「うおおおお!」
「うわぁっ!!」
大喜びのとら丸が飛びついてきて、勢いそのまま、俺は再び地面へと背中を預ける。
春の草っぽい匂いと、柔らかな土の感触が全身を包み込む。
「ぃやったぜ! 相棒っ!!」
「はは、ははは……マジで、賭けだったなぁ」
顔面にとら丸の肉球ぷにぷに攻撃を受けつつ、俺もにやけ顔を浮かべて。
つい今しがたの大一番を、思い出す。
(……強化された爪の一撃がどれほどになるか、まったくの未知だった。それに賭けてあのクマさんに挑もうなんて、今更ながらどうかしてた)
咆哮の強化され具合を見た限り、分の悪い勝負じゃあなかったと思う。
けれど、それでもあれは人生で初の、命をはった挑戦だった。
「ダメだ、心臓がずっとバクバクしてる。落ち着かない」
「ハハッ! 舐めてやろうか、相棒?」
「お願い」
テンション高めのとら丸にぺろぺろされて、少しずつ落ち着きを取り戻す。
胸の鼓動が安定するにつれ、俺の中にも勝利の、そして、それと同じくらいのある思いが浮かんでくる。
「はぁー……これって、最初の冒険達成に、なるのかな? とら丸?」
「なるだろうよ。大大大大大金星だっ!」
大の字になった俺の上で、とら丸が体を震わせていた。
目をらんらんと輝かせ、胸を張り、尻尾をピンと立たせた姿は、俺がこれまで17年の付き合いで見たことのない、初めての姿だった。
こんなに長く一緒に過ごしてきたのに、まだまだ知らない初めてがそこにあった。
「「……へへっ」」
こつんっ。
握りこぶしと尻尾を当てて。
俺たちは、初めての冒険、そして、互いの勝利を讃え合う。
「勝ったぞ、俺たち。すごいな、俺たち」
「勝ったぜ、オレたち。すごいぜ、オレたち!」
改めて周りを見回せば、色こそ春の緑色だが、やたらでっかいゼンマイみたいな元の世界にはない植物が至る所に見え隠れして。
ギャアアアーーー!!
少し広がった森の隙間から見える空を、でっかい極楽鳥みたいなやつが飛んでいく。
「これが、異世界かぁ」
「おおっ?」
とら丸を抱いて、起き上がる。
「一人だったら、すぐに死んでたよ」
そして思ったことを、素直に口にした。
「そりゃ、オレだって同じだ。相棒がいなきゃ、死んでたぜ」
返ってきたのも、飾り気のない素直な言葉だった。
「でも」
「ああ、でも、だぜ」
思いは同じだった。
「この異世界でなら、俺たちは何かになれるかもしれない」
「この世界なら、相棒とオレで、でっかいことができるに決まってるぜ!」
二人なら、生きられる。
二人なら、乗り越えていける。
「きっと、金持ちにも英雄にもなれるし、素敵なお嫁さんにだって出会えるかもだ!」
「違いねぇ!」
第二の人生を、いつか誰かに得意げに自慢できるような人生を、生きられるかもしれない。
「……行こう、とら丸」
「おう! 行こうぜ、相棒!」
二人。並んで歩き出す。
「まずはあの細い道に戻らねぇとな。分かるか相棒?」
「太陽っぽい星と影の関係が前の世界と同じっぽいから、方角はわかる」
「マジかよ。すげぇな相棒!?」
最初の冒険を乗り越えて。
「……あっ! さっきなんか石っぽいの落ちてたよな。回収し忘れてた!」
「あー、なんかあったな。って、相棒! あそこのウサギっぽいのが咥えてるやつ」
「あ゛あ゛! 逃げた!!」
行く先はあっちこっちと定まらなくても。
「待てこらウサギ!! 相棒、後ろからいけ!」
「わかった! そーらっ、捕まえぼぐぇっ!!」
「相棒ーーーーーー!!」
俺たちは、確かに自分の意志と足で。
「と、とった、どー……」
「相棒ーーーーーーーー!!!」
自由な一歩を、積み重ねていた。
読んで下さりありがとうございます!
二人の物語は、ひとまずここまで。
反響があれば続きを書きたいなって思っています。
もっと続きを読みたい! 寄越せ! と少しでも思っていただけましたら、☆の高評価や感想など、どしどし叩きつけてください!
ぽんこつ二人のお気楽珍道中は、きっとまだまだ先があります!