HOLOLIVE IN THE YURARI   作:佐藤ネジ

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ねじまきゆらりの所属するギャング、鴉は地下金庫強盗に挑むようです

地下金庫強盗はユニオンと被ると大変なことになるから、今後も実装はされなさそう…


螺子が噛み合うとき

 

 その日の鴉は、地下金庫強盗を狙っていた。

 

「今日これ行くん?」

 

 車を走らせながら、ゆらりが無線越しに聞く。

 

『行く行く。初見で攻略しよう!』

 

 返ってきたのはエビオの声だった。

 

『マキさん、葛葉、地上お願いします』

 

「任せとけって!、ネジキ、俺らラークな」

 

「おっけー」

 

 葛葉の言葉に、ゆらりは軽く返す。

 

 作戦は単純だった。

 

 地下金庫部屋に渋谷ハル、エクス・アルビオ、叶、イブラヒム、不破湊、歌衣メイカ。

 

 地下では渋ハルがギミックを解き、残りのメンバーが出口を守る。

 

 地上ではゆらりと葛葉が車で周囲を走り、警察が来れば対応する。

 

 ギミックを突破して金を回収できれば、あとは逃げ切るだけ。

 

『地下、入った』

 

『了解』

 

 無線からエビオの声が響く。

 

「渋ハル、ギミックよろしくー」

 

『任せて』

 

『警察来たら頼むぞ、マキさん』

 

「はいはい」

 

 ゆらりは車を走らせながら、地下金庫周辺の道路を眺める。

 

 特に緊張している様子はない。

 

「葛葉、あっち警察っぽくない?」

 

「どこ?」

 

「ほら、あの角」

 

「……あー、いるわ」

 

「じゃ、ちょっと行ってみよ」

 

「いいねー交戦的なの!」

 

「だって暇じゃんね」

 

「理由高校生すぎだろw」

 

 二人で笑いながら車を走らせる。

 

 その間も、地下から無線が飛んでくる。

 

『ギミック一個目終わった』

 

『ナイス』

 

『警察、まだ来てない』

 

「順調じゃん」

 

 ゆらりがそう呟いた、その直後だった。

 

『来た!』

 

 無線に緊張が走る。

 

『警察、地下入口!』

 

「葛葉、行くよ」

 

「おう」

 

 二人は車を切り返し、地下金庫へ向かう。

 

 銃声が響き始めた。

 

『右から来てる!』

 

『あーあれね了解』

 

『叶さん、後ろ!』

 

『おっけ、見えてる!』

 

 無線が一気に騒がしくなる。

 

 ゆらりは車を止め、外に出て様子を伺う。

 

「警察多いな」

 

「これ結構来てんな」

 

「うん、一旦撃って、こっちの存在を知らせて、突入遅延させよ」

 

 地上から地下入口へ向かって銃を撃ち、警察の動きを牽制する。

 

 だが、地下の状況までは見えない。

 

 無線から飛び交う声だけが頼りだった。

 

『エビオ、ちょっと下がって!』

 

『いや、ここ守ります!』

 

 銃声。

 

 そして、

 

『エビオ落ちた!』

 

「エビオが落ちた?」

 

 ゆらりが無線に聞き返す。

 

『ふわっち、回収お願い!』

 

『おっけまかせろ!』

 

 不破がすぐに返事をする。

 

 地下から飛び出したふわっちが、倒れたエビオを回収する。

 

『エビオ一旦車に乗せた!』

 

『ナイス!』

 

 しかし、その直後。

 

『叶さん、右お願い!』

 

『分かった!』

 

 叶が応戦する。

 

 銃声が続く。

 

 そして、

 

『叶さんも落ちたわ!』

 

 今度はイブラヒムが即座に動いた。

 

『俺、叶さん回収するわ!』

 

『頼む!』

 

 イブラヒムが叶を回収し、そのまま車へ向かう。

 

『おっけ、叶さんも乗せれたわ!』

 

「よし」

 

 ゆらりが短く返す。

 

 エビオと叶は回収された。

 

 だが、二人とも戦闘には戻れない。

 

 地下側の指揮を取っていた二人が、一気に消えた。

 

『渋ハル、どうする!?』

 

『待って、今ギミックやってる!』

 

『イブラヒム、右来てる!』

 

『見えてる見えてる!』

 

『ふわっち、そっち!』

 

『そっちってどっちだ? どっち!?』

 

 無線が一気に混乱する。

 

 ゆらりは黙って車の周囲を見る。

 

 地下入口。

 

 警察車両。

 

 逃走用の車。

 

 無線から聞こえる味方の声。

 

 渋ハルはギミックから離れられない。

 

 エビオと叶は回収されたものの、戦線から離脱。

 

 残ったメンバーは出口を守っている。

 

 誰かが指示を出さなければ、このまま崩れる。

 

 ゆらりは数秒だけ考えた。

 

「……葛葉」

 

「ん?」

 

「俺、ちょっと見るわ」

 

「おう」

 

 それだけだった。

 

 ゆらりの声が無線に入る。

 

「渋ハル、ギミックだけ集中してていいよ」

 

『え?』

 

「周りは俺らが見るから」

 

『……了解!』

 

「イブ、今どこ?」

 

『出口右』

 

「そのままでいい。動かなくていいよ」

 

『おっけー』

 

「ふわっち、左見て」

 

『了解』

 

「メイカちゃん、出口開いたらすぐ車出れるようにしといて」

 

『任せろ』

 

「葛葉」

 

「はいよ」

 

「俺、裏回る。葛葉は表」

 

「了解」

 

 先ほどまでの騒がしさが、少しずつ収まっていく。

 

 指示そのものは短い。

 

 声も大きくない。

 

 ただ、必要なことだけを次々と伝えていく。

 

 渋ハルも、それ以上何も聞かずにギミックへ集中する。

 

『……これ、あとちょい』

 

「了解。警察、地下入口に二台」

 

『二台?』

 

「うん。葛葉、見える?」

 

「見える。もう一台来てる」

 

「じゃあ三台。俺が一台見る」

 

「じゃ、俺二台?」

 

「無理すんなよ」

 

「お前にだけは言われたくねぇ」

 

「はは」

 

 ゆらりが笑う。

 

 銃声が響く。

 

 警察を倒すことよりも、時間を稼ぐ。

 

 地下の仲間が出てくるまで、ここを崩さない。

 

 それだけを考えて動く。

 

『あとちょっと!』

 

 渋ハルの声。

 

「みんな、もうちょい」

 

『了解』

 

『おっけー』

 

『任せろ』

 

 無線に返事が返ってくる。

 

 そして、

 

『開いた!』

 

 渋ハルの声が響いた。

 

「よし」

 

 ゆらりが即座に答える。

 

「渋ハル、金取って」

 

『取ってる!』

 

「他のみんな、車まで走って」

 

『了解!』

 

「葛葉、出口側お願い」

 

「任せろ!」

 

「俺は周囲見るわ」

 

 銃声。

 

 パトカーのサイレン。

 

 怒号。

 

 それでも鴉は止まらない。

 

「メイカちゃん乗った?」

 

『乗った!』

 

「イブ?」

 

『乗った!』

 

「ふわっち?」

 

『いる!』

 

「渋ハル?」

 

『今車乗った!』

 

「よし、葛葉!」

 

「分かってる!」

 

 二人が地上から地下入り口にいる警察を撃ち、牽制する。

 

その間に次々と仲間たちが入り口にいる警察を跳ね飛ばしながら、外へと飛び出す。

 

「葛葉、乗って!」

 

「お前が先乗れ!」

 

「いいから!」

 

「あーもう!」

 

葛葉が車へ乗り込む。

 

ゆらりも運転席へ飛び込んだ。

 

「行くよ!」

 

 アクセルを踏み込む。

 

 車が勢いよく走り出した。

 

 後ろからパトカーが追ってくる。

 

「うわ、めっちゃ来てる」

 

『マキさん、俺らは一旦追われてない!』

 

 渋ハルが言う。

 

「おっけー! こっちの警察も振り切る!」

 

 ハンドルを切る。

 

 葛葉が後ろを見ながら笑う。

 

「ネジキ、今日めっちゃ仕切るじゃん」

 

「そう?」

 

「そうだよ」

 

「別に。エビオと叶落ちたから」

 

「それで急にIGLできるの意味分かんねぇんだよ」

 

「IGLっていうか……」

 

 ゆらりは少し考える。

 

「みんな死んだらつまんないし」

 

「理由それ?」

 

「うん」

 

 車内から笑い声が上がる。

 

 左右に曲がりながらしばらく走ったところで、ようやく警察のサイレンが聞こえなくなった。

 

『マキマキ、逃げ切った?』

 

 不破が無線で聞く。

 

「たぶん」

 

『たぶんってなんだよw』

 

 イブラヒムが笑う。

 

 そのとき、渋ハルがふと口を開いた。

 

『マキさん』

 

「ん?」

 

『やっぱIGL上手いな』

 

「……俺?」

 

『うん』

 

「俺、IGLしてた?」

 

『してたしてた』

 

 渋ハルが笑う。

 

『昔から思ってたけどさ。普段は全然そんな感じじゃないのに、必要になったら急に全部見えてるんだよね』

 

「そう?」

 

『そう』

 

 ゆらりは少しだけ考える。

 

 そして、

 

「まぁ、ゲーム楽しい方がいいじゃん」

 

 と、いつもの調子で言った。

 

「だから、みんな生きてた方が楽しいし」

 

 無線の向こうで、一瞬だけ静かになる。

 

 そして葛葉が笑った。

 

「ネジキ、結局そういうとこなんだよな」

 

「なにが?」

 

「別にー」

 

「気になる言い方すんなよ」

 

「はいはい」

 

 また笑い声が響く。

 

 地下金庫強盗は終わった。

 

 ゆらり自身は、特別なことをしたつもりなんてなかった。

 

 ただ、必要だったから動いただけ。

 

 誰かが落ちたなら、その穴を埋める。

 

 それだけだった。

 

 けれど、その日。

 

 鴉の中で、ゆらりがただ自由気ままに遊んでいるだけではないことを、改めて知った者が何人かいた。

 

 そして本人だけが、それに気づいていなかった。




ねじまきゆらり、物事を俯瞰して見る力や、状況把握能力、それを行いながらも、キャラコンやエイムがブレることのないマルチタスクを得意としている。
のでIGLも高い水準で行えるが、基本的に自由気ままにやりたいタイプなのでIGLが他にできる人がいたら譲る。
しかし、ストグラ参加時はキャラクター設定から積極的にIGLを行っていた時期もあり……
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