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後半です
翌日の放課後の時間帯。
ノーヴェは、約束通りカフェの席に陣取っていた。
「なんでこんな大所帯になってんだよ……」
ノーヴェは周囲を見回した。
同じテーブルには非番のティアナとスバル。
隣の席に聖王教会から来たディードとオットーの双子。
そしてスバルとノーヴェの姉妹であるチンク、ディエチ、ウェンディまでいる。
さらにには――。
「あっ、来た!」
スバルが顔を上げる。
少し離れたところから、三人の少女が歩いてくる。
「高町ヴィヴィオ、到着しました!」
明るい声とともに手を振ってやってきたのは、ヴィヴィオだった。
古代ベルカの王である、オリヴィエのクローン。そして、性格もとても良い子。
ノーヴェは、彼女なら、アインハルトの拳を受け止めてやれると思って、今日の予定を組んでいた。
その後ろにはヴィヴィオの友人であるコロナとリオが続く。
「ごめんなさい、遅くなりました」
「こんにちはー!」
二人も続いて笑顔で席へやってくる。
「あー、やかましくて悪いな」
「ううん、ぜんぜん!」
ヴィヴィオが笑顔で駆け寄ってくる。
「て、紹介してくれる子っていうのは?」
「もうすぐ来るはずだ」
ノーヴェが答える。
「ファザーが連れてくる予定です」
オットーが続けた。
「……ああ」
その言葉に、ノーヴェの顔が露骨に曇った。
「そういや、あの神父も来るんだったな……」
「神父?」
チンクが首を傾げる。
「昨日ボロクソに言ってた人っスか?」
ウェンディが、昨日の家でのノーヴェの話を思い出したように聞く。
「そう。アインハルトを保護したっていう聖王教会の神父」
「そんなに変な人なんですか?」
コロナが不思議そうに尋ねる。
「変っていうか……」
ノーヴェは言葉を探した。
「昨日会っただけでも相当だった」
「どんな人なの?」
ディエチが尋ねる。
すると、ディードとオットーが顔を見合わせた。
「説明すると長くなりますよ」
「それに、たぶん普通に説明すると余計に分かりにくくなると思います」
「分かりにくい?」
ウェンディが首を傾げる。
「一言で説明するなら……」
ディードが真顔で言った。
「堕落を形にしたようなクズ神父です」
「言い方!」
ノーヴェが突っ込む。
「間違ってはいません」
オットーも真顔だった。
「お酒は飲みます」
「煙草も吸います」
「賭博もします」
「仕事もよくサボります」
「女性を見るとすぐ口説きます」
「…………」
テーブルに沈黙が落ちる。
「……神父?」
チンクが思わず聞いた。
「神父です」
ディードが即答する。
「本当に?」
「聖王教会所属の正式な神父ですよ」
「なんでクビにならないの?」
ディエチがもっともな疑問を口にした。
双子はまた顔を見合わせる。
「それは――」
「皆に好かれているからです」
「へぇ?」
スバルが意外そうな顔をする。
「ファザーは確かに不真面目です」
ディードが続ける。
「聖職者として褒められるような生活をしているとは思いません」
「でも、人を見捨てることはありません」
オットーが静かに続けた。
「困っている人がいれば、なんだかんだ言いながら手を差し伸べます」
「昨日のアインハルトさんの件もそうです」
「家に連れて帰って、治療して、食事まで用意していました」
「……それ、普通にいい人じゃん」
リオが言う。
「そこがややこしいところなんですよ」
ディードがため息をつく。
「普段の言動だけ見れば、どうしようもない人です」
「ですが、本人の考え方は一貫しています」
オットーが言った。
「『奇跡は神や聖王が一方的に与えてくれるものではなく、今を生きている人間が起こすものだ』と」
「だから、祈って待つだけじゃなく、自分で動け、と」
「それで本人が真っ先に動いて、結果的に誰かを助けているわけです」
「……なんか、あの神父らしいな」
ノーヴェが苦笑する。
「聖王教会の神父なのに、聖王に頼るなって言うの?」
目を丸くしたヴィヴィオの質問に、オットーが答える。
「信仰を人生の支えにすること自体は否定していません。ただ、何でも神様や聖王様任せにするのが嫌いなんです」
「祈るだけじゃ腹は膨れない。傷も治らない。だから自分たちで動け、という考え方です」
「……なるほど」
ティアナが腕を組む。
「言っていること自体は、かなり真っ当ね」
「普段の態度との落差が凄いんですけどね」
ディードが付け加えた。
「そこは本人の自業自得です」
オットーが即答する。
ノーヴェが笑う。
「お前ら、結構容赦ねぇな」
「ファザーにはいつものことです」
ディードが淡々と言った。
「むしろ本人も気にしていません」
「たぶん喜びます」
「なんで?」
スバルが聞く。
「不良神父が褒め言葉だと思う人なので」
ディエチが笑う。
「でも、ちょっと見直したかも」
ティアナも頷く。
「少なくとも、ただのろくでなしというわけではないようね」
「まあ……そこは否定しない」
ノーヴェも認める。
「ムカつくけど、昨日のアインハルトへの話も悪くなかったしな」
「そうだよ」
スバルも頷く。
「私も最初会った時は、ただの変な神父さんかと思ったけど……」
「実際、変な神父ですよ」
「そこは否定しないんだ……」
そんな話をしていると――。
遠くから、特徴的なエンジン音が近づいてきた。
――バルルルルルルル……。
「来たな」
ノーヴェが呟く。
音は次第に大きくなり、やがてカフェの前で止まった。
バイクから降りたのは、いつもの神父服姿の男。
黒髪は相変わらずボサボサ。
胸元では、剣と十字架を組み合わせたようなデバイスが揺れている。
そして、その後ろから、一人の少女――。
アインハルトが降りてくる。
「ファザーさん、相変わらず運転が……」
「細かいことを気にするな。死ななきゃ安い」
「そういう問題ではないと思います」
「無事に着いたんだから結果オーライだ」
「絶対に違います」
変てこなやり取りをしながら、二人が店へ入ってくる。
「アインハルト・ストラトス、参りました」
「おーい、ノーヴェちゃん。待たせたな」
「お前なぁ……」
ノーヴェが呆れながら振り返る。
「昨日の今日なんだから、もう少しまともな格好で来いよ」
「神父が神父服を着て何が悪い」
「そういう意味じゃねぇよ」
「ずいぶん集まったな……おや!」
ファザーは集まったみんなを見回す。
そして、ティアナの姿を見つけた。
「これはこれは。ランスターさんではありませんか」
「……嫌な予感しかしない」
「本日もお美しい。もしよろしければ、この後――」
「仕事です」
「食事でも」
「仕事です」
「教会の案内を」
「前にも断りました」
「では二人きりで――」
「断ります」
「完璧だ」
ティアナはどこからどう見ても非番の服装なのだが、ファザーにとってはこの受け答えで満足らしい。
「やっぱり貴女は素晴らしい」
「褒めても何も出ませんからね」
ティアナは呆れたように息を吐く。
「そこがまたいい」
「ティア、惚れられてるね」
スバルが笑う。
「ファザー、私には?」
「ナカジマ局員、貴女も相変わらず――」
ファザーは少し考えてから、言葉を選んだ。
「元気そうで何より」
「なんでティアにはあんなに口説くのに、私には雑なの!?」
「前に家のドアをブッ壊した人間を女性扱いするほど、俺は寛容じゃない」
「まだ言ってる!?」
「未来永劫擦り続ける」
「えーん、ティア〜」
「はいはい、もう……」
ティアナが苦笑しながらスバルを受け止める。
その光景を見て、ファザーがぽつりと呟いた。
「羨ましい」
「へっへーん」
スバルが得意げな顔をする。
「長年の仲ってやつだよ!」
「怒るわよ」
ティアナは呆れた。
いつもの調子だった。
昨日から何かと騒がしい神父。
そんなファザーを知っている者たちにとっては、見慣れた光景だった。
――だが。
「それで、今日は――」
ファザーが言葉を続けようとして。ふと、その視線が一人の少女へ向いた。
高町ヴィヴィオ。
初等部の制服を着た少女は、他の皆と同じようにファザーを見ていた。
金色の髪。
そして、まっすぐファザーを見つめる赤と緑のオッドアイ。
「……」
口に咥えていた煙草が、ぽろりと落ちる。
それを拾わず、ただヴィヴィオを見ていた。
「……?」
ヴィヴィオが不思議そうに首を傾げる。
ファザーは動かない。
ただ、じっと彼女を見ている。
その顔からは、先ほどまでの軽薄な笑みも、ふざけた態度も消えていた。
「ファザーさん?」
アインハルトが声をかける。
しかし、返事はない。
ファザーの黒い瞳が、ヴィヴィオから離れない。
そして。
ほんの僅かに唇を動かした。
「……オリヴィエ?」
「え?」
ヴィヴィオが目を瞬かせる。
その言葉を聞いて、周囲の視線が一斉にファザーへ集まった。
「……」
ファザー自身も、自分が何を口にしたのか理解していないようだった。
やがて、ゆっくりと息を吐く。
「……ああ」
ファザーは我に返ったように呟いた。
「すまない」
そして、落ちた煙草を拾いあげながら、改めてヴィヴィオを見る。
「あの……私、ヴィヴィオって言います」
「そう……か」
「高町ヴィヴィオです」
「ヴィヴィ……ヴィヴィオちゃんか」
ファザーは、その名前を一度だけ口の中で転がす。
「俺はファザー。聖王教会の神父だ」
「はい。さっきから話題になってました」
「おや、俺の悪評が?」
「悪評というか……」
ヴィヴィオが少し困ったように笑う。
「すごく個性的な神父さんなんだなって」
「褒め言葉として受け取っておこう」
「褒めてるのかなぁ……?」
ヴィヴィオが首を傾げる。
「ところで、そんなに似てますか?みんなからは、『あまり似てないね』と言われるんですけど」
ヴィヴィオが少し困ったように笑う。
「……ああ、そっくりだ。すまないな、あまりに似ていて言葉を失ってた」
ほんの一瞬だけ言葉を探してから、いつもの軽い笑みを浮かべた。
「肖像画とか彫刻とか、あまり似てないと思うんですけど」
「まあ、一般に知られている肖像画だけならそうかもしれんな」
ファザーは、軽い笑みを浮かべたまま続けた。
「こんなクズでも聖王教会の神父だからな。オリヴィエの資料なんて色々見る機会が多い。普通の人よりは聖王様について詳しいさ」
へら、と笑うファザー。
「へぇー!」
ヴィヴィオは感心したように声を漏らした。
「ファザーさんって、聖王様のこと詳しいんですね」
「最低限の歴史は知っておかないと、教会で飯を食えん」
「じゃあ、いろいろ教えてください!」
「……まあ、機会があればな」
「約束ですよ!」
「ああ」
ヴィヴィオの笑顔に釣られてファザーも笑う。
その笑みは、今度こそいつも通りのものだった。
「さて」
ファザーが、ぱん、と手を叩いた。
「今日の主役は俺じゃ無いだろ?ほらノーヴェちゃん、何するんだ?」
アインハルトの肩を掴んで前に出す。
「なんでちゃん付けを……」
ノーヴェが顔をしかめる。
「あと切り替え早ぇな、お前」
「俺は切り替えの早さには定評があるんだ」
「自分で言うなよ……」
ノーヴェはため息をついた。
けれど、その視線はすぐにアインハルトへ向く。
「まあ、いい。アインハルト、こいつが例の——」
「初めまして、高町ヴィヴィオです!」
「アインハルト・ストラトスです」
2人が向かい合う。
ヴィヴィオはにっこりと笑いアインハルトへ手を差し出した。アインハルトも少し戸惑いながらその手を握る。
「まぁ、2人とも格闘技者同士、ごちゃごちゃ話すより手合わせしたほうが早いだろ?場所は押さえてあるから早速行こうぜ」
ノーヴェのその言葉に、全員が移動する。
「なんだ、言葉より拳で語る系か?」
「神父として許容して良いのですか?」
「まぁいっか!」
「ホント、いいかげんですね」
オットーとディードの双子に責められながら、ファザーは後に続いていった。
————————————————————
というわけで、俺たちはスポーツコートにいる。
その中央で、アインハルトちゃんとヴィヴィオちゃんが向かい合っていた。
「レディ、ゴー!」
ノーヴェちゃんの合図により、2人の手合わせが始まり、打ち合っていく。
「ほー、中々やん。知らんけど」
「いやわからないんかーい!」
このノリの良い子はウェンディちゃんと言うらしい。
……なんかセインのバカを思い出すなこの子。
「ファザーはやらないんスか?」
「無理、肺が死ぬ」
即答
「タバコやめたら良いんじゃ……」
「無理、俺が死ぬ」
「吸いすぎは良く無いよ」
ディエチさんが心配そうに言ってくれる。
「心配してくださってありがとうございますディエチさん。まるでおとぎ話に出てくる天使のようだ」
「うん、ありがとう」
「よろしければこの後……」
「ごめんね」
「……」
今日は調子が悪いらしい。
朝教会でディードちゃんに。
さっきランスターさんに。
そして今またディエチさんに。
と、続け様に三連続で撃沈してしまった。
「なんでアタシには言ってくれないんスかー」
ウェンディちゃんが顔を膨らませる。
「中身がガキだ」
「うぬ〜!」
「3年後、楽しみにしてる」
「絶対いい女になって見返してやるッス!」
「いいね、良い女が増えるのはこの世界の利益だ」
「ムキー!あしらわれてる!」
ウェンディちゃんは悔しそうに地団駄を踏む。
「じゃあ、チンク姉はどうッスか!」
そう言ってウェンディちゃんは、銀髪で眼帯をした小柄な少女、チンクちゃんを差し出す。
「おい、姉を巻き込むな」
チンクちゃんが困ったように言う。
「姉?」
聞き返す。
「姉だ」
「そうか……お嬢ちゃんがこの中で一番上なのか」
不思議な姉妹だ。
……ん?
なんかみんなから見られてるんだが。
「どしたん?」
「……よくわかったなと思ってな」
「まあ、どう見てもウェンディちゃんが一番ガ――」
「今ガキって言ったッスね!」
「いや、『ガキ』じゃなくて『下』って言おうとした」
「絶対ガキって言おうとしたッス!」
ほらガキだ、おもしれぇ。
俺はナカジマ姉妹を見回した。
「ノーヴェちゃんとナカジマ局員……いや全員ナカジマか。」
「そうだよ」
スバルちゃんが笑う。
「スバルちゃんは、スバルちゃんが姉ってのは昨日聞いた」
「スバルちゃんって呼ばれちゃった」
えへへと嬉しそうにするスバルちゃん。
「……単純なのか?」
ランスターさんがが小さくため息をついた。
「そういうところは昔からよ」
「なるほど」
ファザーはさらに姉妹を見る。
「で、ディエチさんとチンクちゃんは2人より落ち着きがあるから歳上」
「私たちは?」
ディエチさんが問うてくる。
「ディエチさんがチンクちゃんに気を使ってるのが態度でわかる、だからチンクちゃんが一番上」
どうだ?
「……当たりだな」
チンクちゃんが少し驚いたように言う。
「流石女性を口説き回ってるだけはあるッスね」
「そう褒めるな」
「ほめてねぇッス!」
「それにしても、五姉妹か……大所帯だな」
「もう1人いるよー、ギンねぇ。一番上のお姉ちゃん!」
「六姉妹……今度紹介してくれ」
「口説きそうだからダメ〜」
個性豊かな彼女たちの長女だ、絶対に思いやりがあって優しい人だという確証がある。
あとおそらく胸の大きい美女だ(願望)
「それにしても……」
「ん?」
「……いや、なんでも」
「気になるッス、吐くッス」
ウェンディちゃんが体を揺さぶってくる。
「……お盛んなご両親だと思って」
「そういう訳じゃ無いんだけどね、あはは……」
「…………」
マズイ。
空気が死んだ。
いまのはただの失言ではなく、触れてはいけないものに触れてしまった感じがする。
何がまずい、考えてみろ。
必死に頭を回転させる。
……そういえば、ディードちゃんとオットーちゃんが、この子たちを『姉様』といっていた事を思い出す。
……という事は、そういうことか。
やべぇ、まじでしくっちまってる。
「すまない」
即謝罪。
それを聞いて、チンクちゃんが少し困ったように笑う。
「まあ、ちょっとデリカシーがなかったな」
「いや……みんなオットーちゃんやディードちゃん、セインのバカと一緒なんだろ?」
デリケートな部分だ、ゆっくりと聞く。
「戦闘機人ってやつ」
「……なんで知ってるの?」
ディエチさんが少し驚いた顔をする。
戦闘機人。
鋼の骨格と人工筋肉を持つ、いわば人工的に強化された人間。
「オットーちゃんたち3人が教会のシスターになるずっと前から神父やってんだ、それくらい教会から知らされるさ」
俺は肩をすくめる。
「それに、3人から『自分たちと姉妹のような関係の、同じような存在がいる』って話は聞いてたからな。」
「ねぇ、ひとつ聞いていいかな?」
スバルちゃんが真剣な目で問いかけてくる。
「何なりと」
それを茶化すほど、俺は腐ってはいない。
「君の目には、あたし達がどんな風に見える?」
「なんも変わんねぇよ」
俺は即答した。
「ただの女の子だ。今さらその程度のことで驚いたりしない」
そして、ディードちゃんの方を向きながら続ける。
「そもそも、そんな事で偏見持つようなら毎日ディードちゃんを口説いたりして無い」
「あははは、それもそうだね」
ディエチさんが苦笑する。
「こんな人です」
ディードちゃんが呟く。
その口元は、ほんの少し笑っていた。
「みんなから好かれる理由がなんとなくわかったよ」
「おっ、惚れたか?」
「こんな人です」
今度はオットーちゃんが、彼女もほんの少し笑みを浮かべながら言った。
「二人とも俺への評価が雑じゃない?」
「「正当な評価です」」
……そうかい。
そんなこんな話しているうちに、手合わせは終わったらしい。
結果はアインハルトちゃんの勝ち……でいいのか? 一撃入れて切り上げたみたいだけど。
アインハルトちゃんはなんだか「こんなんじゃ満足出来ねぇぜ」みたいな顔をしている。流石ストリートファイターだ。
「あのっ!すみません、わたし何か失礼を……?それとも、弱すぎました?」
……ちょっと待て。なんで負けた側が謝ってるんだ。
ヴィヴィオちゃん、良い子すぎないか?
俺みたいなカスには眩しすぎる……
浄化されてしまう。
大天使ヴィヴィエルとか名乗り始めても、俺はもう驚かないぞ。
「いえ、趣味と遊びの範囲内でしたら充分すぎるかと……。申し訳ありません、私の身勝手です」
「すみません!今のスパーが不真面目に感じたなら謝ります。今度はもっと真剣にやります。だからもう一度やらせてもらえませんか?」
というわけで、なんか来週また戦うらしい。練習とはいえ、今度はちゃんとした試合として。
後でノーヴェちゃんが時間と場所を伝えてくれるらしい。
これ……また俺も行かないとダメか?
『いけ』
「はい」
頭の中のカリムにそう言われた気がした。
……多分、実際に聞いてもそう言うと思う。
また一つ、面倒な予定が増えた。
それでも――。
悪くないと思っている自分がいることに、俺はまだ気づかないふりをしていた。