不良神父本気屑ファザー   作:青年不完全燃焼中

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今回2つに分けたのですが……前半部分がちょっと短かったかな?


不良神父とシスターず(教)

 

「お待ちしていました」

「おかえりなさい、ファザー」

 

 教会の扉を開けると、ディードちゃんとオットーちゃんの双子が出迎えてくれた。

 

「おー、ただいま。ディードちゃん、俺がいなくて寂しかったかい?」

 

「いえ別に」

 

「この後旅の話聞いてくれる?」

 

「結構です」

 

「塩〜、そこがまたいいんだけどね」

 

「会えば毎回私を誘ってきて、飽きないのですか?」

 

「ディードちゃんが魅力的なのがいけない」

 

「ハイハイ」

 

 今日も撃沈か、残念。

 ……また明日だな。

 

「あの、私でよければ旅のお話をお聞きしますが……」

 

 え、うーん……

 まぁ、アインハルトちゃんでもいいか。

 了承する前に、オットーちゃんが一歩前へ出る。

 

「アインハルト様、この人それを理由にサボりたいだけなので相手をしてはダメです」

 

「そ、そうなのですね。あの……お仕事をサボってはダメですよ?」

 

「中等部の子に言われてますよ」

 

「いいんですか?」

 

「うぐぅ」

 

 流石双子、俺を責める時は息ピッタリだ。

 

「いいんだよ、仕事ばっかりじゃ息が詰まる。適度に息抜きしないとだろ」

 

「今日が帰ってきて初日のはずですが?」

 

「細かいことは気にすんな」

 

「全然細かくありませんよ」

 

「全くシャッハに似てきたな」

 

「私達の上司ですから」

 

「同じように行き遅れないようにな」

 

「へぇ……」

 

 あっ、死んだ。

 

「私が……なんですって?」

 

 背後からの声に、振り返れば鬼がいた。

 

「ほほほ本日はお日柄もよく……シスターシャッハに至りましては大変麗しゅうございますですはい」

 

「それが遺言でいいですね?」

 

 嗚呼あああぁアアアアあああアアアアァァァあああ!!

 

 ←ーーーーーーーーTo Be Continued

 

 

「ようこそいらっしゃいました、アインハルトさん」

 

 聖王教会の一室で待ち構えていたカリムが声をかける。

 

「あと、そこのボロ雑巾はそこらへんに捨てておいてください」

 

 俺を引きずって来たシャッハに放り投げられる。

 

「ひどい」

 

「何かいいたいことが?」

 

「無いです」

 

 命は惜しいのだ。

 

 部屋を見渡す。

 どうやら、カリム、ランスターさん、パイオツネーチャン、パイオツネーチャン赤、そして今一緒に来たシャッハ、ディードちゃん、オットーちゃんでアインハルトちゃんの話を聞くようだ。

 

 ……さて

 

「またお会いしましたねランスターさん。今日もお綺麗だ。宜しければ教会内をご案内いたしますよ。我々職員しか入れない場所も特別にお連れいたします」

 

「お誘いありがとうございます。ですが今日は仕事として来ていますので、またの機会に。」

 

「大人の対応……素敵だ」

 

「あはは」

 

「ティアー! モテモテだねー」

 

「うっさい、社交辞令でしょうが」

 

「でも私にはそう言ってくれないよ? 何で?」

 

 キョトンとこちらを見てくるナカジマ局員。

 いや、それはそうでしょ。

 

「いきなり家をぶっ壊そうとする人はちょっと……」

 

「うっ」

 

 それがなければこのパイオツにやられてたかもしれん。

 健康的なボーイッシュ……悪く無かった。

 

「ちなみに私は毎日のように口説かれてます。ぶいっ」

 

 ディードちゃんがピースをする。

 

「僕は無いけど……ちゃんと女の子として扱ってくれます」

 

 オットーちゃんが照れる。

 

 2人ともずいぶん表情豊かになって……

 昔はもっとこう……無表情というか、感情を表に出さないところがあったのに。

 俺は嬉しいぞ。

 

「ははっ、スバル双子に負けてやんの」

 

「ノーヴェだって言われて無いじゃん!」

 

「あたしはいいんだよ。そう言うのガラじゃ無いし」

 

「ところで、1日で髪染めました?」

 

「あたしここにいるよね! 今喋ってたよね?」

 

 ナカジマ局員が喚く。

 

「あたしはノーヴェ。こいつの妹で、今回の件の……被害者?ってことになるのかな」

 

 なるほど。

 

「つまり俺が面倒くさい事になった原因2ってことか」

 

「お前本当に神父か?」

 

「よせよ、照れる」

 

「褒めてねぇ!」

 

「確かに神父とは思えませんよね」「お酒はガブガブ飲むし」「いつもタバコ咥えてるし」「ギャンブルだってやる」「その上女性は口説きまわる」

 

 ヒソヒソと話しあった双子が、顔を合わせてこっちを見る。

 

「「ホント、なんで神父やれてるんです?」」

 

「おっ、惚れたか?ディードちゃん、ランスターさん」

 

「無いですね」

 

「もっと真面目な人がタイプです」

 

「…………?」

 

 何故?

 

「ファザー、いい加減にしないとぶっとばしますよ……シャッハが」

 

「私ですか⁉︎」

 

「そうやってすぐ暴力に訴えるのよく無いと思うぞ。シャッハ」

 

「2人とも、そこに直ってください」

 

 シャッハがボキボキと拳を鳴らす。

 

「アンガーマネジメントだ! 7秒待って!」

 

「7秒後に殺す」

 

「7秒後に殺⁉︎」

 

 か、勝てるわけない。シャッハは伝説の超ベルカ人なんだ。

 

「では、おふざけはこのくらいにしておきましょう」

 

 カリムが穏やかに言う。

 その一言で、部屋の空気が切り替わる。

 胸ぐらを掴まれ、シャッハの拳が顔面に振り下ろされようとした瞬間、カリムのその号令でじゃれ合いは終わった。さすがは教会のトップ、さっきまでの騒がしさが嘘のように消えていた。

  

「……アインハルトさん、よろしいですか?」

 

「は、はい」

 

「警戒はとけたかい?」

 

 アインハルトちゃんの隣に座り、確認する。

 

「あ……私のために?」

 

「…………もちろんさ」

 

「今の間は?」

 

「半分は本気でしたよね」「僕は7割くらい本気だったと思う」と、再び後ろで双子がヒソヒソと話す。

 俺はいつだって全力全壊だぞ。

 まあ、こうやってくだらないことをやっているのも、こいつが少しでも緊張を解せるなら悪くない。

 

 大人が何人も集まって、中学生一人を囲んでいる。

 それだけで、十分怖いだろうからな。

 しかも、怪我を負い倒れた直後、見知らぬ神父に拾われ、その翌日に管理局や教会の人間から事情を聞かれている状態だ。

 

「では、話せる範囲で構いません。あなたのことを教えてください」

 

「はい」

 

 アインハルトちゃんは姿勢を正した。

 そして、ゆっくりと語り始める。

 

 覇王クラウスの部分的な記憶と身体資質を受け継いでいること。

 その影響で、自分の中にその数百年分の後悔がある事。

 だから、自分の中では古代ベルカ戦争が未だに終っていないこと。

 彼の悲願である「覇をもって和をなす『王』であること」「最強のベルカ王であること」を証明するため、格闘技の実力者達に次々とストリートファイトを申し込んでは倒していたこと。

 だから、自分が最強でなくてはならない。そうしなければ、クラウスの願いを果たせないと。

 そこまで話して、言葉を区切った。

 

 部屋に静寂が落ちる。

 

 皆、真剣な表情で彼女の話を聞いていた。

 彼女の言葉を受け止めようとしている。

 

 俺も少しだけ考える。

 正しい道を行けなんて綺麗事を投げても、この子には意味がない。

 何より俺自身が馬鹿らしい言葉と思っているのだから。

 

「で?」

 

 だからこそ、俺から口火を切らせてもらう。

 

「え?」

 

「強さを証明して、どうする?」

 

「……」

 

 アインハルトちゃんが黙る。

 答えが返ってこない。

 

「覇王みたいになるのか?」

 

「それは……」

 

「人々を蹂躙して、国を滅ぼす?」

 

「違います!」

 

 初めて、彼女が強い口調で否定した。

 

「私は……そんなことをしたいわけではありません!」

 

「だろうな」

 

 俺は笑った。

 

「なら、着地点は決めておけ」

 

「着地点?」

 

「『証明して、その後どうするか』だ。」

 

 俺は椅子の背にもたれ続けた。

 

「強くなること自体は悪くない」

 

「……」

 

「問題なのは、悲願を果たした後、お前がどうするか」

 

 アインハルトを見る。

 

「血筋ってのは便利な言葉だ」

 

 少しだけ苦笑する。

 

「誰の血筋だとか、かの王の子孫だとか、英雄の末裔だとか。そういう肩書きがあると、自分が何者なのかを簡単に決めてもらえる」

 

 そういうものを嫌というほど知っている。

 聖王家。

 英雄。

 王。

 そして、その血筋を理由に、人間の行いまで正当化されることも。

 

「でもな、それに頼りすぎると、自分で自分を決められなくなる」

 

 俺は指を一本立てる。

 

「だからこそ、そいつと同じじゃいけないのさ……じゃないと」

 

 アインハルトちゃんを覗き込む。

 

「同じ失敗を繰り返す」

 

「……っ!」

 

 アインハルトちゃんの瞳が揺れる。

 

「お前さんが何者かを決めるのは、覇王クラウス・イングヴァルトじゃない。お前自身だ、ハイディ・アインハルト・ストラトス・イングヴァルト」

 

 彼女自身のフルネームを呼ぶ。

 意識させるために。

 

 「……私自身」

 

「誰の子孫だろうが、誰の記憶を受け継ごうが、それだけでお前の人生が決まるわけじゃない」

 

「だから、着地点を決めておけ」

 

「その力でどんな人間になりたいのか。それが決まってりゃ、迷った時に戻ってこられる」

 

「逆に、それが無ければ――」

 

 俺は少しだけ声を落とす。

 

「覇王の記憶に飲まれるぞ」

 

「……はい」

 

 アインハルトちゃんは小さく頷いた。

 答えは出ていない。

 当然だ。

 

「とは言え、まだ難しいか」

 

 中学生の女の子に、「お前は何のために生きるんだ」なんて聞いたって、簡単に答えられるわけがない。

 

「中学生だもんな」

 

「……すみません」

 

「そこは謝るところじゃない」

 

 頭を軽く撫でる。

 

「ありがとうございます」

 

 それもこの場合じゃ違うな、不器用な子だ。

 苦笑しながら続ける。

 

「どうしても思い悩むなら俺のところへ来い」

 

「俺が、人生適当に生きる方法を教えてやる」

 

「台無しです」

 

 チャチャ入れるなカリム。

 

「適当でいいんだよ、不適当よりマシだろ?」

 

『なあ』と、アインハルトちゃんに同意を求める。

 

「それはそうですが……あれ?」

 

「騙されないでください、言葉の意味が変わってます」

 

「ファザー、詐欺師の才能があるんじゃないですか」

 

 いま良いこと言ったと思うんだけどな。

 今日はカリムもシャッハもあたりが強い。

 

「……以上、神父さんのありがたい説法でした」

 

 俺が全部答えを出してやる必要はない。

 むしろ、答えを自分で見つけるためのきっかけを渡す。

 それで十分だ。

 

 ……誰も話さない。

 

 見渡すと、カリムとシャッハ以外の人たちは信じられないものを見るような目を俺に向けている。

 

「神父だ……」

「いつのまにか誰かと入れ替わったか?」

「明日は樽でも降るのでしょうか」

「た、たまにちゃんと神父やってる時もあるから……年に2、3回くらいだけど」

 

「おい」

 

 俺の味方はオットーちゃんだけらしい。

 

 ……まったく。

 

 最後まで真面目なんてガラじゃ無いんだよ

 

 とはいえ。

 

 ちらりとアインハルトちゃんを見る。

 

 先ほどまで張り詰めていた表情は、ほんの少しだけ柔らかくなっていた。

 

 それでいい。

 

 答えなんて、今すぐ見つける必要はない。

 

 迷って、間違えて、それでも自分で決めればいい。

 

 神様でも、聖王でも、覇王でもない。

 

 ――テメェの人生はテメェで決めればいい。

 

 それが、人間ってものだろう。

 

 俺はそう思いながら、ポケットから煙草を取り出した。

 

「ファザー」

 

「ん?」

 

「この部屋では禁煙です」

 

「……はい」

 

 神父の威厳は、最後まで無かった。

 

「さて」

 

 カリムが一白置いてアインハルトちゃんに話しかける。

 

「覇王そのものになりたいわけではない。聖王家や冥王家に恨みがあるわけでも無い……という事はわかしました」

 

「はい」

 

「ではノーヴェさん。教会としては、彼女は危険で無いと判断します。この件については……そうですね、ファザーに一任しましょう」

 

 カリムがにこやかに微笑む。

 

 ……は?

 俺?

 

「なんで?」

 

「珍しく神父らしくしたのですから、最後まで。そもそも貴方から始まったのです。それに……」

 

 カリムがにこやかに微笑む。

 

「適任でしょう?」

「そう……なるのか?」

「はい」

「わかったよ」

 

 タバコの箱を玩びながら了承する。

 俺が素直に受けた事に双子が驚いているが、無視だ無視。

 それにしても……覇王っ子の相談役か。

 ……俺がねぇ。

 

「ノーヴェさんの案も問題は無いと判断します」

 

 カリムはノーヴェさんに向き直る。

 なんかしようというのかね?

 

「ありがとうございます、騎士カリム」

 

 ノーヴェさんは頷き、アインハルトを見る。

 

「……なぁ、アインハルト」

 

「はい」

 

「お前の思いを、拳を受け止めてくれるやつがちゃんといるよ」

 

「え……?」

 

「だから、明日の放課後、あたしにつきあわねーか?」

 

 アインハルトちゃんは少し驚いたように目を見開いてゆっくり返事をする。

 

「……はい」

 

 その返事を聞いて、ノーヴェさんはにっこりと笑った。

 

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