①
子供の頃から犬が好きだった。
犬は、愛情を捧げれば捧げるだけ、その分を態度で返してくれる。俺を目にした瞬間に尻尾を振り、嬉しそうに駆け足で駆け寄ってくる姿が、愛おしくてたまらない。
実家で暮らしていた時は、合計7匹の犬を飼っていた。俺が生まれる前から飼っていた犬もいれば、物心がついたと同時に飼い始めた犬、捨てられていたところを保護した犬など、様々だ。一緒に育ち、たくさんの思い出を作る。それらの経験があったからこそ、今の俺が存在しているのだろう。
だが、楽しい記憶だけではない。必ず、別れが訪れるのだ。
1度だけ、3匹同時に飼っていた時期があった。老犬と、若犬と、子犬だ。子犬はやんちゃで、若犬や老犬によくちょっかいをかけていた。若犬は、子犬の態度に戸惑い、老犬に助けを求めることもあった。それでも、頑張ってお兄ちゃんをしていた。老犬は、2匹を遠くから見守るだけで、特に2匹の世話をすることはなかった。それでも、不思議と2匹からは好かれていた。
そんな3匹と一緒に暮らしている瞬間は、俺にとって1番の幸せだった。だが、その時はやってくる。老犬が、寿命で亡くなったのだ。
何度も訪れた愛犬との別れだが、決して慣れることはない。特にその老犬は、俺と共に育ってきた相棒のような存在だった。子供の頃からずっと一緒にいて、楽しいことも、嬉しいことも、何気ない日常も、たくさん共有してきた。だからこそ、今まで以上に心に深い傷を負った。だが、それ以上に辛かったのは、残された2匹の様子だった。
2匹は、老犬が亡くなった時、目に見えて落ち込んでいた。特に若犬は、老犬が大好きだった。よく老犬に身を寄せながら、安心したように昼寝をしていた。そんな若犬は、亡くなった老犬に決して近づこうとはしなかった。けれど、俺の膝の上から離れることもなく、ただじっと老犬を見つめていた。そして、静かに涙を流していた。やんちゃだった子犬も、その時は大人しかった。悲しそうな表情を浮かべながら、地面に伏せていた。
3匹で過ごしていた日常が、突然終わってしまった。そのことを、2匹なりに感じ取っていたのだろう。老犬が亡くなったことは悲しかった。だが、それ以上に。残された2匹の悲しそうな様子が、俺の心に深い傷を残したのだ。
それから俺は成人し、家を出た。残された2匹の犬は、今も実家で健康に過ごしている。実家に帰るたびに、2匹とも嬉しそうに俺を迎え入れてくれる。尻尾を振りながら駆け寄ってくる姿を見ると、今でも嬉しくなる。だが、自分自身で新たな家族を迎えようとは思わなくなった。あの時の2匹の悲しそうな表情が、今でも忘れられないからだ。
あんな悲しい思いをするのなら。
悲しい思いをさせてしまうのなら。
俺はもう、ペットを飼わない。
——そう思っていたのに。
「うにゃにゃっ、うにゃー♡♡♡」
「あっ、おいバカ猫っ!! それは俺のディニーだって何度言えば分かるんだっ!!」
「うにゃ!? シャー!!!!」
「うおっ!? あっぶねぇなおい!! ……ったく分かったよ。それはお前にやるから爪を立てるのはやめてくれ」
「にゃあ〜♡♡♡」
「はぁ……。わんこを飼ってた時はこんなに苦労してなかったぞおい……。それに、ピンク毛の猫なんて特異個体にも程があんだろ。遺伝子操作だなんだの虐待容疑でもしもし治安局メン? されたらたまったもんじゃねぇよ……」
猫、拾いました。