カリピーちゃんの狩猟笛ピーヒャラ生活。   作:月日は花客

2 / 3
ウィンドホルン:アイルーと!

 

「ややっ! あなたはカリピーさんではありませんかニャ!?」

「そーですよ、なにかご用ですかー?」

「ジブンに、狩猟笛の演奏を聞かせて欲しいんです!」

 

 はーい、カリピーちゃんです!

 里を歩いていたら、なんだか錆色と白色の混じったアイルーさんに声をかけられました。

 アイルーさんはソリストという名前で、なんでもあたしの笛にインスピレーションを見出したとか。

 

「ジブン、アイルーの使うアイテムの開発をしているんですニャ!」

「すごーい! あの、おっきなブーメランとか、回復してくれる木の苗も!?」

「ええ、ええ、みなみなジブンの発明品でありますニャ! そして、新しい道具の開発にカリピーさんの力を貸して欲しいのニャ!」

「にゃ、にゃんですとー!?」

 

 まさかの責任重大アイデア担当に!

 アイルーたちは、ガルクと一緒でオトモとしてハンターの仕事をお手伝いする……。

 時に攻撃、時に回復、ときにぶんどり……。多種多様なアシストで、ハンターさんを支援して戦うのだ。

 つまり、あたしの手伝った道具が、前線で使われるかもしれないってコト!?

 そしたら、カリピーの名前も狩猟笛の知名度もアップ間違いなし! かも!?

 

「やるやる! やりまーす!」

「おお、ありがたい! 早速聞かせて欲しいニャが……カリピー殿は、笛はカムラノ鉄笛しか持っていないのかニャ?」

「ううん! この前ね、増えたんだ、一個!!」

 

 そう、あれは猛き炎さんの見事な弓矢捌きを見た時……テンションが上がっていたあたしは、カムラノ鉄笛で里に伝わる唄を吹いた。

 その時は、ただ自分の中で高まった感情とか、興奮を処理したくて吹いたものだったけど。

 とっても風通しが良かった晴れの日だったから、その音が運ばれてギルドや里にも伝わってたみたいで……。

 あとから「いい音色だったぞ」とか「流石の腕前だね!!!」って褒められて、嬉し恥ずかしー引きこもりたくなっちゃった!

 

 ううーん、鍛治の音が修練場にまで聞こえてきてるんだから、こっちの音もそりゃ流れていくだろうに……気づかなかったの。その時は。

 あたしとしては? 演奏で褒められることも嬉しいけど? 本当はハンターの腕前を褒めて欲しいっていうか?

 それこそ、上位ティガレックスをソロで狩って、「流石カリピストのカリピー!」なんて呼ばれてみたかったり、うへへ。

 

「カリピーさま?」

「あ、いけないいけない、ちょっと未来予想が……。ええっとね、新しく増えたのはこのコ! ウィンドウホルンだよ!」

 

 鉱石派生のひとつ、シンプル笛なウィンドウホルンくんでーす。

 カッチカチな見た目だけど、意外と音色は柔らかいよ!

 えへへ、ウツシ教官が、「愛弟子があれ以来調子が良くてね!!! 狩猟笛にはさまざまな旋律効果があるだろう? それを実感してみてくれ!!!」ってくれたの。

 猛き炎さんは、あれから上位に上がった。

 そこで色々モンスターを狩って装備を整えたりしてるみたい。まだ上がったばっかりなのに、この前は弓じゃなくて太刀を担いでたの。

 いろんな武器を使える人は里にもいるけど、弓と太刀って全然違う武器に見える。

 それなのに、上位のクエストをすんなりクリアしてきたんだって!

 やっぱり、憧れのハンターさんは違うや。

 

 でもでも、あたしもそんな彼に負けないよーに、今回のお仕事、頑張らなきゃ!

 ソリストさんは、音爆弾を元に、そこに狩猟笛の効果も混ぜた、そんなアイテムを作りたいみたい。

 音爆弾に狩猟笛の音って、合うのかなぁ?

 何に使えるのか、全然わかんないけど。

 

 えーと、ウィンドウホルンの旋律効果はみっつ。

 高周衝撃波。

 スタミナ回復速度アップ。

 防御力アップ。

 どれを選ぶんだろう?

 

「もちろん、全部ですニャ!!」

「全部ぅ!?」

「ハンターさんのスタミナ回復や防御も助けつつ、敵に衝撃波を送る音爆弾……そんなモノが完成するはずなんですニャ!!」

「そんなことできるのかなぁ……?」

 

 なんだか不安になってきたけど、お仕事なからには真面目にやんないとですね。

 私はウィンドウホルンを担ぎ、その吹き口を咥える。

 そういえば、ホルンは吹いて弾くから今回は自然だね。

 金管のマウスピースに違いそれに、私は息を吹き込んだ。

 

 ブォ〜ォオオ〜オ〜オォ〜♪

 

 重低音ながら、どこか厳かで寂しい音。

 ホルンが神事に使われるかは知らないけど、もういなくなった神様を、ずっと待ってるお社みたいな緊張感と切なさが混じる音だ。

 なんとなく、カムラの鉄笛とは違う。

 音は当然違うけど、もっと何か……元になった調べが、違うんだ。

 

 音楽って不思議。

 その音の響きを聞いただけで、心の中に感情が湧いてくる。勝手に、突然湧いてくる。

 カムラノ鉄笛は、里を守りたいって思う。この故郷を、絶対に消しはしないって。

 なんだか、そう覚悟が決まるような歌。

 けれどウィンドウホルンは、もういない何かを求めるみたいに、胸の中に寂しさと、ほんの少しの希望が、灯っていく。

 

 旋律が違うと、使う肺の力も違う。

 どこで吸って、吐くのか。

 どこで止めて、どこで伸ばすのか。

 拍ごとに、目まぐるしく空気が体内で変わっていく。

 そういう、「息づかい」によって、ハンターの身体は刺激されて、秘められた力が顔を出す。

 

 ウィンドウホルンは、とっても息を吐くからお腹にグッと力が入る。体幹を使っている。

 そうしていると、お腹の血が巡り始めて、身体がグッと硬くなる。

 パッと息を離すたび、吸い込まれていく新しい空気に肺が反応して、より良い息の吐き方を思い出す。息を効率よく、使えるようになる。

 それが、きっと旋律で強くなることの一つの答えなんだと思う。

 

 教官は、そんな違いも教えるために私に2個目の笛をくれたのかな。

 でも、使ってるのが修行じゃなくてアイルーの道具開発なのは、ちょっと申し訳ないかも。

 あたしだって、ちょっと有名になれるって思っちゃったし。

 

「どう、かな?」

「…………!」

 

 あたしの演奏を聴いたソリストさんは、なんだか音爆弾を弄る手を止めて、こっちに耳を向けていた。

 なんだかほうけて見えて、声をかけてしまったけど……数秒硬直してたソリストさんは、なんだか感情を溜めてから爆発させた。

 

「スッバラシイ!! ですが、これでは音爆弾に組み込むのは勿体無いほどですニャ!! これを爆発させるなんて、ああ勿体無いニャ」

「そ、そんなにぃ!?」

 

 ソリストさんは、なにやらあっちこっちからガラクタみたいな道具を取り出して、がちゃがちゃと組み立て始めた。

 

「な、何作ってるんですか?」

「このスッバラシイ音楽を留めておくためのアイテムですニャ! 音は消え物! だからこそそばに置いておきたいモノなのニャ!!」

「わー、職人魂に熱が入っちゃったみたい……」

 

 カンゼンに瞳が炎で燃えているソリストさん。

 手元で組まれていくのは、ウィンドウホルンと同じ鉱石でできた小さな箱みたいなモノ。

 なんだか、金色のトゲトゲパーツが組み込まれて、小さなパーツも集まりだした。

 そうして、数十分待っていたら、ソリストさんの叫びで居眠りから起きちゃった。

 

「これですニャ!! 我が傑作、『アイルーオルゴール』!!」

「あいるー、おるごーる?」

 

 オルゴールは知ってるよ? あの音がキラキラかわいいやつでしょう?

 それが今回の重低音と何が関係あるのかなーなんて考えてたら、ソリストさんがオルゴールのネジを回した。

 

 ブォ〜ォオオ〜オ〜オォ〜♪

 

「えっすごい!!」

「フフン、ジブンにかかれば、ウィンドウホルンの繊細な低音もこの通り! 留めることができるんですニャ!!」

 

 そこから響いたのは、間違いなくあたしが弾いた重低音の寂しさと崇高さだった。

 

「アイルーは大抵、重低音の音楽は好きなのですニャ」

「それはどうして?」

「母の喉の音、自分や兄弟の喉の音、心臓の音……。そんな、身体の暖かさを、思い出させてくれる音なんですニャ」

「へぇ……」

 

 私にはとっても寂しい切ない曲に聞こえるけど、アイルー達には安心と生まれた時の曲に聞こえるのかな。

 人によって変わる。音楽って、不思議。

 

 その後、オルゴールは一部の里のアイルーに向けて売り出されることになりました。

 武器でもなんでもないけど、思ったよりも好評で、私もアイルーたちからたくさん褒められちゃった!

 でも、「ああ、オルゴールの!」って覚え方は、ちょっとイヤかも……?

 

 あと教官もいつの間にか持ってたけど、どこで買ったんだろう……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。