとんでもないね……~うちを笑った相手が死ぬんですが、これはうちのせい?~ 作:tuna&mayo
「では! ダンジョンポイント講座を始めます!」
ココが胸を張った。
「後でって言ったよね」
「今が後です!」
「便利だね、その解釈」
「ありがとうございます!」
「褒めてない」
凪沙は毛布の上に座ったまま、ココの前に浮かぶ表示を見る。
《DP残量:■■■■■□□□□□》
「減ってる」
「お部屋を作りましたので!」
「布団より部屋の方が安いんだ」
「素材と構造によります!」
「ふうん」
ココが勢いよく両手を広げる。
「DPは、生物がダンジョン内で活動すると少しずつ蓄積します! 長く滞在すればその分増えます! 侵入者でも、住人でも、動物でも!」
「死ぬと?」
「増えます!」
「やっぱり」
「しかも効率がいいです!」
「それは使わない方向で」
「はい!」
返事は早い。
「ほかにも増える条件はあります!」
「例えば?」
「……全部は分かりません!」
エミが淡々と補足する。
『現在確認できる範囲では、滞在時間と生命活動に伴う情報量が蓄積量へ影響しています』
「情報量?」
『詳細は未解析です』
「じゃ、まだ分からないんだ」
『はい』
凪沙は残量表示へ目を戻す。
「これ、増えたら何に使える?」
「いろいろです!」
「それ昨日聞いた」
「では実演しましょう!」
ココが表示を切り替える。食料、衣類、家具、道具と、細かな項目がずらりと並ぶ。
「欲しいものを選んでください!」
「じゃあ食べ物」
「何がいいですか?」
「パン」
「もっと夢のあるものを!」
「食べられればいい」
「ではパン!」
ココが指を振る。
小さな光。
凪沙の前に、丸いパンが一つ落ちた。
「出た」
「出ました!」
残量表示は、ほとんど動いていない。
「安いね」
「基本食料ですから!」
パンをちぎる。
昨日の固いものより柔らかい。
「おいしい」
「やりました!」
「次」
「もう一つですか!?」
「比較したい」
「なるほど!」
凪沙は表示を見る。水、布、木の器、金属の器、装飾品。
「このコップ」
「はい!」
木のコップが出る。
ゲージはほとんど変わらない。
「じゃ、これ」
小さな宝石。
「おおっ! 高級品ですね!」
生成すると、やはり残量表示はほとんど動かない。
「……安」
「えぇ!? 宝石ですよ!?」
「石でしょ」
「宝石です!」
「光ってる石」
「言い方ぁ!」
ココが宝石を両手で持ち上げる。
「普通はもっとありがたがるものです!」
「うちはいらない」
「だからってこの減り方はおかしいです!」
エミが淡々と告げる。
『ゲージ減少量に異常は確認できません』
「正常なんですか!?」
『現時点では』
「じゃあ次」
「もう気にしないんですか!?」
食料、菓子と表示を流していくうち、凪沙の目が一つの項目で止まった。
「これ」
「甘い焼き菓子ですね!」
「作れる?」
「もちろんです!」
生成すると、小さな焼き菓子が一つ現れた。
ゲージが、宝石より分かりやすく減った。
「……こっちの方が高い」
「宝石より!?」
「好きだから?」
「そこなんですか!?」
凪沙は一口食べる。
「おいしい」
「マスターだけ納得しないでください!」
ここまで来ると、値段の基準がおかしい。
凪沙はさらに、食器、衣服、小物と表示を流す。知らないものが多い。
その中に、一つだけ見覚えのある形があった。
「これ」
「はい?」
小さな髪留め。
地球にあったものと、よく似ている。
特別な素材には見えない。
「作れる?」
「できます!」
「いくら?」
ココが首を傾げる。
「いくら?」
「ゲージ」
「では表示します!」
項目を選ぶ。
《生成予測》
ゲージのほとんどが消費予定として埋まった。
「……高くない?」
「高すぎます!」
「宝石より?」
「比較になりません!」
「なんで」
「分かりません!」
「元気に言うことじゃない」
エミが解析する。
『価格算定に異常は確認できません』
「じゃ、バグじゃない?」
『現時点では正常処理です』
ココが表示を何度も見直す。
「正常でこれなんですか!?」
「見た目は普通なのにね」
凪沙は髪留めの表示を見る。
似ている。
ただ、それだけだった。
ココは髪留めと凪沙の顔を見比べた。
「何に似ているのか、聞いてもいいですか?」
「今は言わない」
「分かりました。では、聞きません」
『指定記憶への解析は開始していません』
「エミも?」
『凪沙が開示しない情報を、価格検証だけを理由に参照する必要はありません』
「そ」
ココはそれ以上聞かず、エミも解析を始めなかった。
知らない部分を残したまま、三人は表示の前にいた。
「作る?」
「いらない」
「即答!」
「ココが欲しいなら作るけど」
「わたくしのものではありません。マスターが要らないなら、要りません」
「高いし」
「そこですか!?」
「うん」
ココがまだ何か調べている。
「では、別のものなら!」
「もういい。寝たい」
「また寝るんですか!?」
「朝からずっと喋ってるし」
「楽しい生活です!」
「うるさいけどね」
使った分の減りを、もう一度確かめる。
パン、コップ、宝石、焼き菓子、髪留め。
値段の並びが、どうにもおかしい。
「……まあ、いっか」
「よくないです!」
「困ってないし」
「わたくしが気になります!」
「じゃ調べといて」
「任されました!」
ココは嬉しそうに表示へ向き直った。
エミも解析を始める。
凪沙は毛布へ横になる。
「マスター!」
「何」
「寝る前に一つだけ!」
「何」
「お風呂!」
「まだ言ってる」
「生活には必要です!」
「DP貯めてから」
「貯めます!」
「どうやって?」
「人を呼びます!」
凪沙は目を開けた。
「誰を?」
ココが笑う。
「侵入者です!」
「……嫌な予感する」
「大丈夫です!」
「その言葉、信用ないんだよなぁ」