では、どうぞごゆっくりしていって下さい。
シンクside
ユウトとタツマキが別れた後、僕は歩きながらでも食べられる物を露店で買ったりエクレにこの世界の事を教えてもらったりしながら商店街の様な場所を歩いていた…あ、この串焼きおいしい。
「戦は国交手段でもあるが、同時に国や組織を挙げてのイベント興業でもある。今回はガレットと戦ったが、もっと規模の小さい…村同士や団体同士の内戦もあるな」
ここまでエクレに聞いた内容からすると…それって…戦って言うより…。
「村対抗の競技大会兼…お祭りみたいなもの?」
「まぁ、そんな言い方も…出来るか。戦の興行を行う際は、興業主が参加希望者から参加費用を集めて、それを両国がそれぞれに献上する。そして、戦を行い戦勝国が約6割、敗戦国は残りの約4割を受け取る。これは大陸協定で決められた基本の割合だ。分配した費用の内最低でも半分は参加した兵士への報奨金に当てられる。この割合も協定で決まっている。そして残り半分が戦興業にいる国益だ。病院を建てたり、砦を造ったり、公務のために働く者を養ったりと国を守る為に使われる」
「へぇ~。後さ、え~と…本物の戦争というか…大陸協定っていうのを守らなかったり…人が死んじゃったりするような戦いとかは…?」
エクレが少し暗い顔をする…って事はやっぱりあるんだ…。
「歴史を紐解けば…そういった争いもなくはない。とくに魔物との戦いなどではな」
魔物!?そんなのがこの世界には存在するの!?
ユウトにも教えておいた方がいいかな?…いや、この事はユウトには教えない方がいいかも…絶対どんなのか探しに行っちゃうだろうし…。
「我々が戦で負傷せずにいられるのは戦場指定地に眠る戦災守護のフロニャ力のおかげだ、それ以外の場所なら怪我もするし、死にもする」
あ、やっぱ死ぬこともあるんだ…それにしても戦災守護のフロニャ力ってやつ凄いな~。
「じゃあ、守護されてる場所ってどれくらい?」
「元々守護力が強い街や国、砦が出来ているが、街道や山河は危険な場所が多いな」
確かに危険な場所に街とか国があるわけないよね。
「特に街道は大型野生動物の危険度も高い。だが、戦のために移動する隊列に加われば、逆に安全な旅が出来るという利点もある」
「なるほどー」
「しかし、お前は本当に何も知らんな」
「むぅ…」
そりゃ異世界から来たんだから知るわけないし…突然この世界に勇者として召還されたんだからこっちの知識をあらかじめ予習しておく事も出来ないし。
「とりあえずリコの所に向かうぞ」
「え?」
リコ?…って誰?
「案外何か進捗があったかもしれない」
ってことはリコって人が帰る方法を探してくれてるのかな?…もう見つかってるよね?
「あ、うん!」
そして僕はお城の方へと方向転換したエクレについていった。
場所は変わってお城の図書館前
エクレについていくとお城に入るのかと思いきやその隣にある建物の大きな扉を開けた。
すると、開いた扉からは何だか独特の匂いが漂い、とても凄い数の本が並ぶ本棚が目に飛び込んできた…どうもここは図書館のようだ。
そんな事を考えながら図書館の中を見回していると…小柄で可愛らしい茶髪の女の子と目が合った。
「申し訳ないであります!このリコッタ・エルマール誠心誠意、勇者様とユウト様がご帰還される方法を探していたでありますが…力及ばず未だなんとも…どうにもこうにも…」
…誰?目が合った途端、走ってきて突然ペコペコと頭を下げながら言われても…周りの視線が…僕があたふたしているとエクレが話を切り出してくれた。
「いや、リコ落ち着け。私も勇者もユウトもそんなにすぐに見つかるとは思ってない」
「え!?」
「ハァー…ですが…」
そんな!?帰る方法ってすぐに見つかるんじゃないの?…ってリコが更に頭を深く下げていく…何だかとてもリコに悪い気がしてきた…。
「そ、そうだよ…うん…」
「ほ、本当でありますか?」
「よ!シンク、どうした?」
すると、リコの後ろからユウトがゆっくりと歩いてきた。
「あ、ユウト。ここに来てたんだ~」
「おう、でも2人はどうしてここに?」
「ん?ユウトか。リコに進捗を聞きに来たんだ」
「なるほどね~」
「そう言えば勇者、期限について何か言っていたな。いつまでだ?」
「えーと、春休み終了の3日前…の前日には家にいないと行けないから…後16日!」
「16日!?それなら希望が湧いてきたであります!!」
「うん!お願いします」
「後16日か~…」
ユウトが少し寂しそうな顔してるな…こっちに来てからは特に生き生きしてるもんね。
そうだ…ユウトと一緒にこの世界に来た時に通った魔法陣をくぐれば帰れないかな?ダメでも携帯の電波届かないかな?…試しに聞いてみよう。
「でも、その前に…僕達が召還された穴の所で魔法陣をくぐれば帰れないかな?ダメでもそこなら携帯に電波届いたりしないかな?」
「電波?」
僕は携帯を取り出して可愛らしく首を傾げているリコに見せてみる。
「いや、あの魔法陣をくぐって帰るのはおそらく無理だ。さっき読んだ本に載ってたんだが俺達を召還した魔法陣は召還専用らしい…簡単に言えば一方通行だ。召還のやり方とかはさすがに載っていなかったが…後、送還に関してはその本には記述されてなかった。ただ…あの場所で魔法陣を展開しながらなら電波が届くかもってのは考え付かなかったわ。やってみる価値はありそうだな」
「でしょ?だから、今から行ってみない?ユウト」
「悪いシンク、俺はまだここで調べ物の続きをしたいからお前らだけで確認しに行ってくれるか?」
「そう?分かった、じゃあ早速行ってくるよ。エクレ、僕達が召還されたときの場所まで案内頼める?」
「ああ、構わないが」
「なら、私も試してみたい物があるので準備が出来次第合流するであります!」
「分かったリコ、先に行っている」
そう言うとエクレはリコに踵を返しスタスタと図書館から出て行った…って!?置いてかないでよエクレ!?…僕は慌ててエクレの後を追った。
場所は変わって召還の儀の祭壇
僕はエクレに例の召還魔法陣を発動してもらい、それをくぐろうと悪戦苦闘していた。
「くっ…んぅぅぅー!!!やっぱり、通れない!!」
手は魔法陣の中に入るのにこれ以上は何故か入れない…手が入ったときはひょっとしたら帰れるかも!って思ったのに…挙句の果てには魔法陣に弾かれる…。
「だから言っているだろうが!」
「人生何でもチャレンジ!!ネバーギブアップ!!」
そんなやりとりをしているとリコが何やら大きな機械をセルクルに引かせながらやって来た。
「勇者様~!準備整ったでありま~す!!」
「えっと……それは?」
「放送で使うフロニャ周波を強化、増幅する機械であります。自分が5歳の時に発明した品でありますが…今は大陸中で使われているのでありますよ」
リコがセルクルに引かせていた大きな機械を弄りながら丁寧に説明してくれる…フロニャ周波ってのは僕らの世界の電波と似たようなもの…なのかな?…って!?5歳でそんな大陸中で使われるような凄い物作ったの!?
僕が驚いている間にリコが何やら大きなレバーを下ろすと同時にその機械からウィ~ンという低い音が聞こえ始めた…どうやら起動したようだ。
「では、勇者様!」
「あ、うん」
僕は携帯を取り出し画面を開き見てみると、先程までは圏外の表示が出ていたのに電波のマークが3本表示されており、ここまでちゃんと電波が届いている事を示していた。
「うおぉぉ~~!立ったー!凄い!リコッタ凄い!!」
「ありがとうであります!感激であります」
そう言いながらリコが敬礼のような格好をとる…こっちにも敬礼ってあるんだ…じゃなくて、繋がったんだし早くしないと。
「うん!じゃあ早速」
そして僕はベッキーに電話をかける事にした。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
次話の更新も不明です。
次回 勇者、連絡を取る