やぁ はじめまして!
俺の なまえは ファザー
こう見えても 聖王教会の 神父 なんだ
重複しているので みんなからは ファザーと
したわれて いるよ
この せかいには 聖王 を 信仰する 人たちが
いたるところに すんでいる!
そして…
俺は その 聖王 という 役立たずの
教えを 説いたり 説かなかったり しながら
各世界を 回っている というわけだ
今日もどこだったかの管理内世界で、適当な教えを説きながらふらふらと歩いていると、何か巨大なものをぶにっと踏んだ。
恐る恐る足元を見てみると、黒い巨大な塊が。頭部と思わしき部分からは2本の触覚が出ている。
まさしくこれは……
「テラ・フォーマッ!!」
「あうっ!」
反射的に巨大な Gを蹴り飛ばすと、悲鳴が返ってくる。
ん?
悲鳴?
一瞬、俺の思考が停止する。
その隙に、蹴りとばした足をガシッと掴まれた。
「お腹減った……」
「ウワァァァァッ!HA⭐︎NA⭐︎SE!俺はたしかに美味いかもしれないけど、肺は真っ黒だぞ!やめとけやめとけ!」
「お腹減ったっていってるんやよ」
「キャァァァァァ!シャベッタァァァァ!」
いや、よく見ろ。Gじゃない。Gっぽい何かだ。
さらによく見ろ。女の子だ。
……いや汚ったね、やっぱりGだろこれ。
「ングングングおかわりやー!」
「ちったぁ遠慮しろよ」
空腹で生き倒れていたG娘もとい、ジークリンデ・エレミアとかいう前髪バッテン娘を近くの飯屋へ連行した。
なんでも本人いわく、こんななりでもインターミドルチャンピオンらしい。
ウッソだろお前。
そう言えば次のインターミドル、うちの生意気なクソガキことシャンテが大会に出て優勝してやるとか息巻いてたな。無理だろ、俺にボコられるレベルだぞあいつ。
「で?そのチャンピオン様がなんで行き倒れてたんだ?優勝賞金とかあるんだろ?」
「ボベばばばブボばばびんばベボ」
「食うか喋るかどっちかにしろよ」
きったねぇなぁ、飛んできたぞ。
「もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ」
こ、こいつ……会話を放棄しやがった。
どこまでも勝手な奴めと思いながら煙草を取り出し、咥えて火をつける。
「もぐもぐ……神父さんが煙草なんて吸ってええの?」
「神父だからって全員が聖人君子だと思うな。そんなのは幻想だ」
「不良神父やん」
「黙れ浮浪児……。ったく、パパとママはどうした?」
「おらへんねん」
「そうか、すまん。まぁそれはどうでもいいとして……」
「軽ない!?」
「慈善事業をするつもりはない、食った分は後できっちり払ってもらうからな」
「ってか払えって言われてもお金ないで……まさか身体で?さ、最初からそれが目的やったんやな!」
無い胸を隠すように自分の体を抱きしめるジークリンデ。
なに勘違いしてるんだ。
「風呂どころかシャワーも浴びてないだろうクセェ身体なんて抱きたいわけないだろうが」
「臭く無いわ!そりゃ何日かお風呂入ってへんけど……」
いや臭い。
「女の子は風呂入ってなくても無条件でいい匂いなんて童貞の妄想だから」
「夢壊すなや……」
「ったく……ほれ、こいつにサインしておけ」
端末をいじってジークリンデへ渡す。
「なぁにこれぇ」
「聖王教徒の加入申請。名前だけでいい」
「ウチ宗教はちょっと……」
「名前だけのなんちゃってでいいんだよ。登録しとけば、また空腹で倒れそうになったとき教会に駆け込めば一宿一飯くらいは出してくれるぞ」
「そこまで言うならしゃあないね」
タダ飯に反応してさらっと署名しやがった、現金なやつだ。
……さて、1本吸い終わったしこいつも腹が膨れただろうから、カリムから頂戴したブラックカードで支払いをして出るとするかね。
「さて、そろそろ行くとするかね。格闘技のチャンピオンってもお前も一応女なんだから気をつけろよ。また空腹で動けなくなっているところを襲われないようにな」
もう会うこともないだろうし最低限の忠告だけはしておく。
「なぁ、これからどこへ行くん?」
「適当にフラフラしながらそこら辺のヤツらを適当に言いくるめて信者になってもらう、それが仕事だしな」
「最低やん……」
「褒め言葉として受け取ってやる……こういうのは心の支えを求めるものであって、信じるものを見つけられればなんだっていいんだよ」
「それ、神父が言うことなん?」
「神父だからこそ言えるんだよ」
そう言って歩き出した――はずだった。
「エレミアさん、エレミアさんや」
「どしたん、ファザー?」
「いやなんでついてきてんだよ」
さっき帰れって言ったよね。
「神父さんなんに、か弱いうちを見放すん?」
「おいインターミドルチャンピオンだろ。プライド無いのか」
「それではお腹は膨れんねん」
「働け。もしくは身体でも売ってこい」
「もう腎臓は一個しかないんや」
マジかよ……
見た目よりかなり苦労してんな。
「……それはさすがにジョーダンや。せめてそのブラックカードだけでも恵んでや!」
ブラックジョークだけにか、ってやかましいわ!
完全にタカリ目的じゃねーか。
「家に帰れ」
「もしくは?」
「……ブエルボアルスール」
「どこそれ」
「東」
「なら勧誘の旅ついでに送ってや。どうせ行き先決まってへんのやろ?決定やー」
手首を掴まれてズルズルと引っ張られる。
「おい離せ!」
行き先もなくぶらぶらするのが醍醐味なんだよ。他人に行き先決められても楽しくないんだってば……くっそコイツ力強え、マジでチャンピオンらしいな。こんなことでその肩書きを実感したよ、まったく。
はぁ〜。
今回の自由気ままな旅は終わりらしいな。これからは浮浪児を送る旅になりそうだ。
しばらく歩いたところで、ジークリンデが不思議そうに俺を見る。
「なんや?」
「これも善行か……特別だぞ」
「えへへ、おおきにな」
俺を引っ張るジークリンデを見てそう言うと、屈託のない笑顔を返してくる。
まぁ、十分可愛いと思える女の子だし、たまには二人旅も悪くない。
そう思える晴天の日の出来事だった。