ひぐらしのなく頃に~徒然花(圭梨、アフター)   作:晃晃

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第12話 其ノ二 地下祭具殿

綿流しにはもちろん妙な事件も起きずに、八凶爆闘スペシャルで大盛り上がりだった。

 

あ、でも、前の年に怪死事件が起きなかったから、祭に出ないと祟られる、なんて妙なプレッシャーもなかったせいか、規模も多少は小さくなった気がするわね。

 

「むー、お賽銭も少なかったのです……シュークリーム代のためにも、オヤシロ様の祟りを復活すべきでしょうかっ」

 

黒いことを言い出すんじゃないわよダメ神。

 

夏休み、私と羽入は圭一を連れて雛見沢脱出を目論んだ。

 

といっても山狗絡みとかそんな不穏な話ではもちろんなく、出張中の圭一の両親のもとへ向かうだけの、たった1泊2日のささやかな旅行を計画したのだ。

 

なにしろもう付き合って一年になるというのに、家以外ではろくに二人きりになれる時間がとれていない。

 

部活メンバーによる妨害工作は、執拗に続いているのだった。

 

「あぅ……でも前日になって察知されてしまったのです」

 

あれは迂闊だったわね……結局いつもの集中攻撃+罰ゲームのコンボが発動して私と圭一の翌日の予定は潰されたわけで……そういえば羽入、あんたも協力してなかった?

 

「あぅ!? してないです、僕は梨花の味方なのです!」

 

そうかしら……情報流したのも羽入じゃないかと思ってたんだけど。

 

「な、なにを言うのですか! 沙都子にぽろっと喋ってしまったのは僕ですが、わざと二人を邪魔するような真似は……あぅ」

 

やっぱりあんたが原因かッ……!

 

「あぅあぅあぅ! 梨花、ごめんなさいごめんなさい!」

 

はぁ……女王感染者の立場上、1泊2日でも雛見沢を離れるなんてめったになかったから結構楽しみにしてたのに……。

 

「僕もすこし残念だったのです……有名店のシュークリーム~」

 

守り神と巫女がそろって不純な動機で村を出ようとした罰が当たったのかしらね……。

 

「神様に罰を当てるって、いったい部活メンバーは何者なのですか」

 

それはともかく。

 

全力全開で遊び倒した夏休みが過ぎて、圭一、レナ、悟史の3人は受験態勢に入った。

 

レナと悟史は園崎姉妹のいる学校を目指すらしいから真面目な二人のこと、そこそこ普通にやれば受かるはずだ。

 

「勝負の夏を遊びまくったからな、ちょいと本腰いれるか!」

 

圭一の志望校は穀倉の進学校だから、さすがに真剣だ。

 

家でも話せる時間が少なくなって、ちょっと寂しい……かな。

 

「邪魔にならないように、音を小さくしてファミコンをするのです梨花♪」

 

あんたのルイージは卑怯すぎるから一緒にやりたくないんだってば……そもそも、ファミコンに夢中な神様ってのもどうなのよ。

 

「魅音の家のは四角ボタンなので指が痛くなるのですが、うちのは丸ボタンなのです、あぅあぅ♪」

 

し、幸せそうね……しかも居候だってことをすっかり忘れつつあるし。

 

それはどうでもいいけど、いまの私にできることと言ったら、圭一の勉強の邪魔をしないことと、たまにお茶を持っていってあげるくらいね。

 

「梨花がお茶を持っていくと圭一は嬉しそうだからいいのです。らぶらぶなのです~」

 

冷やかさないでよ……すこしでも力になれてるなら、嬉しいんだけど。

 

ああ、魅音たちの話もしておこうかな。

 

魅音は興宮の高校でかなり人気者になっているらしい。まだ1年生なのに、先輩たちにまで姉御呼ばわりされてるって本人はよく嘆いてるわね。

 

「文化祭の実行委員長を任されたって、最近は張り切ってるのです」

 

1年生で委員長に抜擢されるのもすごいわね……。

 

それにしても、園崎の力を使うとずいぶん黒い文化祭になりそうよね。

 

詩音は……う~ん、相変わらずかしら。

 

悟史と沙都子のところに相変わらず出入りしてるみたいだけど……あ、それで思い出したわ。

 

夏に鉄平が戻ってきたのよね。

 

「あぅあぅ、あのときは村が大騒ぎになったのです!」

 

そうなのよね……。

 

私たちの見てきた世界と違って沙都子はいまやお魎のお気に入りだし、村のみんなもずいぶん心配してくれたわ。

 

沙都子も強くなってるし、悟史と詩音がいるからすぐにどうこうなるわけではなかったけどね。

 

でも鉄平の奴、あのあとずいぶん大人しくなったわね。

 

何かあったのかしら?

 

「あれはですね、詩音が隙を見てえいっとスタンガンで地下祭具殿にご案内したのです」

 

!?

 

ま、まさか私の知らないとこで惨劇になってたんじゃ……。

 

「大丈夫です、鉄平は生きてるのですから。魅音と詩音、レナと悟史と圭一がにやにやしながらまわりを取り囲んでバットや鉈を振り回したあと、最後に葛西が登場して脅しあげたのです。見てるだけで怖かったのです」

 

羽入……あいかわらずストーカーしてるのね。

 

「ぼ、僕も沙都子が心配だったのですよ~」

 

しかし、うまいといえばうまいわね。

 

さすがに5人も監視がいるとなると迂闊に沙都子をいじめるわけにはいかないし、園崎組がバックにいることをちらつかせたんだから……鉄平がおとなしくなったのも納得だわ。

 

でも、そこまでやってよく逃げ出さなかったわね。

 

「リナも雲隠れしてしまったようですし、行き場がないのだと思いますよ?」

 

そのへんの事情は、時期があの夏には限らなかったわけね。

 

それでループの中では起きたり起きなかったりする出来事だったのか……うん、納得。

 

「ときどき様子を見にいってますが、魅音が紹介した仕事もそこそこ真面目にやってるようですし、家でも案外仲良くしてるみたいなのですよ。悟史にお酒を勧めようとした途端に金ダライを頭に喰らって沙都子に怒鳴られたり」

 

そ、それは仲がいいというよりも……まぁ沙都子が幸せならそれでいいわ。

 

鉄平はどうかと思うけど、なんだかんだいって大人が一緒にいるのは安心だものね。

 

こっちで圭一の両親と暮らすようになってから、私と沙都子だけで防災倉庫に住んでいた頃がどれほど異常だったかよくわかったわ。

 

雛見沢の巫女としては、鉄平も心を入れかえてくれることを祈りましょう。

 

「彼にだって、救いが必要です。あぅ♪」

 

レナのお父さんはどうなの?

 

「デザイナーのお仕事のことは僕にはよくわかりませんのですが、レナとの関係に限っていえば、うまくいっているのですよ。ただ……」

 

ただ?

 

「ちょっと……その、レナの話す話題の傾向に不安を覚えているようではあるのですが……」

 

ど、どういうことよ……あ、待って。やめて。聞かないことにする。

 

それに関しては、早々にあの二人から圭一を奪い取った私の責任が大きいような気がするし……。

 

仲間として、レナと魅音に幸あれって祈っておくわ。

 

「そのほうが、略奪愛を警戒しなくてすむから梨花も安心なのです♪」

 

不穏なことを言うなっ。

 

圭一に限って、そんなことは……ない、はずよ。

 

「……くすくす、恋は先着順ではないのですよ?」

 

ぐっ……縁結びの神様のくせに、横恋慕してみたりアブノーマルな方向を応援するのは正直どうよ?

 

二人に似合いの相手を探してあげるとか、マシな方向の御利益はないわけ?

 

「僕は仲間を信じてるのですよ~、あの二人ならきっと圭一への未練という名の迷宮を越えられるのです~」

 

うわ、投げた!

 

思いっきり放り投げたっ!?

 

ごめんね二人とも、なんにもできない無力な私を許して……。

 

「見てることしかできなくて、非力な僕~、なのです♪」

 

とりあえず、この祟り神にお灸を据える方法を仲間に相談するべきかしらね……?

 

「……真面目な話をします、梨花」

 

な、なによ?

 

「大人気の僕のキャラソンですが、歌詞カードの表記が『ボク』になっているのは正直どうかと思います。僕は『僕』、そのパチモンの梨花が『ボク』。この区別、重要なとこだと思うのですよ」

 

知るかーっ!?

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