彼女は永遠に彼に追いつけない   作:ドラ麦茶

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8.マルカート(はっきりと)

 休憩時間を一〇分もオーバーしてフロアに戻った玲だったが、幸い誰からも咎められることはなかった。ただ、この日も平日なので客は少なく、昨日のような突然の太客(・・)も来店しなかったので、売り上げ目標は達成できなかった。

 

 退勤時間になり、店長の目を避けながらタイムカードを押して更衣室へ行くと、同じく勤務を終えた理央がいた。

 

「お疲れ、理央ちゃん」

 

「お疲れ、玲ちゃん」挨拶を交わした後、理央は、にひひ、と笑いながら「どう? 決戦の準備は進んでる?」と、玲の反応を楽しむような視線を送ってきた。

 

 決戦──三日後のコンサートデートのことだ。理央のプランでは、コンサート後に食事をしたあと雰囲気の良さ気な公園で愛の告白……だ、そうである。さすがに愛の告白の決心はまだついていないが、時間的に食事はしておきたいところではある。

 

「それが、昨日からいろいろ調べてるんだけど、なかなかいいお店が無くって」

 

 コンサート会場の近場で、深夜〇時まで営業している飲食店で、オシャレで雰囲気もよくて、美味しい店……これだけの条件が重なると、該当する店はなかなか見つからない。さらに言えば、七森の好みの店でないといけないのだ。玲は七森の食事の好みを何も知らない。そこが一番の問題であるとも言える。

 

「ねえ、理央ちゃん。七森さんの食べ物の好みって、知ってる? 行きつけのお店とか、好きな料理とか」

 

「うーん」と、腕を組んで考える理央は、やがて「味玉モヤシラーメン大盛り、かな?」と言った。

 

「え?」

 

 予想外の答えに驚く玲。意外と庶民的な料理が好きなのか、というのもあるが、そのメニューが、今の玲にあまりにもなじみ深かったからだ。

 

「なんか昔、よくそう言ってたような気がする」

 

 そう言った後、理央はスマホを取り出して操作しはじめた。味玉モヤシラーメン大盛りのお店を検索しているのだろう。すぐに、「あったあった。コンサートホールから近いみたいだよ」と続けた。「え? プラス百円でギョ-ザ小かチャーシュー丼小を追加できるの? それは困ったな。やっぱあたし的にラーメンにギョーザは外せないところだけど、小だと絶対数が少ないよね? 五個あれば良い方で、三個という可能性もある。最低十二個は食べたいところだから、ここはチャーシュー丼にして、ギョーザは別に注文するのがベストかしら。でも、チャーシュー丼もチューシュー丼で、しっかり一人前食べたいよね」

 

 と、勝手に悩み始めた理央の隣に座り、横からスマホを覗き込む。中華飯店『萌やし』という店名のそのお店の看板メニュー『味玉モヤシラーメン大盛り』は、麺もスープも味玉も見えないほどこんもりと盛られたモヤシが特徴だ。お昼にHARUのツブヤイターの投稿画像で何度か見たものと同じである。

 

「……よし、決めた。あたしは味噌チャーシューラーメンネギ大盛りに半チャーハンとギョーザ二人前に思い切ってレバニラ炒めも追加するわ。玲ちゃんはどうする?」

 

 いつの間にか自分が何を注文するかの話になっている理央に対し、玲は「ここって、チェーン店なのかな?」と訊いた。

 

「ううん、違うみたい。個人経営のお店だよ。いわゆる町中華ってヤツかな」

 

 チェーン店でないなら、HARUは、ますますこの町に住んでいる可能性が高まった。

 

「とはいえ、初デートの食事で味玉モヤシラーメン大盛りにギョーザセットっていうのは、ちょーっとどうかと思うかな」と、理央は何事も無かったかのように話をデートに戻した。「他に七森さんの好きな食べ物も思いつかないし、まあ、玲ちゃんがお店を決めるのが難しいようなら、七森さんにお任せでもいいんじゃない?」

 

 玲も玲で違うことを考えていたので、「……え? あ、うーんと」と言いながら、頭をデートに戻す。確かに、七森は玲より年上だし、会社の先輩だし、彼にお任せでも問題ないだろう。

 

「そうだね、そうしてみる」と、玲は答えた。

 

「じゃあ、せっかくだから、このお店、これから一緒に行ってみる? あたし、すっかりラーメンチャーハンギョ-ザレバニラの気分になっちゃったし」

 

「あ、ゴメン。今日は用事があるから、また今度ね」

 

「そっか。じゃあ、また今度ね」

 

 理央はスマホをしまって帰り支度を整えると、「じゃあ、また明日」と手を振ってロッカールームを出て行った。

 

 理央を見送った後、玲はスマホを取り出した。用事……というよりは、どうしても気になることがあったのだ。ツブヤイターを開き、HARUのアカウントを表示しようとした。しかし、昨日と同じく、画面には【このアカウントは存在しません】と表示される。またバグか、と、玲は呆れる。HARUと知り合って以降、ずっとこの調子だ。屋上以外の場所でHARUと繋がったためしがない。

 

「……あれ? もしかして?」

 

 不意に思い当り、玲はロッカールームを出て屋上へ向かった。夕陽に染まる街並みを横目に、いつものお気に入りの場所まで移動してスマホを見る。すると、読み込みを表す輪っかがぐるぐるとまわり始め、しばらくして、HARUのプロフィール画面が表示された。やはり屋上だと繋がるようだ。

 

 しかし、その場所の電波状況によってネットに繋がったり繋がらなかったりはよくあるが、場所によって特定のアカウントと繋がったり繋がらなかったりなんてことがあるだろうか?

 

 画面が自動的にスクロールした。HARUが新しいツブヤキをしたのだ。

 

【職場の屋上からの景色。夕陽がとても綺麗。あたしのお気に入りの場所。】

 

 ツブヤキには、夕陽で真っ赤に染まったビル群の画像が添付されていた。ドキリとした。その画像は、玲にとっても見慣れた画像だったからだ。

 

 玲は画像をスマホの画面いっぱいに表示した後、屋上の大通りに面した場所まで移動する。夕陽に染まる街並みが広がっている。玲は目の前の景色と、HARUが投稿した画像を重ねた。正面の大通りを挟んで建つ雑居ビル、その中にある内科クリニックや進学塾、ビルの向こうの老舗デパート、など、ほとんどすべての建物が一致した。間違いなく、この場所で撮影されている。

 

 だが、ここはスタッフ専用に解放された場所で、関係者以外は立ち入りできない。ならば、HARUもこの店のスタッフなのだろうか? 「お気に入りの場所」と投稿しているということは、HARUも頻繁に屋上に来ていることになるが、玲以外でこの屋上まで来る人はほとんどいない。これはいったい、どういうことだろう。玲は目の前の景色とHARUの画像を見比べながら考える。

 

「あ……」

 

 玲は、実際の景色とHARUの画像の中で、一点だけ、大きく異なるところを見つけた。

 

 玲が見る景色には、老舗デパートの向こうに高層マンションが建っている。五年前に建てられた、県内最高層のタワーマンションだ。

 

 一方、HARUの投稿画像には、高層マンションがまだ建っていない。そこには、二台の大型クレーンの影が写っている。

 

 それは、まだマンションが建設途中であることを意味している。

 

 玲はHARUのツブヤキの投稿時間を見る。月と日は同じだが、相変わらず年だけが七年前になっている。ずっとバグだと思っていたが、もし、この日付が正しいとしたら──。

 

 玲は一旦スマホをホーム画面に戻し、検索ボックスに『新日本弦楽器コンクール』と入力した。二月にHARUと彼氏が挑戦した、日本有数の音楽コンクールだ。検索するとすぐに該当のホームページが見つかったので、開催スケジュールを調べる。今年この地区で予選が行われたのは二月十二日となっていた。HARUたちが予選に挑戦したのは二月二十八日だった。日付が合わない。二人がコンクールに挑戦したのは今年ではない。玲は過去のコンクール予選開催日も調べてみることにした。まず調べたのは、もちろん七年前の開催日だ。これも、すぐに該当のページが見つかった。その年この地区で予選が行われたのは、二月二十八日だった。

 

 玲は再びツブヤイターのアプリを開き、HARUにリプライを打った。

 

【HARUちゃん、この夕焼けの写真、いつ撮影したの?】

 

 HARUからはすぐにリプライが返ってきた。

 

【ん? ついさっきだけど?】

 

【何年の、何月何日?】

 

 さらにリプライを打つ。我ながら変なことを訊いているな、とも思うが、もし予感が当たっていたら──。

 

 HARUからのリプライには、やはり、七年前の日付が書かれていた。ゴクリ、と喉を鳴らす玲。HARUが七年前を装って投稿している可能性もある。そういったネタ投稿をする人もいるにはいるが、ネタ投稿ではツブヤイターの日付まで偽ることはできない。

 

 玲は、【ゴメン、HARUちゃん。HARUちゃんが働いているのって、イザベラ音楽大学近くの楽器店だよね?】と、リプライを打った。もう、居場所を特定する行為は嫌われる、などと気にしている余裕はなかった。

 

【え? そうだけど……どうして判ったの?】

 

 HARUから戸惑った様子のリプライが返ってくる。HARUはこの店で働いていて、たったいま夕焼けの写真を撮影したという。しかし、いまこの屋上にいるのは玲一人だ。そして、HARUのツブヤキの投稿時間は常に七年前のもの。これらは何を意味するのか……考えられるのはひとつだ。

 

 玲は、慎重に言葉を選びながら、さらにリプライを打つ。

 

【HARUちゃん、驚かないでね。実は、あたしもHARUちゃんと同じお店で働いてて、いま屋上にいるの。】

 

 HARUからのリプライはなかなか戻ってこなかった。居場所を特定するようなツブヤキをした上におかしなことを言いはじめたのでブロックされたのだろうか? もしそうならHARUのツブヤキは見ることはできなくなるはずだが、いまのところそんな様子はない。HARUも慎重に言葉を選んでいるのかもしれない。

 

 やがて、リプライが返ってきた。

 

【そうなの……? でも、あたしもいま屋上にいるけど、あたし以外誰もいないよ……?】

 

 玲は、屋上から見える夕陽の街並みをスマホで撮影する。HARUが投稿した画像とほぼ同じ構図だ。その中で唯一異なるタワーマンションを、丸で囲った。

 

 そして。

 

【これ、いまあたしが会社の屋上から撮った写真。HARUちゃんの写真とほとんど同じなんだけど、ひとつだけ、違うところがあるの。このタワーマンションは、もう完成してる。あたし、HARUちゃんから見て、7年後の未来にいるの。】

 

 そのツブヤキに画像を添付し、送信した。七年前の過去とツブヤイターで繋がる──自分でも信じられないことだ。もし、【なに言ってるの? Reiちゃん(笑)】とリプライが来たら、【あはは、ゴメンゴメン、冗談。】と言ってごまかし、それ以降は全てツブヤイターのバグとして、自分を納得させるつもりだった。

 

 しかし。

 

【え!? やっぱりそうなの!? Reiちゃんのツブヤキの日付ってずっと7年後になってるし、お昼に「五年前から毎年ポツダム交響楽団が日本に来てる」って言ってたけど、調べてもそんな話全然出てこないから、そうなんじゃないかなって、ずっと思ってたの!! すごいね! なんでそんなことが起こるんだろ!?】

 

 予想に反しHARUはあっさりとそのことを受け入れたようだった。

 

 玲はリプライを返す。

 

【わからないけど、あたし、前に「過去にメッセージを送れたらなー」って思ったことがあるから、それが神様に届いたのかも(笑)】

 

【あ! あたしも、前に「未来にメッセージを送れたらいいのに」って思ったことがあるの! ホントに神様願いを叶えてくれたのかもしれない!】

 

【あはは! 絶対そうだよ!】

 

【じゃあ、Reiちゃんが通ってた音大って、ひょっとしてイザベラ音楽大学?】

 

【そう! もしかしてHARUちゃんも?】

 

【そうなの! やったね!!】

 

【うん! やった!!】

 

 仲良くなった人と共通点があると嬉しくなるものである。もっと共通点はないだろうか? 玲はHARUが同じ楽器店で働いていることを思い出し、【ひょっとして、HARUちゃんが働いているのって、弦楽器売場?】と書いて、送信ボタンを押そうとした。

 

 しかし、はっとして、その指が止まる。気付かない方が良かったことに、気付いてしまった。

 

 HARUは、イザベラ音大卒業で、チェリストで、七年前にこの店で働いていて、そして、学生の頃から付き合っているバイオリニストの彼氏(・・・・・・・・・・)がいる。

 

 この条件に当てはまる人を、玲もよく知っている。

 

 どくん、と、心臓が大きく血液を送り出した。浮かれていた気持ちが急激に下がっていく。周囲の温度が下がったように感じるのは、陽が沈んでいるからだけではないだろう。

 

 玲が動揺していると、HARUの方からツブヤキが届いた。

 

【ゴメンReiちゃん。あたしそろそろお仕事に戻らないといけないから、また今度ね。】

 

 玲は一度大きく息を吸って、ゆっくりと吐き出した後、送信前のツブヤキを消し、【うん、またね。】と、何事も無かった風を装ってリプライを打ち直した。イイネが押されただけで、返信は無かった。

 

 玲は、どっと疲れてその場にしゃがみ込んだ。理不尽なクレーム対応をしたときの何十倍も辛い気持ちだ。もちろん、まだそうだと決まったわけではない。HARUの恋人が七森だ(・・・・・・・・・・・)、なんて、まだ判らない。玲が知らないだけで、バイオリンの腕前がプロ級の店員は七森の他にもいるかも知れないし、その人が七年の間に転勤になったり退社している可能性だって、充分にある。

 

「──あれ? 木崎?」

 

 不意に名を呼ばれた。その声にはっとなって顔を上げる。出入口のところに七森がいた。

 

「あ、七森さん、お疲れ様です!」玲は立ち上がり、思わずスマホを背後に隠した。

 

「お疲れ。まだ帰ってなかったんだ。この屋上、よっぽど気に入ってるんだな」

 

 七森は、いつものようにさわやかに笑う。

 

「そうなんですよ。お昼休みとか、お仕事終わった後とか、よく来てます。七森さんも、最近よく来られてますよね?」

 

「まあね」と言った後、七森は少しだけうつむき、そして、フフ、と、小さく笑った後、続けた。「昔、この店で一緒に働いてた人が、木崎と同じようにこの屋上のことが気に入っててね。そのことを思い出して、最近足を運ぶようになったんだ」

 

「────」

 

 思わずスマホを落としそうになる。言葉が出てこない。その人の名前はなんていうんですか? その人は今どうしてるんですか? その人は──七森さんの恋人ですか? ……訊きたいことは沢山あるが、訊けるはずもない。聞くのが、怖い。

 

「……木崎?」

 

 玲の異変を察したのか、七森が心配するような目を向ける。

 

「あ、ゴメンなさい七森さん。あたし、そろそろ帰ります。お疲れ様でした!」

 

 そう言って頭を下げると、逃げるように屋上を後にした。急いで階段を下り、ロッカールームに駆け込む。幸い誰もいない。玲はドアを閉めると、スマホを抱えてその場にしゃがみ込んだ。心臓が激しく脈打つのは、走ったから、という理由だけではない。

 

 ──大丈夫、まだ決まったわけじゃない。まだ決まったわけじゃない。

 

 そう自分に言い聞かす。だが、どうしても、思考は悪い方へと向かいそうになる。

 

 ぴこーん、と、スマホが鳴った。びくんと大きく身体を震わせる玲。HARUからのリプライだろうか? 何と書かれているのか、見るのが怖い。もし、予感が当たっていたら……スマホを捨ててしまいたい衝動に駆られる。もちろん、そんなことをしても不安はますます膨らむだけだろう。見るしかない。玲は、恐る恐る、スマホの画面を見た。

 

 

 

【具だくさんペペロンチーノブロッコリーマシマシに半チキンライスと半オムライスonチーズinハンバーグ+ギョーザ三人前完食!!】

 

 

 

「──結局パスタかい! でもギョーザは食べたんかい! っていうかそれどんなお店じゃーい!!」

 

 理央から送られてきたライーンのメッセージと料理画像に、玲は思わず大声で三連ツッコミを入れる。スマホを叩きつけなかったのは幸運と言えた。

 

 思いっきりツッコんだ後、肩で上下させて大きく息をする。そして、不意におかしくなって笑った。考えてみたら、HARUのアカウントとは屋上でないと繋がらない。ロッカールームでHARUからのメッセージが届くことはないだろう。

 

 理央からのライーンは、実にベストなタイミングでのボケだった。いや本人がボケたつもりなのかどうかは判らないが、どちらにしても、大声を出したことで気持ちが落ち着いてきた。

 

 玲は部屋中央のベンチに座り、頭の中で状況を整理する。HARUのアカウントは七年前のもので、彼女はこのお店で働いていて、プロ級の腕前のバイオリニストの彼氏がいる。そして、玲の憧れの先輩・七森は、七年以上前からこのお店で働いていて、バイオリンの腕もプロ級だ。しかし、だからと言ってHARUの彼氏イコール七森と決まったわけではない。訊けば分かるかもしれないが、HARUにも、そしてもちろん七森にも、訊く勇気はない。

 

 そこで、玲は気付いた。あたしには、とても頼りになる親友がいるじゃないか、と。

 

 玲は、理央にライーンを打った。

 

【ねえ理央ちゃん、ちょっと訊きたいことがあるんだけど、7年くらい前、うちの店に、ハルって名前の女の人、働いてた?】

 

 理央は高校生の頃からこの店で働いている。七年前なら、ちょうど彼女が働き始めた頃だろう。

 

 理央からは、すぐに返事がきた。

 

【あたしの渾身のボケを華麗にスルーして質問するとは、お主なかなかやるな。】

 

 やっぱりボケだったのか、と苦笑いしつつ、【いやロッカールームでめっちゃ大声出してツッコんだよ。】と返信する。

 

【なら良し。】という返信の後、すぐに次のメッセージが届く。【ハルさん? いや、知らないけど。】

 

【ハルコとかハルミとか、逆にコハルとかミハルかも。】

 

【うーん、少なくとも、あたしのフロアにはいなかったよ? 別のフロアまでは判らないけど。】

 

 確かにそうだ。玲たちが働いている店は大型の楽器店だ。楽器売り場だけでなく書籍売り場や音楽教室などもあり、働いている人は多い。玲や理央たちアルバイトの身では他のフロアのスタッフと接する機会は少なく、全員の名前は把握できていない。そもそも、HARUというのはネットで使っている名前だから、本名とは限らない。

 

【そのハルさんが、どうかした?】

 

 理央のメッセージに、【あ、ちょっと、今日お客さんからそんな話を聞いて気になってたの。でも、いなかったなら、お客さんの思い違いだと思う。ありがとね、理央ちゃん。】と返信してごまかし、さらに【結局パスタかい! でもギョーザは食べたんかい! っていうかそれどんなお店じゃーい!!】と、さっき声に出してツッコミをそのままメッセージで送ると、【うむ、見事な時間差ツッコミである。】とのメッセージが返ってきて、それで会話を終えた。

 

 結局真相はわからず不安だけが残ったが、理央のおかげでかなり心は楽になった。これ以上は考えてもなにも判らないだろう。玲は、あたしも釜玉うどんイカ天ナス天かしわ天トッピングのかき揚げ丼大盛りギョーザ抜きでも食べて帰るか、と気持ちを切り替え、着替えて店を後にした。

 

 

 

 

 

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