インターミドル開催初日
「ちゅう訳で、朝練行ってくるで」
「はいはい」
「帰ってきたら一緒に見にいくの、約束やで?」
ジークはエリートクラスからの始まりなので、インターミドルが始まってもまだしばらく試合は無いのだが、予選会ではこれからライバルとなり得る強者たちが台頭してくるという。だからこそ、情報収集も兼ねて選考会の試合を見に行こうというわけだ。
「約束やからな!」
「ああ、分かってるって」
念を押すジークにさっさと行けという仕草をする。
ジークは満足そうに頷くと、ドアから出ていった。
まぁ、どのみちアインハルトちゃんたちの試合も見にいくつもりだったのだ、ちょうど良いだろう。
『わぷっ!!』『ふみゅっ!!』
閉じたドアの向こうから、人同士でぶつかったような声が聞こえた。
続けて、ジークともう一人の声がする。
『ごめんな、よく前見てへんかった! 怪我あらへんか?』
『大丈夫です。私こそ考え事をしていました。すみません』
『ええこやな、ほんま大丈夫? もし痛かったりしたら、あそこの部屋のお兄さん、治療魔法使えるから言ってな』
『その方に用があって来たのです』
『なんや、ファザーの知り合いかいな。今、部屋におるで。ほな、ウチは行くから』
『あ……はい』
『ほなまた、痛かったらちゃんと言うんやでー!』
ドアの前でなんかわちゃわちゃなんかやっとるな。あと、さらっとジークが俺に押し付けていきやがった。後でゲンコツだな。
てか、アインハルトちゃんの事を考えてたから幻聴かと思ったが、本人かよ。
今日、初参加組は開会式後、試合じゃないのか?
『今の方……ヴィヴィオさんに次ぐ、また新しい妹分でしょうか? 私がいるのに……』
……今のは聞かなかったことにしよう。
「とりあえず、ドアの前にいないで入ったらどうだい?」
いつまでも玄関前で立ち尽くしている気配に声をかけ、ドアを開ける。
「はわっ! おはようございますファザーさん。聞こえてましたか?」
「玄関前でアイツと騒いでたのはな。今日はどうした? これから試合だろ?」
「……よかった、聞かれてない」
ほっと息をつくアインハルトちゃん。
……聞こえてたけど黙っておこう。
「はい、開会式後試合がありますので、ご報告に。その……今日は来ていただけるのでしょうか?」
心なしか、アインハルトちゃんはソワソワしている感じがする。普段の彼女なら、試合を前にしてもここまで落ち着きを失うことはない。
もしかしてだけど……。
「ああ、その予定だが……緊張してる?」
「そ、そんな事は……少しだけ」
ふむ、アインハルトちゃんが緊張とか、珍しいな。
ノーヴェちゃんのトレーニング指導を経て、彼女は以前よりもずっと強くなった。
それでも、インターミドルという大きな舞台を前にすれば、背負うものも増えるのだろう。
「なら、緊張が解けるおまじないをしてあげよう」
「おまじないですか?」
「いいか? こう思うんだ」
俺は少しだけ芝居がかった調子で、拳を握ってみせる。
「『この覇王の拳を満足させられる猛者はどこか!』と!」
「ファ、ファザーさん、それはっ!!!」
いつかの俺の台詞に、顔を真っ赤にして慌てて否定するアインハルトちゃん。手もバタバタさせちゃって可愛いもんだ。
「はっはっは、わりいわりい。でもストリートファイター時代はそんな気構えで、緊張もしてなかったんだろ?」
「それはそうですが……」
アインハルトちゃんは、少しだけ視線を落とした。
「今は背負うもんが増えちまった。だから緊張する。でもそれは、弱くなったんじゃない。強くなったから、背負える様になったのさ」
軽口を引っ込め、俺は彼女の目を見る。
「私は、強くなっているのでしょうか?」
その問いには、単なる試合前の緊張だけではないものが含まれているように感じた。
覇王クラウス・イングヴァルトの記憶。
自分の血筋。
自分が何者なのかという、簡単には答えの出ない問題。
アインハルトちゃんは、今もそれらと向き合い続けている。
だからこそ、俺はできるだけ簡単な言葉を選んだ。
「ノーヴェちゃんの指導は、信用出来ないものだったかい?」
「いえ、その様な事はありません。何が足りないのか、どうすれば良いのかをしっかり指導してくれました」
「なら、アインハルトちゃんを信じてるノーヴェちゃんを信じてやれ。それなら出来るだろ?」
「私を信じるノーヴェさんを……」
「ああ。それに、俺も君を信じてる」
アインハルトちゃんが、ゆっくりと顔を上げる。
「だから、俺でもいいぞ?」
「……はいっ! 2人を信じます!!」
彼女の表情が、少しだけいつものものへと戻った。
「ようし、なら行ってこい! アインハルト・ストラトス!!」
「はいっ!!」
アインハルトちゃんは堂々とした足取りで出て行った。
ドアが閉まり、部屋には俺だけが残される。
……………………
…………
……適当な発破でも案外うまく行くもんだな。
そう思いながら、俺は煙草に火をつけた。
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と、いう訳でインターミドル会場前。
初日という事もあり、会場周辺はお祭り騒ぎである。観客や選手だけでなく、応援に来た家族や関係者も多く、広場には屋台もいくつか並んでいた。
「なあなあファザー、あれ食べたい」
俺の腕に自分の腕を組めてきたジークが指さしたのは、容器が顔以上あるバカでかいポップコーンを売ってる屋台だった。
「ダメに決まってんだろ。飯が入らなくなるわ!」
「食べたい食べたい!」
「駄々をこねるな」
「買って!」
「テメェで買え」
「うわーん、DVカレシー!」
「誰が彼氏だ。巨乳になってから出直せ!」
「ぶっころ」
ジークが笑顔のまま拳を握った。
俺たちがきゃいのきゃいのと騒いでいると、ポップコーン屋の店員が、ポップコーンを差し出して来た。
「おっちゃん、ええの?」
目を輝かせて聞いたジークに、ポップコーン屋が無言で頷く。
「おい、あんまり甘やかさないでくれ」
「にいちゃん」
このポップコーン屋、無駄に良い声しやがるな。
「なんだ」
「800円」
「金とんのかよ! ジーク、つっ返せ」
「もぐもぐ」
ジークはすでにポップコーンを頬張っていた。
「このクソガキィ!!」
俺が叫ぶと、ジークは口いっぱいにポップコーンを詰め込んだまま、満面の笑みを浮かべた。
……まったく。
ジークがデートしてみたいっていうから付き合ってやってるのに、ワガママ聞いてるだけじゃねぇかこれ。
くっ……幸せそうな顔で頬張りやがって。ハムスターかこいつは。
「なぁファザー、これってデートなん?」
「あん? 歳の近い男女で出かけてんだからデートだろ」
「なんか全然ドキドキせぇへんで?」
ジークの場合、色気より食い気なせいだと思うんだが。
ちっ! しょうがねぇな。ここは百戦錬磨の俺がリードしてやるか。
「ほら、もっとこっち来い」
ジークの肩を抱き、こちらへ引き寄せる。
もう片方の手は、ポップコーンを落とさない様に支える。
「ファ、ファザー⁉︎ 顔近いで……」
「人が多いんだ、しょうがないだろ? ほら、もっと近くによれ」
「う、うん……」
ジークは戸惑いながらも、素直に俺の隣へ収まった。
ふん……この程度で赤くなりやがって。ちょろいもんだぜ。
勘違いするなよ?
ドキドキさせてやりたいからじゃ無い。お前が後で「デートらしく無い」とかうるさいからだ。
……まつ毛長いなジーク。
よく見ると……いや、よく見なくても顔は整ってるんだよな。十分カワイイとは思うが……いや、やっぱり普段が残念だ。
「ほら、足元気をつけろ。持っててやるから」
肩を抱いていた手を腰に回して支え、視界が悪くなる原因のでかいポップコーンを持ってやる。
「うん、おおきに」
ジークは素直に頷き、俺に寄りかかったまま、こちらをちらちらと見ている。
「なんだよ」
「ファザーって、こういうの慣れてるん?」
「こういうのって?」
「女の子と出かけたり、肩抱いたり、腰に手ぇ回したり」
「まぁ、慣れてるっちゃ慣れてるな」
「ふーん……」
ジークは少しだけ口を尖らせた。
何だ。
もしかして、嫉妬か?
……かわいいとこあるじゃん、ジークのくせに。
ところで、俺が毎回毎回ナンパ失敗してるって思われてる?
デートくらいまではこぎつけたことあるわ!
それ以上? 無いけど。
そろそろ開会式が始まる。
俺たちは会場に入り、客席の階段を登って行った。
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「みんなも全力で頑張りましょう! えいえい!おーーー!」
という訳で、エルス選手の宣誓によりインターミドルが始まった。会場全体から大きな歓声が上がる。
俺たちは会場の客席に座り、その様子を眺めていた。
ジークはそういった大会の盛り上がりに乗るタイプではないらしい。そのままポップコーンを食べ続けていた。
その後、すぐに選考試合が始まった。
チームナカジマの面々は、と……。
アインハルトちゃん、ヴィヴィオちゃん、リオちゃん、コロナちゃん。4人とも圧勝だな。良い位置からのスタートになりそうだ。
特にアインハルトちゃんは、今朝の緊張が嘘の様に消えていて、拳を振るう姿には迷いがなく、相手の攻撃を受け止める判断も、そこから反撃に移る動きも洗練されていた。
「今朝の娘、強いなぁ。強敵になりそうや。同じブロックやから注意せなあかんな。ところでファザー、あの娘とどんな関係なん?」
どうやらトップファイターのジークから見ても、アインハルトちゃんは強いらしい。
「あの娘は……拾った。お前みたいに倒れてるところをな」
「あの娘もお腹が……」
「そこは違う。腹が減って倒れたなんてのはお前くらいだ」
「なんやてー!」
ジークがポップコーンの入れ物を抱えたまま、こっちに詰め寄ってくる。フードを深く被っているため表情はよく見えんが、ほっぺたを膨らませているのはわかる。
「みーつけた」
俺たちがそんな風にじゃれあっていると、ヴィクターがジークのフードを取りながら話しかけてきた。
「ヴィクター」
「前より肌のハリも髪のツヤも良いな。うん、日に日に美人になってるな、ヴィクター」
「あら、ファザー。よく見てますわね。そういうところはあなたの良いところですわよ」
ふふんと豊満な胸を張るヴィクター。
やっぱりヴィクターは最高だな!
「それにしてもこんなジャンクフードを食べて!」
「それはたまたまなんよ。返してー」
ヴィクターがポップコーンを取り上げて難色を示す。
ジークは必死に取り返そうとしている。
「ファザー、ジークにちゃんとしたもの食べさせてますの?」
「ポップコーン屋の策略にハマったんだ……普段はちゃんと食わせてる」
俺は心底無念な表情をする。
あのポップコーン屋め、ゆるさん。
あと、俺はジークの飯係じゃないぞ……今は似た様なもんだが。
ん……? ジーク、ヴィクター……
なんか忘れてる様な……気のせいか?
まあいいか。どうせ大した事じゃないだろ。
「今年はどう? 最後まで戦えそう?」
「去年はごめんやった。欠場してもーて」
一昨年無敗でインターミドルを優勝し、去年は途中で欠場の為、ジークはいまだに試合では負け知らずらしい。
それ故に、ジークは10代最強と呼ばれているらしい。
……らしいばかりなのは詳しくは知らんからだ。
「あなたが元気で今年も競技に出られるならそれでいいの。あなたは私の目標なんだから」
ヴィクターがジークを撫でる。こうしてるとほんとに保護者だな。
「選考会見てたんでしょ? 今年の選手達はどう?」
「ファザーの知人の子たちが、揃って結構手強そうや」
「ファザーの?」
ヴィクターがこちらに顔を向ける。
だが、俺が説明するより先に、活発な声が割り込んできた。
「あーくそ、すっかり遅刻しちまった!アホのエルスが生意気に選手宣誓なんぞするって聞いたから笑ってやろうと思ったのによ」
取り巻きを連れて騒がしくやってきたこの少女は、トップファイターの名簿で見たことがあるな。たしか、ハリー・トライベッカ。「番長」とかいうあだ名で呼ばれている、非常に人気のある選手だったはずだ。
「ポンコツ不良女! どうしてあなたがここに?」
ヴィクターが即座に立ち上がり、噛み付く。
「ヘンテコお嬢様じゃねーか。お前今年は選考会からスタートだっけ?」
ハリー選手も負けじと言い返す。
「違うわよッ!わたしは6組のファーストシード!」
「あーそうだったか?こちとらお前のことなんざ眼中ねーから見落としてたかもしれねーなぁ」
「あなたこそ、今年は地区予選で落ちてくれると助かるわ。ていうか負けちゃって? あなたと戦うの面倒臭いから!」
「なんだとてめー⁉︎」
バチバチと2人の間で火花が散る。
「ヴィクターが年相応に感情を露わにするとか珍しいな……良いライバルってやつなのか?」
「「誰がこんな奴と!!」」
息ぴったり、実は仲良いだろ。
そんな風に騒いでいると……
ガキーン!と、俺たち3人にバインドがかけられた。
「なんですか、トップファイターがリング外でケンカなんて! インターミドルがガラの悪い子たちばかりの大会だと思われたらどうします!」
そう言いながら、先程選手宣誓をしていたエルスちゃんがやってきた。
「あっはは、ファザー、聖職者なのにお縄になっとる」
「気にするな、すでに一回捕まってる」
「えっ……マジで捕まったことあるん?」
ジークがドン引きしている。
そういえば、前捕まったのもツインテールのせいだったよな。ツインテールは俺にとって大厄の髪型なのか?
「ああっ! チャンピオン⁉︎」
エルスちゃんがジークを発見する。
そして、その不用意な一言が、会場に波紋を広げた。
「チャンピオン?」「どこどこ?」
「2階席のあそこ!」「一昨年の世界戦優勝者に、都市本戦3・5・8位のトップファイターが揃い踏み!」
観客や会場の選手たちの視線が、こちらへ集中していく。ジークはポップコーンの容器で顔を隠そうとしている。全然隠せていないが。
「で、なんでファザーさんまでバインドをくらってるんです?」
「あの人は騒ぎの中心にいないと気が済まないのでしょうか?」
聞き覚えのある声がした。
客席の下方のリングから、アインハルトちゃんたちがこちらを見上げている。
どうやら向こうもこちらを見つけたらしい。
ジークもそれが分かったのか、アインハルトちゃんにピースをしていた。
「今朝の方、チャンピオンだったのですね。ファザーさんも言ってくれれば良かったのに」
そういえば言ってなかったか? まぁ……誤差だよ、誤差。
「騒ぎになるのもめんどくぜーな。ここはおとなしく退散すっか」
そう言いながら、ハリー選手がブチブチとバインドを千切る。
「まったくよ、あなたと会うとどうしてこうグダグダになるのかしら」
ヴィクターもパキィンとバインドを解除する。
自慢のバインドが解除されて、エルスちゃんはプルプル震えているのだが……
おかげで、バインドを外せない間抜けは見つかってしまったようだ。
「なぁ、俺のバインド外してくれない? 選手じゃないんだけど」
「えっ⁉︎」
エルスちゃんが目を丸くして俺を見てきた。
「……すみません、一緒になって騒いでたのでつい……」
「今回、俺は珍しく騒いでなかったと思うんだけどな……」
「普段の行いちゃうん?」
ジークが横から口を挟む。
「この品行方正な神父を捕まえてか?」
「ファザーの羅針盤な、180°逆向いとるから直した方がええで?」
ジークの癖になに洒落た物言いしてんの?
キャラじゃないんだけど。
エルスちゃんが俺のバインドを解除してくれたところで、ハリー選手がエルスちゃんへ声をかけた。
「そういやアホのエルス」
「誰がアホのです! あと私のが年上ッ!! 敬語!!!」
エルスちゃんが即座に反応する。
そうなんだ……見た目的に結構年下だと思って、普通に心の中でちゃんづけしてたわ。
「オレとお前は予選で同じ組だからよ。まあ、楽しくやろうぜ」
「去年の雪辱、果たしますからねっ!」
「おうよ! やれるといいな」
「やらいでかっ! です!」
どうやら二人の間にも、何やら因縁があるらしい。
「今年は初参加組も熱いからな。オレと当てるまでちゃんと勝ち上がってこいよ?」
こういうのも、ライバルって関係なんだろうな。俺にはいないからわかんねぇけど。
そもそも神父のライバルってなんだ?
祈りの所作の速さとか競うのかな? 意味わかんねえな。
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というわけで、騒ぎになった俺たちは、会場の外に退散した。
「帰るんなら送って行くわよ?」
「いいんよ。ウチも体動かしたくなってきたから」
「今はどこに住んでるの? この近く?」
「ファザーん家」
「……へぇ」
ンンンンン?
ヴィクターの俺を見る目が怖いんだけど。
「たまには連絡しなさい。近くに来たらあなたの好きなもの作ってあげるから」
「ありがと。ヴィクターはやっぱり優しいね」
「あなたほどじゃないわ」
ジークが……優しい?
いやしいの間違いでは?
「ほな行くわ。ファザー、夕飯までには帰るから」
「現在地アプリはデバイスに入ってるな? 迷子になるなよ?」
「子供やないんやから、大丈夫やって」
俺たちは走って行くジークを見守る。その姿が見えなくなったところで、ヴィクターに後頭部を掴まれた。
「で、なんでジークがあなたの家に住んでいるのです? 私、何も聞いておりませんわよ?」
あっ!
何か忘れてると思ったけどこれか!!
「忘れもしませぬ、あれは拙僧がへべれけであった日の夜……」
「へぇ、酔っ払ってたんですのね。それで、まさか手は出してないでしょうね」
ヴィクターの声が、一段低くなる。
「出してない……はずだ。ジークもそうだそうだと言っていた」
「貴方は、覚えてませんのね?」
「ヴィクター、あのな……」
「問題……無用!!」
「ゴッフ!!!」
言い訳より早く、人生2度目の兜砕によって、俺は再び地面と熱烈なキスをすることになり、顔が地面に埋まった。
兜砕って、そのまま叩きつける技だったんだな……
前回直前で手を離してくれたのは温情だった訳か。
「ジーク、ちょっと待ちなさい! ジーク!!」
ヴィクターはすでに走り去ったジークを追って行ってしまった。
その場に面白いオブジェになった俺が残される。
顔が……抜けない。
「……ォタスケェ!! 誰か俺の顔面とって顔面!」
「うわ、なんだこれ!」
「愉快なオブジェっすね」
「人が埋まってる……どうします、リーダー?」
聞き覚えのない声が、頭上から降ってきた。
誰が来た様だ。
「タスケェ!!! て!!」
俺が必死に助けを求めると、少し間を置いて声が返ってきた。
「……助けてやるか」
4人が俺の足を持って思いっきり引っ張ってくれたおかげで、俺の顔面はなんとか地面から抜けた。
「サンキューな」
「おう……なにやってんだ」
俺を助けてくれたのは、先程ヴィクターと言い争っていたハリー選手と、その取り巻きたちだった。
「フ……ヴィクターの愛情表現だ」
「兜砕くらったのか、よく平気だったな」
「8枚シールドを貼ったからな……7枚ほど割れたけど」
危なかった。最後の1枚が割れてたら、俺の顔面は[禁則事項です]になっていただろう。
「俺はファザー。見ての通り神父だ」
「地面に埋まってる神父は初めてだな。おれはハリーだ」
「最近は土から神父を栽培するのがトレンドなんだぜ」
「いや聞いたことねぇよ……」
ハリーは呆れたように言いながらも、口元を歪めて笑っている。
どうやら、冗談が通じないタイプではないらしい。
「さっきも一緒にいたけど、あのヘンテコお嬢様と知り合いなのか? ジークとも親しげに話してたよな?」
「ヴィクターは俺の将来の彼女になって欲しいという願望を抱いてる女性だ」
「つまり現状ただの友人なのか……」
「ジークは……なんなんだろうな。あいつ俺のこと、飯炊きと勘違いしてんじゃねぇかな」
ジークに飯以外なんか言われたことあったっけ?
……家か。
「ところでお前、不良で通してるみたいだけど、この界隈じゃあ2番目だ」
「別に不良で通してる訳じゃないけど、じゃあ1番は誰なんだよ?」
想定済みの返答ありがとう。
「it's me. 教会きっての不良神父とは俺の事さ」
俺は胸を張って答えた。
「リーダー、この人やばい人なんじゃ……」
「助けない方が良かったかもしれませんね」
「埋め直しますか?」
「そう褒めるな、ガールたち」
「褒めてねぇんだよなぁ……」
このツッコミ力、逸材かもしれん。
ジークへのツッコミを変わってくれないかな。
俺の負担がだいぶ楽になるんだけども。
ダメかなぁ……
……ダメ?
空は快晴だというのに、俺の悩みは晴れない。
そんな俺を嘲笑うかのように、鷹が一羽、キーと鳴きながら頭上を飛んでいった。
オリキャラって、原作に絡ませた方が逆に書くの難しいですね……