一人と一匹、第二の人生。   作:夏目八尋

4 / 6
第04話 一人と一匹、奮起する。

 

「切り札見つけて、でも使えないってどういうことだよ!!」

 

 とら丸からの追及に。

 

「まず検証、検証していい?」

 

 俺はもしものワンチャンに期待して、提案を返す。

 

 

「とら丸。俺の胸をぺろぺろしてくれない?」

「なんで!?」

「訂正する。とら丸、俺の胸をぺろぺろしろ!」

「んにゃああ~~~~!!」

 

 ぺろぺろぺろぺろ!!

 

「おおおおっ! 痛みが一発で消えたぁぁぁ!」

「どぁぁぁ!? どうなってんだこれぇ!?」

「あああああああぁぁぁ! 出来ちゃったよこれぇどうすんだよぉーーーーーー!!」

「相棒!?」

 

 検証完了。

 残念ながら、俺の予想は当たってしまった。

 

 

「あぁぁぁぁ、無理だぁぁぁ!!」

「相棒ーー!?」

 

 驚くとら丸を肩に乗せながら、頭を抱えて叫びをあげる俺だった。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 テイマー系の能力。

 おそらくこれが、俺が得た転生特典。

 

 具体的な名前とかはわからないけど、異世界モノの小説にはままあるチカラだ。

 

 その力を一言で表すなら……『契約した存在を使役する力』。

 

 強化したり、操ったり。自分ではない何か……今回はとら丸を対象に発動するスーパーパワーである。

 

 

(無理だよこれぇ!)

 

 問題なのは、その使い方。

 とくにその、発動条件。

 

(とら丸に、命令しろってのかよぉーーーー!)

 

 先ほどの検証結果が示すのは。

 

(お願いじゃダメなのかよぉーーーーー!!)

 

 明確に、使役対象(とら丸)に命令をしないと、発動できないということだった。

 

 

 

「グルォォォオオオオオオ!!」

 

 そう遠くない場所で、俺たちを見失ったクマさんの叫びが聞こえる。

 俺ととら丸は息を潜めながら物陰に隠れつつ、話を続けた。

 

 

「……つまり、相棒はオレに命令を出すことでオレの能力を何倍にも強化して使わせることができるってワケだな?」

「たぶん、そうだと思う」

 

 俺の膝の上でお座りしているとら丸の要約に、頷きを返す。

 さっき思いっきりぶつけた胸の痛みはもうまったく感じないし、その前の咆哮の威力を考えてもほぼほぼ確定だと思う。

 

「すげぇ力じゃねぇかよっ! 使おうぜ!」

「無理だって!」

 

 でも、出来ない。

 

「なんで!?」

「とら丸は俺の相棒で、家族だ! 命令なんて出来ないって!」

 

 心と体が、それを全力で拒絶していた。

 

 

(だって、1(・)7(・)年(・)だぞ)

 

 とら丸は人生の多くを一緒に過ごした無二の相棒だ。

 人と猫、飼い主とペットなんて立場の違いこそあったが、決して下に見たつもりはない。

 

 新卒時点で天涯孤独になっていた俺の、人生の彩り。

 そして今も、新しい人生を共に歩もうとしてくれる最高の友人である。

 

 そんな相棒に、どうして命令なんて偉ぶった態度が取れるんだ。

 

(なんでお願いじゃダメなんだよ猫神様ぁ~!)

 

 ないより億万倍ありがたいけど、使用者との相性もあと少しだけ考えて欲しかった!

 

 

「んでも、四の五の言ってられねぇだろ相棒。せっかくの切り札だぜ?」

「そうなんだけど……さぁ~」

 

 使わなければ生き残れない。

 わかってる。

 

(わかってるんだ俺だって。でも……!)

 

 意識して命令する。

 その行為がこれまでの俺たちの対等だった関係を、否定してしまう気がして。

 

「ごめん、とら丸。どうしても拒否感が先に来るんだ」

 

 情けないことに俺は。

 こんな状況においてなお、尻に火がつけられないのだ。

 

 

「だからごめん。とらま」

「だぇらっしゃぁぁぁぁにゃあああああーーーーーーー!!」

「へぶぅぅ!!!」

 

 肉球パンチが、飛んできた。

 

「と、とら丸。何を……!?」

「こんのバカ飼い主! おまぬけ相棒! おたんちん!!」

「そんな、ひどい……」

 

 落ち込む俺に、もう一度。

 

 ぷにっ。

 

 と、今度は優しく肉球が触れる。

 

 ハッとして目を向けると、とら丸が泣きそうな顔で俺を見ていた。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「いいか、よく聞け相棒。オレはな、相棒にならどう呼ばれようがどうでもいいんだ」

「ん」

「名前呼びだろうがお前呼びだろうが猫肉呼びだろうが一切気にならねぇ。相棒に呼ばれたってその一点の方が、オレにとっては大切だからだ」

「……うん」

「これも同じだ。やってくれって頼むのも、やれって命令されるのも、オレからしてみりゃどうでもいい。オレにとって大切なのは……相棒に頼られたって、その事実だ」

「!?」

 

 とら丸のしっぽが俺の頬を撫でる。

 

「相棒がどういう奴かってのは、オレはよぉーく知ってんだ」

 

 すぐ目の前に、とら丸の顔が来た。

 耳を立て、コロコロとした宝石みたいな瞳で、真っ直ぐに俺を見つめて。

 

「そしてオレは信じてる。呼び方くらいで崩れるほど、オレたちの関係は脆くねぇって。相棒がどんな言葉を吐き出そうが、オレならちゃーんと受け止めてやれるってな! 思い出せ、相棒。前世じゃ言葉がわからなくっても、オレたちずっと、一緒だったんだぜ?」

 

 茶虎の猫の口が、ゆっくりにんまりと、開かれた。

 

 

「とら丸……」

 

 俺の胸の中に、強くて温かい何かが沸き上がる。

 それはどくどくと脈打って全身を駆け巡り、俺のすべてを熱く滾らせていく。

 

「大切なのは、言い方じゃなく、どう伝わるか」

 

 俺ととら丸。

 

「そうだ、相棒。オレとお前で一緒に繋いだ1(・)7(・)年(・)は、伊達じゃあねぇ!」

「!」

 

 話せるようになった相棒が教えてくれる、俺たちの強さ。

 それを……信じる!

 

 

「覚悟を決めな、相棒!」

「……ああっ!」

 

 とら丸が、俺のするべきことを示す。

 俺がそれに、応える!

 

「とら丸!!」

「おうっ!」

 

 二人、飛び出す。

 

 

「グルォォオオオオオオ!!」

 

 獲物を再び捕捉して、獰猛なクマさんが咆哮をあげる!

 

 怖い!

 

 怖い、けど!

 

「いくぞ、相棒!」

「やるぞ、とら丸っ!」

 

 もう、俺たちは逃げない!

 持ち得る力のすべてを使って、俺たちは……この状況を乗り越えるっ!!




応援、高評価してもらえると更新にますます力が入ります!
ぜひぜひよろしくお願いします!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。