とある鎮守府の乱雑な運営日誌   作:臨機高来

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自衛隊から

艦娘は一応、海上自衛隊の管轄である。指揮権は殆どないが。

 

その海自から、いくらかの出向があった。戦うために必要な人員だ。もちろん、艦娘となる隊員もいた。早期入隊組とはそういった連中のことだ。

 

コンコンコンと、ノックが3度響く。

 

「入ってください」提督としてこの椅子に座って数度程、いまだこの受け応えすら緊張する。ただの研究職員がこんな隊を率いることになるとは思っていなかった。ああ、ああ。少しだけ艦娘というものを発明したのを後悔している。大体のことは出向組がしてくれると言っているが、この上なく不安だ。

 

 ドアが開き3人が入ってくる。まだその服は海上自衛隊のそれだ。いや、彼女たちが艦娘とならないのなら、そのままの服でもおかしくないのだが。今日の目通しは、そういう人が来るはずだ。

少しの間

 

 私が緊張していることに気が付いたのか、あきれたのか、一人ずつ勝手に自己紹介を始めていく。

 

「海上自衛隊准海尉、重巡洋艦である利根である。よろしく頼むぞ。提督よ」

 

「海上自衛隊海曹長、重巡洋艦である筑摩と申します。よろしくお願いいたします。提督」

 

「海上自衛隊1等海尉、航空母艦、鳳翔です。よろしくお願いいたしますね」

 

「以上、艦娘としての出向、3名です」

 

「あ、ああ。よろしく」私はいまだに、これくらいのことしか言えなかった。

 

 

-----

 

 

 利根、と言っていた子が気を利かせて食堂で話す事を提案してきた。この場では私がどうしようもないと悟ったのだろう。私はそれを了承、他の2人もそれを受諾し、食堂へ移動していった。

 

 鎮守府ができて、実は初めて食堂へ行く。今までずっと資料作成や、資料をしかるべき処へもっていったりと、ずっと休まることのできていなかった。研究からも離れている。少し研究室が恋しい。

 

「提督よ、少しは落ち着いたか?」利根が私にそう聞いてくる。年は20前半だろうか。ツインテールのせいでもっと幼いイメージが付きまとう。しかし物腰が、年以上に長く人生を生きているような雰囲気も醸し出している。

 

「・・・少しは」先ほどの緊張はないが、今は違う緊張を感じる。女性3人とお茶を囲むのは初めての経験だ。おかしい。研究室じゃあ5人の女性と机を囲っていたはずなのに。それとは比にもならない緊張に襲われる。

 

「お疲れですか?今日久しく暇ができたと聞きましたが」筑摩少し心配そうに私に聞いてくる。利根と比べるとこのくらいなく大人びて見えるが、これでも利根よりも年下らしい。先程私は、利根のことを表面は幼く、内面は大人びていると評したが、筑摩はどちらも成熟した大人のそれだと感じた。

 

「誰から聞いたんですか」私は特に気にしてはいませんでしたが、聞いてみました。

 

「あら、提督。この鎮守府にどれだけの出向者がいるか知っていますか」少し脅すような言葉で筑摩が言ってくる。ああ、私は悟った。私は逃げることができない。まぁ、艦娘のそれを知っているのは私と少数の人間。逃げられたら困るか・・・少し、気がめいる。

 

「こら、筑摩さん」と鳳翔さんが飲み物をもって机に来る。彼女のイメージとしては、少し古風という感じだろうか。佇まいが良い意味で時代錯誤。今時出会えないような女性ではないだろうかと思います。

 

「ごめんなさい。提督、少し筑摩さんが粗相をしてしまったようで」それを聞いて筑摩がおかしそうに笑います。

 

「いえ、提督。そんな意味で言ったわけじゃないんですよ」堪え切れてない笑い声が漏れる筑摩。

 

「筑摩よ、さっきのはどう聞いてもそういう風にしか聞こえんぞ」と利根が言って言い改める。

 

「提督には吾輩たち、海上自衛隊が付いておる。あまり気を重く持たず堂々としていればよい」胸を叩きながら利根が言う。

 

 その言葉を信じすぎずに、私は聞く。監視、というのは事実としてあるんだろう。だが、ここに来ている出向組はそんな気は露としてない、といったところか。しかし、その言葉は私の緊張感を解くには十分だったようだ。

 

「まぁ、よろしく頼むよ」緊張のせいで出てきた慣れない敬語が、解除されたようだ。

 

「ふむ」利根はその言葉に満足したようで、鳳翔さんが持ってきたコップに口をつけた。

 

 緊張が解けたおかげで話が進んだ。重要な話もいくらかした。食堂でするような話なのか?という疑問はあったのだが。

 

「私たちは誰かに艦娘としてのいろはを学ばねばならないのですね」鳳翔さんが聞く。

 

「そうなる、誰になるかはわからないが・・・」私がそう言っている後ろから

 

「あ、提督やん、こんなところでどないしたん?」微妙に似非っぽい関西弁が聞こえてきた。

 

「龍驤か、どうしたんだ」私は振り向きながら言う。

 

「いやーちょっと加賀と鎮守府の探索。さっきは夕張も居ったんやけど、アイツ工廠行ったらそこから出てこようとせんかったから置いてきたんや。」やれやれと龍驤は困ったもんだと言うように仕草を作る。

 

「鎮守府はどうだった」

 

「いやーいいもんやで。ずっと居ったあそこに比べれば天国やな」鎮守府の出来に満足のようだ。

 

「でもって、提督。そっちのねーちゃん達は誰なんや」龍驤が私と机を囲む女性が誰なのかを聞いてくる。

 

「ああ、彼女たちは」

 

「重巡洋艦利根じゃ」私の言葉を遮るように利根が言う。その顔は龍驤に向いており、何かを比べるかのように近づいていく。

 

「な、なんやねん」いつもは気後れのしない龍驤がたじろぐ。

 

 利根と龍驤がくっつかんとするくらい近づいていくと、「ふむ」勝ち誇ったように利根が言う。

 

「胸も、身長も吾輩の方が大きいようじゃな」満足そうに利根は龍驤から離れる。

 

「な、なにゆうてんねん!キミ」龍驤はその言葉を聞くと利根に詰め寄り、2人はギャーギャー言い合いを始めた。

 

「重巡洋艦、筑摩です」「航空母艦、鳳翔です」「空母、加賀です」そんな2人を我関せずと3人は各々の自己紹介を始めた。

 

「私たちにいろはを教えてくださるのは、貴女達となるのでしょうか」鳳翔さんは加賀に聞く。加賀はそれを聞くとそんな話は聞いてないと私に顔を向けてくる。

 

「そういうことだ」と加賀に私は言った。

 

「・・・そのようね」加賀は問いただしても無駄だと判断したのか、それを了承した。

 

「でも、これじゃ2対3ですね・・・もう1人教える方がいた方が・・・」

 

「いいえ大丈夫よ」筑摩の疑問に加賀はこう答える。

 

「不知火も投入するわ」私だけが面倒事に巻き込まれるのは気に食わないと、加賀は不知火も巻き込んでいくいことを決定したようだ。自分がいないところで勝手に決定される不知火、これこそが巻き込まれるというんだろうね。

 

「不知火さんですか」筑摩が少し不安そうに聞く。

 

「そう、不知火。大丈夫よ。彼女は現水雷戦隊のエースだから」そりゃ現水雷戦隊は不知火しかいないからな。

 

「あら、そうなんですか」それを聞いて安心したのか、筑摩は安心したような笑顔を見せる。何も知らないってのは、幸せなことだな。

 

「どうしたんですか。皆さんこんな所に集まって」その声は今巻き込まれている不知火だった。

 

「こんな小さい子もいるんですか」鳳翔さんが少し珍しそうに不知火を見る。こんな施設内に、平時に子供がいることに驚きを隠せないのでしょう。

 

「その子も艦娘よ」加賀はあえて名前を言わずに明かします。

 

「へぇ。あなたも艦娘なんですね」筑摩がかわいい物を見るような目をします。

 

「私は航空母艦鳳翔です。よろしくお願いしますね」

 

「重巡洋艦筑摩と申します。よろしくお願いします」二人はニコニコしながら自己紹介している。

 

「私は駆逐艦、不知火ですご指導、ご鞭撻、よろしくです」それを聞くと2人の顔がそのまま凍り付く。こんな子が自分たちの指導を行うと思っていなかったのだろう。

 

「あの、不知火ちゃん、水雷戦隊のエース・・・なんだよね」今まで敬語でいた筑摩の語尾が少し崩れる。

 

「はい、現水雷戦隊は私しかいませんので、エースといえばエースでしょうか」不知火は少し前に交えられた会話を知らないので、素直に答えます。

 

「あの、加賀さん。聞いていませんよこんな小さい子だなんて」筑摩が加賀に向かって言います。

 

「ええ、言ってないもの。それともあなた、彼女が小さい子供からってだけで、師事できないのかしら」その言葉に筑摩が黙る。

 

「少なくとも貴女達より、艦娘としては一日の長があるわ。心配しないで、不知火は誰よりも訓練をしてきたわ」不知火は話が読めずに3人の顔を見合わせるだけだった。

 

 

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「不知火は、何も聞いていません」少し泣きそうな顔をしながら不知火が答える。

 

「さっきの場で決まったからね」加賀は悪びれもせずに答える。

 

 食堂のグダグダになった空間に夕張が来て、利根、筑摩、鳳翔を連れて行った。どうも艦娘としての能力を最大限に生かすためのテストなどを行うらしい。3人がいなくなった食堂で私、加賀、龍驤、不知火が机を囲んでいた。

 

「でも不知火、後のこと考えておいたら、指導を経験しておくのはええと思うんやけど」龍驤が不知火を説得をする。

 

「しかし、龍驤さん」不知火が少し不安そうにいう。

 

「不知火はまだ、中学生です。そんな私が、年上にそんな教えることは・・・」

 

「不知火そんな事を言っても、教えられるのは私達3人よ。他の5人は今、正式にこの鎮守府が始まる前に所員への指導を率先してやってくれているわ。何もやってないのは私達3人だけ。私たちは自分たちができることをやるべきじゃないから。」加賀がキリッとした顔で答えます。

 

「そんなこと言っても、不知火は加賀さんが巻き込んだんじゃないですか」その言葉に加賀は顔をプイッと背ける。そして私を見る。私が巻き込まれたのは提督のせいだと言わんばかりに。

 

「あー不知火。確かにお前は、まだ学校のことがあるだろう。そっちが終わるまではそんなことをやる暇はないな」

 

「はい、不知火は学校という行かなければいけない使命があります」

 

「だから、お前は指導の補助だけをすればいい。その中で、加賀と龍驤から指導する時のポイント等を教えてもらえ」この妥協案でいいだろう。良いって言ってくれ。

 

 一応はこの妥協案で決定した。でも、多分、これで済まないんだろうなぁ。加賀と龍驤のことだし。




ここの鎮守府は形式上海上自衛隊の管理化みたいな話
そこそこの人員が海自から寄越された人間です。それだけ深海棲艦は脅威と扱われています。

利根は海自出身ぽいからそれに引っ張られて筑摩もそっちに入った。
鳳翔さんは割とワガママ聞いてもらえる立場かなと思ったので(居酒屋鳳翔とか)
出向組は伊良子、間宮、大淀、明石もですが、まだ艦娘側としては出向していません。各々自分の持ち場にいます。
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