ようやっとトンネルまで着いたし、これからのことを考えるか。今俺がいるのが山に入るトンネルの前で、ここから山に入ったら道中の祠にお守りをかざげて光を灯す。そうすりゃ『山の神』の眷属がいようが消えるし、先に進める。んで、廃れた神社に着いたらあるはずの全ての祠に光を灯してこの『石』をお供えする。そうすれば、後は弱った『山の神』をムカデさまに討伐してもらうだけになる、と。今まではムカデさまでも対処できなかった相手ではあるが…『山の神』も神であるからには、『対価を捧げられれば願いを叶えなければならない』。空白の対価は、さぞ体に馴染んだことだろう。義姉さんとの約束を破るつもりはないけど…うん、イメージはできた。やってやるとも、どのみち俺が終わらせられなければ、義姉さんとこともが狙われる。五体満足で、傷つくことなく帰ればいいだけの話…じゃ、いこうか。まずはトンネル入ってすぐの祠に光を灯す…だったか?うん、霧も晴れたし。これで先に進め…後ろに、誰かが?
【縺阪◆縲√h】
…よまわりさん、きてくれたんだな。ありがとう、頼りにさせてもらうよ。…『一緒にきてほしい』なんて、人に頼れないくせに。オバケのことは頼りにできるのか、おまえは。……………、はぁ。とにかくこれでトンネルの祠は灯せたし。こんなこと考えてないで、進まないと
【【縺薙m縺吶?縺ゥ縺薙□】】
あっっぶないなぁ、上から降ってくるとか!そんな手しかないくせにどうやって上に…しがみついてたとでも言うんかてめぇ!にしても、数で道塞がれるだけでもめんど
【驍ェ鬲斐?縺吶k縺ェ??!】
【【繧?s縺ョ縺九?縺薙i】】
…わ〜お。ド派手にやるね、よまわりさん。せっかくだ…ここは頼んだよ、俺は先にいかせてもらう。また会おう、よまわりさん。
うん、トンネルは抜けられたな。ここからは…?参道に合流したいんだけど、草木でなにも見えないな…。あぁもう、こんなところでグダグダとしてられないってのに…眷属共はいないみたいだし、落ち着いて探すしかないか…。
こっちか?
いやここじゃないわ
………やっと見つけたぞ参道、なんでこんな時間かかったんだホント。大切なのはここからなんだから、体力使ってる場合じゃないんだって。出し惜しみしてたら途中でバテるかもだぞこれ、しゃーなしもう使っちまうかこの『石』。んと…祠に光を灯したら、ムカデ模様の刻まれた石をお供えしまして。
『しゅるる』『ふしゅる』
応じてくださりありがとうございます、ムカデさま。では眷属さんたち、しばらくの間よろしくお願いしますね。いるだけでも『山の神』への牽制になりますし、足止めと囮役は最低限で、無理のない程度で…んじゃ、ぱぱっと終わらせましょうか。
一つ目。
【【繝?う繧ク繧ァ繧ケ繝茨シ?】】
二つ目。
【【【縺輔☆縺後↓縺昴l縺ッ】】】
三つ目。
【【縺。繧?▲縺ィ謇ア縺?′】】
四つ目。
【【髮代§繧?↑縺?シ?】】
…これ何個目だっけ?
【【【縺薙l繧ゆサ穂コ九°窶ヲ】】】
うおおおおおこの祠はこっちのもんじゃー!
【縺?>雜ウ縺励※繧薙↑窶ヲ】
うし、神社の目の前までは着いたか。ムカデさまの眷属さんはお別れしちゃったけど…最後くらいは一人でもやってやるさ、ムカデさま呼ぶまではだけど。もう何年も前か…義姉さんはもっと小さい頃にここにきたんだよな。いなくなった義母さんを探して、ずっと怖かっただろうに夜を廻り続けて…。俺は、こともを家に置いて義姉さんを探しにいって…結局、なにもできなかった。後をついていくだけで、誰も助けられなかったから。今度は俺がやらなきゃなんだよ、義姉さんにもこともにも夜を廻らせたくない。…見てるんだろ?姿を見せろよ、『山の神』。
【縺?¢縺ォ縺医?縺?】
誰が生贄になるかよ、殺しにきたって何度も言ってんだろ。ん…へぇ、ここが?てめぇの異界、随分と不気味じゃねえか…ムカデさまのはもっと温かみがあるぞちゃんと見習えよ元々祭神だったってなら。灯さなきゃいけない祠は…全部で六つか?スタートダッシュだ、これで一つ目は終わり、石も入れて…
【【縺翫↓縲?#縺」縺?】】
なんだ、追手は眷属どもに任せるのか?ならあっけない最期にしてやるよ、アイテムの暴力でゴリ押しされて死んだ神って笑ってやるからさ!
【迚ゥ逅??縺ェ繧薙〒??】
小さいので守れると思ってんのか鉄パイプぁ!よく飛ぶ球だな…これで二つ、手加減でもしてくれてんのかぁ?
【【蝪ゥ蛻?℃螟?】】
生贄代わりに塩でもくれてやるよ、たーんとお食べ!おかわりもあるぞ、よく味わえ…。はい三つ目、さてはもうボケジジイにでもなったか?いやなってはいるか。祀らなくなったのは俺たち人間だけど。
『しゅるるるる!』
【【【繝?き繝??縺阪i縺?】】】
眷属さん助太刀お願いします!空いた隙間に体ねじ込んで…はい四つ目ぇ!悪神に堕ちたのなら、もう手は取り合えないんだよ今はよぉ!
…?なんで追ってこないんだ、もうこれで五つ目も終わるぞ?何を企んで…
【たすけて】
っ…!父、さん?…てめぇが喋るなんざ、別にそんな文献見たことないんだけどな。なんか別のやつ混ざってない?つか、後に託すために死んだ父さんがそんなこと言うかよ家族の付き合いもまともになかったのに。助けを求めるなんて器用なことできないよ、あの人は。…五つ目、終わり。ほら、もう六つ目にも着いちまうぞ?変な足掻きせずに死んで…
【たすけて、もと】
『おねえちゃん、だいじょうぶ!?』
『もと!?どうしてここに…うぅん、それよりおかあさんが!』
『もと、助けにきてくれたのね!お願い、お母さん転んで動けないの!』
『…にげるよ、おねえちゃん!ほら!』
『…え?でも、おかあさんが…』
『もと?どうして、こっちにこないの?』
『…
なぁ、『山の神』。義母さんはもう、死んだんだよ。見捨てた俺に、
『ふしゅるるるる!』
【縺ェ縺懊?縺ェ縺懶シ?】
六つの祠に納めた石。ムカデさまの力が込められた石は、陣となることで一時的にムカデさまを呼ぶことができる。これで殺し切れれば楽だが…『神』を殺すには、それに値する『対価』を捧げなければならない。が、『対価は既に捧げられている』。父さんたちは皆、死期を悟ると『山の神』に特攻し、最期にその身を贄として捧げ続けた…願いを告げることなく。全ては、このときのため。
前神主が息子、もとが『山の神』に願い祀る。
一族代々、自らの手で捧げられた我が先祖の命をもって対価とし。
今ここで御神の死を乞い願う。
…さようなら、地獄で寝てろ。
【鬘倥>窶ヲ諛舌°縲√@縺?】
…………『山の神』が、消えていく。体を構成していた人の肉が崩れ落ち、地に触れることなく塵と成り果て。気づいたときには異界から現実へと体は投げ出され、あれだけ体にへばりついていた悪意は最早どこにもない。ムカデさまもお帰りなられたのか、ここには自分一人しか残されていないらしい。もう帰るだけ、だとしても。まだ、残したいことがあるんだ。
…義母さん。あのとき、見捨ててしまってごめんなさい。本当は、全員で逃げられたかもしれないんだ。動けずにいた義姉さんと転んで追いつかれそうになった義母さんを見て、俺は義母さんを見捨てた。共倒れになるかもしれないからって、助けられる可能性に目を瞑って。…分かっているとも、こんなこと言ってももう義母さんには届かない。だとしても、せめて謝るくらいはしたかったんだ。
…いや、最期は明るい話の方がいいのかな…?こんなこと聞かされても、だもんな。ん…義姉さんもこともも、大きくなったよ。義父さんは相変わらず全然帰ってこないけどさ、あれからポロっていう犬を拾って。すごくいい子でさ…こともと一緒に遊んでるのを見ると、心が暖かくなるんだ。
義姉さんも中学生になってさ、二人で色んな写真を撮ったんだ。入学式の写真とかさ、義母さんにも見てほしかった。義姉さんってば緊張しちゃって、目瞑った写真も撮れちゃったんだ。家事も義姉さんと分担してさ、何とかやってるよ。…もうちょい俺がやりたいとこではあるけど。
俺は…あれから色々調べるためにさ、たくさん夜を廻ったよ。オバケともたくさんあって、ムカデさまの神社も叔父さんと支えて…ショッピングモール建設でも取り壊さないようにしてもらったんだ。もう誰も死なせたくないからって…義姉さんに怒られたのは、無理しすぎたかもだけど。
もっと話したいことはあるけど、夜明けまでには帰るって義姉さんと約束しててさ。だから、ここでお別れだ。今度はお墓参りのときにするよ…さようなら、義母さん。
…義姉さん、ただいま。こともは…眠ってたか、声抑えないとな。
「もと!無事だったのね、ケガはない…?」
なんともないよ、約束したからさ。それと…終わったよ、もうこの町は夜廻りをしなくていい。町のオバケも、数年もすればいなくなると思うよ。
「うん、左目の痛みがなくなったから…。でもよかった、帰ってきてくれて…!」
いなくならないよ、俺は。みんなで生きていたいから、頑張ってこれたんだから。…義姉さん。その、疲れたし、まだ怖いって気持ちが消えないからさ…久しぶりに、一緒に寝てほしいな、って。
「…ふふっ。いいわよ、一緒に寝ましょうか。せっかくだし、こともも一緒に…そうだ、毎日でもいいのよ?」
ま、毎日はちょっと恥ずかしいかな〜って。ほら、早く寝ようよ。明日はみんなで遊ぶんだからさ。…うん、こともとポロはぐっすりか。それじゃ…おやすみなさい。
「うん、おやすみ。…明日が楽しみね、もと」
「おねえちゃん、おにいちゃん!つぎ、あっちいこうよ!」
「わん、わふ!」
「ことも、ちゃんと前を見て、ね?ほら、手を繋いで…ね?」
…やっぱり、廻るなら夜じゃなくて昼のが楽しいな。義務感なんてない方がいいし、義姉さんとこともがいる方が楽しいもん。「わふ…っ!?」あぁ待って、ポロといるのも楽しいからそんな悲しそうにしないで。義姉さん〜ことも〜助けてほしいな〜。
「いまのはおにいちゃんがわるいとおもう」
「ごめん、私も庇えないかな…」
こ、こんなことが…どうしよう、夜より怖いことってのもあるのやもしれん。こ、このままじゃ兄としての威厳ががが…
おいで おいで
……、は?
「おにいちゃん?」
「大丈夫?そんなにぼーっとして…やっぱりもう少し寝た方がよかったんじゃない?」
…大丈夫だよ、なんともないってば。次は神社にいくんだろ?ほら、ゆっくりいこうよ。ずっと前から、この日を楽しみにしてたんだ。
「…まえ?きのうもあそんだよ?」
「ふふっ、男の子にはカッコつけたいときがあるのよ。流してあげて、ね?」
くっ、否定できない…!二人には格好いいとこ見せたいし!
「でも、おにいちゃんはかっこいいよ?」
「そうね、お兄ちゃんは格好いいものねー」
………………………はっ、意識が飛んでいた気がする。そうか、幸せとは…この世の真理とは………、あぁ。『夜』はまだ、終わらないか。
目讓?【お縺?で おいで】