ギャグ回です、ラプ様と葛葉の関係性すこ。
ラプ様をお父上から預かりまくってる葛葉爺やのコントは何回見ても飽きません。
鴉のアジト。
葛葉とゆらりが、いつものように適当な話をしていた時だった。
葛葉のスマートフォンが鳴った。
「ん?」
画面を見る。
「あ?、ツノガッさんじゃん」
「ツノガッ…? ああ、ラプラスの事か」
後輩の名前が上がり、ゆらりが反応する。
葛葉は電話に出た。
「はい、もしもし。どうされました、ラプ様」
「――――」
「ええ、ええ。爺やでございます」
その瞬間、ゆらりはふふっ、と笑う。
また始まった。
「もちろんでございます。ラプラスお嬢様のお望みとあらば、爺やは何なりと……」
「…………」
「はい。では、現地でお待ちしております」
電話が切れる。
「……何だった?」
「ラプ様が汚職したいらしい」
「まじで?」
ゆらりは笑った。
「警察が犯罪してクルーザーやりたいって、でも警察じゃ受注できねぇから、手伝って欲しいっぽいわ」
「面白そうじゃん、俺も手伝うわ」
「食いつくの早ぇな」
「だってラプなんでしょ? かわいい後輩が困ってるなら助けてあげるが
「後輩に甘々じゃねえかw」
「そういう葛葉も、変なコントやりながらもなんだかんだ手伝うんっしょ? 甘々なのはどっちゃらほいよ?」
「うっせ、早く行くぞ!」
素直じゃないなぁと、天邪鬼吸血鬼を見ながらゆらりは思う。
そんなやりとりをしながらも、二人はラプラスたちとの待ち合わせ場所へ向かった。
*
クルーザー襲撃の現場に近い遊園地。
そこには、すでにラプラスたちが集まっていた。
「ラプラス様!」
葛葉が駆け寄る。
「やっと……やっとギャングを継ぐ気になってくれたんですね!」
「いや継ぐ気は全然ないって!」
「そんな!私はあなたのお父上からあなた様を預かってるんです! いつかギャングを継いでくださると!」
「まーた爺やとお嬢様のコント始まってんの?」
ゆらりが笑いながら二人を見る。
「あ!ゆら先輩もいるじゃん!やったぁ!」
ゆらりの存在に気づいたラプラスが歓喜の声を上げる、そう言いながら駆け寄ってくるラプラスに子犬が主人に駆け寄るイメージが重なる。
「かわいい後輩の為に、私も人肌脱ぎますよっと」
ゆらりにとっても、ラプラスはホロライブという同じ事務所の愛すべき後輩、小動物的に可愛く慕ってくれる彼女に、ゆらりは笑顔で応える。
「殲滅とかはまかせといてよ!」
「そっか!ラグザのいるギャングってゆら先輩もいんのか!えー、じゃあちょっと入ってみてもいいかな…?」
そんな好意的な声を葛葉が見逃すはずもなく。
「ラプラスお嬢様!ぃやっとギャングを継いでくれるんですね!」
「いや継ぎはしないって!……とにかく!ラグザ、いや、爺や!今日は一旦たのむよ!客船させて!」
「もちろんでございます!、あなたのお父様から預かってるんですから!ラプラス様!ギャングを継いでください!」
「だから吾輩はギャング継がないって!」
「預かってるくだり繰り返しすぎだろw」
そんなかるびツッコミを聞きながら皆も笑う。
そんなやり取りをしていた時だった。
ふと、ゆらりの視界に人影が入った。
「……ん?」
遊園地の物陰。
そこに、警官が立っている。
「……葛葉」
「ん?」
「あれ……警察じゃね?」
「え?」
ゆらりが警官の方へ歩いていく。
まさか。
まだ犯罪すら始めていない。
それなのに、もう汚職がバレているのか。
ゆらりの脳裏に嫌な想像が走る。
「レインさん?」
そこにいたのはレインブレインだった。
「あ、マキさん」
「……ここで何してるんですか?」
「いや、ここに警察のGPSマークが3個あって……」
「…………」
ゆらりは固まった。
「……GPS?」
「うん」
「三個?」
「三個」
後ろを振り返る。
ラプラス。
つな。
ツルギ。
かるび。
ゆらりは頭を抱えた。
「……ああ」
そう言いながらため息を吐きつつも、とりあえずレインに向き直るゆらり。
「レインさん、ちょっと…」
「うん?」
「一旦、ここは僕らに任せてもらっていいですか」
「え?」
「お金……握らせるんで」
「えぇ……」
レインは少し困った顔をした。
だが、何となく状況を察したのか、
「……まあ、いいけど」
そう言って、苦笑いを残して立ち去ってくれた。
「話のわかるレインさんで助かった…」
そう言いながら、ゆらりは深く息を吐く。
「……まだ犯罪始まってないんだけど」
ラプラスたちの元へ戻る。
「お前らさ」
「ん?」
「警察ジョブ、付けっぱなしだろ?」
「え?」
「退勤してない人がいた」
ラプラスはケロッとした顔で答えた。
「一瞬ちょっと入ってただけだから……」
つなが続く。
「もう切ったから大丈夫!」
「…………」
ゆらりは無言になった。
「……ははっ」
笑いながら、この能天気な愛すべき後輩の手伝いをするのをほんの少し後悔するゆらり。
隣では葛葉が頭を抱えていた。
「お前らさぁ……」
まだ犯罪すら始まっていない。
なのに、すでに怪しい空気が充満していた。
そして。
遠くからヘリの音が聞こえてくる。
「お、迎え来た!」
ラプラスが嬉しそうに空を指差す。
近づいてくるヘリを見た葛葉が、
「……ん?」
目を細めた。
「…………警察ヘリ?」
「そうだよ!」
「警察ヘリでやんの!?!?」
葛葉が叫ぶ。
「なんでだよ!」
「だって警察だから!」
「そういう問題じゃねぇ!」
ゆらりも思わず笑った、もうここまでくるとシンプルに笑うしかない、どうにでもなれである。
「いや、さすがにこれは面白すぎるだろw」
ヘリが着陸する。
操縦席にいたのは――
「ファン太!?」
葛葉が驚く。
少なくとも、少しはまともそうな人間が来た。
葛葉とゆらりの間に、ほんの少しだけ安堵が生まれる。
そして。
「ラプラス様を!」
葛葉が突然、爺やの顔になる。
「全力でお守りしてくださいね!」
「はい!」
かるび、つな、ツルギ、ファン太が元気よく返事をする。
「ラプラス様を預かってるんですから!」
「はーい!」
「お任せください!」
「守ります!」
妙に統率が取れている。
ゆらりはその光景を眺めながら笑っていた。
――この集団、一体何なんだ?
さっきまでの不穏な空気は知らないふりをして、とりあえず流されるままに楽しもうと開き直るゆらりであった。
*
そして舞台は、クルーザーへ。
「まずはラプラス様にギミックを」
「吾輩が?」
「ええ」
ラプラスがタブレットを手に取る。
表示されたパズルギミックと睨めっこする。
「……」
「…………」
「…………」
しばらくしても進まない。
葛葉が横から覗き込む。
「ラプラス様?」
「何だ」
「少し画面が近いんではないですか?」
「うるさい!」
ゆらりが吹き出す。
「君ら、犯罪中に何やってんの?」
「爺や、今集中してるから!」
「はい、申し訳ございません」
そんなコントをしているうちに時間だけが過ぎていく。
「……まだ?」
「まだ!」
「ラプ様、できそう?」
「できる!」
「ほんと?」
「できる!」
さらに数分。
「…………」
葛葉が無言でタブレットを見る。
「……貸して」
「爺やに任せる!」
「任せてください」
葛葉がギミックに挑む。
「……」
「……」
「…………」
「……」
解けない。
「…………w」
ゆらりは笑いを堪えながら見ていた。
葛葉はしばらく画面を睨んだ後、
「……ウチのギャングってすごかったんだな」
ぽつりと呟いた。
「何でそんな感想になるんだよw」
ゆらりが笑う。
「いや、普段ならこれくらい普通に終わってるから」
「まあ、分かるけど」
「お前できそうじゃん」
「うーん」
「やってよ」
「じゃ、ヒントだけ教えるよ」
「はい!はい!ゆら先輩ヒント欲しい!」
「おっけー!元気っぱいなラプには特大ヒントをあげよう!」
そうやって、一通りのタブレットの操作法と、ギミックの解き方を解説してあげると、他の皆も「解きたい!解きたい!」と言い始め、四人でタブレットを回し始めた。
それを少し離れて見る葛葉とゆらり。
「お前一瞬で解ける雰囲気醸し出して、やらねぇのかよ」
「なんかさ」
ゆらりは、目の前でわちゃわちゃしている四人を見る。
かるび。
ツルギ。
つな。
そしてラプラス。
誰もが必死で、誰もが楽しそうだった。
「……やっぱね、こういう試行錯誤も犯罪の醍醐味じゃん、汚職とはいえ、楽しんで欲しいよね」
「お前やっぱり後輩には甘々だな」
そう言って葛葉も笑った。
それにゆらりも笑顔で応えた。
「まあね」
やがて。
「できた!」
ラプラスが叫ぶ。
「おお!」
「やった!」
「いけた!」
ギミックが解除される。
クルーザーに敵のNPCが出現した。
*
犯罪が始まる。
そこからは、もう滅茶苦茶だった。
「敵来た!」
「撃て撃て!」
「どこ!?」
「そっち!」
「こっち!?」
「違う!」
銃声が響く。
ラプラス、かるび、ツルギ、つな。
それぞれがNPCを倒していく。
葛葉も応戦しながら周囲を見る。
ゆらりは一歩引いたところから、その光景を眺めつつ、撃ち漏らした敵を仕留めてゆく。
「……なんだこれ」
笑いが込み上げる。
警察官が。
警察の装備を持って。
警察ヘリで来て。
警察官同士で犯罪をしている。
もはや何が何だか分からない。
「ラプ様、次はお金です!」
「分かってる!」
ラプラスが回収ギミックに取り掛かる。
「ラプ様頑張って!」
葛葉が声をかける。
「あなたなら絶対にできる!」
「うるせー!」
「できるできる絶対できる!」
「集中させて!!!!」
ゆらりは腹を抱えて笑った。
「葛葉、うるさすぎるってw!」
「いや、頑張ってほしいから!」
「応援の圧がすごいんだよ!」
ラプラスが必死にギミックを進める。
そして。
「できた!」
「ナイス!」
「よし!」
無事に金を回収。
「脱出!」
全員がヘリへ向かう。
……が。
「ラプ様は?」
「……え?」
葛葉が振り返る。
いない。
「ラプ様!?」
「ラプちゃん!!」
「ラプ様はやく!」
皆が呼びかけても一向に返事のないラプラス、浜辺の方からはサイレンが聞こえる、通知がいったタイミング的にももう警察ヘリがいつきてもおかしくない。
「ラプラスお嬢様!」
葛葉が慌てて探しにヘリから降りた、その瞬間だった。
「うわっ!」
葛葉の身体が吹き飛んだ。
さっきまで乗っていたヘリのブレードに巻き込まれ、そのまま海へ。
「葛葉!?」
ゆらりが叫ぶ。
海面を見る。
「もう!」
ゆらりも飛び込んだ。
*
水中。
「葛葉! どこ!?」
ゆらりが葛葉を探す。
見つける。
しかし、水中では思うように動けない。
「ちょ、待って……!」
葛葉をエスコートして運ぼうとする。
だが、なかなかうまくいかない。
時間だけが過ぎる。
そして――
ゆらりの体も、ダウンしてしまった…
*
「マキさん!?」
「葛葉!?」
二人が水中に沈んでいる。
そこへ、かるびがダイビングスーツを着込んでやってきた。
「いた!」
かるびが二人をエスコートして、潜ったまま船から離れる。
その頃、無線から声が聞こえてきた。
『ラプラス様、回収しました!』
『ヘリで逃げます!』
「……よかった」
ゆらりがそう呟く。
葛葉も安堵の息を吐く。
「……いや」
そして、ぽつり。
「ぜってぇ今の見られてるから!」
「それはマジでそう」
ゆらりも即答する。
さっきのドタバタで警察に見られてないは無理がありすぎた。
そこへ無線。
『かるび、言ってたやつ、ちゃんと着替えな?』
「……は?」
葛葉とゆらりの声が重なる。
「着替え?」
「何を?」
すると、かるびが水中でバックを出した。
「……?」
数秒後。
水中で瞬時に着替えたかるびは――
いつもの警察官の制服姿になっていた。
「…………」
「…………」
「…………」
葛葉が固まる。
ゆらりも固まる。
「……何?」
どうやら、
――警察官が犯罪者を護送しているように見せかける。
そういう作戦らしい。
「お前らイカれすぎだろww!!」
葛葉が爆笑する。
「いや流石にやばすぎるってww!!」
ゆらりも笑う。
「作戦これ!?」
「お着替えバック作戦!?」
「ゲームルール無視しすぎだろ!」
「何だよその作戦!」
かるびは何事もなかったかのように泳いでいる。
「着替えた!」
そう無邪気な声でかるびが言うと、無線からは、
『おっけ!これで完全犯罪だわ!』
『やったーー!』
と、ファン太たちの喜ぶ声。
「お前ら……ww」
ゆらりは笑いながら頭を抱えた。
「これもう汚職とか言うレベルじゃねーぞww!」
葛葉も続ける。
「汚職とかいう言葉で表してはいけないね」
「ゴミすぎる、お前らww!」
「今まで警察続けれてたの奇跡でしょ!」
それでも。
当の汚職組たちは、
『ナイスナイス!』
「よしよしよし!」
と楽しそうに喜んでいる。
そして、なんとか沖へ。
*
丘の上。
そこにはツルギ、つな、そしてラプラスが待っていた。
「成功したぞー!」
「やったー!」
「犯罪成功!」
汚職組が喜ぶ。
ゆらりは疲れ切った表情で彼らを見る。
「……これは成功なのか……?」
もうツッコむことにも疲れてきた。
隣では葛葉が、そんなことなど気にもせずラプラスへ向き直る。
「いやぁ、ラプ様!」
「ん?」
「これで七代目を継いでくださる覚悟ができましたね!」
「まだそのくだりあったんだ……」
ゆらりが呟く。
「嫌で吾輩は今日で終わりだから……」
「えぇぇぇ!?」
葛葉が本気で驚く。
「今日で終わり!?」
「うむ」
「そんな……!」
ラプラスが笑う。
かるびも、ツルギも、つなも笑っている。
ゆらりも思わず笑った。
まあ。
本人が楽しそうなら、それでいいのかもしれない。
「あ!」
何かを思い出したラプラス、ゆらりの元に駆け寄る。
「あと!ゆら先輩!手伝ってくれてありがと!ゆら先輩と犯罪できて楽しかった!」
そう言いながら満面の笑みを浮かべるラプラスを見て、ああ、やっぱ手伝ってよかったなぁと、しみじみ思うゆらり。
やはり後輩には甘々であった。
*
犯罪そのものは終わった。
換金へ向かうラプラスたちと別れ、葛葉とゆらりは歩いてガレージへ向かう。
二人とも、すっかり疲れ切っていた。
「……疲れた」
「俺も」
「なんでこんな疲れてんだろ」
「犯罪したからじゃね?」
「犯罪した側が言うなよ」
そんな会話をしながら歩いていると、ゆらりのスマートフォンに通知が入った。
「……ん?」
バーディ。
投稿を開く。
そこに表示されていたのは――
[あかみかるび、柊ツルギ、ラプラス・ダークネスを見つけた方、一人一億払います。生死は問いません]
「…………」
「…………」
二人で画面を見る。
「……これは絶対警察クビだわ」
「逆になってくれないと困るね」
「もう全てがグダグダだったもんな」
「いやー……」
ゆらりがスマホをしまう。
「ちょっと後輩だからって甘やかしすぎたかな……」
「お前も十分楽しんでただろ」
「それはそうw」
二人で笑う。
その時。
葛葉のスマートフォンが鳴った。
「……誰?」
画面を見る。
「イブラヒム」
「……あ」
二人の表情が変わる。
忘れていた。
何を。
――鴉の大型犯罪を。
「……出ろよ」
「お前もちゃんと話せよ?」
「うー… わかった…」
葛葉が電話に出る、それと同時に通話をスピーカーモードに。
「もしもし?」
『葛葉、今どこ?』
「えーっと……」
葛葉がお前もなんか言えとゆらりに視線を向ける
「……ちょっと色々あって」
そうゆらりが言うと。
『あ、マキさんも何してんすか? 二人とも無線からもいないからどうしようかって──』
「いや、まあ……」
葛葉とゆらりは一瞬だけ言葉に詰まり、
「「……汚職警察の手伝いしてた」」
二人の声が重なる。
『は?』
イブラヒムの間の抜けた声に、思わず葛葉とゆらりが吹き出した。
その夜。
鴉の大型犯罪が始まろうとしていた───。
次に振り返り配信をして、鴉編の幕間も終了です。
ゆらりの振り返り配信は見たって?
誰の振り返り配信でしょうね〜