とある鎮守府の乱雑な運営日誌   作:臨機高来

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【閑話休題】お嬢様方の前日譚

ボクはかわいい服がちょっとだけ苦手なんだ。だから、この学校の制服は好きじゃない。

 

「モガミン、モガミン?」目を開けると心配したような顔をしている三波がいる。どしたんだろう。

 

「どうしたんだい?そんな心配そうな顔をして」ボクは起き上がって三波に問いかける。

 

「いえ、モガミンがうなされていましたので・・・」三波がいう。

 

「大丈夫だって、寒かっただけさ。ほら、ボクはこの通り」と少しオーバーリアクションを見せる。1月に外で眠るのは少し辛かったかな。

 

「・・・だったら、よろしいのですけど・・・」まだ心配そうな顔をしているけれど、一旦は信じてくれた。

 

 風景を見る。よく見る学校の風景だ。ボクは、この学校が好きじゃない。お嬢様学校として、入学者には大和撫子、とでもいうんだろうか。女性らしさを強制・・・じゃない、教育する場所だ。ボクとは、正反対・・・とまではいかないけれど、ボクにはふさわしくない居場所。よく先生には怒られる。先ずはその言葉遣い、その説教が終わったら仕草だとか、色々言われる。はっきり言っているだけで気が滅入る。友達誘われたのもあるけれど、両親に強く言われてこの学校に決まったが、やっぱり失敗だったと思う。

 

「何か見えますの」三波がボクの見ている先を一緒に見る。

 

 彼女は岩隈 三波。ボクの家の隣の子だ。そして、岩隈財閥のご令嬢。ボクの家も少し前まではそういった財閥みたいなものだったんだけど、事業の失敗等が重なり、昔から交友があった岩隈財閥の援助がなくては立ち行かなくなってしまった。ボクにとって、彼女は命の恩人でもあった。それだけでなく、この学校で主席でもある。ボクとは真逆の人生を歩んでいる。少し、妬けちゃうな。

 

「ねぇ、三波」ボクは少し声を落として言う。「なんでボクをこんなに・・・えっと・・・心配?してくれるのさ」少し言葉を纏めずに切り出したために、よくわからない言葉になってしまった。でも、三波は答えてくれる。

 

「モガミン、昔の事をお忘れになってしまったの。私達、恋人じゃないですか」三波が肩を落として言ってくる。

 

「そ、それは幼稚園の頃のにやってたごっこ遊びでしょ!」恋人ごっこ。ボク達がよくそれを知らなかった時やってた遊び。そういえば、ボクはずっと彼氏役をしてたんだっけ。今の性格もそこから来ているのかな。

 

「酷いですわ・・・モガミン・・・ずっと、私はあなたの事思ってきてたのに・・・」三波が顔を伏せて肩を震わせる。

 

「え?あ、ちょっと三波!泣かないでよ」ボクがアタフタしていると向こうから声がする。

 

「お?彼女泣かせるなんてとんだ女泣かせだねぇ?モガミン」水色の髪で、この学校指定制服を着ていない女の人が。

 

「あらあら、鈴華さん。モガミンが今まで何人の乙女を泣かせてきたと思っていますの」その人と一緒に同じく制服を着ていない茶色の髪をポニーテールに結んだ女の人が来る。

 

「そうだったねぇ野道。よっこの女たらし!」威勢よく鈴華と呼ばれた女の人が言います。

 

「や、やめてくださいよ!先輩。三波も泣き止んでって」わたわたしながらボクはそれを制止する。2人とも取り敢えず満足したのか、そのままの足取りでボク達の横まで来て、腰掛ける。

 

 ボクの隣に腰掛けたのは水色髪の鈴華先輩。鈴華先輩の家・・・谷原家は、この学校において他の追随を許さないお金持ちで、学校への寄付金は全体の10%に行っているとも言われている。

 

でもそのお嬢様はこの学校への関心は全くといっていいほどなく。制服も気に入らないのか、自分でデザインした制服を着ている。そのセンスはファッションを知らないボクから見ても、すごくいいと思う。

 

 その隣には茶髪の野道先輩。こちらも学校の中でも上位のお金持ちの家の、熊谷家のご令嬢で、この学校に1つしかない運動部、空手部のただ一人の部員であり部長をしている。

 

というより、運動部なんかなかったこの学校の歴史において、唯一の運動部を設立した人だ。空手の腕前はかなりのもので、そっちの方面で学校に取材が来ることもある。そして、鈴華先輩の制服を着る2人の内1人。

 

 このように、この学校において不良真っ盛りである2人であるけれど、その寄付金によって半ばアンタッチャブルな存在となっている。ボクと違って。

 

「先輩。今は授業中ですよ」ボクは少しでも言い返そうと言った。

 

「モガミンもサボってるじゃん」自分で墓穴をほっちゃった。

 

 今、ボク達がいる場所はこの学校で人がほとんど来ない場所だ。いつもボク達はサボる時にはココに来る。今日は珍しく三波も一緒にいる。

 

「わたくした達の事を構うのもいいですけれど・・・上奈さん。三波さんをいつまで泣かせていますの」外のコンビニで買ったのか、アイスを舐めながら野道先輩は言ってくる。

 

「そうだった。三波~ごめんってばーだから泣き止んでー」いくら謝っても、三波は泣き止んでくれません。

 

「三波、私からも頼むから泣き止んでよ」鈴華先輩もあやしてきます。

 

「わかりましたわ・・・でも、条件があります・・・」三波が顔を伏せたまま

 

「モガミンが『愛しの三波』って言って下されば、泣き止みますわ」

 

「な、なんだよそれぇ!」ボクは顔を赤くして言います。

 

「でも上奈さん。それを言わないと泣き止んでくれませんわよ」野道先輩が少し笑いながら催促してくる。

 

ボクは覚悟を決めて「ご、ごめん。愛しの三波」

 

「いいえ!心が篭ってませんわ」三波が言ってくる。心が篭ってなんなのさ!

 

鈴華先輩がひとしきりその言葉に笑ってから言う「三波、もう許してやんなよ。ホントは泣いてないんでしょ」

 

「あら、気づかれてましたのね」ケロッとした顔で三波が顔を上げる。

 

「ちょ、三波泣いてなかったのかい」ボクは顔を赤くして言う。

 

「はい、上奈さんの愛の言葉を聞けて、三波は感激です」ここだけボクをあだ名で呼ばずに三波が言ってくる。

 

「じゃ、じゃあボクだって泣いちゃうぞ!『愛しの上奈』って言ってくれないと泣き止まないぞ!」そういってボクは顔を伏せて泣く真似をする。さっきのお返しだ!

 

 顔を伏せて少し経つと耳元に暖かい空気が掛ってくる。何だろうと思っていると

 

「申し訳ありませんわ。愛しの上奈さん」と艶のある声で三波が言ってくる。ボクはその言葉を聞いて顔を真っ赤にした。それのせいで顔を上げられなくなってしまった。恥ずかしくて肩が震える。

 

「あれ、上奈さん。本当に泣いてしまいましたの」少し戸惑ったような三波が聞こえるけれどそれを喜んでいられる程余裕がない。ボクは顔が平静に保つのに必死だった。

 

「ちょっと野道」と鈴華先輩の声が聞こえて1分位たって、両方の耳が湿った空気にさらされ

 

「愛しの上奈、どうしたましたの」と先輩二人の声が聞こえた。たまらずボクは顔を上げる。

 

「あれ、泣いてないじゃん」鈴華先輩が呑気な声で言います。

 

「ちょ、ちょっと三波、なんであんなこと簡単に言えるのさ」ボクは鈴華先輩の言葉を無視して三波に質問します。

 

「それは簡単な事ですわ。モガミン、私は貴方の事をお慕いしていますの」恥ずかしげもなく三波は言う。ボクはもうこれ以上ないくらいに顔を赤くする。今日だけでどれだけ顔を赤くしただろう。

 

「おーい上奈―おーい」と鈴華先輩先輩の声が聞こえたけれど、ボクは返せなかった。

 

 

-----

 

 

 学校が終わり、4人で帰る。結局今日の学校は4人で全部をサボってしまった。あの授業だけサボるつもりだったんだけどな。

 

「あ、そういえば上奈、あのゲームちょっと手間取っててさ。少し返すの遅くなるかも」

 

「あ、大丈夫だよ。ボクはもう終わらせてるから」

 

「お、さんきゅー」

 

「野道さん、今、これがここまでできたのですけれど、ココからどうすればいいか解りませんの」

 

「そこですか?そこはですね、こうやって、こうしてとおおおおっと一思いにやるんですの」

 

「あの、えっと・・・今度、見せていただいてもよろしいかしら」

 

「ええ、いいですわよ」相変わらずの天才型だ、野道先輩。ただのビーズのアクセサリー作り方の説明なのに何であんな雄叫び上げるんだろう。・・・ただの説明下手なだけかな。

 

 そんな他愛のない話をしながらボク達は帰っていく。いつもは車なんだけど、いつもの鈴華先輩の気まぐれで歩いて帰る。帰る途中、ボクはある場所で足を止めた。

 

そこはよくある電気屋だ。そこのショーウィンドにあるテレビのCMに目を奪われた。ただのCMなんだ。少し前に騒ぎになった有名モデル転身先の場所のCM。最初にそのモデルが写り、その2人の号令の元後ろの子達・・・艦娘だっけが水上を駆け巡る。そして、艦娘募集のテロップが出るだけの簡素なCM。それだけなのに、ボクはカッコいいと思った。今いる学校よりも、魅力的だと思った。

 

「んーどうしたの上奈・・・ってあ、艦娘のCMじゃん。それがどうしたの」鈴華先輩が何でもないように聞く。

 

「これって、ボクもいけるのかな」「まぁいけるんじゃない・・・てっ上奈行く気なの!?」いつもは脅かす側の鈴華先輩が珍しく驚いている。でも、そんなことはどうでもいいんだ。

 

「うん、今の学校より、断然」ボクは言い切る。いたってボクは落第生の落ちこぼれなんだ。ボクにふさわしくないし、ボクにとって力不足の場所だ。それなら、場所を変えるのもいいかもしれない。

 

「・・・まぁ、あっちにも学校があるっぽいし、それもいいんじゃない」鈴華先輩が言う。

 

「鈴華先輩。何で学校あるって知ってるの」

 

「え?ウチの家が少しだけ出資してるからさ。そんな話が少しだけ家の中であんの」

 

「もっと知ってることがあったら教えてくれいかな?」

 

「ま、まぁいいけどさ」そういって鈴華先輩が話してくれる。

 

「・・・とまぁ、思ってる以上にしっかりしてる所だと思うよ」とその言葉で鈴華先輩は締める。

 

「そうなのか・・・うん、うん」

 

「あーでも、上奈、私は悪いこと言わないからやめておいた方が良いと「鈴華さん」」鈴華先輩が何か言っていると野道先輩がそれを制止する。

 

「上奈さんがそれが良いと言っておられるのなら、部外者であるわたくし達は言葉を投げ掛けるべきではありません」そういい、野道先輩は三波を見て

 

「ここで意見を言って良いのは、三波さんだけですわ」といいました。

 

「三波は・・・その・・・上奈さんがいいと思うのなら、それでいいと思いますわ」その目に涙を湛えながら、三波は言う。

 

 鈴華先輩がそんな三波を見て一言「じゃ、じゃあ、私と三波は先に帰るから、野道は上奈と一緒に帰りなよ。私よりは、まともなアドバイスできるだろうしさ。」そういって鈴華先輩は三波の肩を抱いて先に帰っていきました。

 

「上奈さん。貴女は少し、周りが見えない時があります。これは咎めている訳ではありません」そういって一泊置く。

 

「貴女にとって大事な選択ですから、情に流されないことは重要だと思います」

 

「その上で、三波さんの言葉と泣き顔を考えてくださいな」

 

「・・・うん、わかったよ」ボクは三波に申し訳なく思った。でも、ココに行きたいのは変わらない。

 

「行くにしても、ちゃんとご両親を説き伏せてでお願いいたしますわね。今の貴女は何も言わずに飛び出してしまいそうです」

 

 野道先輩とボクは、先に帰った二人と合流しないように、牛歩で帰って行った。

 

 

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 両親の説得を成功し、艦娘となるための試験にも合格。ボクは3月の修了式を待たず、この学校を離れることになった。とはいっても、3月中はこの学校に在籍しているけれど。

 

4月から、ボクの居場所は此処じゃない。登校最後の日、ボクはこの学校で始めて晴れた気持ちでこの学校に来ることができた。それほど、ボクはこの空間が好きじゃなかったみたいだ。

 

 あの騒動から、三波と口を合わせることがなかった。一緒にいることはあっても、喋ることはなかった。2人して、先輩にだけ話していた。先輩たちは分かった上で「倦怠期?」とか茶化してくれた。

 

 ボクは今日の授業も終わって、学校の門のレールりを跨いで、振り返って学校を見る。こんな形してたんだ。ここを行くとき、いっつも下向いてたから知らなかったや。

 

「上奈、今日までかー私の後輩なのは」そういって鈴華先輩は来る。

 

「サボり仲間が減ってしまうのは、少し寂しいですわね」そういって野道先輩も来る。

 

「先輩。今まで、ありがとうございました」そういってボクは頭を下げる。そうしていると鈴華先輩は言う。

 

「あれ、あれあれ?私達だけでいいの。上奈」そういって、鈴華先輩と野道先輩は横に移動する。二人の後ろには、三波がいた。

 

「三波・・・」ボクはなんて声を掛けたらいいのかわからず、うつむく。

 

「遠距離恋愛になってしまいますわね・・・モガミン」そう寂しそうにいう三波。

 

「ごめん、三波。ボクのワガママでなんか・・・その・・・気を使わせちゃってさ」

 

「いいんですの。三波から見ても、上奈さんはココを気に入ってなかったように見えますから」

 

「もともと、三波のワガママで上奈さんはココに入学してくださいましたものね。三波もちゃんと、上奈さんのワガママを受け入れますわ」そういうと三波は泣きそうな顔をしながら笑顔を作ってくれた。

 

「だ、大丈夫さ、三波。いつだって、寂しくなったらボクの所に来ていいから」そういってボクは三波を慰める。

 

「・・・本当ですの」「うん。ホントさ」

 

「じゃあ、いつか行かせてもらいますわね。モガミン」

 

「うん。じゃあボクはあっちに行く用意とかしないといけないから、先に帰るね。みんなも一緒に帰るかい?」ボクは迎えの車に乗りながら言う

 

「いいえ、大丈夫ですわ。折角こうやって別れの言葉を告げたのに、一緒に帰っては興が削がれるというものです」野道先輩が首を横に振りながら言う。

 

「そっか。じゃあ、また会おうね。みんな」そういってボクの乗った車は走って行った。

 

 次、三波に会えるのはいつになるかな。

 

 

-----

 

 

 上奈の乗った車を3人で見送る。

 

「三波、これでよかったの?」。

 

「ええ、いいんですの。何より上奈さんは言っていたでしょう。いつでも来ていいと」

 

「あー・・・んん。そんなこと言ってたねぇ」

 

「実は私もお母様達を説得中ですの」

 

「何を」

 

「艦娘学校への転入、ですわ」

 

「それってもしかして・・・」

 

「私も、モガミンと一緒に艦娘になりますわ」

 

「あら、それでよろしいの。さっきの話では貴女のワガママでこの学校に来たと行っていましたが」

 

「だって、モガミン。かわいい服を着ようとしてくれませんもの」

 

「制服目当てだったんかい」

 

「はい。そうですわ」

 

「・・・鈴華」

 

「何さ、野道」

 

「わたくし達も艦娘になると言うのはいかがでしょう?」

 

「うぇ?なんでそうなんの」

 

「どうせ、わたくし達もココにいても意味がないですわ。それなら、スリルを感じに行くのもいいかと思いますわ」

 

「・・・パパ説得できるかなぁ」




最上型の艦娘になる前の話です。個人的にはそういう話の方が妄想が膨らみます。
4人はお嬢様キャラ。熊野も似非じゃないお嬢様です。お嬢様です。

名前はそれぞれ
最上=最川 上奈(もがわ かみな)
三隈=岩隈 三波(いわくま みなみ)
鈴谷=谷原 鈴華(たにはら すずか)
熊野=熊谷 野道(くまがい のみち)
です

お嬢様度は 最上<熊野<三隈<鈴谷 と考えています。
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