HOLOLIVE IN THE YURARI   作:佐藤ネジ

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ねじまきゆらりは最終日に鴉の皆とメイズバンクに挑むそうです

一旦鴉編最後です、餓狼のユニオンとかも大好きなのでいつか書くかも?
あの時のトワ様の勇姿は忘れられない


11人の鴉の最後

 

 その日、鴉には最後の仕事が残っていた。

 

 メイズバンク。

 

 この街で、まだ鴉が落としていない最後の大型犯罪だった。

 

 いつものように集まった鴉たちの前で、エクスが作戦を説明していく。

 

「今回、絶対に一発で決めます」

 

 いつもなら茶化す声の一つや二つが飛ぶところだった。

 

 けれど、今日は誰も急かさない。

 

 鴉にとって、これが最後の大型犯罪になることを、全員が知っていたからだ。

 

「銀行内は俺たちが守る。渋ハルとメイカちゃんが金を取る。外はラーク」

 

 そこでエクスが顔を上げる。

 

「叶さんと葛葉」

 

「おっけー」

 

「ん〜」

 

 葛葉が軽く返事をする。

 

 その隣で、ゆらりも手を上げた。

 

「僕もラークやるよ」

 

「……お?」

 

 葛葉がゆらりを見る。

 

「やんの?チャリラーク?」

 

「そ、バイシクル部隊」

 

「俺と?」

 

「二人のほうがよくない?」

 

「まあ……」

 

 葛葉は少し考えてから、ニヤッと笑った。

 

「そりゃあそう、…やるか!」

 

 前日の犯罪で、自転車の異常な機動力を使って警察を翻弄した葛葉。

 

 その動きを見ていたゆらりも、自転車を使ったラークがどれだけ厄介なのかは理解していた。

 

 ならば今回は二人。

 

 一人が追われている間に、もう一人が横から援護する。

 

 単純な話だった。

 

 そして――。

 

 それが最後の鴉にとって、最後の一手になる。

 

 

 メイズバンク強盗が始まった。

 

 爆破。

 

 扉が開く。

 

 用意していた車両が銀行へと運び込まれていく。

 

 外では警察が動き始めていた。

 

『来た来た』

 

 無線から葛葉の声。

 

「警察、結構いるよ」

 

『こっちも見えたわ』

 

 ゆらりが答える。

 

「じゃ、いつも通りやりますか」

 

『おう』

 

 二台の自転車が走り出した。

 

 銀行から少し離れたところを葛葉が走る。

 

 わざと警察の視界に入る。

 

 そして、速度を上げる。

 

「いるいる!」

 

 警察が追い始める。

 

「葛葉、三台ついた」

 

『オッケー』

 

 葛葉は細い道へ入る。

 

 パトカーが追う。

 

 しかし、そこで一台が横から現れた。

 

 ゆらりだった。

 

「はい、こっちね」

 

 横から銃声。

 

 警察が一瞬怯む。

 

『ナイス、ネジキ!』

 

 葛葉がその隙に加速する。

 

「どういたしまして」

 

 二人はそのまま別方向へ散った。

 

 警察も二手に分かれる。

 

 それだけでいい。

 

 鴉の目的は、警察を倒すことじゃない。

 

 銀行の中にいる仲間から、警察の目を逸らすこと。

 

 そのためなら、二人は何度でも警察の前に姿を現す。

 

 

 銀行内部。

 

「渋ハル、いけそう?」

 

「いけるいける!」

 

 渋谷ハルがギミックに挑む。

 

 その間も外では銃声が鳴り続けている。

 

『外マジめっちゃいるぞ!』

 

 無線から葛葉。

 

「了解!」

 

 歌衣メイカが答える。

 

 銀行の中では金を取る二人。

 

 外では仲間が警察を抑える。

 

 その中でも、葛葉とゆらりは走り続けていた。

 

「葛葉、後ろ!」

 

『見えてる!』

 

 パトカーが迫る。

 

 葛葉が急旋回する。

 

 しかし、その先には別の警察車両。

 

『やっべ!』

 

 挟まれる。

 

 葛葉がブレーキを踏む。

 

 自転車が大きく跳ねた。

 

「ネジキ!」

 

 ゆらりが横から飛び込んだ。

 

 銃声。

 

 警察の一人が倒れる。

 

 葛葉はその隙に自転車を起こした。

 

『助かったわ!』

 

「まだ終わってないよ!」

 

『わかってる!』

 

 二人は再び走り出した。

 

 

 時間が経つ。

 

 警察の包囲が厚くなっていく。

 

 それでも銀行内では、少しずつ作業が進んでいた。

 

『あとちょっと!』

 

 渋谷ハルの声。

 

 そして――。

 

『取れた!』

 

 無線に歓声が響いた。

 

『よっしゃ!』

 

『ナイス!』

 

『行けるぞ!』

 

 その瞬間、全員の空気が変わった。

 

 ここからは逃げるだけ。

 

 だが、出口には警察がいる。

 

 葛葉とゆらりも、その情報を受け取った。

 

「葛葉」

 

「ん?」

 

「最後だね」

 

「……そうだな」

 

 一瞬だけ、葛葉の声が静かになる。

 

 そして。

 

「じゃあ、派手にやるか!」

 

「おっけー!」

 

 

 銀行の出口。

 

 鴉たちが車両へ乗り込んでいく。

 

 装甲車。

 

 バイク。

 

 それぞれが脱出の準備を整える。

 

 外では警察が待ち構えている。

 

 叶のパトカーも、すでに所定の位置にいた。

 

 無線からイブラヒムの声が響く。

 

『全員、準備できた?』

 

『できてる』

 

『おっけー』

 

『いけるよ』

 

 葛葉とゆらりは、まだ倒れず外にいた。

 

 二台の自転車。

 

 二人は警察の正面を横切る。

 

「あ、チャリいた!」

 

「追って!」

 

 警察が二人を追う。

 

 その瞬間。

 

 イブラヒムの声。

 

『三――』

 

 叶のパトカーが動いた。

 

『二――』

 

 アクセルを踏み込む。

 

『一――!』

 

 突っ込む。

 

 警察が吹き飛ぶ。

 

『今!』

 

 銀行の扉が開いた。

 

 一斉に車両が飛び出す。

 

 鴉が飛ぶ。

 

 葛葉が叫ぶ。

 

「行けぇ!」

 

 ゆらりもペダルを踏み込む。

 

 二台の自転車が並んだ。

 

 後ろから警察。

 

 前からも警察。

 

 けれど、二人は止まらない。

 

『ネジキ、右!』

 

「了解!」

 

 二人が左右に分かれる。

 

 警察車両が葛葉を追う。

 

 その横から、ゆらりが撃つ。

 

 葛葉がさらに加速する。

 

 今度はゆらりが追われる。

 

『ネジキ、後ろ!』

 

「見えてる!」

 

 葛葉が戻ってくる。

 

 銃声。

 

 警察の追撃が止まる。

 

 二人は再び並んだ。

 

「……やるじゃん」

 

「葛葉もね」

 

「俺は元からうまいから」

 

「はいはい」

 

 笑う。

 

 その間にも、鴉の仲間たちは遠ざかっていく。

 

 そして無線。

 

『利確した!』

 

 渋谷ハルの声だった。

 

 一瞬。

 

 全員が黙った。

 

 それから――。

 

『っしゃああああ!』

 

 誰かが叫ぶ。

 

「成功!」

 

「やったぜ!」

 

 鴉の最後の大型犯罪。

 

 成功。

 

 

 その後。

 

 渋谷ハルと歌衣メイカは、いつもの鴉らしく警察署へ向かった。

 

 そして、当然のように捕まった。

 

「何してんのw?」

 

 もうすでに捕まって、警察署で大の字に倒れているゆらりで笑う。

 

「やっぱ最後は、絆アタックっしょ!」

 

「警察署に突っ込んでまでやるのやべえってw!」

 

 ゆらりの横で倒れている葛葉も笑った。

 

 最後まで、鴉らしかった。

 

 

 そして夜。

 

 デスマウンテン。

 

 鴉のメンバーが集まっていた。

 

 十一人。

 

 いつものように騒いでいる。

 

 いつものようにくだらない話をしている。

 

 けれど、今日で終わる。

 

 ゆらりは少し離れたところから、その光景を眺めていた。

 

 隣には葛葉。

 

「終わったな」

 

「うん」

 

「……なんか実感ねえわ」

 

「僕も」

 

 しばらく二人で黙っていた。

 

 そして葛葉が、自転車を見る。

 

「結局、最後までチャリだったな」

 

「二人でね」

 

「……だな」

 

 葛葉が笑った。

 

「ネジキ」

 

「ん?」

 

「今日、助かったわ」

 

「どういたしまして」

 

「あと……」

 

 葛葉は少しだけ言葉を探す。

 

「一緒に走れてよかった」

 

 ゆらりは笑った。

 

「僕も」

 

 遠くで仲間たちの声がする。

 

 誰かがまたくだらないことで笑っている。

 

 十一人の鴉。

 

 それぞれ違う場所から来て。

 

 それぞれ違うものを抱えて。

 

 それでも、一つの場所に集まって。

 

 最後の大型犯罪を成功させた。

 

 夜空の下。

 

 鴉たちは最後の時間を過ごしていた。

 

 もう、この十一人で飛ぶことはない。

 

 それでも。

 

 今日だけは。

 

 まだ、鴉だった。




これにて鴉編完、ここから幕間を挟んで、次はもう少し昔の話へと向かいます
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