ひぐらしのなく頃に~徒然花(圭梨、アフター)   作:晃晃

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君遠し編
第17話 其ノ一 禍根


鷹野と富竹は去り、入江は残った。

 

道は違えど、それぞれが犯した罪を胸に刻みつけ、自ら選び取った未来を力強く歩んでゆくことは疑いようもない。

 

しかし、災厄の運び手が舞台から去ったとはいえ、雛見沢のなにもかもが平穏になったと言うにはまだ早かったらしい。

 

雛見沢症候群などなくても、人と人との間には不和が起きるのだということを私たちに思い知らせる事件が起きたのだ。

 

「あぅ……梨花ぁ、僕が書いた復活の呪文どうして消してしまったのですか!?」

 

うるさい、人のノートを無断でメモ帳がわりに使うほうが悪いのよ!

 

「せっかくローラ姫を助けたのに! ひどいのですひどいのです!」

 

……と、こんなどうでもいいような不和だったらよかったんだけどね。

 

「あぅあぅ、どうでもよくないのです……また再挑戦なのです」

 

発端は、魅音に持ち上がったお見合い話だった。

 

それ自体は、一応は名家といってもいいだろう園崎家の跡取り娘としてはあってもおかしくないエピソードだ。

 

そして花の18歳、青春真っ盛りであるところの魅音がその話を有り難く思うはずもなく、相手がいくら資産家の息子だと聞いても、口実をもうけてなんとか避けようとするのは当然の展開だったのだろう。

 

「実にベタな展開なのです……」

 

羽入の言うとおり、この場合の口実といえば『実は隠していたけど交際している男性がいる』というアレであり、魅音にとってその嘘にリアリティをもたせることが可能な人物は部活メンバーの中のたった二人の男性陣、すなわち圭一と悟史しかいない。

 

魅音としてはどちらかといえば圭一を相手役に選びたかったのだろうし、実際頼み込んできたというか、買収から脅迫まであらゆる手段を用いてきたのであるが……。

 

圭一の彼女たる私がそれを許すわけもなく、圭一は圭一で、屈する他ないのかでも屈するな的な何かを発揮して執拗な追及をはねのけた結果、その役回りは悟史へと移行したのであった。

 

「今度は沙都子とレナが大反対なのです」

 

まぁ誰に話をもっていったってそうなるのは目に見えてるんだけどね。

 

魅音絡みで矢面に立たされれば、あとで必ず嘘をついたケジメをとらされるに違いないもの。

 

爪剥がしならまだいいけど、本気で祝言にまで持ち込まれかねないんだから。

 

「北条家のしがらみがなくなった今なら、悟史が相手でも問題はないわけですが……」

 

いや、問題あるでしょ。

 

少なくとも茜やお魎は詩音が悟史を好きなこと知ってるんだから、魅音の人選には明らかに無理があるって。

 

「……言われてみればそうなのです。あぅ」

 

結局は、親友のレナの一喝で、魅音もどうにか諦めて渋々お見合いを受けることにしたんだけど……。

 

「禍根を遺したのです……あぅあぅ!」

 

ま、まぁ、それを魅音のせいだと言っちゃうとすこし可哀想よね。

 

……この件そのものは果てしなく迷惑な話ではあったけど。

 

「でもアレがいわゆる惨劇フラグだったのは間違いないのです」

 

そうよね……何が劇的だったかって言ったら、レナの心境の変化よね。

 

最初、詩音は見合いをさせられる魅音に同情する気持ちもあったせいか強くは反対できなかったのよ。

 

なにしろ、魅音のお見合いということは、本来なら魅音だった自分が押しつけられるはずのものだったんだから……。

 

そういう態度がレナには、詩音の気持ちの曖昧さを象徴しているように見えたのね。

 

「レナはあのとき詩音に気を遣って、悟史を傷つけることも厭わず告白を断った。なのに何年経っても告白しないばかりか、魅音に強く反対できない詩音の覚悟が中途半端だっていうことが、潔癖なレナには許せなかったのです……あぅっ!」

 

おおけいいちよ、しんでしまうとはなさけない。

 

「あぅあぅ、もうすこしで次の武器が買えるとこだったのです……」

 

真面目な話をしてる横で経験値稼ぎはやめなさいよ。

 

「ちゃんと話についていってるのですから、大目にみてほしいのです」

 

まぁいいけど……でも、詩音も詩音よね。

 

もうすこし悟史のことで積極的になってもいい気がするけど。

 

「詩音も、悟史の心がレナに向いたままだと気づいていたのです。その上、彼女でもない自分が悟史の扱いに文句を言う筋合いがあるのかどうか迷っていたのですよ……」

 

ことはそう単純じゃないってわけね。 

 

レナに責められたことで、詩音は悟史や沙都子から微妙に距離を置くようになって……一時期は沙都子も、元気なかったわよね。

 

「沙都子にとっては、詩音も、それにレナも姉同然の存在だったのです」

 

考えてみればそうね……昭和57年からずっと、レナは沙都子のそばにいた。

 

それは魅音も同じだけど、園崎という立場が邪魔をして本当の意味では助けてあげられなかった。

 

詩音が悟史との約束を思い出すまで、沙都子の味方に立ってあげられるのは古手の頭首として好き勝手できた私と、引っ越してきて日の浅いレナだけだったから。

 

レナの存在だって、沙都子にとっては詩音に劣るものじゃない。

 

その二人が悟史を中心に対立しはじめた構図に、沙都子はきっと心細かったはず。

 

「でも、沙都子は……僕と梨花に、その不安をちゃんと伝えてくれたのです」

 

そうね。沙都子が一人で抱え込まなかったのはいい傾向よね。

 

私や羽入にも打開策はなかった。

 

レナに話してみたけど、詩音が告白しないなら悟史の隣にいる資格なんかない、の一点張りで……途方に暮れた私は、圭一に相談したわ。

 

「くそっ、どうして気づかなかったんだ……わかった、俺がなんとかする!」

 

仲間同士なのにすれ違ってしまっているあの状態に、ほかの学校に通っている圭一が気づかなかったのは無理もないのに、ずいぶん責任を感じていたわね。

 

私も、もっと早く気づければとは思ったけど……。

 

「それを言ったら僕も同罪なのです。そもそも、レナは登校のバスではいつもどおりに振る舞ってましたし、沙都子の様子くらいしか梨花には判断材料がなかったのですよ」

 

圭一は悟史を呼び出して問いつめるんだけど……。

 

「あぅあぅ……悟史の逆ギレ炸裂だったのです!」

 

あれは見てて怖かったわね。

 

なんていうか……『やめてよね。本気で喧嘩したら、圭一が僕にかなうわけないだろ』って空気が漂ってたわ。

 

「いえ、それは何か違うような」

 

そのくらい怖かったってことよ……L5が再発したのかと思ったもの。

 

「入江に聞いたところでは、悟史はいったん末期症状までいった経験があるので、精神的には後遺症が残っている部分もあるそうなのですよ」

 

それを言ったらレナや沙都子もそうよね。

 

後遺症になってまで雛見沢のみんなを苦しめるとは、雛見沢症候群ってのもいいかげんしぶといわね……あれってどういう原因で雛見沢に根付いたんだっけ?

 

「あぅあぅあぅ……、ぷいっ」

 

ぷいっ、じゃない!

 

「原作ではっきり言ってないことをこんなとこで言うわけにいかないのです!」

 

それは確かにどうしようもない事情だけど、とりあえずその反応からして持ち込んだのはあんたで間違いなさそうね……。

 

「梨花がなんのことを言っているかわかりませんのです」

 

ちょ、待ちなさいよ!

 

「夢です」

 

うわ、またそれ!? 夢とか関係ないし!

 

まあ追及するのはここまでにしておきましょう……今回はそれが直接の原因じゃないし。

 

「そうですね……いろいろと悪い要因が重なって起きた、ここが雛見沢でなくても普通に起こりうる事態だったのです」

 

それでも悟史は悟史だった。

 

殴られながらも説得を続けた圭一の言葉に心を動かされて、自分が招いた事態に後悔の涙を流した。

 

最後に落とした拳は圭一の顔面じゃなく、地面を叩いていた。

 

「僕には、どうすればいいのかわからない……助けてくれ、圭一!」

 

悟史が悪いわけじゃなかった。

 

彼はただ、真摯にレナへの想いを貫こうとしただけ。

 

詩音に告白されたわけでもないのに沙都子を支えてくれる詩音を邪険にするわけにはいかない。

 

二人の間で宙に浮いたまま、途方に暮れていただけだったのだ。

 

その先は、男同士の話だって追い払われちゃったから知らないけどね。

 

「僕も言わないのです。あぅあぅ」

 

……てか、聞いてたんかい!

 

気になるけど、……聞かないでおいてあげるわ。

 

圭一もそれを望まないだろうし、ね。




<雑談>

こういうアフターとか、恋愛系なら意外とすぐ書き上げられるんですがね。今作ってやつは、そううまくいかない。構成、伏線、など全体から考えてやってるので、時間掛かってます...
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