はーい! あたし、カリピーです!
はい、カリピーちゃんって呼んでください。
ここ、カムラの里でハンター見習いをしています。訓練中の武器は……狩猟笛!!
大きな打撃属性武器で、音を利用した攻撃や旋律によるパワーアップをメインにした、ちょっと変わった武器さんなのです。
見た目通りおもたくって、かつぐだけでも一苦労ですが、綺麗な音色が吹けた時はそりゃもう身体にぐんぐん力が湧いてくるんですから!
あたしは、まだ正式なハンターではないですし、ウツシ教官にシゴかれて毎日クタクタの日々ですが……いつかあたしも里の新鋭ハンターとして、狩猟笛で里を守るのです!!
といっても、まともに笛をぶん回せない今はホントーにただの見習いなんデスが……。
夢は夢ですから、デッカく、です。
狩猟笛はあまりメインの武器としている人がいない里ですが、あたしが里のカリピスト第一人者になるぞって、気合い、入れてます!
そんなあたしですが、今日はお休みの日!
ウツシ教官のキビシー訓練も無い、完全ふりーな日です。やったぁ!
訓練は大事ですが、里での楽しい生活も大切。里を美しく思えるほど、守る力も強くなるってヒノエさんも言ってました!
だから、今日のあたしは修練場の上、崖が切り立つ場所でピクニックをしています。
お弁当はもちろんうさ団子です!
ハンターの人が食べてるみたいな、特別な効果を持ってるお団子じゃありませんけど……おいしいですよ。
ヒノエさんが何十本も食べてしまうのも頷けます。ぱくぱく。
あたしの髪は、カムラの里では多い黒髪です。でも、少しだけ毛先が紅色なのが、チャームポイントだったり。
そんな髪で風を感じるお昼。
いつもの修練場ですが、ピクニック気分でどこか特別感がありますね。
さらさらふく風々。
ぎこぎこ鳴る装置。
遠くから聞こえる鈴の音。
狩猟笛を持つものとして、音にはビンカンなのです。
自然の音もまた、偶然にできた音楽なのだと本で読んだことがあります。ロマンチックですが、そこにあたしの笛の音が響けばどれだけかっこいいでしょう。うつくしいでしょう。
音を響かせ、たいせつなものを守る。
そんな
「──」
「わっ、こらプゥ! それはあたしのお団子だってば」
くるる、とあたしのお団子を横取りしたのは、子どもガルクのプゥ。
まだ小さくて狩りには出られないけれど、くいしんぼでやんちゃなコです。
あたしはお団子を抱えました。
プゥは腕に顎を割り込んできました。
何度か攻防戦をして、根負けしたあたしは、プゥにもお団子をわけてやりながら、また外の音に耳を任せるのです。
強く鉄を打つ槌。
燃える炎。
雑貨屋の風鈴。
少し離れた修練場にも、音ははるばる飛んでくる。
せいかつのおと。いきていくおと。
たいせつなおと。まもりたいおと。
プゥは、いつの間にか寝ていました。
もう、しょうがないんだからなぁ。
ふと、下の方で物音がしました。
小舟が波に揺られる音です。
誰かがこの修練場に来たみたいでした。
教官かと思いましたが、どうやら、あたしがいま一番注目してるひとみたいです。
ウツシ教官の弟子、猛き炎さん。
本名はわかんないですが、最近ハンターとして正式に登録されて、活躍している期待のハンターさんです。
あたしの先輩にあたり、未来のあたしでもあります。
まさかあの人が修練場に来るところを見られるなんて!
普段は別の場所で訓練しているので、彼の活躍は全然見たことありません。
ですが、既に多くのクエストをこなし、下位から脱しようとしているらしいので、その腕は折り紙つきでしょう。
あ、あたしもそんな風に言われてみたい……!!
猛き炎さんは、こっちには気づいていないみたい。
プゥを起こして、私はそっと息を潜めてハンターさんを覗きこみました。
彗星の如く現れた有望な猛き炎さんの、実力はいかに……と!
「──ヒエェ!?」
「ワフッ」
抜刀。
猛き炎さんが使っている武器は弓でした。
あれは、あたしの笛と同じシリーズである、「カムラノ鉄弓」ですね。
一番シンプルで基本的な武器ですが、そこにビンをセットしたハンターさんは──横持ちのまま矢をつがえ、瞬く間に十本以上の矢をヨツミワドウもどきに打ち込みました。
また、素早く身を捻って、切るように糸を手繰ってみせます。
身を躱すだけなのに、そこには下手な矢よりも濃い闘気が滲んでいる気がしました。
これは……とんでもないツワモノです!!
カムラの里は実力主義!
どんな村の人でも、武器を持てば武人となり、戦場に適応するような里ですが……猛き炎さんはその中でも指折りの実力を既に持っているみたい!
すごいです!!
しかも、なんだか納得していないのか、先ほどの身躱しを何度も試している向上心!
ウツシ教官が大好きなタイプだとわかります。
有り余る才能に、見合った向上心、そして馴染んだ実力……!!
「すごいね、プゥ」
「ワォン」
なんだかとっても良いものを見てしまいました。
ウツシ教官に言ったら、羨ましがられるかもしれません……。
弓を使いこなす猛き炎さんは素敵ですが、あたしの笛だっていつか成り上がってみせます!!
そういえば、皆さんは知っていましたか?
狩猟笛とは攻撃やパワーアップのために笛を吹くことがほとんどですが、実はそのまま吹けばちゃんと曲が奏でられるんです!
流石に戦闘時は短縮しますが、楽器としての狩猟笛もなかなか楽しいものなんですよ。
それに、吹けば吹くほど狩猟笛の音が私に馴染んでいっているようで、あたしはよく吹いています。
とってもとっても上機嫌な今は、きっと良い音が吹けるに違いありません!
あたしはそっとカムラノ鉄笛に息を吹き込みました。
──なんですか? 狩猟笛は全て、“笛”ですよ?
*
炎の爆ぜる音、
実力のあるハンターが集まり、多くのモンスターを討伐してきた実績のある。カムラの里。ここはいつも村全体に溌剌とした気が満ちていて、豪快な鍛治の祭りが響き渡る。
里は平和さを保っていたが、その裏は決して呑気なものでは無い。
竜が連なる百竜夜行。
過去の凄惨な被害の影が、近くに迫っていたのだ。
だからこそ、里長やギルド長は、新しくハンターとなったウツシの弟子がたちまち成果を上げていくことに頷く。
この戦力なら、超えられるのではないか。耐えて反撃に出れるのではないか。
まだまだ作戦は練る必要があるものの、一つの炎が種火として大火を成すように、里を飲み込もうとする竜たちを燃やし尽くしてやろう。そう意気込む。
里は、消えてはならない。
守るべきものこそ、ここにあり。
不穏な竜たちの動きに思わず眉間に皺が寄っていると、ふと、里長たちのいるギルドに微かな“音色”が聞こえてきた。
「おや」
ウツシがにこやかに修練場のほうを見る。
ああ、あの新しい弟子が弾いているのだ。
ウツシの弟子バカは有名なため、ふとした瞬間に出す弟子に向けての笑みは、もはや現状の答えとなってしまっている。
──灯火よ どうか今しばし
──道を照らしておくれ
──焔に舞う紅桜
──郷里 守り抜く 暁まで
「……〜まで──♪」
「つい、歌ってしまうな」
「いやはや、見事な演奏だゲコ」
カムラノ鉄笛から奏でられる、高い堅い音色。
それに、ミノトがつい、といった様子でつられて歌う。
それまでに、この
あの子はまだ幼く、笛を担ぐにも一苦労な体躯だが、きっと良いハンターになるだろう。あの小さなガルクと共に。
だってこんなにも、美しい音を狩猟笛で響かせているのだから。
里のあちこち、寝そべったガルクや外を警戒するガルクたちが、その歌音が吹き終わった時、皆大きく、遠吠えした。