TS憑依転生強化さやかちゃん   作:愛しのマルゲリータ

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第二話

 

 

 

 

「まどか。帰りにCD屋寄ってもいい?」

「いいよ。また上条君の?」

「えへへ、まあね」

 

 放課後。

 よく行くファストフード店に寄ってから、まどかと一緒にCDショップへと向かった。

 ファストフード店まではもう一人の友達の仁美も一緒だったが、習い事があるらしいので途中で別れている。

 

 CDショップでは、入院している上条に頼まれていたCDを買う予定だ。

 俺はホモじゃないから恋愛感情は欠片もないが、それでも友達の中で一番仲が良いのは誰かと聞かれたら上条だ。

 

 美樹さやかとして生まれ生きて十年以上。言葉遣いや立ち振る舞いは両親の教育で女の子らしいものに矯正されてしまったが、精神的にはまだまだ男。だからだろうか。趣味や価値観は上条と一番気が合った。病院で暇してる親友に、せめてCDぐらいは差し入れしてやらんとな。

 

 CDショップに着くと、まどかは気になっている曲があるらしく、試聴コーナーの方に行ってしまった。

 

 俺もお目当てのCDを購入し、まどかの隣の視聴コーナーでヘッドホンを装着。暫くは優雅なクラシックでも聞いて時間を潰すことにした。

 

「ふんふんふぅ〜ん……」

 

 魔法少女になるには、キュゥべえと接触する必要がある。

 基本的にはキュゥべえの方から接触して来るのを待つしかないのだが、原作知識を知っている俺はこちらからキュゥべえと接触できる方法を知っている。

 

 原作主人公である鹿目まどかは、とある理由で魔法少女として破格の素質を持っている。そのまどかの素質に目を付けていたキュゥべえが、今日営業のために彼女と接触するはずだ。つまりまどかに付いて行けば、俺もキュゥべえと接触できるのだ。

 

『助けて』

「え?」

 

 声が聞こえた。

 

『助けて……まどか……さやか……』

「……」

 

 一瞬空耳かと疑ったが間違いない。

 原作では、まどかにしか聞こえなかったはずのキュゥべえの声だ。

 

 何故にまどかだけでなく俺にも?

 いや、もしかしたら俺が憑依転生した影響で美樹さやかボディの魔法少女の素質が原作よりも向上しているのかもしれない。直接キュゥべえに確かめる必要があるな。

 

『僕を……助けて……』

 

 声がするらしき方角は、不思議と伝わってくる。

 

「……行こう。まどか」

「この声、さやかちゃんにも聞こえるの?」

 

 俺は無言で頷き、まどかの手を引いた。

 階段を登り、俺とまどかは次第に人気のない工事中のフロアへと導かれていった。

 

「どこにいるの……? あなたは、誰?」

 

 薄暗く、物音一つしない空きフロア。まどかが声の主を探して呼びかけると、突然真上から激しい物音とともに何かが落ちてきた。

 

 それは、輪が付いた長い耳を持つぬいぐるみのような、傷だらけの白い生き物だった。

 間違いない。キュゥべえだ。

 

「あなたなの?」

 

 まどかが駆け寄り、ボロ雑巾のようになっているキュゥべえを抱き寄せる。

 その間に、俺は護身用の武器として近くにあった消火器を回収しておく。

 

「そいつから離れて」

 

 その時、キュゥべえのものとは違う声が響く。

 じゃらりと天井から鎖が落ち、聞き覚えのある声と一緒に上から少女が降って来る。

 

「ほむら……ちゃん?」

 

 現れたのは、魔法少女の姿に変身した暁美ほむらだった。

 同時に、周囲の景色が歪む。

 

「な、なんなのこれ!?」

「こんな時に……」

 

 蛾のような生き物が湧き出し、殺風景なフロアがメルヘンホラーな世界へと塗り替えられていく。

 

 これはほむらの魔法……ではない。

 おそらくは乱入してきた魔女の仕業だ。

 原作より登場が早い。

 そのせいで、ほむらにぶっかける予定だった消火器の出番が失われてしまった。

 

「な、何かいるよ!?」

 

 まどかの視線の先には、髭が生えた綿飴のような生き物たち。

 髭綿飴とでも呼んでおこう。

 大きなハサミを抱えるそいつらが、じりじりと俺たちの周りを囲んでいく。

 

「どうしよう……!」

 

 不思議な歌と共に近づいてくる髭綿飴たち。

 マミさん早く来てくれマミさん! あとほむほむも早く魔法使ってなんとかしてくれっ!!

 

 俺は内心冷や汗を流しつつ、手に持っていた消火器を構える。万が一の時は、この消火器で戦うしかない。

 

「さ、さやかちゃん!?」

 

 吹きかけたところで威嚇にもならないだろう。ならば……鈍器として利用すればッ!

 と思ったが、どうやら杞憂だったようだ。

 

 突如、爆音が響く。

 同時に上空から無数の銃弾が降り注ぎ、あっという間に髭綿飴たちを全滅させてしまった。メルヘンホラーな空間も歪んで掻き消え、元の殺風景なフロアの景色に戻っていく。

 

「危なかったわね」

 

 暗がりから足音が響く。

 

「でももう大丈夫」

 

 現れたのは、金髪縦ロールの魔法少女だった。

 その少女のことを、俺は原作知識で知っている。

 な、生マミさんだッ!!

 そう、彼女こそが三話で首取れて死ぬ(マミる)ことで有名なあの魔法少女・巴マミその人である。

 

「その制服……私と同じ見滝原ね。それに――あら、貴女も魔法少女?」

「……」

 

 マミさんが、ほむらに話しかけた。

 二人の間にシリアスな空気が流れる。

 

「す、すっごくおっきい……」

 

 その間、俺はマミさんの胸に実っているたわわな果実の大きさに、ただただ圧倒されていた。

 

 嘘だろおい。あの素晴らしい人類の宝が、もう間もなく失われてしまうのか!?

 そんなことは許されない。絶対に守護らねば……ッ!!

 

「さやかちゃん?」

 

 おっといかん、つい声に出してしまった。

 まどかが困惑した様子で視線を向けてきたので、おほんっと咳払いして誤魔化しておく。

 

 気付けば、マミさんとほむらの話し合いもいつの間にか終わっていた。

 

 

 

 

 ♪♪♪♪♪♪♪♪

 

 ほむらが去った後。

 ボロ雑巾のようになっていたキュゥべえは、マミさんの魔法で回復して元気になった。

 

 元気になったキュゥべえは、すぐさま俺とまどかに魔法少女になってほしいと契約を迫って来たが、魔法少女について何も知らないまどかは、いきなりそんなことを頼まれても戸惑うしかない。

 

 そこで、魔法少女であるマミさんの家で魔法少女について詳しい話を聞くことになった。

 

「わあ……綺麗!」

「これがソウルジェム。キュゥべえによって選ばれた女の子が契約によって生み出す宝石よ」

 

 マミさんの家でお茶とケーキをご馳走になっていると、彼女が黄色い宝石――ソウルジェムを見せてくれた。

 

「魔力の源であり、魔法少女であることの証でもあるの」

 

 その美しい宝石が、キュゥべえが巴マミから抜き取った魂が具現化したものでもあることを俺は知っている。

 

 既に巴マミという少女の本体はこのソウルジェムだ。肉体は既にソウルジェムを通して操ることができるただの抜け殻にすぎない。だから、ソウルジェムから百メートル以上離れると、肉体を操作することができなくなり、体はピクリとも動かなくなる。

 

 このソウルジェムの真実をキュゥべえはマミさんにまだ教えていないようだ。

 もしも真実を知ってたら、精神的に脆いマミさんがこんなに穏やかな顔をしていられるはずがない。

 

「契約って?」

「僕は、君たちの願いをなんでも一つ叶えてあげる」

 

 まどかの問いに、マミさんの代わりにキュゥべえが答える。

 

「願い事を……」

「なんだって構わない。どんな奇跡だって起こしてあげられるよ」

 

 それからキュゥべえは、願いと引き換えに課される魔法少女の使命について語り始めた。

 

 ――魔女という呪いから生まれた存在と戦わなければならない。

 

 ――理由のはっきりしない自殺や殺人事件は、かなりの確率で魔女の呪いが原因。

 

 ――魔女は常に結界の奥に隠れ潜んでいて、決して人前には姿を現さない。

 

 説明の内容は大体こんな感じだ。もちろん、魔女がどうやって生まれるかは一切語られていなかった。嘘は吐かないが、聞かれなかったことは意図的に説明しない。キュゥべえがよくやる卑劣な手口である。

 

「……マミさんは、そんな怖いものと戦っているんですか?」

 

 遠慮がちに聞くまどか。

 

「そう、命がけよ。だからあなた達も慎重に選んだほうがいい。キュゥべえに選ばれた貴方達にはどんな願いでも叶えられるチャンスがある。でもそれは死と隣り合わせなの」

 

 マミさんは真面目な顔でそう忠告してくれた。

 

「うえ、悩むな」

 

 俺はというと、表向き悩んでいる様子を見せた。

 もちろん演技である。

 俺はもう既に、人類の宝を守るために戦う覚悟を決めている。

 

「そこで提案なのだけど」

 

 悩んでいる俺たちの姿を見て、マミさんが苦笑しながら言う。

 

「二人ともしばらく私の魔女退治に付き合ってみない?」

 

 それは、職業体験ならぬ魔法少女体験のお誘いだった。

 

「魔女との戦いがどういうものか、その目で確かめてみればいいわ。その上で、危険を冒してまで叶えたい願いがあるのかどうか、じっくり考えて見るべきだと思うの」

 

 もう外も暗くなりだしたため、その場はとりあえず一度お開きになった。

 今回は、まどかが一緒だったから契約はしなかった。

 俺がここで契約してしまうと、流れでまどかが適当な願いで契約してしまう可能性があったからだ。

 

 まどかはまだ魔法少女の真実も、ほむらの献身も知らない。

 それらを知った上で契約するか否かを考えてほしいと、一人の友達として思っている。

 ただ、俺はできるだけ早く契約しておきたいから、魔法少女体験が終わったらこっそりキュゥべえと契約しようと思う。

 

 あ、そういえば。一つ聞き忘れてたことがあった。

 

「ねえ、キュゥべえ」

 

 マミさんの家をお邪魔する前に、俺はキュゥべえに質問した。

 

「私とまどかの魔法少女の素質って、どれぐらいあるの?」

 

 その質問にキュゥべえは答えてくれた。

 

「君たちが魔法少女になれば、すぐにでもマミよりずっと強くなれるよ。もちろん、どんな願い事で契約するかによるけれど」

 

 やっぱりだ。憑依転生の影響か俺の魔法少女としての素質はかなりあるようだ。

 

「まどかが生み出すかもしれないソウルジェムの大きさは、僕にも測定しきれない。そしてさやか、君が生み出すかもしれないソウルジェムの大きさは、まどかを除けば史上最大の大きさになるだろうね」

 

 ……訂正。想像以上に素質あったわ俺。

 

 

 

 

 

 

 ♪♪♪♪♪♪♪♪

 

 一度家に帰った俺は、制服を脱いでからド〇キで買った魔法少女コスプレセットに着替えた。

 

 目出し帽で顔を隠し、相棒の金属バットを肩に担いで家を出る。

 

 明日の魔法少女体験では魔女と……は流石に戦わないだろうけど、使い魔とは戦う可能性がある。

 

 というわけで使い魔より確実に弱い不良たちをしばいて、明日の戦いに備えようと思う。

 

「契約して魔法使えるようになったら、魔法少女マジカルスタイリッシュ不良スレイヤーに改名するか」

 

 そんなわけで不良スポットの路地裏に到着。

 そこには、中坊なのに煙草吸ってるませたヤニガキ五人組の姿。

 

「今日カツアゲしたオタクくんさあ、中学生になってもまだ魔法少女アニメ見てるらしいぜ~」

「うわキモww」

 

 連中は全員男。

 おまけに会話の内容からして、しばいても問題なさそうな奴らだ。

 というわけで、正義執行。

 

「ヒャハー!! てめぇら俺の経験値になれ!!」

 

 俺は金属バットを構えて叫んだ。

 

「な、なんだこいつ!?」

「ま、まさか噂のスタイリッシュ不良スレイヤー!?」

 

 おい、魔(・)法(・)少(・)女(・)を付け忘れるなよ。

 

「おらぁ!」

「ほぎゅぁああああああああッ!!」

 

 オタクと魔法少女を馬鹿にしていた不良その一の股間にバットをフルスイングすると、ようやく他の四人も身構えた。

 

 だが判断が遅い。

 不良その二とその三は股間に意識が向いている間に顔面一発KOでそのまま気絶。

 不良その四は腹に一発叩き込んだら、お腹を押さえたまま地面にうずくまって動かなくなった。

 

 おいおい瞬殺だよ。

 

「ひ、ひぃいいいっ!」

 

 残った不良その五は、つい先ほどまでイキっていたのが嘘のように無様な醜態を晒して逃げ出した。

 逃がすか。

 魔法少女は機動力も大事。

 というわけで長年パルクールで鍛えてきた自慢の足で先回りする。

 

「た、助け……」

 

 戦意喪失している相手に金属バットは流石に可哀そうだから、股間に蹴りをお見舞いするだけで許してやった。まあ、空手もやってたから結構威力あると思うけど。

 

 痙攣する不良その五を転がして、戦利品を漁る。

 

「チッ! しけてやがる」

 

 不良共から剥ぎ取った財布はどれも懐が寂しいものばかり。万札が一枚もねえ。今日の不良共はハズレだな。まあ、少しばかり戦闘経験は積めたから許してやるか。

 

「生まれ変われよ少年たち。不良だったお前たちは、先ほどボコボコにしてやっつけたからきっと大丈夫だ!」

 

 ピクリとも動かない五人組にそう言い残してから、俺はその場を後にした。

 彼らにカツアゲされたオタク君……仇は討ったよ。

 

 

 

 

 ♪♪♪♪♪♪♪♪

 

 翌日の放課後。

 待ち合わせ場所のファストフード店に入ると、席の一つに座って待っているマミさんを見つけた。

 

「さて、それじゃ魔法少女体験コース第一弾。張り切って行ってみましょうか。準備はいい?」

「は、はいっ!」

「ふふ、良すぎるくらいね」

 

 まどかは緊張しているのか、声が少し上ずっていた。

 対するマミさんは、こちらが心配になるぐらい気合十分だ。

 

「あっ、そうだマミさん。準備になっているかどうか分からないけど、一応持ってきました」

 

 鞄から金属バットを取り出してマミさんに見せる。

 数多の不良たちを撃破してきた実績がある俺の相棒だ。

 

「何も無いよりはマシかと思って」

「ま、まぁそういう覚悟でいてくれるのは助かるわ」

 

 金属バットを構える俺の姿を見て、マミさんは苦笑する。

 

「まどかは何かもってきた?」

「え、えっと、わたしは……」

 

 まどかが取り出したのは、理想の魔法少女姿をスケッチしているとてもキュートでプリティなノートだった。

 

「とりあえず、衣装だけでも考えておこうかと思って……」

 

 可愛い。

 流石はほむほむの嫁である。

 

 

 

 

 

 

「基本的に魔女探しは足頼みよ」

 

 いよいよ魔法少女体験が始まった。

 マミさんを先頭に、俺たちは町に出る。

 

「これが昨日の魔女が残していった魔力の痕跡」

 

 マミさんが両手で抱えているソウルジェムが一定間隔で点滅している。

 

「こうしてソウルジェムの捉える魔女の気配を辿っていくわけ」

 

 そのままマミさんの後ろを歩いて、歩いて、歩いて……気が付けば空は夕日で茜色に染まっていた。

 でもようやく、

 

「かなり強い魔力の波動だわ。近いかも」

 

 工場と廃屋が並ぶ寂れたビル街に足を踏み入れた瞬間、ソウルジェムの点滅が激しくなった。

 注意深く辺りを見回すと、廃ビルの屋上に人影発見。

 

「マミさん、上に人が!」

 

 俺が指し示した先には、足元をふらつかせている若いOLの姿が。

 

「ハッ!」

 

 すぐにマミさんが変身し、屋上から飛び降りたOLを救助した。

 

「魔女の口づけ。やっぱりね」

 

 助けたOLの首筋には、不気味な紋様が付けられていた。

 

「この人は……」

「大丈夫。気を失っているだけ。……行くわよ」

 

 OLが飛び降りた廃ビルの中に入ると、蝶の羽のようなデザインの紋章が刻まれた扉があった。

 

 あれが魔女の結界の入り口か。

 さっそく金属バットを構えて臨戦態勢に入る。

 すると、マミさんがバットに手を翳した。

 金属バットに魔法が込められ、マジカル金属バットに進化する。

 

「気休めだけど、これで身を守る程度の役には立つわ。絶対に私の側を離れないでね」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 結界内に侵入すると、さっそく髭が生えた蝶のような使い魔たちが襲ってきた。

 マミさんがマスケット銃で次々と撃ち落としていくが、一匹の使い魔が銃撃を搔い潜ってまどかに迫る。

 

「おりゃあっ!」

 

 その不埒な使い魔には、さやかちゃんがマジカル金属バットのフルスイングをプレゼント!

 

 昨日予行演習をしたおかげか、スイングは過去最高に冴えわたっている。

 

 熟練のバット捌きによって芯で正確に捉えた打撃を与えると、使い魔は霞のようにぼやけ、やがて完全に消滅した。

 

 急所への攻撃を避けようとする不良ども。

 その無粋な回避行動を正確無比に潰すために磨いた俺のスイング軌道修正能力は、使い魔相手にも通用するようだ。

 

 その調子で銃撃を潜り抜けてきた使い魔を二匹、三匹とマジカル金属バットで撲殺していく。

 

 魔法少女スタイリッシュ不良スレイヤーの実力舐めんなよ。マジカル金属バットを装備した今の俺が、使い魔ごときに負けるはずがねえんだよッ!

 

「生身なのに凄いわ! 美樹さん!」

 

 討ち漏らしをカバーしようとしていたマミさんが、そう褒めてくれた。

 

「かっこよかったよ、さやかちゃん!」

 

 まどかからも憧憬の視線を向けられて、少し気恥ずかしくなる。

 

「この調子でどんどん先へ進むわよ」

「はい!」

「は、はいっ」

 

 次の戦闘に備えて、マジカル金属バットのグリップを意気揚々と強く握り締める。

 が、その後俺の出番は殆どなかった。

 張り切り過ぎたマミさんの獅子奮迅の活躍で、あっという間に結界最深部へと到達したからだ。

 

 いや、マミさんめっちゃ強いな。

 リボンで銃作って弾幕もはれるし、近接戦も切れ味鋭くさせたリボンと徒手空拳で十二分にこなせている。

 

 流石はベテラン魔法少女。浮かれて油断さえしなければ三話で首取れて死ぬこともなかっただろう……そう思わせる、確かな実力を感じられた。

 

「見て、あれが魔女よ」

 

 結界の最深部。

 そこにはヘドロのような粘液で覆われている頭部から、所々に薔薇を生やしためっちゃでかい化け物がいた。

 

「うわ、グロっ」

 

 名前は確か、薔薇園の魔女ゲルトルード……だったか?

 

「あ、あんなのと、戦うんですか?」

「大丈夫、負けるもんですか」

 

 まどかが心配そうに引き留めたが、マミさんは単身最深部の広場へと降り立った。

 

「さあ、始めましょうか」

 

 マミさんが展開したマスケット銃が一斉に火を噴く。

 だが薔薇園の魔女は無駄にデカい図体に似合わず、俊敏な動きで銃撃を回避した。

 

「ッ!」

 

 攻撃を続けているマミさんの足元に、いつの間にか微小な使い魔たちが群がっていた。

 その使い魔たちが群れて触手へと変化し、マミさんの身体に絡みつく。

 

「きゃあっ!?」

「マミさん!」

 

 薔薇園の魔女はそのままマミさんを振り回し、遠心力を利用して彼女の体を思い切り壁に叩きつける。

 

「かはっ……!」

 

 原作では無事だったけど、実際にこの目で見ると心配になる。

 本当に大丈夫かな……なんて一瞬不安に思ったけど、マミさんは五体満足で無事だった。もちろん首も取れていない。

 

「大丈夫、未来の後輩に、あんまりカッコ悪いところ見せられないものね」

 

 そう言うと、マミさんは首元で結んでいたリボンを外し、一振りで触手の拘束を断ち切った。

 さらに、地面から伸びた魔法のリボンが薔薇園の魔女へと殺到し、ぐるぐる巻きに縛り上げて拘束する。

 

「惜しかったわね」

 

 マミさんの手に握られたリボンが大きく膨らみ、巨大な銃へと姿を変えた。

 これはあれだ。

 くるぞ、あの必殺技が!

 

「ティロ・フィナーレ!」

 

 掛け声と同時に放たれた巨大な銃弾が薔薇園の魔女の頭部を吹き飛ばし、爆炎が魔女の全身を焼き尽くした。

 

 薔薇園の魔女はソウルジェムの汚れを浄化できるアイテム――グリーフシードを残して消滅。メルヘンホラーな結界も綺麗さっぱり無くなった。

 

 

 

 

 

 ♪♪♪♪♪♪♪♪

 

 戦いの後、現れたほむらとマミさんがバッドコミュニケーションしてしまうハプニングがあったけど、今日の魔法少女体験は無事に終了した。

 

 マミさんと別れ、まどかを送ってから家に帰ると、

 

「やあ、さやか」

 

 キュゥべえが家の中で待ち構えていた。

 不法侵入で訴えてやりたいところだが、契約したいから今日だけは寛大な心で許してやる。

 

「僕と契約する気になったかい?」

 

 キュゥべえは察していたのかもしれない。

 俺が魔法少女になることに、かなり前向きなことを。

 

「本当に、どんな願いでも叶うんだね?」

 

「万能の神になるような因果を逸脱した祈りは流石に無理だろうけど、君ならそれ以外の祈りならきっと叶えられるよ」

 

「わかった。それじゃあ、私の願いを聞いて」

 

 俺は、キュゥべえに己の魂と引き換えにする願いを告げた。

 

「私を回復魔法が使える最強の魔法少女にして。今現在存在しているすべての魔女よりも、魔法少女よりも強い最強の魔法少女に私はなりたいっ!」

 

 最強の魔女。ワルプルギスの夜にも負けない魔法少女になること。

 初見殺しの攻撃を受けても死なずに済みそうで、他の魔法少女との共闘でも有用な回復魔法を使えればなお良し。

 

 それこそが、俺が魂を捧げるに足ると判断した願いである。

 

 

 





次回予告

仁美「退院おめでとうございます。実は私、あなたのことが……」

恭介「ごめんなさい。僕、実は好きな人がいるんだ」

仁美「そうでしたか……ちなみにどのようなお方ですの?」

恭介「僕の怪我を治してくれた魔法少女マジカルスタイリッシュ不良スレイヤーさんだよ!」

仁美「???」
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