ひぐらしのなく頃に~徒然花(圭梨、アフター)   作:晃晃

14 / 25
第13話 其ノ三 洗脳

昭和60年4月、私たちは中学校に入学した。

 

本来はただ中学生になったと言うべきところだったんだけど、実はそうじゃなかった。

 

「我が青春の雛見沢分校ぉ~、なのです」

 

あんたアニメ見過ぎ。

 

ともかく雛見沢分校が廃校になってしまったのだ。

 

知恵がどうしても教師を続けられない事情ができたとかで退職することになり、校長もかわりの先生を探したけど見つからなかった。

 

結局町会で話し合った結果、もともとダム戦争のときに村に居座るのが目的で作った分校だっただけに、その役目は終えている……と、そういう結論になった。

 

私たちも村人一同も、旅立つ知恵を盛大に見送ったのは言うまでもない。

 

「知恵はなにやらローマのほうに渡ったらしいのですが、その先はわかりません」

 

インドじゃないのね……知恵の経歴も、謎といえば謎よね。

 

ともかく、分校への援助を打ち切るかわりに魅音は中古のスクールバスを見つけてきてくれた。

 

案外暇そうにしていた富竹を1年契約で運転手に雇い、私たちはそれをたよりに興宮の学校へ通うことになったのだ。

 

「祭の富竹の立ち絵が一瞬自衛官よりも運転手に見えたとか、そういう理由ではないのですよ?」

 

朝に1回、夕方は小中高の終わる時間に合わせて3回、日に4往復というから富竹もなかなか大変よね。

 

「ダム計画のあおりでバスが廃線になっていたので、村の人たちも便乗できて大助かりなのです」

 

確かに、帰りのバスは買い物帰りの主婦が多いわね……。

 

「それに沙都子や梨花とおそろいの制服は嬉しいのです♪」

 

雛見沢分校ではばらばらだったものね。

 

そういえば、羽入は興宮にいくようになってから角に大きなリボンをつけるようになったけど……やっぱ気にしてるのね。

 

「あぅ……じろじろ見られるのはやっぱりイヤなのです」

 

雛見沢の人たちはもうすっかり慣れたけど、興宮では不特定多数の視線があるものね。

 

でもリボンも可愛いわよ、羽入。

 

「ありがとうなのです☆ そういえば梨花も、学校では口調を改めるようになったのです」

 

そ、それは……羽入のソレと同じよ、雛見沢ではにぱ~☆も通じるけど、そろそろ脱・梨花ちゃまも考えないとね。

 

だいたい、ボクとかなのですとか、羽入とキャラかぶるじゃない。

 

「突然素に近い口調で話すようになったから、沙都子もびっくりしていたのです」

 

いいじゃないの……だいたい、その沙都子だって口調変えようとしてるみたいだし。

 

「あぅあぅ、沙都子は梨花ほど切り替えがうまくないので、苦労してるのです」

 

沙都子はソフト部に入ったから帰りが遅くなって、一緒のバスには乗れなくなったのよね……。

 

「梨花は部活しないのですか?」

 

私は神社や本宅の掃除とか、御三家の会合とか、いろいろすることがあるの!

 

「めったにしてないのです……この前なんか、圭一と買い物に行くからって僕に境内のお掃除を押しつけたのです!」

 

古手の巫女ともあろう者が、境内をお掃除するのに文句言うんじゃありません。

 

「僕は本来、巫女じゃなくて神様なのです、ここ重要なのです! あぅあぅあぅ!」

 

だから帰りにシュークリーム買ってきてあげたじゃない。

 

それに、一応は私の親戚でオヤシロ様の巫女ってことになってるから村にいられる身分でしょ。

 

今度から当番制にするのもいいわね。

 

「そ、それはそうなのですが……なにか納得いかないのです」

 

……ん? そういえば、古手の家系って私しか残ってないんじゃないの?

 

よく親戚なんてデマで、普通の村人はともかく公由の家の者やお魎たちが納得してるわね。

 

「目からオヤシロ洗脳光線なのです! はにゅ~ん☆」

 

どんな効果音よ!?

 

それに、またあのうさんくさいオヤシロ様ひみつパワーなわけ?

 

「うさんくさいとは失礼な。それはそれはありがたい神通力なのですよ」

 

あれ、待って……?

 

それ、鷹野に使ってれば、ひょっとして苦労せずに勝てたんじゃないの?

 

「僕もそうしたかったのですが、実はこの力には重大な欠点があるのです……」

 

……またろくでもない設定の予感。

 

「ときどき間違えて目からオヤシロビームが出てしまい周囲数kmが焼け野原に!」

 

使うな、そんな神通力はっ!?

 

……あ、あんたと話してると頭痛くなってくるわね。

 

「神との対話には、強靱な精神力が必要というのは常識なのです。あぅあぅ♪」

 

古手の巫女として生きることに、生まれて初めて疑問を抱いたわ、私……。

 

そ、そんなことはどうでもいいわ。

 

沙都子のソフト部といえば、悟史も高校で野球部に入ったのよね。

 

「詩音がマネージャーとして、野球部は去年からすでに支配下に置いてあったのです」

 

支配下って、詩音が聞いたら怒るわよ……。

 

詩音の後押しのせいかどうかは知らないけど、早速スタメンに入ったらしいわね。

 

圭一によれば、長打力はけっこうあるから、いずれは4番になるんじゃないかって言ってたけど。

 

「今度の練習試合はみんなで応援にいく約束なのです!」

 

草野球に参加したことはあるけど、野球は正直よくわかんないからどう応援したらいいのか……。

 

「あぅあぅ、梨花。ファミコンのベースボールで僕と勉強するのです!」

 

……あんたはひとりでバンゲリングベイでもやってなさい。

 

「ハドソ~~~~~ン、なのです! あぅ!」

 

で、レナは家庭研究会だっけ……あれって何の部活なの?

 

「料理や手芸をする部活みたいですよ。レナにはぴったりだと思うのです」

 

そういえば、今度かぁいいぬいぐるみを作るんだってはしゃいでたわね。

 

魅音は、今度生徒会長選挙に出馬することになりそうだって聞いたけど……。

 

「はい、いまの横暴な生徒会長から実権を奪うんだってはりきってましたのです」

 

なんか魅音らしいというか……でも、高校でゲーム部とか作らないのかしら?

 

「あっちの学校にいってるメンバーはみんな部活に入りましたし、普通の子相手では物足りないのでしょう」

 

高校組で帰宅部なのは、電車通学の圭一だけだもんね。

 

「くすくす。圭一は、穀倉にアパートを借りるのはどうかって言われてたのに、わざわざ通うことにしたくらいですから……はやく梨花に会えるようにさっさと帰ってくるのは当然なのです」

 

うぅ……な、なに恥ずかしいこと言ってるのよ、あんたはっ!

 

「圭一が迷ってるときに、誰かさんが涙目で抱きついたせいだなんて言ってませんのですよ?」

 

あぅっ!? それは言わない約束じゃないっ!

 

「そうでしたね~、泣きやむかわりにこれからは呼び捨てにしてほしいっておねだりした件も秘密なのでしたっけ?」

 

う、うぁ……だってだって、いつまでも彼女をちゃん付けとかおかしいじゃない!

 

「帰宅部なのをいいことに駅の待合室で圭一を待ってからバスで一緒に帰るとか、梨花は意外と乙女なのですね~、あぅあぅ♪」

 

は……、は・にゅ・う、さん?

 

「ひっ! り、梨花の目が怖いのです……L5なのです、L5なのですっ」

 

言いたい放題言ってくれるじゃない……どうなるかわかってるの!?

 

「ふ、ふふ~ん! 梨花にはなにもできないのです、あぅあぅ♪ お酒やキムチの匂いをぷんぷんさせてたら、とても圭一とキスなんかできやしないのです!」

 

こ、このダメ神……、それを見抜いてるとは!

 

「最近冷蔵庫にストックしなくなったからおかしいと思ってたのですよ! あの強烈な匂いの前には、歯磨きやうがいをしようとも無駄無駄無駄! 胃に残っている限りは漂ってくる、まさに乙女の敵なのです! あぅあぅ~♪」

 

ぐぐぐ、覚えてらっしゃい……!

 

「どうせなら僕と一緒に、シュークリームのあまぁ~い香りを召しませ、なのです♪」

 

はぁ、今回は私の負けね……。

 

こんど、おすすめのお店を紹介してよ。

 

「はいです☆」

 

ん、そういえば羽入も帰宅部じゃないの。

 

たまには一緒に帰ればいいのに、もしかして私と圭一に気を遣ってくれてるわけ?

 

「梨花。僕は……チャンピオンシップロードランナーという名の五十面の迷宮に囚われているのですよ~♪」

 

ダメだこいつ……はやくなんとかしないと……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。