何で書くのに記憶力が必須な日誌を主人公の名字にしたんだろう。
因みにカゲマスはプレイしてません
ほほ~^(スマホの容量が圧迫される音)
月明かりが部屋を照らす夜、田舎の商人の家にそれはそれは元気な金髪の赤子が生まれたという。
まるで獅子が吠えるかのような凄まじい産声は広い家中にまで響き渡ったんだとか。きっとご近所さんにとってはいい迷惑だっただろう。
その赤子はひとしきり泣いた後、それまでがまるで嘘かのように静かになった。壁か何かのように。
父親がその指を差し出すと鮮血のような赤い目で見つめながらその指を興味深そうに握り、軽い悲鳴を上げるほどの握力で握ったという。
雷鳴のように激しく生誕し、嵐の後のように静かだったその子の名前は。
ハル・デイノート。
片田舎に住む商人の一人息子だ。
「ゥオギャアアアァァァァァア!!!!!」
「ずいぶん元気な子だな。この子は」
「うふふ...立派に育ちそうね」
名倉凜の名前を前世に置いて、俺はこの世界で激しく泣き叫びながら生まれた。
周りの従者は耳をふさぎ、父親も耳に負担がかかっているのか困ったように笑う。
特に理由や感情を抱いた訳ではなかった。勿論、恩返しできずに死んでしまった親に想いを馳せたりなどはしたが。
体が生きるために泣けと本能的に動いたからこそ自分は泣き叫んでいるのだろう。赤子は泣かねば呼吸ができない。故に自分の体と本能はこんなにも激しく泣いている。
本能的な動きは自分にすらどうすることもできない。うるさく泣きわめいて悪いがしばらく我慢してもらおう。
そうやってしばらく泣いている間も、少し目を開ければ世界に一つ、色が増えていた。
ふわふわとした光の粒子がこの世界に広がっているのが分かる。それは人に強くまとわりついているようにも見えるが、その濃さは人それぞれだ。
もしかして、これが生前影野くんが追い求めていた『魔力』だろうか?
そんなことは今は分からない。思考を回すよりも先に...
(あっ、出る)
「オギャアアアアア!!!ゥオギャアアアアア!!!!アアァァァァァァン!!!」
今の自分は催したとき我慢が効かず、出して泣いてしまうほど幼く弱弱しい体だからだ。
そして何より、仮にも高校生まで生きた身分として色んな人の目の前で出してしまうというのは少し恥ずかしかった。
「チィッ!」
朝っぱらから木刀を打ち合う音が周りに響き渡る。
目の前には新しく自分に剣を教えると志願してきた剣術師範。それが相手が子供という余裕と油断を消し去った戦士の顔で立っている。
この世界に生まれてから10年と4ヶ月、それが俺がハル・デイノートとしてこの世界で暮らした日数だろうか。今ではすっかり、この世界での生活に馴染んでいる。
泣きわめく赤ん坊だったのがまるで昨日の出来事のように感じられる。あの時できたことと言えば、この世界に満ちる力の観察とそれを体で制御する方法を模索すること程度だっただろうか。
この世界に満ちる力...魔力というのは本当に興味深い。
この発達途中の子供の体でも岩を砕く破壊力と、風のように走れる走力を手に入れることができる。ある意味夢にまで見た力だろう。
完全に制御しきるのには6年程掛かってしまったが今では不自由なく行使できる。と言っても、自身と自身の触れているものならの話だが。
肉体から離した途端まるで霞のように消えていくから手の中で小さく固めるだけでも一苦労だ。魔力と言うから魔法を使う力なのかと最初聞いたときは思っていたが、この世界ではそうでもないらしい。この肉体から離した瞬間に安定性を失う性質のためだろう。
だからこの世界では体を武器を魔力で強化する魔剣士という職業。ゲームで言うジョブが主流なようだ。
自分の肉体を使い戦うというのは性に合っているから好きだ。限界があるとはいえ努力すれば努力の分ステータスは上がるし、肉体の耐久性が上昇すれば身体に注ぎ込める魔力の上限も解放される。システムとしては随分分かりやすい。
故に目指しているのも魔剣士。勿論親の商売を継ぐのも考えてはいるが、魔剣士を志しながらでも不可能ではなさそうだし、それなら俺はどちらの道も歩む。そうすれば両親もきっと安心できるだろう。
「フッ!」
今日も今日とて、従者や両親が見守る中で魔剣士としての鍛錬をこなす。
岩を切り刻んだり、魔力による強化を切らさない状態で基礎トレーニングを行ったり様々あるが、中でも好きなのはやはり、人と戦う実戦方式の対人訓練だ。
「ハァッ!!」
師範の気合と共に撃ち込まれる一撃を受け流し、軽く脇腹に一撃を打ち込む。追撃に構えだけ大ぶりの一撃に見せかけた柄での速攻の打撃を叩き込み、体勢を崩した瞬間顎を思いっきり切り上げる。
この世界の剣技や体術は随分と未熟だ。それは素人目でも分かった。
構えや動きに無駄が多い。無駄というのは対人戦闘において極力排除しなければならない要素だがそれを出来ていない。まぁ、それは当たり前なのだろう。前世の柔道や剣道だって結局は先人たちの技術と鍛錬の結晶だ。その経験値が丸ごと消えていると考えれば理解できる。
同時に楽しみだ。自分が現代で積み重ねてきた努力でこの世界の人間とどこまで競えるのか...それが非常に楽しみで仕方がない!
それにこの力があれば、文字通り目の届かない人にまで手を伸ばせるかもしれない。それを不意にする必要もないからな。
だからさらに楽しみになってしまうのだ。自分の力がどこまで世界に届きうるのか。どこまで成長できるのか。
とはいえ、剣技にばかりかまけてないでそろそろ手加減を学ぶ時かもしれない。また試合で興が乗ってやりすぎてしまった...
「すまない。どうにも手加減は苦手でな...」
今まで対人戦というのは数えるほどしかやっていなかった。例えば迷惑な不良グループを追い払ったりだとか、裏路地で怪しい行為をしている人間を現行犯で捕まえたりだとかはするけどその程度だ。
本格的に戦うとなるとつい競争心のようなものが芽生えてしまう。負けられない、勝ちたい、一番になりたい...やれやれ、俺も子供だな。
木刀を腰に差して、戦ってくれた相手に深々と一礼をする。今日の訓練はここまで。この後は勉強もなく一日フリーだしいつもより多めに魔力操作の訓練をしてもいいだろう。そろそろ魔力を掌で圧縮できるだけ、なんて状態から脱却したいし。
ここ最近は盗賊の目撃情報も多い。それで実戦を行うのもいいだろう。
まぁ何をするにしろ今は休息が必要だろう。疲れてはいないが腹が減った。
「さてと、パンと肉を幾つか拝借して近くの目立たない森に籠るとでもするかな」
今日はフリーだし飯時や風呂の時間までは気が向くままに己の時間に費やすとしよう。
大きく時間は流れて日は沈み、空気は冷え、空には星と月が浮かんでいる。
魔力の圧縮、操作は今のところ大した進展はない。1、2m離れている程度なら維持はできるのだが操作までは難しい。ただ、少しずつ掴めてきた感触はある。精密操作の基礎訓練をしなければこれ以上は伸びないということも痛感したけど。
そろそろ良い子は寝る時間なのだろうが、自分は生憎良い子ではないのだろう。こんな夜更けだというのにブロードソード一本を持って森の奥にある廃村へと進んでいる。
前世の10歳の頃は怪しい物音がすれば少しだけわくわくしていたけど、正体が分かると案外そんなのものは無くなってくる。
それに、ただ奪うだけの人間というのには非常に憎悪が湧いてくるものだ。
おっと、少し思考が暗くなってしまった。
森を静かに進んでいけば、緑溢れる森の月光の静かな光が差す静かな夜に似つかわしくない、何かが弾けごうごうと燃えるような音と小さくも激しい光が見える。猿が人間の真似をして、たまたま炎を着けた訳でもないのならきっといるのは人間だろう。
「”しかし、いたのはたまたま迷い込んだ旅人でも、手癖の悪い猿でもなく、光物に釣られたカラス達だった”...日記の一文としては上出来だろ?」
森の中から出てくればたちまち盗賊達の注目の的だ。ならず者は急に飛び出たちょっぴり身なりのいい子どもを少しだけ怪訝な目で見て、その後はカモがネギ背負ってきた顔してる。予想通りの見飽きた顔を見るのは一周回って気分がいい。
周りには積み荷がたっぷりな馬車と複数の商人と護衛の遺体。可哀そうなことに、身ぐるみまで余すところなく剝がれたか。
「どうやら人を見た目で判断するクチのようだ。そんな盗賊は長生きできないぞ?」
「随分マセた坊やだな。パパやママは一緒じゃないのか?」
「今頃、その二人なら兄弟を作るのに勤しんでいるころだろうさ」
明らかにチンピラ風の男はこちらを見下し嘲り笑う。事実、大人と子供の身体能力というのは覆しようのないほど決定的なものだ。
チンピラの鈍が首の右側に当たる。冷たいが鈍い。しかし人の頭を落とすならこの程度でも十分か。
「しかし怯えねぇってのも面白くないな。ほら、今すぐパパー!ママー!助けて―!って呼んでみろ」
「君の方こそ、自分の両親に泣いて謝る覚悟はあるか?」
「上手く返したつもりかお坊ちゃんよぉ!」
余程頭に脳みそが詰まってないのか、それとも力を籠めないと気が済まない脳筋なのか、首筋から剣は離れチンピラは無駄に大振りな横切りを繰り出す。
成体と幼体の有利関係の前提条件が崩れる条件は主に二つ。
一つは力の差が塞がるほど優位をとれている場合。そしてもう一つは
「それが答えなら、致し方ない」
それを覆すほどの能力を幼体が持っている場合。
隙だらけの横降りを出す腕が少年が軽く振った剣にぶった切られポトリと足元に転がり落ちる。
腕を無くし痛みの叫びをあげる前に、男の頭に剣が突き刺さり絶命した。
「君たちを、君たちが奪った命とは反対側の方向に叩き落そう」
死体の頭から剣を鞘から引き抜くように素早く済ませ、足元の剣を蹴って回収してから血の滴る剣を盗賊に向ける。焦燥と怒り、そしてその中に隠れた確かな恐怖。
大将らしき奴のあの顔から見て、かなり場慣れしてるわけでもないのだろう。しかし護衛を一方的に虐殺できる程度にはやるらしい。
「あのガキ...てめぇら!何でもいい!あのクソガキとっ捕まえてぶっ殺しちまえ!」
その口を開いて発言した頃には既に大将の隣のチンピラの脳天に剣が突き刺さり、一番前のチンピラは腸を必死に出ないように腹部を抑えながら蹲ってるところを刺されあっけなく死んだ。
「相手より弱いなら、吠える前に噛み付くべきだろうに」
「ガキが調子に乗りやがって!」
激昂し無警戒に間合いに入ったチンピラがたちまち膾切りにされる。鮮血が空を舞い、バラバラになった体が散らばるが彼には血の一滴すらもかかることはなく。
「なっ...」
「いくら罵ってくれても構わないが、君たちに詫びを入れるつもりもないよ。その剣で一体幾つの商人と付き人の命を奪ってきたか自覚してないわけでもないだろう」
「訳の分からねぇことをごちゃごちゃと...!」
大柄な大将がようやく剣を抜く。先ほどのに比べれば隙は幾分か少ない。
「そうだな。今は言葉ではなく、剣を交える時だ」
「言ってやがれ、クソガキが!」
月光を反射し輝く二つの刃がぶつかり合う。一つは敵対者を全力で狩るため決死の剣。もう一つは敵対者の全てを見透かすための観察の剣。
鈍い金属音が響く。大柄な男の凶暴な笑みを少年の瞳が鏡のように映す。
隙の少ない素早い突き、袈裟切り、体格差を生かした相手のリーチでは届かない場所からの力を込めた縦切り。
それらを避け、防ぎ、受け流しながら少年は観察している。
「どうだ!俺はこれでもブシン流の皆伝なんだよ!」
「存じているさ。一度手合わせをしてもらったことがあるからな」
理に適った詰め方。精神論に頼らない戦いのための技。競い合うための技術ではなく人を殺すための剣。
「惜しいな。腕は立つというのにこれでは力の持ち腐れだ」
「てめぇみたいな甘ちゃんには分からない大人の世界って奴、さ!」
男は剣に意識を向けさせたうえで素早く蹴りを入れる。少年の腹部に入るはずだった蹴りを放った足は、足首を容赦なく捕まれた。
「っ、グアアアアッ!!!?」
咄嗟に剣を振るい切ろうにも、先に無防備になった足を切断され地面に転がり落ち、剣は空気を切り裂く。
「膝の皿を割ろうとも思ったが、やっぱり大抵は切った方が早いな」
「うぐおおぉ...クソが。なんで、なんでこんな...」
四肢を切断してもすぐさま軽く動けるのは小説や漫画の中だけの話だ。実際には一本を欠損しただけでも全身の運動能力が大きく低下する。生物にとって部位の欠損というのはそれほどまでに大きな意味を持つものだ。
そして大きく下がった能力に技術を適応させていくのは、果てしなく時間のかかる行為だ。
近付いた瞬間、悪あがきで飛んでくる剣を軽く弾き飛ばす。
「チェックメイト」
声にならない悲鳴は森に響かず静かに闇夜へ消えていく。弱り切ったウサギは、噛み殺されるときには小さな悲鳴のみを出して逝くものだ。
さて、これで光物につられた厄介なカラスを駆除できた訳だが。
もっと早く特定できていれば、彼らの命が無残に散らされることもなかっただろう。
「君達の命がこれ以上侮辱されることはない。君達の戦いは決して無意味なものではない...家族の元には送り届けられないが、せめて安らかに眠ってくれ」
せめてもの弔いに、ここに彼らの墓穴を作ろうと穴を掘り始める。
魔力を使わずとも、彼のスタミナと膂力を持ってすれば半端な道具しかなくても人を埋められるくらいの穴は掘れる。十数人の穴を人数分掘るとなると時間がかかりすぎるのである程度纏める。
「こんな手狭な場所しか用意してやれないし、遺体を火葬してもやれないが許してくれ...君たちの生も死も決して無駄ではなかった」
廃材に等しい石材と木で作られた墓標を作り、日本語で弔いの言葉を刻む。
『勇猛ナル勇士達ト商人、此処ニテ永久ノ眠リニ就ク』
風は穏やかに吹き、微かに頬を撫でる。包み込むような風がハルの体を優しく撫で、どこかへと向かう。
「せめて君たちの魂が、安寧を迎えることを祈ろう」
遥か彼方へ向かう風を見送り、数歩歩く。
先ほどからずっと感じていた妙な気配が近づいてくるのを感じる。
足音もない。息遣いも聞こえない。まるで暗殺者のように静かだがそこに殺気は感じない。品定めをされているかのような妙な視線だけを感じる。
自身の背後から近づいてきたそれに声をかける。
「それで、陰からようやく出てきた君は何者だ?墓作りを待ってくれるくらいには良識があるようだが」
「っと...やっぱりバレてたか。上手く気配殺してたんだけどな」
少年の軽い声と先ほどは感じなかった異質な緊張感。同時に体が震え、剣の切っ先が細かく揺らいでいるのが分かる。怯え...ではなく武者震い。体が既に戦闘に備えているのを理解した。
もし刃を交えるとしたら、簡単には負けてくれない。それどころかこちらを負かす可能性すらも十全にあり得るほどに強く、濃い魔力。おそらくバレたなら抑えても無意味と魔力を隠す真似をやめたのだろう。
声の聞こえる方へゆっくりと、金色の髪を揺らし振り向く。
「最近盗賊の目撃情報は多いのに、向かった時には既にバラバラ死体ってのが多発しててさ。それって全部君の仕業?」
「ああ。だがそれがどうした?君となんの関係がある?」
「いやいや、ただ僕の分が減ると少し困るなぁってのともう一つ」
指を立てて、フードを被った少年がニィっと口角を上げて言った。
「君に興味が湧いた」
奇妙なことを口走る陰に潜みし黒衣の少年。それをハルは、遠い記憶を引っ張り出すように赤い瞳で見つめていた。
なんでP5Xのリセマラはすぐに終わったのにカゲマスは一日かかるんだ...なんか悪い子と下かな。
どうも。陰実関連の諸々をまた一気に履修しながら勉強していたら時間が過ぎていました。
ハルくんは子どもの時から力が強くていろいろ壊してました。玩具とか絵本とか親父の指とか。
所謂悪人に対してはかなり情け容赦ない。人を救う、守るということに固執する割には殺すという行為に一切の躊躇を持ち合わせない異常者。
優しいとは一体?
初っ端からW主人公。オリ主をしっかり活躍させながらシャドウがしっかり陰の実力者ムーブしてて物語もブレさせないって難しいしできる人は凄いですよ。