ホロライブ0期生のねじまきゆらりはVCRGTAに参加していたようですね
夜、11時過ぎ。
VCR GTAが終わって、もう何日か経っていた。
大きなイベントが終わったあとの街は、妙に静かだった。
――そんな夜。
匿名掲示板の、とあるスレッドに一つの書き込みが投下された。
『ねじまきゆらり、配信始まったぞ』
数秒もしないうちに、レスが返ってくる。
『今?』
『雑談?』
『VCRの話するかな』
『ゆらりまだGTAロス引きずってそう』
『見に行くか』
『0期生のゆらりか』
『最近VCRでめっちゃ見かけたな』
その中に、こんな書き込みもあった。
『ホロライブなのにストリーマー鯖に馴染みすぎてて草』
『それな』
『葛葉とか渋ハルとかと普通に絡んでるの見ると忘れる』
『でも一応ホロライブ0期生なんだよな』
『一応ってなんだよw』
『歌もやるぞ』
『元々音楽の人だしな』
画面の向こうでは、そんなことも知らずに配信が始まっていた。
「……というわけで、今日は雑談です」
配信画面に映るのは、いつものねじまきゆらり。
ホロライブ0期生。
ゲーム配信をしたり、ストリーマーたちと遊んだり、時には音楽にも触れたり。
肩書きだけ並べれば少し不思議な人物だが、本人はそんなことを気にする様子もない。
「いやぁ……終わったねぇ、VCR」
コメント欄が一気に流れる。
『終わっちゃったな』
『ロスです』
『ゆらロス』
『まだGTAの話してる』
『今日もやる?』
「やらないやらない」
ゆらりは笑う。
「今日はもう、普通の日です。はい」
『普通の日w』
『祭りのあと』
『現実に戻ってきた』
「そう、祭りのあとなんですよ」
少し間を置いて、ゆらりが椅子に深くもたれる。
「なんかさ。開催中って、ずっとゲームしてるじゃん」
『そうだね』
「起きて、ゲームして、人と会って、またゲームして。気づいたら夜で。寝て、起きて……」
「それが終わって、普通に朝起きたらさ」
「……何したらいいんだろうってなるよね」
『わかる』
『虚無』
『VCRロス』
『抜け殻』
「そうそう。抜け殻」
笑いながら、机の上の飲み物を一口飲む。
「でも楽しかったなぁ」
その言葉だけは、少し静かだった。
「ほんとに楽しかった」
『また参加してほしい』
『次も行く?』
『絶対行って』
「いや、やるなら行くでしょ」
即答だった。
『即答w』
『好きすぎる』
『仕事じゃん』
「仕事じゃないって」
「遊びだよ、あれは」
『遊び(長時間)』
『遊び(寝不足)』
『遊び(人脈)』
「いいんだよ。楽しいから」
ゆらりは笑う。
「なんかさ、ああいうのって不思議だよね」
「普段だったら絶対一緒に遊ばないような人と、同じ街にいてさ」
「くだらないことで笑ったり、変なことに巻き込まれたりして」
「で、終わったら普通の日常に戻るんだよね」
『寂しい?』
そのコメントを見て、ゆらりは少し考えた。
「……寂しい、はあるかもね」
「でも、ずっと祭りじゃ疲れるからさ」
「日常があるから、祭りが楽しいんだと思うよ」
『名言』
『急に人生語るじゃん』
『ゆら先輩』
「いや、今思いついただけだよ」
笑う。
「僕、こういうの好きなんだよね」
「ゲームそのものも好きなんだけど……」
「人と一緒に何かやるのが好きなのかもしれない」
コメント欄が少しだけ静かになる。
『意外』
『ゆらって一人でいるイメージあった』
『昔からソロっぽい』
「まぁ、一人でいるのには慣れてるよ」
ゆらりはさらっと言う。
「でも、一人でいたいわけじゃないからね」
その言葉に、コメントが少しだけ増える。
『……』
『いいこと言う』
『ゆら……』
「いやいや、重く受け取らないでよ」
「普通に寂しがりってことです」
『かわいい』
『寂しがりゆら』
『ゆら先輩かわいい』
「かわいくはないだろ」
少し照れたように笑う。
「……まぁ、そういう意味でも、VCRみたいなのは好きなんだと思う」
「いろんな人に会えるし」
「普段だったら知らなかった人とも仲良くなれるし」
「終わったあとに、こうやって余韻が残るのも含めてね」
しばらくゲームの話が続く。
印象に残った出来事。
一番笑った事件。
誰が一番変だったか。
そして当然のように名前が出る。
『葛葉』
「……あー」
ゆらりが笑う。
「葛葉ね」
『ネジキ』
『ネジキきた』
『ネジキ元気?』
「ネジキじゃねぇんだよ」
『本人公認です』
『葛葉限定ネジキ』
「いや、あれは葛葉が勝手に呼んでるだけだから」
『でも嫌じゃないんでしょ?』
「まぁ……別に」
少しだけ笑って、
「葛葉だからね」
そう言う。
「なんか、あいつとは最初からあんな感じだった気がする」
『PUBG』
『伝説の迷配信』
『お互いトロールしてたやつ』
「やめろ」
「俺は悪くないだろ」
『出た』
『俺』
『急に男』
「いや、あれは本当に……」
そこまで言って、ゆらりは吹き出す。
「……まぁ、僕も悪かったけど」
『認めたw』
「でもあいつも悪かったから」
『どっちも悪い』
『仲良し』
『悪友』
「まぁ、そういうこと」
笑い声。
しばらくして、コメントに別の言葉が流れる。
『そういえばギターは?』
ゆらりの目が、ほんの少しだけ画面に止まる。
「ギター?」
『VCR終わったし弾いて』
『2×2×2聴きたい』
『ゆらのギター好き』
『最終日のフェスで弾いてたじゃん』
「あー……」
そこで、ゆらりが思い出したように笑った。
「そういえば弾いたね」
『弾いたねじゃないw』
『めっちゃ良かった』
『くろむちゃんとのやつ』
『あれよかったわ』
『急にアコギ出てきたの熱かった』
「いやぁ、あれはね」
ゆらりは少しだけ椅子に座り直す。
「最初、弾くつもりなかったんだよ」
『そうなの?』
「うん」
「フェスで普通にみんなの歌聴いてたんだけど、途中で音源がうまく流れなくなっちゃってさ」
「くろむが歌おうとしてたんだけど、あのままだとちょっと難しい感じになって」
「だから、まぁ……ギターならあるし、って」
『そこで弾けるのがゆらりなんだよな』
『さらっとアコギ出してくる』
『かっこよかった』
『くろむちゃん歌えてたもんな』
「まぁ、弾いただけだよ」
「くろむが歌ってくれたから、僕は後ろで合わせただけ」
『いやそれが良いんだよ』
『めちゃくちゃ自然だった』
『即興?』
「ほぼね」
「ちゃんと打ち合わせしてたわけじゃないから」
「くろむが歌い始めて、それに合わせて弾いて……って感じ」
少しだけ思い返すように、ゆらりが笑う。
「でも、ああいうのは楽しかったな」
『またギター弾いてよ』
『2×2×2も聴きたい』
『音楽活動しよう』
「いやぁ……」
ゆらりは困ったように笑う。
「今日は弾かないよ」
『なんで』
『せっかくVCR終わったのに』
『今なら余韻で弾けるだろ』
「いや、まぁ……そのうちね」
「最終日に弾いたばっかりだし」
『確かにw』
『数日前じゃん』
『ゆらり基準だと久しぶりではない』
「そうそう」
「だから今日はいいの」
軽く笑ってから、少しだけ声の調子を落とす。
「……まぁでも」
「音楽ってさ」
「やっぱり、時間かかるんだよね」
『?』
「ゲームみたいに、思いついたらすぐ遊べるものでもないし」
「ギターも、弾き始めたらそれなりに時間取られるし」
「曲作るとなったら、もっと時間かかるし」
「僕、そういう“続ける”のが昔からあんまり得意じゃなくて」
『意外』
『天才肌だもんね』
『ゆらは感覚派』
「そうそう」
「僕、最初のコツ掴むのだけは早いんだけどね」
「そこから先がダメなんだよ」
「50まではすぐ行けるけど、そこから70、80にするために毎日練習する……みたいなのが、本当に苦手」
『わかる』
『天才型』
『努力できないってこと?』
「まぁ、そういうこと」
「だからプロゲーマーとか本当にすごいと思うよ」
「毎日練習して、昨日できなかったことを今日できるようにして……って」
「僕にはできないもん」
「……まぁ、ゲームでも音楽でも」
少し考えてから、
「好きなものなら続くんだけどね」
と言った。
『ギターじゃん』
「……うん」
ゆらりは小さく笑う。
「ギターは、好きだったからね」
言ってから、自分でも少し引っかかったように黙る。
「……まぁ、今も好きだけど」
言い直す。
「好きだよ。ギター」
コメント欄に、
『よかった』
『また弾いてほしい』
『いつかでいいよ』
『最終日の演奏よかったよ』
そんな言葉が流れる。
「…最終日にああいうことがあったから、今日はそれで十分かな」
『また聴かせてね』
「うん」
「そのうちね」
その言葉を最後に、ゆらりはギターの話を終えた。
だが、コメント欄にはまだ一つの名前が流れていた。
『そらちゃんのタイムジャンパーも好き』
「……あぁ」
今度は、少し柔らかい笑顔になる。
「タイムジャンパーね」
「懐かしいなぁ」
『あれが始まり?』
『ゆらが音楽に戻るきっかけ』
「まぁ……そうだね」
「そらに出会ってなかったら、たぶん作ってなかったと思う」
「そもそも、あの頃の僕は音楽をまたやるなんて思ってなかったし」
「なんか、人生って分かんないよね」
「ゲーム始めてなかったら、配信もしてないし」
「配信してなかったら、そらにも会ってないし」
「そらに会ってなかったら、また曲作ることもなかった」
「で、そこからいろんな人に会って」
「こうやってVCRにも参加して」
ゆらりは少し笑った。
「……最初は、金なくなったから配信始めただけなんだけどね」
『急に現実的』
『そこからここまで来るのすごい』
『人生何があるかわからん』
「ほんとだよ」
「だからさ」
「今、VCR終わってちょっと寂しいけど」
「また普通の日に戻って」
「普通に配信して」
「また何か面白いことがあって」
「そしたら、それでいいんじゃないかな」
ゆらりはそう言って、椅子に座り直す。
「人生なんて、次何が起きるか分かんないし」
「別に急がなくてもいいでしょ」
「ゲームやって、人と喋って」
「たまに音楽やって」
「……まぁ、そんな感じで」
『ゆららしい』
『次の祭りまで日常』
『またVCR行こうね』
『ゆら先輩大好き』
「はいはい」
照れくさそうに笑って、
「じゃあ、今日はもうちょっと雑談しよっか」
「祭りのあとくらい、ゆっくりしていこうよ」
その時だった。
コメント欄の流れに、見慣れた名前が混じった。
『ときのそら』
一瞬、コメント欄がざわつく。
『そらちゃん!?』
『そら先輩きた』
『本物?』
『ゆらの配信にそらちゃんいる』
『0期生集合』
ゆらりも、その名前に気づいた。
「あ」
ほんの少しだけ、目を丸くする。
「そらじゃん」
しばらくして、もう一度コメントが流れる。
『VCRおつかれさま~!』
ゆらりは思わず笑った。
「ありがと、そら」
『すごく楽しそうだったね!』
『また一緒に遊べるの楽しみにしてるよ~』
「うん。楽しかった」
「そらも見てた?」
『見てたよ~』
「マジかよ」
『ホロライブの先輩としてちゃんと見守ってました』
「急に先輩面するじゃん」
『先輩だよ!?』
『草』
『0期生の絡み』
『ゆら先輩がそらちゃんにタメ口なの好き』
「いや、まぁ……そらだからね」
そう言って笑う。
けれど、その声にはさっきまでとは少し違う柔らかさがあった。
VCRの街では、ギャングとして銃を持ち、車を走らせ、様々なストリーマーたちと騒いでいた。
けれど今、彼女がいるのは自分の配信部屋。
ホロライブの0期生として。
ときのそらと同じ場所に立つ、ねじまきゆらりとして。
『そらちゃんとゆらってやっぱいいな』
『ホロライブ0期生』
『なんだかんだホロメンなんだよな』
『スト鯖の人って印象強いけどちゃんとホロライブなんだよな』
そんなコメントが流れていく。
ゆらりはそれを眺めながら、少しだけ笑った。
「……まぁ、そうなんだよね」
「僕、ホロライブ0期生なんだよな」
『今さらw』
『忘れてた?』
『ゆらりはゆらり』
「いや、忘れてないって」
「ただ、こうやって外で遊んでるとさ」
「自分でもたまに、どこにいる人間なのか分かんなくなるんだよね」
『ホロライブだよ』
『0期生です』
『ゆらりはホロメン』
「はいはい」
「分かってますよ」
笑いながら、ゆらりはコメント欄を見つめる。
ときのそらの名前は、いつの間にか流れて見えなくなっていた。
けれど、その短いやり取りだけで十分だった。
祭りのあと。
街は静かになった。
一緒に騒いでいた人たちは、それぞれの場所へ戻っていく。
ゆらりもまた、自分の日常へ戻っていく。
ゲームも。
音楽も。
ホロライブでの活動も。
新しく出会った人たちも。
まだ見つけていない“何か”も。
全部、これからだった。
「……さて」
ゆらりがマイクに向き直る。
「もうちょっとだけ喋ろっか」
祭りは終わった。
けれど――
ねじまきゆらりの日常は、まだ始まったばかりだった。
ホロメンとの絡みは少し後になる予定です
というかどちらかというと箱外の絡みの方が多くなるよてい
悪しからず