英霊召喚『グランドオーダー』   作:新人呪術師マスター

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練習相手に虹霓剣

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東堂について行くシャルロットと霞夜。

 廊下を歩き、先輩がいるという教室に向かう。

「うちのメンツは東京の連中より常識的な奴等が多い。停学食らった三年二名、無謀なことを言う真依の姉に、普通だと意思疎通の取れない二年、パンダ、一年の伏黒に俺の終生の好敵手。向こうは唯一の俺の好敵手以外、色物しかおらん」

「すいません、パンダって何ですか?」

「文字通りの意味だ。分からんだろうが、動物が学校に居ると思え」

「マスター、呪術師に動物って居るんですか?」

「私も知りませんよ……」

 本来の先輩や学友は、色物で変人奇人しか居ないという。

 そこに加えて極めつけは最強にして唯我独尊、五条悟である。人間関係、聞いてるだけで終わってる。

 賑やかな声が聞こえる。誰かが集まっているらしい。

 いきなりとある教室の前で止まり、扉を開く。

「おい、お前ら。例の後輩が来たぞ」

 そう言って入っていく東堂に続く。

 中には数名の先輩らしき人物がいた。

 糸目の男子、切れ目の美人な女子、金髪だが髪型が凄い女子、青い髪色の女子、何故か居る人型ロボット。

「こっちも変なの混ざってるんですが、東堂さん」

「あぁ、メカ丸か? 済まんな。事情あっての事だ。気にしないでくれ」

 一名の妙な人物以外、確かにマトモそうな先輩方。

「東堂先輩、この子が例のうちの親戚? 天戸……そんなの確かに居たわね」

 切れ目の綺麗な先輩が冷たく言う。じゃあこの人が、禪院真依という人か。

 本家の人に丁寧にお辞儀すると、呆れたような表情になる。

「私を禪院の人間に見るのは止めて。あんな連中、反吐が出るわ」

「心中お察しします……」

 地獄だろうと容易に想像つくので、改めて自己紹介。

「ええと、本来だったら東京高専一年なんですが、一時的にこっちの一年になります、天戸霞夜です。よろしくお願いします」

「付き添いのシャルロットです。マスター共々、お見知りおきを」

 ニコニコ笑ってシャルロットも挨拶する。

 その意味を、真依は直ぐに理解した。

「……親戚で良かったわね。うちに居たら直哉に狙われるレベルの術式よこれ。式神ですら無い、ほぼ生身の英霊。自分の術式で呪術師が増えるようなものじゃない」

「真依、どういう事?」

 青い髪色の女子が真依に聞く。

 要するに呪術師に近い、英霊という区分の存在を召喚できる規格外。

 枠は十種影法術のようなモノだが、媒介が要らない。

 燃費も低い。歴史の偉人や有名な神、はたまた呪霊に近いモノまで召喚する。

「え? つまりこの子、術式で人喚ぶの?」

「有名な歴史の存在なら、大抵出せる術式よ。例えば、霞も知ってる八岐大蛇。アレだってグランドオーダーは条件さえ満たせば喚べるの」

「ええ!? それ神話の怪物だよ!?」

 仰天の先輩に訂正する霞夜。

 楽巌寺からその手の類は喚ぶなと言われている。

 大規模災害に成り得るから。

「成る程、この人物が英霊という存在。本当に人間そのものだね。素晴らしい完成度だ。聞いてはいたが真依の親戚に発現するという術式がこれ程とは」

 糸目の男子がシャルロットを見て呪術師的にもほぼ生身で戦える戦力を増やせる術式と聞いて見事と褒める。

「憲紀、お前の目は節穴か? これはあくまで護衛の英霊だ。呪霊に向ける英霊はもっと格上だぞ」

 東堂が指摘するとおり、シャルロットは呪霊と戦っても勝てない程の一般人。

 護衛の範疇で、戦力外の彼女を見て何を言うか。

「はい、お恥ずかしいのですが……わたしはどっちかって言うと暗殺者の分類でして。しかも割りとそこからも外れた、ぶっちゃけ三下です」

「嘘。気配的に、あなたも呪力もそこそこあるのに? 対人特化?」

 金髪の女子が驚くように言う。

 不用意に寄ってきた人間を殺すことだけしか出来ないアサシン。後は普段の身の回りの世話が主な役目。

「そういう事か。大体分かった。俺のような手数が武器の召喚の術式だな」

 ロボットが納得のように言うが、全容は違うのだが。

 グランドオーダーの概要を、一同に東堂が説明する。

 見る見る、全員が驚愕の顔になる。

「分かるか? こいつの術式は十種影法術の上だ。降霊術も出来る、無論召喚は当たり前。そこに加えて全ての過程を素っ飛ばした挙げ句に低燃費、潜在的な呪力の総量は妥協点。総合的に見れば乙骨並みの術者だと」

「そうよ。グランドオーダーってのは術式だけなら特級相当。持ってる術者の技量次第じゃあっという間に上に行ける。尤も、この子はちょっと無理みたいだけどね」

 詳細を知る真依が補足すると、霞夜は三級の身分なので、過大評価だと呟く。

「私は駆け出しの呪術師です。先輩方を見習って精進していきますのでご指導お願いします」

 再度シャルロットと頭を下げる。

「うわぁ……凄く真っ直ぐ。丁寧だし」

「本当に呪術師かと思うぐらい、礼儀正しいな」

 先輩達の受けは悪くない。常識人にされた。

「良いんじゃないの? 五条悟に見つかって放り込まれても、無駄に騒がないし前向きに呪術師やるんでしょ」

 真依はどうでも良いように言ってそっぽを向く。

 それぞれ名乗る先輩達。

 加茂憲紀、禪院真依、西宮桃、三輪霞、メカ丸。

「よろしくお願いします」

 お世話になるので、シャルロット共々後輩らしく見習っていく。

 本当なら同級生に新田という一年もいるが殆ど不在。

 曰く、京都校で一番忙しい一年。貴重な術者で、西日本を入学後ずっと走り回っているらしい。

「君は長野出身らしいが、京都に観光に行ったりしないのかい?」

 憲紀が微笑みを浮かべながら問うが、そんな暇あったら授業受けて任務に出る前に、学校内部で仮免ぐらいには成長したい。

「良い心構えだね。私で良ければ呪術の事なら気軽に聞いて欲しい。これでも私も御三家、加茂の人間だ」

 そういえばこの人も御三家の人だった。

 早速頼る。

「学長から言われたので、降霊術のイロハが聞きたいです」

「降霊術か。うむ、知り合いにイタコでも居れば参考になる意見が言えたんだが……。私も一緒に調べてみようか。書庫に資料があると思う」

 これから任務というメカ丸が出て行き、東堂は推し活、女子達もやることがあると言って散っていく。

 この日は憲紀と高専の書庫で資料を漁って、要領を学んだ。

 それからは高専で、先生の庵歌姫という人の授業を受ける。暇なときに東堂も付き合って兎に角調べる。

 兎に角引き篭もって、勉学に励む。

「真面目ね、天戸さんは。熱心なのは良い事よ。もしも五条が迷惑だと思ったら、私に言ってね」

 歌姫もそう言ってくれるので、頑張って任務に出られるくらいの仮免目指して勉強する。

 先輩達も生真面目な霞夜に茶々を入れつつ、手伝ってもくれた。本当に良い環境だった。

 その中で、在籍して二週間ほどで降霊術の基礎を学んだ。

 元々グランドオーダーに組み込まれた仕様だ。

 その対象を召喚から降霊に切り替えるだけで良いという。

 但し降霊中はその英霊は召喚できず、一回につき一人のみ。

 全力を出せるかどうかは練度次第。

 英霊との相性もある。英霊側に許可を得て、初めて降霊が可能になる。

 ここ二週間ほどで許可を得たのはエミヤという聞いたことのない自称未来の英霊、振るえるモノならやってみろと笑うモードレッド、努力に呆れつつも許可をくれたロビンフッド。

 今日は初の降霊を試すので、見てて欲しいと三輪に頼んで校庭に来て貰う。時間のある東堂も来た。

「それじゃ、行きます」

 二人の見ている前で、グランドオーダーを起動する。

 術式の対象を変更、英霊の中身だけを降ろして自分に宿す。

 すると、これまた膨大な情報が脳裏に過る。

 過多の情報を押しこまれても踏ん張って、堪える。

 今回は自分で基本一芸特化の英霊よりも多芸多才を収め、取り分け霞夜のスペックに合わせる汎用性なら私ほど無難な英霊は居ないと自嘲するエミヤを降ろした。

 その能力を、脳裏に刻まれる。

 降霊中は一時、この身は英霊となり、自身で戦うことも可能になる。

「どう? 大丈夫天戸さん?」

 三輪が心配そうに聞く。

 突っ立つ霞夜の呪力は並みの呪術師を超えている。

 頷く。特に異常は無かった。

 エミヤの解釈を時間を掛けて把握して、練習する。

「……よし」

 小さく溢す。エミヤがどういう英霊かを解する。

 彼が自称する通り、汎用性なら随一だろう。

 何だこの反則級の術式。

 無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)。 

 簡単に言うと、刀剣類などの呪具の無限複製。

 固有の世界を自身の中で内包して、古今東西の多くの武具の複製や改造を行える。

 構築術式と違って、一から作らずとも既に内界には無数の呪具が予め複製されている。

 それをアウトプットすれば良い。

 無尽蔵に、低燃費で複製できる。

 一度作れば、壊れない限り保存できる。

 時間の経年劣化も起きない縛りもある。

 刀剣類が最もコスパが良く、他の武器も可能。

 防具は三倍近く呪力を食うが、それでも結構な数が既にストックされている。

 改造も比較的容易。構造に理に適う状態をエミヤがサポートしてくれるので、常に万全。

 降霊中は英霊の意識は無いが内側でサポートに徹してくれる。

「投影」

 そう呟くと、黒い洋弓を取り出す。

 矢は細く改造した剣を射つとか言う無法。

 エミヤは本来弓の兵。

 なのに内包の世界で常時作るのは刀剣類などの呪具。

 ちぐはぐだなと思うが、凄いのは有名な歴史の武器も廉価版といえ構築できる事か。

 曰く、神の使った武器でも無ければ大抵見りゃ即座に構造が分かるらしい。流石英霊。

「三輪先輩。ちょっと模擬戦お願いします」

 弓を構えた霞夜が頼む。

「え? いきなり? 私は良いけど本当に大丈夫?」

 三輪が心配するが、模擬戦をしないと分からない。

 再三頼んで、了承を貰う。

 刀を持った三輪が構える。

 号令は無く、駆け出す三輪。

 対して、霞夜は弓から複製した矢を次々放つ。

「うわ!? 速い!?」

 弓で迎撃は予想していたが思っていたより素早く、挙げ句に頭に直撃も狙ってきていた。

 慌てて切り払う。切った感触がおかしい。

 矢にしては重たい。切り払いをして地面に落ちたそれを見ると、レイピアみたいな剣だった。

「ちょ!? 剣!?」

 予想外のブツをぶっ放す彼女に三輪がビビる。

 貫通力の上げた剣を矢の代わりに射っているらしい。

 後退しながら連射する霞夜。

 駆けて避けながら時折切り払い、接近する三輪。

 間合いの取り方は良いが、上手い。よく狙える。

 切り払って落としているが、基本的に動いているのにギリギリの軸で飛んでくる。

「やっぱり三輪先輩には通じないですね」

 逃げながら射つ霞夜の独り言。

 バッチリ聞いてた三輪は思う。

(いや、初戦で防戦一方ってそれはないよ天戸さん!)

 次から次に射つ連射。

 三輪が接近するにも足止めを食らう。

 切り払う刀で火花が散る。

 東堂が腕組みしてその様子を見る。

 基本的な択は取れている。初めてでは悪くない。

 後方支援では銃火器の真依の上位互換だろうか。

「これを試しますかね」

 普通に射っても弾かれる。

 通常の無銘の剣では三輪には通じない。

 ならば通常の剣から手段を変える。

 複製するそれを番えて、引き絞る。

「……。三輪、気をつけろ。次の一手は違うぞ」

 消費する呪力が僅かに高まる。

 低燃費で射っている矢から切り替えた機微に気付く東堂。

 忠告に、有効打を決めるつもりかと警戒する三輪。

 今までより太い、螺旋状の剣。

 重たいそれを番えて、構える。

「行きます。当たったら危険だと思いますけど、遠慮はしません」

 見るからに物騒な得物。なんか、ドリルみたいな刀身してるのによく持てる。

 危険を察知して、迎撃態勢に入る三輪。

 納刀して、両足を開いて展開する。

 シン・陰流、簡易領域。

 真正面から来るならフルオートで切り払う。

 どんなに素早くても、絶対に追いつく。

「いいよ! どんと来い!」

 先輩らしく、笑って胸を貸す三輪。

 因みに最近の三輪は自分のような三流でも素直に慕う後輩が出来てテンションが上がっている。

 先輩風を吹かせたい所。見栄を張る。

 持ち上げると、ボソリと霞夜は告げる。

 これは縛りによる呪具の本領を解放をする発動条件。 

 真名解放という縛り。

 分かりやすいと必殺技を叫ぶアレだ。

「――虹霓剣(カラドボルグ)

 大きく重たい剣を射貫く。

 轟音と共に飛来する虹霓剣。

 領域に入る。

 自動のフルオートでシン・陰流、抜刀が応戦する。

 だが。その簡易領域が虹霓剣が入った途端に物理的に抉られて削れていく。

「!?」

 地面ごと、空間ごと。

 軸にある全てを抉り取る。

 何だこの剣。カラドボルグとか聞こえたような。

 抜刀でかち合うが、刀が切り払うも飛来物に競り負けてへし折れた。

「やば……!!」

 応戦失敗。下手こいた。これじゃ直撃する。

 ってか絶対に当たれば死ぬ!

「やれやれ」

 不意に。東堂の溜め息が聞こえた。

 パン、と拍手が鳴る。

 虹霓剣を眼前に、突っ立つ三輪と剣の位置が逆転。

 背後を突き抜けて飛んでいく虹霓剣。

 遠方にあった壁に激突して貫通。更に突き進む。

 数秒後、遠くで轟音。何かぶっ壊したようだ。

 冷静に霞夜がぼやく。

「カラドボルグはやり過ぎでしたか……」

 呆然とする三輪は、何今の? という顔だった。

 東堂だけが理解する。

「突然神話の武器をぶっ放すな。三輪を殺す気か」

 そう。虹霓剣(カラドボルグ)

 とある英雄の剣であり、その威力は剣光で三つの丘すら地形ごと破壊する。

 廉価版でも振るえば周りの空間を抉り取る性能の呪具。

 矢にすれば直線的に空間を抉る貫通力の高い破壊兵器。

 霞夜が三輪にぶつけた、手加減の意味を分からない過剰な剣だった。

「あんなものどうやって防ぐの!? 私の簡易領域、抉られたよ!?」

 虹霓剣はそう言うモノだから、仕方ないんだが。

 抗議する三輪に謝る。有効打が即死の一撃だった。

 しかも得物をへし折った。三輪の刀は自前のモノなので、高専から購入しないといけない。

 被害総額に涙目の三輪に、霞夜が言う。

 代用品作るか。刀ならお詫びに作れるけど。

 そう言うと、何がどういう事かを説明する。

 今の霞夜は呪具の複製が無限にできます。

 そう聞くと絶句する三輪。

 投影、というと本当に虚空から立派な刀が出て来た。

 曰く、廉価版だけど先程よりは高価な物だと思う。

 火之夜藝という呪具。抜刀すると燃える炎の刀。

 はい、と手渡す霞夜。

 試しに抜刀すると、業火が刀身に走る。

 そのまま振るえる。……何級の呪具だろうこれ。

 三輪は廉価版と言えども高級品を受け取って戦慄する。お詫びが重すぎる。

「天戸、お前は今度から加減を覚えろ。神話の武器をホイホイ使うな」

「すみません……」

 指摘された部分は、過剰な武器を使うな。

 普通の武器を使え。そう東堂に言われた。

 それ以外はもう大丈夫。練習なら幾らでも付き合う。

 そう言われて、霞夜は三輪に続いて、今度から過剰な武器を使うときは壊れても平気らしいメカ丸に頼むことにした。

 徐々にステップアップする霞夜。

 まだまだ、特訓は続く。

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