バイシクル部隊マジで好きです
VCR GTA3、二日目。
街が始まって、まだ二日目。
ねじまきゆらりは、車を走らせながら新しい街を眺めていた。
昨日のうちに、一人でできることはだいたいやった。
街を歩き回り、車を乗り回し、銃を撃って、一人でできる犯罪も一通り経験した。
一人で遊ぶ分には、十分すぎるほど遊んだ。
だから今日は――
「ここからは、仲間欲しいね〜」
まだ行っていない場所を探しながら、ゆっくりと車を走らせる。
昔からこういう街には参加している。
でも今回は全く新しい街、最初にできることを全部試してみる。
それが今回のゆらりの遊び方だった。
そんな中、ふと目に入った場所があった。
「……犯罪島?」
今までの街にはなかった場所、興味を惹かれる。
「ここ行ってみよ」
長い橋を抜け、島に入る、駐車場に車を停める。
すると――
一人で何かを作業している人影が見えた。
「あれ?」
見覚えがある。
「……エビオ?」
「ん?」
男が振り返る。
「……あ、マキさん?」
エクス・アルビオだった。
「おー、エビオじゃん!」
「マキさん!久しぶりー!」
「久しぶり!何してんの?」
「今ちょっとクラフトしてまして」
「一人?」
「はい、一人です」
(いつもの如く、抱え込んでんな〜)
ゆらりはそう思いながらもエクスの格好を見る。
「エビオ、今回ギャングなんだっけ?」
「あ、そうです。今回は葛葉たちとやってて」
「へー、今回は葛葉とやってんだ」
「マキさんは?」
「僕?」
「はい」
「僕はまだ何も入ってない」
「あ、そうなんだ」
「昨日、一人でできる犯罪はだいたいやっちゃったからさ」
「さすがマキさん」
「だから今日は街見て回ってる」
「それで犯罪島に?」
「そう」
ゆらりは犯罪島を見渡す。
そして、少し考えた。
「……なあ、エビオ」
「はい?」
「僕もギャング入れてよ」
「……え?」
エクスの手が止まる。
「ギャング」
「え、マジっすか?」
「うん」
「入ってくれるんならマジで嬉しいっすよ、まだだ俺ら全然人手足りてないんで」
「へー、そうなんだ」
「でもかなり急だね、まだメンバーも俺と葛葉しか知らないっしょ?」
ゆらりが笑う。
「だって、今回の街は完全に新しい街じゃん、なら新しい犯罪すぐやってみたいんだよ」
「ああ」
「一人でやるのももう飽きたし」
「なるほど」
「エビオ、ギャングに入れて?」
エクスは悩むそぶりも見せずに即答する
「マキさんなら、全然いいっすよ」
「ほんと?」
エクスは笑う。
「マキさん、GTAかなり強いじゃないですか」
「えー? そう?」
「そうですよ」
「そんな褒めても何も出ないぞ」
「いや、本当にそうなんで」
「ほんじゃあ頼むよ」
「分かりました。ちょっと無線で聞いてみます」
「お願い」
エクスが少し離れる。
ゆらりはその場で待ちながら、島を眺めていた。
エクスが無線を入れる。
⸻
「あーもしもしみんな?」
無線に声を入れる。
「今、犯罪島でマキさんと会ったんだけど」
「なに? ネジキに?」
葛葉だった。
「そう。マキさんがギャング入りたいって言ってる」
少しの間。
そして――
葛葉の声が明るくなる。
「ガチつええからありでしょ!」
渋谷ハルも続く。
「そうね。かなりGTA経験者だから心強いわ」
イブラヒムが口を挟む。
「あれでしょ? マキさん、ストグラ勢なんでしょ?」
歌衣メイカが続く。
「せやな。ストグラで警察やってたし、しかもめちゃ強いで」
不破湊も声を上げる。
「マキマキ、ギターもマジ上手いし、マジありがてえ……!」
「いやそれ関係ねえだろw」
葛葉が即座に突っ込む。
「いや、マジで上手いから!」
「知ってるわw でも今ギャングの話だろーが!」
「いやいや、でも大事よけっこう」
エクスが笑う。
「何がだよw」
「マキマキいると安心感あるじゃん」
渋ハルが笑う。
「まあ、それはそう」
「普通に戦力になると思うよ」
「じゃあ、入ってもらおうぜ」
葛葉が言う。
「ネジキなら全然あり」
「じゃあ決まりだな」
エクスが答える。
「本人に伝えて、アジト連れてくわ」
「おっけー」
「戦力増強きちゃー!」
「よろしくー」
いったん無線から手を離す。
⸻
「どうだった?」
ゆらりが聞く。
エクスが戻ってくる。
「大丈夫です」
「お、マジ?」
「はい。みんな、マキさんならぜひって」
「やった!」
ゆらりが笑う。
「じゃあ行こっか?」
「おっけー、アジト行きますか!」
二人で車に乗り込む。
犯罪島を離れ、鴉のアジトへ向かう。
「いやー」
ゆらりが窓の外を眺める。
「まさかエビオに会うとは思わなかったな」
「僕もですよ」
「しかも一人でクラフトしてるし」
「いや、クラフトは一人でやるものでしょ」
「いや、そうでもなくない?」
ゆらりが笑う。
「そのセリフ、めっちゃエビオらしいなー」
「どういう意味ですか、それ」
「自覚なしかぁ」
「?」
一人で笑うゆらりに、なぜ笑っているのかわからないエクス。
しばらくして、ゆらりが思い出したように聞く。
「そういや、鴉って今誰いるの?」
「葛葉、イブラヒム、不破湊、あと渋ハルとメイカちゃんですね」
「全員知り合いだったわ、てかにじさんじ率高!」
「いやーもうほぼにじさんじ軍団になりかけてたんで、マキさんきてくれてそう言う意味でもありがたいわ〜」
「てかあれか、よく考えなくても女僕ひとりか?」
「あっ確かに、……まあでもマキさんなら普通に馴染むと思いますよ」
「僕もそう思う」
「自分で言うんだ」
「言うよ、逆にそういうパターンには慣れてんだから」
「ははは」
車はそのままアジトへ向かった。
⸻
鴉のアジト。
車が止まる。
エビオが先に降りる。
そして、ゆらりも車から降りた。
すると――
「お、来た」
葛葉が声を上げる。
「ネジキじゃん」
「おー、葛葉」
ゆらりが手を上げる。
「よろしく」
「急によそよそしいしいのやめろw よろしくじゃねえんだよw」
葛葉が笑う。
「今日から鴉な」
「鴉?」
「このギャングゥの名前な?」
「いいね、今回はかっこいい感じだ」
「エビオが劇団鴉とかにしようとしてたから、慌てて止めた」
「それはダサいねーw」
「いやほんとにねw」
渋谷ハルが笑いながら近づいてくる。
「マキさん、よろしく」
「よろしく、渋ハル」
「エクスさんに会ってすぐ入ったんでしょ?判断早いわ」
「僕も勢いで言ったら入れた」
「そんな感じだよね、マキさん」
イブラヒムが笑う。
「マキさん、よろしくお願いします」
「よろしく、イブっち」
「いやー、普通に来てもらえるのありがたいっすね」
「そんな期待されても困るけどな」
「いやいや、マキさんなら大丈夫でしょ」
「そう?」
「そうですよ」
「じゃあ期待する係をイブっちに任せるわ」
「急に任されたなw」
イブラヒムが笑う。
その横から不破湊がやってくる。
「マキマキ、よろしく!」
「お、ふわっち。よろしく」
「いや、マジで嬉しいわ」
「何が?」
「マキさん来てくれるの」
「そんな?」
「だってギターもめちゃくちゃ上手いし」
「またギターの話してるw」
葛葉が笑う。
「それギャングに関係ねえだろw!」
「いやマジで好きなんですよ!」
「分かった分かったw」
ゆらりも笑う。
「ありがとう」
歌衣メイカも近づいてくる。
「マッキー、よろしゅうな」
「メイカちゃんもよろしく、メイカちゃん、今回はギャングなんだ」
「いやー、前回のGTAで孤高は懲りたんでな、今回はギャングとして羽ばたかせてもらいますわ」
「いいねー、その心意気!」
「ストグラでも強かったし、頼りにしてるで」
「任せて」
ゆらりは軽く笑う。
そこにエビオも加わる。
「じゃあ、今日からマキさんも鴉ということで」
「うん」
「よろしくお願いします」
「よろしく、エビオ」
葛葉が笑う。
「じゃあネジキ、早速で悪いがもう中型始めっから!」
「まじ?うれしいねー!行こうぜ!」
「お前、ほんとそれ目的だったんだなw」
「だって犯罪やりたくて入ったんだもん」
「ガチで理由がシンプルすぎるだろw」
みんなが笑う。
ゆらりも笑った。
そして、銃を手に取る。
新しい街。
新しいギャング。
けれど、周りにいるのは、昔から知っている人たちだった。
だから、緊張はなかった。
むしろ――
「……なんか、いいな」
ゆらりが小さく呟く。
「何が?」
渋ハルが聞く。
「いや」
ゆらりは少し笑う。
「知ってる奴いっぱいだし」
「まあ、それはそうね」
「楽しそう」
葛葉が笑う。
「楽しいぞ、鴉」
「じゃあ、よろしく」
ゆらりが改めて言う。
「今日から鴉ってことで」
「おう」
葛葉が答える。
「ほんじゃ行こうぜ、ネジキ!」
「よっしゃ!いきますか!」
こうして。
VCR GTA3、二日目。
鴉に、一人の古参が加わった。
新人ではない。
この世界を知っている。
GTAの強さも、みんなが知っている。
そして何より――
一緒に遊んできた時間が、すでにあった。
だから、特別な歓迎も必要なかった。
「マキさんが来る」
その一言だけで。
鴉の中には、もう彼女の居場所ができていた。
そしてこの日から。
ねじまきゆらりは――
鴉の一員として、もう一度この街で遊び始めることになる。
ここから鴉編
何話か続く予定