魔法少女と “魔法律家” 作:バレテーラ
本当は呪術×なのはでやろうと思ったけど、ムヒョロジ読み返してこっちを書いてしまった……。ムヒョロジ知ってる人っていんのかな?
少年――
世界には幽霊というモノが確かに存在し、そして人に害を成す霊を裁く者たちが人知れず奮闘している。
それが “魔法律家” 。
魔法律家になるためには霊感があるのはもちろんのこと、魔法律を行使する為に必要な「煉」を保有してなければならない。
それらを持ちうる者たちが人生をかけて魔法律家を目指すのだが、それでも誰もが魔法律家に、その最上位の階級――自らで霊を裁くことができる “執行人” に至れるわけではない。
そんな中で、界逢真は紛れもない天才だった。
とある一件で魔法律という存在を知って数年……。
まるで乾いたスポンジのように魔法律の知識を吸収していく才覚、より強力な魔法律を行使できるほどの精神力と膨大な煉保有量。
他とは一線を画す実力と周りからの強い推薦により、飛び級に次ぐ飛び級、特例も特例で、わずか9歳で執行人の地位に辿りついた。
それまでの最年少記録を塗り替え、今後おそらく更新されないであろう前代未聞の執行人が誕生したのだった。
「あ、そうだ。来週からオーマは一般の学校に転校してもらうから」
「え」
そんな神童は自身を育ててくれた師匠から思いもよらぬ言葉を投げかけられて、すわ早くも追放か!? とショックを受けていた。
「ごめんごめん! 急にそんなこと言われても困るよね!? ちゃんと説明するから!」
目の前で茫然としている
「あ~、でも……場合によっては魔法律も禁止になるかも……?」
ガーン!
逢真が再びショックを受け、師匠が宥めてようやく本題に入ることに。
「オーマは特例とはいえ、執行人。悪霊を裁くことが本業になってるわけだけど、本来なら学校に通っているはずなんだ」
「……? 学校は行ってる」
「それは
「???」
そこまで言っても逢真は真意を汲み取ることができず首を傾げ、師匠は苦笑いを浮かべた。
「君は天才だし、一人でどうにかできてしまう強い執行人なのかもしれない。……けど、まだまだ子供なのも変わりない。魔法律家になるためにこれまでいっぱい勉強したぶん、子供としてすごした時間がなさすぎる」
彼の言う通り、逢真の人生において三分の一は殆ど遊ぶことはなく、魔法律を習得することに時間を割いていた。
「これから先、大人になったらもっと平穏な日々から離れることになる。だから今のうちに子供として振舞って、いっぱい遊んで、普通の生活を謳歌した方がいいと思うんだよ。ほら、友達もつくってさ!」
「……友達ならいる」
「ビコやヨイチのことだと思うけど、そうじゃなくて同年代の友達をつくってほしいな~って話」
友達候補を否定されしょんぼりする逢真の頭に師匠が手をのせて優しく撫でる。
「同年代の友達はかけがえのない存在になる……楽しいときは一緒に笑って、ツラいときは傍にいてくれて、自分が間違えたら正してくれる……そして、ここぞってときに力を貸してくれる。いつまでも消えない『心の支え』になるんだよ」
「……師匠もそうだった?」
「うん。だから僕は僕を助けてくれた友達のことが大好きだし、ここまで頑張ってこれたんだ。――こうして、君にも逢えたしね」
にこり、と愛おしそうに優しく微笑を向けられる。
「だからね、ほんの少しだけでいい。いっぱいじゃなくてもいいから、友達と過ごして、思い出をつくってほしい。それはきっと、オーマにとって無意味なものなんかじゃないから……」
「……」
師匠な優しい眼差しをまじまじと見つめ返す逢真。
すべてを理解したわけではない。
それは本当に必要なことなのか、このまま魔法律家としてすごしていくだけではダメなのか?
いろんな疑問が浮かび、それは拭えない。
……しかし、師匠がそこまで言うのなら間違いはないのだろうと。
何より家族のように慕ってくれる師匠の願いを叶えてあげたいと逢真は思い、こくりと頷いた。
「よかった~。あ、ちなみに転校するところは海鳴っていって、海が一望できる綺麗な町なんだよ! あと、駅の近くにある翠屋って喫茶店が有名らしくて、一緒に食べに行こう!」
「……なんか、師匠の方が楽しそう」
さらには観光ガイドを開き始める能天気な師匠に、逢真もいささか呆れた声を漏らすしかなかった。
そんなこんなで二人は海鳴へと拠点を移し、恙なく逢真は聖祥大付属小学校に転入を果たした。
――のだが、問題はその後である。
転入すればおのずと周りと関わり合いが出来ると思われたのだが、逢真から発せられる言いようのないミステリアスな雰囲気から近づいてくる者はおらず、友達づくりに難航していた。
師匠から「転入したらみんなから質問攻めになると思うから、楽しみにしておくといいよ」と言われたのだが、全然そんなことはなかった。
授業の方は問題ない。
元々地頭がいいためかすぐに覚えられ、むしろこれぐらいなら自主勉強で済んでしまうほどのレベル。
だからこそ目下の問題、師匠が望んでいる友達づくりが進んでいないことにどうしたものかと悩み、その反面、別にいなくても不自由はないと感じているのが現状だった。
そんなある日のこと。
「ねぇねぇ知ってる? 噂の学校の怪談……」
「えっと、人体模型が動き出すって話だっけ?」
「そうそう! 実は4組の田中さんが忘れ物を学校に取りにきたとき、それを見たんだって!」
「こわぁ~」
教室で一人ぼーっとしていると、近くの女子たちがそんな話をしているのが耳に届く。
大方、霊が人体模型に取り憑いて動き回っているのだろう。
「……」
転入早々、魔法律家として務めを果たさないといけないようだった。
そして今日も今日とて、大してクラスメイトと関わることなく帰宅する。
「えっ今夜? ……大丈夫だけど……うん……うん……わかった。すぐに向かうよ」
家に入るなり、師匠が誰かと電話していた。
「あ、おかえりメッシ」
「……ただいま。師匠出かける?」
「うん。なんでも厄介な霊が出たみたいで、力を貸してほしいって要請がね。今日は一緒に夕飯食べれないや」
ごめんね、と申し訳なさそうに逢真の頭を撫でる。
師匠も執行人である以上、多忙な身であることは彼も理解している為、悲しそうな顔は見せなかった。
残念だとは思っているが。
「本当にごめんね。夕飯もつくれそうにないから、これで好きなもの食べて? 僕は何時になるかわからないから」
そう言ってお札を一枚渡した師匠は逢真のまだ小さい体躯をぎゅっと抱きしめ、満足すると体から離れて「それじゃ行ってきますっ」と家を出ていった。
「…………あ、言い忘れた」
小さく手を振って見送った逢真だが、肝心の学校の霊について伝えそびれていた。
今はまだ実害が出てないが、このまま野放しにしておくわけにはいかず、早々に片づけた方がいい――仕方なく、逢真は自分で対処することを決める。
そうして日が沈んで町が暗闇を纏う頃、必要な装備を揃え、逢真は一人夜中の学校へと足を運ぶ。
消火栓の赤いランプと非常口の緑の明かりだけが照らす校内。
子供なら震えあがってしまいそうな不気味な空気に、逢真は顔色一つ変えず廊下を歩いていく。
「(……理科室はこの先だったはず)」
階段を上り、噂の人体模型がある理科室に通じる廊下に差し掛かり、意識を切り替える――――その時だった。
「いやああああああああああああああああっっっ!!!??」
廊下の先から一人の少女が叫び声を上げながらこちらへと走ってきていた。
「え――ん”に”ゃ!?」
「んぎゃっ!?」
そして少女は急に止まることができず、二人は思いっきりぶつかってしまう。
「いたたた……あっ、ごめんね! 大丈夫っ!?」
「……いだい」
少女が慌てて駆け寄り、逢真の額にはたんこぶができて少し涙目になっていた。
「まさか人がいるとは思ってなくて……って、界くん?」
「……君は」
どうしてここに、と驚く少女には逢真も見覚えがあった。
高町なのは、逢真のクラスメイトである。
――と。
カシャン……カシャン……。
廊下に無機質な足音が響き渡る。
「そうだ! そんなこと言ってる場合じゃないんだった!」
それを聞いたなのはがはっとして振り返る。
逢真も額を押さえながらなのはの見る先へと目を向ければ、真っ暗な廊下の奥から人体模型がぬるりと姿を現した。
しかし、その人体模型の目はぎょろりとおぞましく、異常としかいいようがない相貌だった。
すると、なのはがどこからともなく機械的なステッキを出現させる。
「なのは! アレからは魔力の反応を感じない! 僕や君の力じゃどうにもできないかもしれない!」
「そ、そんな! 一体どうしたら……」
なのはの傍にいたフェレットのような生物が突然人語を話し、なのははその内容に目に見えて動揺した様子を見せる。
そうこうしてると人体模型が一歩踏み出し、二人と一匹へと近づいてきた。
なのはは恐怖で体を震わせつつ身構える。
「……」
「え……あ、危ないよ!」
そんな中、逢真だけは怯えることなく、なのはの前に出て向かい来る人体模型と相対する。
「……よく分かんないけど、ここは俺がなんとかするから」
「えっ?」
呆けるなのはの前で、逢真は懐から一冊の本を取り出す。
――魔法律書。
霊を裁く為に必要な執行人の魔具である。
逢真は魔法律書をバサッと開く。
「……魔法律第24条」
人体模型が目の前に、
「……“物体無断寄生” の罪により」
迫る。
「――――『蠅王の宝箱』の刑に処す」
ザアァッ!! と。
言葉を紡いだ瞬間、床から突然箱が飛び出し、人体模型はバクンッ! とその箱に喰われてしまう。
『蠅王の宝箱』……文字通り、地獄にいる蠅王が所持するコレクションをしまう宝箱。
その形は歪。人ひとり丸ごと入れるほどの大きさで、側面には奇妙な紋章が象られており、なにより特徴的なのは箱の口の部分に歯が生えていることだろう。
まさにこの世のモノではない存在である。
閉じられそうになる宝箱の口を人体模型は体を軋ませながら必死に両手で抑えるが、無慈悲にも蓋を閉じられ、中身を納めた宝箱は床へと沈ませて地獄へと帰っていった。
「……おわり」
「「――――」」
一瞬の出来事だった。
目の前で起こったことが信じられず、なのはとフェレットはぽかんとした表情でパタンっと書を閉じる逢真を見つめることしか出来なかった。
「……」
「……あ、そ、その……」
務めを終え、逢真はなのはと向き直り、じっと見つめられるなのははどうすればいいか分からず困惑する。
「えっと……今のって……!」
ようやく言葉を投げかけようとしたなのはだったが――同時に外から強い光が輝いた。
光だけでなく衝撃も強く、窓がガタガタと揺れる。
そして光が収まったかと思えば、外を見るとグラウンドの砂が竜巻のように舞い上がる異常な事態となっていた。
「なのは!!」
「今度は間違いなくジュエルシード!」
「……じゅえるしーど???」
聞いたことのない言葉に首を傾げる逢真。
そんな彼を他所になのはたちは急いでグラウンドへと向かっていき、逢真もトテトテと遅れて追いかけた。
グラウンドに辿りつくと周囲で砂塵が吹き荒れ、そんな中、砂嵐を前になのはが立っていた。
「なのは! これ以上規模が大きくなる前に!」
「うんっ!」
なのはがステッキを砂嵐に向ける。
『seeling mode』
「シュートっっっ!!!」
ステッキが機械的な音声を発し、合図とともに桜色のエネルギーが砂嵐を覆っていく。
それは砂嵐全体ではなく、その中心……核となる部分を狙っており、エネルギーが核を捉えるとより強い光を伴ってやがて収束し、同時に砂嵐も止んだのだった。
砂嵐が起こっていた場所には小さな菱形の青い宝石が落ちており、ステッキを向けると一瞬にしてステッキに収納された。
「…………ふぅ」
静まり返るグラウンド、なのはは安堵して息を吐く。
「…………」
「……あっ、界くん……」
そして、ぼーっとそれを眺めていた逢真となのはの目が合った。
そう、まだ二人の問題が残っている。
動く人体模型とそれを倒した謎の存在、突然起きた砂嵐と魔法律とは違う未知の力。
お互いに聞かなければいけないことが多かった。
「えっと……その……えーっと、あのぉ……」
「……」
再び訪れる、微妙な空気。
お互いどこをどう話せばいいのか何を聞けばいいのか纏まらず、困惑したり黙りこくってしまう。
ぐぅ~……
そんな中、腹の虫が声を上げる。
逢真の腹からだった。
人体模型のことを優先していた為、夕飯をまだ食べていなかった。
しかし、これ幸いとなのはがすかさず反応し、
「あ、あの界くん! もしよかったら、うちでご飯食べない?」
お腹も、話し合いの場所と機会も、すべてを解決させる提案をするのだった。
* 界逢真
9歳で執行人になった天才少年。
正直、どこぞの天才玉ねぎが中学生以上らしいから小学生で執行人はあり得ないけど、二次創作だから有りにした。
* 主人公の師匠
昔、トンデモ事件を引き起こした反逆児だったが、友達たちの助けがあって改心。
本来ならまだ監獄に幽閉されているはずだが、懲罰業務や仲間の手助けをしようとする真摯な態度にあらためられ、とある一件で仮釈放されて事件に貢献したことで、正式に釈放され、のちに執行人となった……という設定。
ちなみに本当は罪状によって刑は違うけど、罪状が違うのに刑は同じってのもあったり、細かい設定や規則性まではわからないので勝手に決めちゃってます。
たぶん、オリ刑とか出すことになると思うので、何卒……。